TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2016/2/29

テラクルーダ社 ルカ アヴェナンティ氏

マルケ北部のフラッテ ローザ村で歴史あるイタリア品種にこだわったワイン造りを行う家族経営ワイナリー

テラクルーダのルカ アヴェナンティ氏と
テラクルーダは、アドリア海に面したイタリア中部のマルケ州の北部で土着品種にこだわってワイン造りを続ける家族経営ワイナリーです。フラッテローザ村に50年以上前から所有する畑に植えられた樹齢45年のビアンケッロを中心に、珍しいアレアティコの辛口や代々伝わる甘口「ヴィショラ」など、この土地ならではワイン造りを行っています。現在、ワイナリーの中心となっている息子のルカさんにお話を聞きました。

中世から続く小さなフラッテローザ村で唯一のワイナリー

テラクルーダは、マルケ州北部のフラッテローザ村にあります。ここは中世から続く村です。ここで私の家族アヴェナンティ家は50年前から畑を所有していました。ブドウは栽培していましたが醸造所はありませんでした。11年ほど前に、自分たちのワインを造ろうということになり、ワイナリーを設立したのです。フラッテローザはとても小さな村なので、私たち以外に自社のワイナリーはありません。だから、村のみんなが応援してくれています。

畑は全部で20ヘクタールあります。そのうち10ヘクタールはビアンケッロが植えられています。赤は当初は1ヘクタールのアレアティコと1ヘクタールのサンジョヴェーゼだけでしたが、少しずつ買い足していきました。

畑は有機栽培で、すべて手作業で行っています。収穫ももちろん手摘みです。

テラクルーダの景観

村の伝統工芸「テラコッタ(陶器)」に対して、生の土から造るワインと言う意味で付けた「テラクルーダ」

フラッテローザは、昔からテラコッタ(陶器)が伝統工芸です。テラコッタ(terracotta)は「焼いた土」と言う意味ですが、それに対してワインは生の土に育つブドウから造られます。そこで、ワイナリーの名前を「テラクルーダ(Terracruda)」と名付けました。

マルケは昔からブドウが造られてきましたが、もっぱら地元で消費されていて、どちらかというと農民の土地です。地元の外に売りに行くのは不慣れなんですね。だからマルケのワインはそれほど有名ではありませんでした。

2000年前の文献に残るビアンケッロと、1000年前から存在が認められているアレアティコ

ビアンケッロ、アレアティコ私たちの畑には樹齢45年以上のビアンケッロがあります。畑を手に入れたときからずっとあるブドウ樹です。それを大切に育ててきているので、今まで新たにビアンケッロを植樹したことはありません。ビアンケッロは、私たちのエリア特有の呼び方で、ここ以外はほとんど耳にすることはありません。ブドウのタイプとしてはトレッビアーノのクローンになります。ビアンケッロは2000年以上前のローマ時代から造られていることが文献に残っています。

そして、赤ワインを造るアレアティコです。アレアティコも1000年以上の歴史があるブドウで、プーリア州からもたらされましたが、もともとの起源はペルシャが原産地で、そこからギリシャに伝わり、南イタリアへ渡り、そしてマルケにやってきたとされています。

アレアティコは、南イタリアから中央イタリアで造られていますが、ほとんどが甘口ワインです。暖かいエリアでよく熟し、糖度が高くなるからです。でも、私たちのところでは北にあって寒いため辛口ワインになります。アレアティコが育つ北限になっています。アレアティコの辛口はとても珍しく、造っている人はほとんどいません。

北部マルケの独特の品種ビアンケッロ。収穫時期をずらすことでタイプの異なるワインを造る

ビアンケッロの畑は10ヘクタールあります。そこから3つのワインを造っているのですが、収穫の時期をずらすことでタイプの異なるワインになります。一番フレッシュなタイプが「ボッカリーノ」でステンレスタンクだけで造っています。10月中旬に収穫するのがカンポダルキ アルジェント。一部バリックの新樽で熟成させています。そして最も芳醇でボリュームのあるのがカンポダルキ オロです。

ラベルを見ていただくとよくわかるのですが、一番フレッシュなボッカリーノは若いブドウ樹。カンポダルキアルジェントはブドウ樹が育った様子を、そしてカンポダルキオロはさらに成熟したブドウ樹を描いています。

ビアンケッロは北部マルケの独特の品種です。マルケの白はヴェルディッキオのイメージが強く、非常に多く生産されていますが、それに対してビアンケッロを造っているのはせいぜい30社ぐらいです。

ビアンケッロの特徴がよくわかるフレッシュな白

2014年は非常に雨が多かった年で、例年に比べると熟し具合がやや軽めです。2014年の白は、このボッカリーノだけしか造っていません。

ボッカリーノに使っているのは平均樹齢35年のビアンケッロです。1株当たり多くても4房ぐらいにして育てています。8月末から9月中旬にかけて収穫し、醸造はすべてステンレスです。フレッシュで軽快な味わいの白ワインで、ビアンケッロというブドウの特徴がよくわかります。

ミネラルをよく感じるかと思いますが、これは特にこの2014年の特徴です。ミネラルは毎年しっかりとありますが、2014は果実味が控えめなので余計に際立っているかもしれません。
ボッカリーノ ビアンケッロ デル メタウロ2014

試飲
コメント

きりっとした飲み口のシンプルでフレッシュな味わい。ミネラルをしっかりと感じ、それが長く続いて心地よい。上品な果実味で気軽に楽しく飲める。

華やかなアロマのアレアティコで造る珍しい辛口赤

アレアティコはプーリアから伝わってきたブドウで、1000年前にあったペルゴラと言う町に伝わりました。アレアティコの特徴はなんと言ってもこの香りです。バラやスミレ、サクランボの洋酒漬け、ジャムなどの甘く華やかな香りがあります。華やかな香りの黒ブドウとしてラクリマもありますが、味わいはラクリマよりもデリケートですね。

オルタイアはアレアティコで造っている私たちのワインの中の真ん中のラインになります。ステンレスだけで造るヴェッティーナはとてもフルーティーなスタイル。このオルタイアはバリックで熟成させているのですが、そこまで重たさはなく、きれいな酸と穏やかなタンニンが特徴です。今日の温度は低めですが、これぐらいで飲むのもいいと思います。私たちは魚料理にもこのアレアティコを合わせています。
オルタイア ペルゴラ アレアティコ スペリオーレ2012

試飲
コメント

ずっと楽しんでいたくなるような華やかで甘い香り。味わいはとてもスムーズでなめらか。タンニンも穏やかなのできれいな果実味がストレートに感じられる。アルコール度数が15.5%と聞いてびっくりするぐらいにエレガント。

土地の伝統的甘口ワイン。アレアティコとサクランボのハーモニー

ヴィショラはヴェッティーナに野生のサクランボと砂糖を加えて二次発酵させて造った甘口ワインです。マルケにはルネッサンスの頃から伝わっているデザートワイン「ヴィショラータ」があります。これはブドウとサクランボ(ヴィショラ)を混ぜた伝統的な飲み物です。ヴィショラは中央イタリアにしか生えない野生のサクランボの一種で、幸運なことに私たちの畑の周りに生育しているので、それを摘んで造っています。

甘口のデザートワインで、サクランボを使ったケーキや、チョコレートに特によく合います。
ヴィショラNV

試飲
コメント

アレアティコの華やかな香りとサクランボの甘い香りをしっかりと感じる。味わいは甘口ながら決して重すぎず、甘ったるさがないので飲みやすい。食後にデザートと一緒にでもいいし、このヴィショラだけでも十分。

インタビューを終えて

ビアンケッロと辛口アレアティコという、ちょっと珍しいワインを造っているテラクルーダ。地元に伝わるブドウにこだわり続けているおかげで、「こんなワインがあったんだ!」と多くのワイン愛好家から喜ばれているそうです。

今回、ビアンケッロとアレアティコをそれぞれ試飲しましたが、マルケのワインのイメージとはまた違う個性があり、本当に興味深かったです。丁寧に造り上げたテラクルーダのワイン。ぜひ食事と一緒に楽しんでいただければと思います。
テラクルーダの皆さん

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