太古の虫入り琥珀 アンバーを鑑別しました


琥珀鑑別書

琥珀(アンバー)とは木から出る樹脂が長い年月(3,000万年)を経た後に化石となったものです。
そのような琥珀の中で特に珍しい物が太古の虫入り琥珀です。
太古のハエ・蚊・クモ・アリ等の昆虫を内包する琥珀がほとんどですが、中には小さなトカゲ等の爬虫類を内包する琥珀もあるようです。
そのため琥珀には色々な加工品や模造品が出回っています。

コップに沈めた琥珀

・フェノール樹脂
フェノール樹脂で形成された物は琥珀そっくりで見分ける事が難しいですが比重が1.21-1.30あるため飽和食塩水(比重1.1)に入れると沈みます。
一方の琥珀は比重が1.08なので飽和食塩水(比重1.1)に浮くはずでしたが実際は沈みました。(上記の写真で沈んでいるのが琥珀です)
ネット等では「本物の琥珀は浮く」と書かれていて、「沈むと偽物」と言う情報ですが飽和食塩水と琥珀の比重が微妙ですので「必ず浮く」と言う事ではありません。 ネットの情報は簡単に調べられ便利だとは思いますがそれが正しい情報だとは決して言えない見本だと考えます。 やはり正確に真贋を確かめるには鑑別書を作成してもらう事が最も重要です。
※フェノール樹脂はフェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より人工的に合成されたプラスチックです。

琥珀鑑別書

・圧縮琥珀(アンブロイド)
琥珀(アンバー)は180度以上で加熱すると軟化し、250度-300度で溶解します。
その性質を利用して小さな琥珀の粉や欠片を集めて大きな琥珀を作成します。
天然石で言えば練りや溶錬のような作り方です。
上記の写真はブレスト・アンバーの鑑別書が無かったので既存の天然こはく鑑別書を使いアンブロイドだった場合の記述を再現してみました。

素材名に「天然こはく」と書かれるので天然の琥珀には間違いないのですが宝石名に●1「プレスト・アンバー(圧着琥珀)」と書かれ、摘要欄には●3「加熱による圧着処理が行われています。鑑別の基準で”摸造石”に分類されます。」の文言が入るようです。(一般社団法人 宝石鑑別団体協議会 A.G.L)
さすがに「天然こはく」と認めているのに「摸造石」とは何かしっくりしない感じです。
アンブロイドを簡単に言えば琥珀の粉を固めて大きな琥珀にした物と考えて下さい。
しかし、このアンブロイド琥珀の中に現在の虫を入れるとそれは完全な偽物となるかと思います。
また、アンブロイドの溶解中に赤色を流し込めばレッドアンバー、青色ではブルーアンバー、緑色ではグリーンアンバーと簡単に鮮やかな色の琥珀を作り出すことが可能です。
ただし、着色すると鑑別書には●2「加圧加熱処理、着色処理が行われています」の文言が入ります。

琥珀鑑別書

今回の鑑別書をご覧下さい。

素材名 天然こはく

宝石名 虫入り琥珀

加圧加熱処理が行われています

素材が「天然こはく」で宝石名が「虫入り琥珀」と書かれているのでフェノール樹脂やプレスト・アンバーで無いことが確認できます。
また、太古の虫を含有する琥珀ですと認めています。 その下に書かれている加熱加圧処理とは圧力を掛けて加熱する事で透明度を増してお色を濃くする処理の事で、通常の琥珀にはこの処理がほとんど行われています。

比重は1.08ですので飽和食塩水(1.1)に浮くのかは微妙ですが当店の実験では失敗しています。
蛍光検査では長波、短波共に蛍光特性が確認できます。

琥珀

琥珀

拡大検査では「昆虫インクルージョン」と書かれています。
※インクルージョンとは鉱物(本品では琥珀)に内包する他の鉱物、空気、水、昆虫等にあたります。
写真を見ているとハエや蚊等が確認できます。
これらの昆虫が数千万年前に生きていたのですから驚きです。
もし、琥珀のカプセルに閉じ込められなければ亡骸は消滅していたのですが琥珀の中では今も彼らの姿を見ることができます。
石になった化石ではリアリティーを感じられませんが琥珀だとその姿、形が3Dで琥珀内に浮かぶのでじっくり見ると「えっ、すご!」と思ってしまいます。
大きな物では爬虫類を内包する琥珀もあるとのことですが非常に高価との事です。
「見てみたい」と思ったら当店にも琥珀工芸品がありました。
それはサソリが入った樹脂製の飾りでした。


樹脂製サソリ飾り

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