TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2019/03/05

テヌータ ディ カペッツァーナ社 ベアトリーチェ コンティーニ ボナコッシさん

804年からのワイン造りの歴史を誇る伝統的産地カルミニャーノの名門「カペッツァーナ」インタビュー

カペッツァーナ社ベアトリーチェさんと
カペッツァーナは、カルミニャーノDOCGを代表する造り手。この土地でのワイン造りの歴史はなんと804年にまでさかのぼることができます。1920年に現オーナーのコンティーニボナコッシ家が土地を取得し、ワイナリーとしてのテヌータディカペッツァーナの歴史が始まりました。670ヘクタールと言う広大な土地で伝統的な有機栽培を実践。キャンティクラシコとは異なる独特のテロワールを生かしたワイン造りについて、3代目のベアトリーチェ コンティーニ ボナコッシさんに、本郷1丁目にあるレストラン「クリマディトスカーナ」でランチをご一緒しながらお話をお聞きしました。

カルミニャーノで804年からワイン造りを続けてきた土地を受け継ぐボナコッシ家による家族経営ワイナリー

世界で初めての原産地呼称を受けた4つの地域のうちのひとつカルミニャーノで1200年以上のワイン造りの歴史があります。「テヌータ ディ カペッツァーナ」の土地は代々貴族たちが所有し、ブルボン家、アディマーリモレッリ、フランケッティロートシルトなどの所有を経て、1920年に私の曽祖父のアレッサンドロコンティーニ ボナコッシ伯爵が購入しました。それ以来、家族でワイン造りを行っています。

ボナコッシ家

曽祖父はスペインで高級古物商として成功しました。絵画や家具や銅像などのコレクションはアレッサンドロの息子たちによって州に寄贈されました。これらのコレクションはフィレンツェのウフィッツィ美術館に保管されています。これまでは予約した人だけが見ることのできる展示でしたが、最近、常設の展示として公開されるようになりました。

カペッツァーナの醸造担当ヴィットリオ氏とベネデッタさん今、ワイナリーは3代目と4代目が担っています。私(ベアトリーチェさん)はセールスマーケティング、姉のベネデッタが醸造を、弟のフィリッポはオリーブ畑を主に見ています。兄のヴィットリオがベネデッタとともにずっとワイン造りの中心だったのですが、残念ながら昨年病気で亡くなりました。

メディチ家が避暑地として愛した土地。キャンティクラシコとのテロワールの違いも

カルミニャーノは、フィレンツェの西、約20kmのところにあります。フィレンツェから近いということもありますが、キャンティ地区のように行くまでに丘陵地の連続で行きづらかった場所と違い、カルミニャーノまでは比較的平坦な道がのびていて馬車でのアクセスがしやすかったことからメディチ家が避暑地として夏の間過ごしていました。外部から隔離するために「バルコレアーレ」と呼ぶ壁を建設したほどです。

カペッツァーナのテロワール

トスカーナ州地図カルミニャーノは昼夜の寒暖差が大きく、独特のミクロクリマがあります。夏は40度にもなりますが、夜になると北のアペニン山脈からの風で冷やされ、気温が下がります。また、西のアルバーノ山のおかげで嵐からブドウ畑を守ってくれます。キャンティ地区とカルミニャーノはそれほど離れてはいませんが、テロワールは異なります。収穫前の時期はキャンティクラシコよりも雨が多いのも特徴です。夏には乾燥し、収穫前に雨が降ることはブドウにとって良い影響をもたらしています。

土壌も様々で、粘土質、ガレストロ、砂地、アルベレーゼ(石灰岩土壌)の4種類があり、それによってできるブドウもキャラクターが様々になります。

2009年から有機栽培への取り組みをスタート、2015年から有機認証

2009年から有機栽培の取り組みを始めました。もともとカペッツァーナの土地は農薬などを使わないブドウ造りを行っていましたが、しっかりと認証をとる取り組みを行って2015年に承認されました。取り組みの一つに豆科植物をブドウの樹と交互に植えています。豆が育って4ヶ月後ぐらいに抜き、それをそのまま放置します。しばらくすると草がしおれてくるので土と混ぜます。こうすることで、土壌の窒素の量を調整しています。有機栽培の取り組みについては、コンサルタント契約をしているフランコベルナベイのアドバイスを受けています。

カペッツァーナの自然酵母の推移醸造についてフィレンツェ大学との共同研究も行っています。そしてその結果2013年からは自然酵母のみによる醸造を開始しました。これを決めたのは兄のヴィットリオでした。ベネデッタはとても心配症で、もし発酵が始まらなかったらどうするの、とずっと言っていました。

このグラフはカペッツァーナの畑とカンティーナで見つかった酵母の種類とその数です。酵母が年を追うごとに落ち着いてきて、自然酵母で発酵を始めたときはバラつきのあった酵母が平均的に働き始めています。

自分の子供のように特に思い入れを込めて造るヴィンサント

ヴィンサントヴィンサントは特に思い入れの強いワインです。ベネデッタには3人の子供がいますが、このヴィンサントは自分の4番目の子供であるかのように強い思い入れを持って造っています。使う品種はトレッビアーノとサンコロンバーノという、もうトスカーナにはほとんど存在していない品種を使っています。

造り方は、昔の農民がやっていた通りの方法を踏襲しています。収穫したブドウを翌年の2月頃まで陰干しした後、50~100リットルのカラテッロと言う小さな樽に入れて発酵します。醸造を行うのは屋根裏の、温度管理をしていない場所です。

樽の種類はいくつかありますが、主に栗の樽を使っています。これはベネデッタの考えで、ワインの甘さと栗の樹の苦みが調和するのです。約5年間の熟成をして、ボトリングしてリリースしますが、その時期を決めるのはベネデッタです。私達は早く販売をしたいのですが、彼女が納得するまでリリースすることはできません。

トスカーナの人たちにとって根本にある存在のオリーブオイル

オリーブオイルカペッツァーナではオリーブオイルも造っています。この2018年産のオイルは10月15日に圧搾したものですが、毎年、この時期が近付くと家族のみんながワクワクした気持ちになります。搾りたてのオイルはそれだけで美味しくて、黒キャベツと豆と美味しいパンさえあればもう充分なごちそうです。カルミニャーノのオイルは繊細な味わいが特徴です。キャンティクラシコ地区で造るオイルに比べてやわらかな味わいになります。

トスカーナの人たちにとってオリーブオイルは根本的なものです。もともとトスカーナ料理はシンプルな料理なのでオイルが決め手となりますし、旬のものを食べるうえでもオイルはとても大切です。赤ちゃんがミルクの次に口に入れる食べ物もオリーブオイルなんですよ。

オリーブ畑は140ヘクタールあります。すべて有機栽培で造っています。世界の有名シェフたちにも評判で、ジェイミーオリバー氏などにも使って頂いています。

ほぼ遅摘みのトレッビアーノで造る、ふくよかさとのびやかな旨味が印象的な白

トレッビアーノディカペッツァーナの2015ヴィンテージです。トレッビアーノは「トレッビアーノローザ」という特別なクローンで、この土地にしかないクローンです。私達の畑には樹齢50年のものもあります。以前はヴィンサントだけに使っていました。収穫は2回に分けて行います。まず9月の中旬にヴィンサント用を収穫、そして10月中旬にこのトレッビアーノ用の収穫を行います。十分に熟した、やや過熟の状態なのでほぼほぼ「遅摘み」になります。

発酵はステンレスタンクで、マロラクティック発酵はトノーで行います。そして熟成にはアカシアの樽だけを使っています。
トレッビアーノ ディ カペッツァーナ2015

試飲
コメント

しっかりとした黄色の色合いで花やバニラなどの甘く心地よい香り。ふくよかさとともにきれいな酸と長く伸びる旨みが印象的な美味しさ。

カペッツァーナの歴史を象徴するカルミニャーノ

私達にとって歴史的なワインがこのヴィッラディカペッツァーナです。ラベルデザインは祖父がデザインした1930年代のものからほとんど変わっていません。サンジョヴェーゼとカベルネソーヴィニョンのブレンドで、サンジョヴェーゼは9月末、カベルネは10月中旬に収穫しています。熟成はトノーと大樽です。
ヴィッラ ディ カペッツァーナ カルミニャーノ2015

試飲
コメント

果実やスパイスなどを感じるチャーミングで優しい香り。サンジョヴェーゼの酸とカベルネのしっかりとしたタンニンが調和した、上品な美味しさ。心地よいほどにすーっと飲める優しい味わい。

良年だけに造られる長期熟成カルミニャーノ

トレッフィアーノリゼルヴァは良い年だけに造ります。約12000本ほどの生産量になります。サンジョヴェーゼとカベルネソーヴィニョン、カナイオーロのブレンドです。48ヶ月間トノーで熟成させています。

今回お飲みいただいているのは2015年です。日本では2008年を気に入って頂いているということで2008を販売して頂いています。
トレフィアーノ リゼルヴァ2015

試飲
コメント

ヴィッラカペッツァーナよりもさらに複雑味を感じる。それでいてエレガントで洗練されている。味わいの要素はしっかりとあり、全てが完璧なバランスでとてもなめらかな飲み心地。

収穫したブドウのわずか15%の量しか造られない希少なヴィンサント

ベネデッタが子供のように大切に造っているヴィンサントです。トレッビアーノとサンコロンバーノという、もうトスカーナにはほとんど存在していない品種を使っています。造り方は、昔の農民がやっていた通りの方法を踏襲しています。収穫したブドウを翌年の2月頃まで陰干しした後、50~100リットルのカラテッロと言う小さな樽に入れて発酵します。醸造を行うのは屋根裏の、温度管理をしていない場所です。収穫したブドウの量の15%しか造ることができないワインです。

今日はデザートに合わせて頂いていますが、ドルチェもいいですし、熟成チーズともとてもよく合うのでオススメです。
ヴィン サント ディ カルミニャーノ リゼルヴァ2009

試飲
コメント

乾燥フルーツ、アプリコットやオレンジの皮などの甘く心地よい香り。上品で洗練されたやわらかな甘みときりっと引き締まった酸が絶妙に調和した完璧なバランス。

インタビューを終えて

カルミニャーノは、古くから銘醸ワイン産地として評価されている土地ながら、キャンティクラシコやブルネッロディモンタルチーノに比べて生産者も生産量も少ないため、なじみの薄い方も多いかもしれません。ですが、世界初の原産地呼称「BANDO(バンド)」を与えられるほどの長い伝統を誇るワインです。ベアトリーチェさんのお話を聞いてその認識をあらたにしました。

今回は本郷にあるレストラン「Clima di Toscana(クリマディトスカーナ)」さんでお料理に合わせてカペッツァーナのワインを楽しませていただきました。オーナーの佐藤真一シェフは長年トスカーナを中心に星付きレストランで腕を磨かれてこられた一流の料理人でありソムリエです。その佐藤さんもカペッツァーナのワインが大好きで、今回のマリアージュを考えてくださったそうです。

そのお料理はとにかく一つ一つが繊細で上品な味付けでした。しっかりとした旨みを持つカペッツァーナのエレガントな味わいとの調和が素晴らしく、感動しっぱなし。ベアトリーチェさんも本当に嬉しそうでした。

※合わせた料理:チポッラータ&ニューディペコリーノ、本マス&甘平&筍のグリル、栗の粉のストロッツァプレーティ&イノシシ肉のサルシッチャ&フランス産桜シメジ、サーロインステーキ&春トリュフ&島人参、リゾアルラッテ&とちおとめ
カペッツァーナ社ベアトリーチェさん、クリマディトスカーナ佐藤真一シェフ、千種雄介氏

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