宝石 アンモライトを鑑別しました 化石 アンモナイトではありません


アンモライト鑑別書

アンモナイトの化石は世界中で発見され、その数は1万種を超えるとされています。
しかし、そのほとんどはオパール状の遊色はありません。
下の写真はマダガスカル産中生代白亜紀(1億3500万 - 6500万年前)のアンモナイトで 学名 クレオニセラス(Cleoniceras)と呼ばれます。
このアンモナイトも遊色アンモナイトですがカナダ産アンモライトとはまた、違った輝きを放ちます。

アンモナイト

アンモライト鑑別書

宝石として認められるアンモライトはカナダのアルバータ州からサスカチュワン州、米国のモンタナ州南部にまでに至るベアバウ(Bearpaw)層で採れたアンモライトだけです。
上の写真はカナダ アルバータ州産のアンモライトでマダガスカル産のアンモナイトとは色の深み、コントラスト、多色であること、見る角度で色が変化する等、宝石と認められるだけあって違いが明らかです。

アンモライトは当時生息していたアンモナイトが化石となり、7000万年の時を経てその表面に、アラゴナイトが付着しイリデッセンス(遊色)効果を発するようになったものです。
イリデッセンス効果とは、光を当てた際に物質内の構造により多色の乱反射が起こり、表面や内部に虹色のような多色の輝きが生じることを言います。

鑑別機関は化石の鑑別は行いませんがアンモライトは宝石ですので当然鑑別が可能だと思いましたが引き受けてもらえる鑑別機関は限られるようです。

鉱物名 天然アンモナイト

宝石名 アンモライト


備考欄 
透明皮膜を認む
透明材の含浸処理が行われています。

鉱物名はアンモナイト ←アンモ ナ イトです。
「ナ」に注目して下さい。

宝石名はアンモライト ←アンモ ラ イトです。
今度は「ラ」に注目です。

「ナ」と「ラ」の違いだけですが上は化石の名前で下は宝石名です。
1981年に世界宝石連盟はアンモライトを公式に宝石として認定しました。
2004年にはカナダ アルバータ州の宝石に定められました。

透明材の含浸処理と言うのは耐久性を高めるために行われる処理で宝石質のアンモライトに施されます。
アンモライトの殻は0.5mm~1mm程で非常に薄くもろいので耐久性を高めるためにも必修です。
また、透明皮膜はアンモライトの表面にするコーティングで汚れ等からアンモライトを守ってくれます。

お写真を見てもらえばわかりますが確かに宝石と言っても過言ではない程の美しい色合いです。
こんな美しい色を持つ化石はカナダ アルバータ州のベアバウ地層のアンモナイトしか存在しません。
この地層はベントナイトと呼ばれる粘土で出来ています。
この粘土でアンモライトが覆われていたからこそ、アラゴナイトが変質する事無く現在までこの美しさのまま保存することができたのです。
それも約7000万年前にアンモナイトが生きていたと言う事実が凄いことだと思います。

アンモナイトは今から約6550万年前の白亜紀末に小惑星の衝突によって絶滅したと考えられています。
※1「K-Pg境界」と呼ばれるこの時期に地球の自然環境は大きく変わり、恐竜を含めた多くの生物が大量に絶滅に追い込まれました。
具体的には、小惑星が衝突したことにより大量のすすが地下から放出され、成層圏を数年間浮遊した結果、太陽光が地上に到達しづらくなったそうです。
地上の温度が下がり、降水量が砂漠並みに減ったことで植物が枯れ、食物連鎖のピラミッドが崩壊しました。
その影響はもちろん海中の生態系にもおよびます。
地上と同様に海水の温度が低下し、その結果アンモナイトも絶滅に追い込まれてしまったというのが定説です。

そのアンモナイト化石が宝石のような眩いばかりの虹色を放ち私たちの前に忽然と現れました。
ダイヤ、ルビー、エメラルド等は石なので冷たい感じですが、アンモライトは生命を持って生きていたと思うと温かみを感じます。
こんな生い立ちのアンモライトがただただ美しかったのです。

アンモライト鑑別書

※1K-Pg境界
(ケイ・ピージーきょうかい 英: Cretaceous-Paleogene boundary)とは地質年代区分の用語で、約6550万年前の中生代と新生代の境目に相当します。
顕生代において5回発生した大量絶滅のうちの最後の天変地異です。
恐竜を代表とする大型爬虫類やアンモナイトが絶滅したことで有名でですが、海洋のプランクトンや植物類にも多数の絶滅種がありました。
種のレベルで最大約75%の生物が絶滅し個体の数では99%以上が死滅しました。
K-Pg境界ではメキシコのユカタン半島付近に直径約10kmの巨大隕石(チクシュルーブ衝突体)が落下したことが知られています。
この隕石落下が、大量絶滅の引き金になったとされています。

アンモライトの保管上の注意点
生活上の水濡れは問題ありませんが、アンモライトはその性質上、長期間水に濡れていると輝きが曇ってしまう場合がございますので水濡れには十分ご注意下さい。
また、アンモライトは紫外線に対しても比較的影響を受けやすいため、日光の当たる窓側に長期間置いていると輝いている層(アラゴナイト層)が剥離する場合がございますので直射日光を避けての保管をお願いします。
アンモライトの全ての物に言えることですが表面をコーティングしていますのでアンモライトが汚れた場合には、湿ったやわらかい布で軽く拭いてください。
石鹸や洗剤、薬品のご使用は品質低下の原因となりますのでお避け下さい。

トップに戻る