TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2014/6/10

ウマニロンキ社 ミケーレ ベルネッティ氏

ベルネッティ氏 と
ヴェルディッキオの造り手としてスタートしたウマニロンキ社。現在はヴェルディッキオはもちろん、ロッソコーネロ、ラクリマディモッロ、そしてアブルッツォでのワイン造りへと発展を続けています。今回はバリエーション豊かなヴェルディッキオのこと、そして2つの州のモンテプルチアーノ、さらにスーパーマルケ「ペラゴ」まで、非常に幅広いラインナップについてじっくりとお話を聞くことができました。

ウマニロンキ氏から経営を引き継いだ祖父が守り、そしてさらに発展させた父

1955年にウマニロンキ氏によって設立されたウマニロンキ社ですが、設立者のウマニロンキ氏は10年ほどしてワイナリー経営から離れ、ワイナリーで働いていた私の母方の祖父のロベルトビアンキが引き継ぎました。その頃はもうウマニロンキと言う名前は知られていたのでワイナリー名を変えることはしませんでしたが、ビアンキと言う名前はワイン名などで使っています。

父は母と結婚してワイナリー経営に入ることになったのですが、社会政治の勉強をしていた父にとってワインの仕事はチャレンジでした。でも結果としてとてもよかったのです。ウマニロンキをここまでの規模に成長させたのは父ですから。

生産エリアと市場の発展とともに重視した品質の向上

ウマニロンキはイエージのヴェルディッキオの畑から始まりました。1970年代に経営に加わった父は、マルケとエミリアと、さらにマルケの人たちが多く移住していたローマで一生懸命営業をしました。その後、ロッソコーネロの地区にも畑を購入して生産規模を広げました。1980年代にはアブルッツォでもワイン造りを始めました。当初30haほどだったのが今では約200haになっています。 販売先も国内からヨーロッパ、そして私が入社してからは他の地域にも輸出を始め、今では60か国に輸出しています。

規模の拡大とともに品質の向上にも取り組みました。1991年から2001年までジャコモタキスが、その後カヴィオラがウマニロンキの醸造コンサルタントとして従事しています。

ヴェルディッキオへのゆるぎないこだわりを象徴するバリエーション豊かなラインナップ

私たちの200haの畑のうち100haはヴェルディッキオの畑です。6か所に分かれていますが、マルケは丘陵地なのでどれも丘にあります。場所が違うのでそれぞれに特徴の異なるブドウができます。

ヴェルディッキオ デイ カステッリ ディ イエージ クラシコヴェルディッキオは粒がとても詰まっていて、湿度によってはカビが付きやすいブドウです。ブドウそのものに強い香りがあるわけではないですが、やさしい果実の香りがあります。最も特徴的なのは力強いボディのある味わいになることと、ミネラルです。

ところで、ヴェルディッキオはアンフォラ型のボトルで大成功を収めました。1954年に建築家アントニオ マイオッキがファーツィバッタリア社のためにデザインしたのが始まりです。この独特のフォルムで知名度が一気に上がり、ヴェルディッキオの生産者はウマニロンキを含め、みんなこのアンフォラ型を取り入れました。

現在はドイツとイギリスと日本向けにだけアンフォラ型を造っています。
※写真アイテム、ヴェルディッキオ デイ カステッリ ディ イエージ クラシコ

マルケとアブルッツォ 2つの異なるテロワールが表現されるモンテプルチアーノ

マルケとアブルッツォ原産地呼称地図
マルケの赤ワインとして最も重要なブドウがモンテプルチアーノで、ロッソコーネロを造っています。あるとき、イギリスのクライアントからアブルッツォのモンテプルチアーノを造ってみたらと勧められ、エノロゴと一緒にアブルッツォに畑を探しに行きました。

コーネロは石灰質土壌、アブルッツォはコーネロに比べると暖かい気候です。隣接した土地同士ではありますが、同じ品種でも土地によってどう変わるのかを知りたくて取り組み始めました。やはりそれぞれのテロワールの特徴がワインに表現されますね。仕立て方法も異なります。

モンテプルチアーノダブルッツォのエリアは非常に広く、他との違いを出すことが重要だと考えました。モンテプルチアーノは野性的で動物っぽいニュアンスが特徴なので、より果実味を前面に出し、フルーティーなワインを目指しました。

ウマニ ロンキ(マルケ)

ヴェルディッキオに単一畑の概念を初めて取り入れた「カサルディセッラ」

カサルディセッラはウマニロンキにとって最も重要な畑です。1983年、私の父は単一畑のクリュヴェルディッキオを造ることを考えました。今まで単一畑のヴェルディッキオはありませんでしたし、当時はヴェルディッキオと言えばアンフォラ型ボトルのものしかありませんでしたので、差別化するためにブルゴーニュタイプのボトルを採用しました。

今は単一畑ではなく、2つの畑から厳選したブドウで造っています。ひとつはモンテカロットに昔からある畑、もうひとつはサンパオロディイエージの畑です。

2013ヴィンテージは初めての収穫年から30年と言うことで重要なヴィンテージになりました。ラベルにもそのマークが入っています。裏ラベルに毎年入れているマルゲリータの花びらも金色にしています(通常は白色)。

ヴェルディッキオはボトル熟成ができるワインですが、このカサルディセッラもそうです。先日2004を飲みましたがまだまだフレッシュでしたし、1995年のマグナムも飲みましたが実に美味しかった。この価格帯ですが、ぜひ寝かせても飲んでもらいたいですね。
カサル ディ セッラ ヴェルディッキオ デイ カステッリ ディ イエージ クラシコ スペリオーレ 2012

試飲
コメント

熟した果実の香りがぱ~っと広がり、そのまま味わいへ。心地よい果実味としっかりとした酸とミネラル。飲み飽きない!

ウマニ ロンキ(マルケ)

ウマニロンキには異なるテロワールで造る2つのトップヴェルディッキオがある

ウマニロンキにはプレーニオとカサル ディ セッラ ヴェッキエ ヴィーニェという2つのトップキュヴェがあります。一般のワイナリーでは2つ造るということはしないと思いますが、私たちは畑のあるエリアの違いを出したかったので2つ造っています。

プレーニオはコプラモンターナにある標高の高い畑で造ります。そのため十分に熟した酸がしっかりとあるブドウができます。リゼルヴァ表記がありますが、ヴェルディッキオは白ワインとしてリゼルヴァのカテゴリーが初めて認められたワインです。リゼルヴァ認定を受けた1995年にプレーニオも誕生しました。

規定では18ヶ月間の熟成ですが、プレーニオはもっと長い熟成を行います。当初はバリック100%でしたが、いまは40%を大樽で、残りはセメントタンクです。
プレーニオ ヴェルディッキオ デイ カステッリ ディ イェージ クラシコ リゼルヴァ 2008

試飲
コメント

ハチミツのニュアンスと甘酸っぱい果実味が華やかに広がる香り。しっかりとした酸と果実のコクとのバランスが良く、程よく感じる樽のニュアンスとのハーモニーがエレガントにまとまっている。

ウマニ ロンキ(マルケ)

ウマニロンキには異なるテロワールで造る2つのトップヴェルディッキオがある

ヴェッキエヴィーニェはカサルディセッラと同じく、モンテカロットに古くからある畑の中の古樹で造ります。ヴェッキエヴィーニェはセメントタンク熟成で、樽は使いません。本来のピュアなヴェルディッキオの味わいが出たワインになっています。
カサル ディ セッラ ヴェッキエ ヴィーニェ ヴェルディッキオ クラシコ スペリオーレ 2010

ウマニ ロンキ(マルケ)

レ ブスケ マルケ ビアンコ

レブスケはウマニロンキが白ワインに初めてバリックを使ったワインです。80年代の終わりにリリースした当初はソーヴィニョンとシャルドネで造っていましたが、90年代に入ってヴェルディッキオとシャルドネのブレンドに変えました。ドライなヴェルディッキオとまろやかなシャルドネの組み合わせは、オイリーさもありますが決して重くなく、飲み心地の良い味わいとなっています。
ヴェルディッキオと国際品種をブレンドした白ワイン2011

試飲
コメント

レブスケは、プレーニオに比べると樽のニュアンスがしっかりと感じられる。密度の詰まった厚みのあるコクと上品な酸味のバランスが良く、不思議なほどにスーッと飲める。

ウマニ ロンキ(マルケ)

ヨーリオ マルケ ビアンコ

ヨーリオは赤のヨーリオの兄弟ワインとして造りました。ソーヴィニョンとのブレンドですがマルケのソーヴィニョンはそれほどアロマも強くなく、ヴェルディッキオと組み合わせることでこのエリアにはないモダンで面白いワインになっています。
ヴェルディッキオと国際品種をブレンドした白ワイン2012

試飲
コメント

ヨーリオビアンコは酸とミネラルをしっかり感じる、気軽に飲める楽しい味わい。

ウマニ ロンキ(アブルッツォ)

ポデーレは1977年が初リリースで、フレッシュでフルーティーな味わいを出すことを考えて造っています。アブルッツォでの経験を重ね、1993年に出したヨーリオは厳選したブドウで造った樽熟成のモンテプルチアーノです。50%が大樽、50%はバリックの旧樽です。完熟ブドウのニュアンス、凝縮感もありますが飲み心地の良さが特徴で、世界中で愛されるようになりました。
ポデーレ モンテプルチアーノ ダブルッツォ 2012

試飲
コメント

ポデーレは全体のバランスがちょうどいいフルーティーな美味しさでデイリーにオススメ。

ウマニ ロンキ(アブルッツォ)

アブルッツォ州に所有する単一畑(クリュ)から造られるモンテプルチアーノ。ブドウの持つポテンシャルを最大限に引き出すために、栽培密度を上げ、収穫量をできるだけ抑えています。ヨーリオとはアブルッツォ生まれの詩人ダヌンツィオの作品「ヨーリオの娘」に由来しています。
ヨーリオ モンテプルチアーノ ダブルッツォ 2011

ウマニ ロンキ(マルケ)

ロッソ コーネロのサンロレンツォはヨーリオとほぼ同じ醸造をしていますが、ヨーリオのエリアから北に50kmの場所で涼しい気候になります。ロッソコーネロの気候は独特です。海に近い場所で、コーネロ山がもたらすミクロクリマのおかげでとてもエレガントなワインになります。

ロッソコーネロは2011ヴィンテージが30周年でラベルにも記念のマークが入っています。また、これまでボルドー型のボトルでしたが、ブルゴーニュ型に切り替わります。
サン ロレンツォ ロッソ コーネロ 2011

試飲
コメント

ヨーリオとロッソコーネロの飲み比べはとても面白く、それぞれのエリアの特徴を実感。アブルッツォにはないロッソコーネロのエレガントな美味しさはぜひ試していただきたい。

ウマニ ロンキ(マルケ)

マルケとアブルッツォの上級モンテプルチアーノ「クマロ」と「コスタモッロ」

クマロは初めてバリックを使った赤で、ウマニロンキにとっても歴史のあるワインです。2004ヴィンテージからDOCGに昇格、ロッソコーネロからコーネロリゼルヴァになりました。熟成はバリックの新樽、2年目、3年目の樽を3分の1ずつ使っています。
クマロ コーネロ リゼルヴァ 2009

試飲
コメント

クマロは過熟気味の果実のニュアンスながらミネラル感のあるバランスの良い美味しさ。

ウマニ ロンキ(アブルッツォ)

マルケとアブルッツォの上級モンテプルチアーノ「クマロ」と「コスタモッロ」

コスタモッロはモンテプルチアーノダブルッツォの限定地区でDOCG認定のコッリーネテラマーネリゼルヴァです。これもバリックの新樽、2年目、3年目の樽を3分の1ずつです。飲み比べるとよく解りますが、クマロはとてもエレガント、コスタモッロは非常に濃密感があると思います。コッリーネテラマーネはアブルッツォの中では砂質土壌でその為、比較的エレガントに仕上がります。
コスタモッロ モンテプルチアーノ ダブルッツォ コッリーネ テラマーネ 2007

試飲
コメント

コスタモッロの第一印象は「濃くて強くて旨い」。どちらのモンテプルチアーノも圧倒的な個性があり、素晴らしい。

ウマニ ロンキ(マルケ)

スーパーマルケ「ペラゴ」。ジャコモタキスのやわらかな美味しさからカヴィオラのブドウ本来のフレッシュな美味しさへ

ペラゴはサッシカイアを造ったジャコモタキスのアイデアで生まれました。ボルドー品種に土着品種のモンテプルチアーノをブレンドしています。具体的には45%カベルネソーヴィニョン、45%モンテプルチアーノ、10%メルローです。1994年にリリースですぐにインターナショナルワインチャレンジで1位になり、有名になりました。90年代のクマロはジャコモタキスの考えでよりやわらかな味わいでしたが、カヴィオラは栽培家でもあり、ブドウ自体のフレッシュさを尊重したワイン造りをしています。
ペラゴ マルケ ロッソ 2008

試飲
コメント

圧倒的な存在感。力強いタンニン。

ウマニ ロンキ(マルケ)

赤いゲヴルツトラミネル ラクリマディモッロ

ラクリマはマルケとアドリア海の対岸のクロアチアの一部のエリアにだけ存在する希少品種です。DOCのエリアも300haしかありません。バラやフルーツのシロップ漬け、セージなどの香りが特徴的で、「赤いゲヴルツトラミネル」と表現するジャーナリストもいます。とても希少なワインですが、独特な香りなので好き嫌いがあるかもしれませんね。ラクリマのブドウは完熟したタイミングで房の上の方の粒の皮が破れ、果汁が滴るのが特徴です。その様子が涙に見えるため、ラクリマ(涙)と言う名前が付いたと言われています。ラベルにも涙をデザインしています。

華やかでスパイシーさもあるアロマと、フルーティーさのある辛口なのでインド料理やアジア料理と相性がいいです。
フォンテ デル レ ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2012

試飲
コメント

とても華やかでうっとりするアロマ。甘やかな香りながら味わいは辛口でフレッシュ。これだけでも、料理と一緒でも楽しめる。

インタビューを終えて

今回、特に印象に残ったのは2つの州で造るモンテプルチアーノの違いです。アブルッツォのモンテプルチアーノのほうが生産量も圧倒的に多く、とても身近。モンテプルチアーノの味=アブルッツォというイメージが強い。マルケにはもちろんロッソピチェーノがありますが、さらに北に位置するエリアであることと海に近いという特性がワインにこれほど違いをもたらすのだなと実感できました。

そしてやっぱりいつ飲んでも美味しいのがカサルディセッラ。長期熟成のカサルディセッラもぜひいつか飲んでみたいと思います。
集合写真

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