TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2018/05/23

テヌータ ディ ビセルノ社 ニコロ フィニツォーラ氏

オルネッライア、マッセートを産み出したアンティノリ伯爵が実現させた新たなスーパートスカン「テヌータ ディ ビセルノ」

テヌータ ディ ビセルノ社 ニコラ フィッツオーラ氏と
「テヌータ ディ ビセルノ」はイタリア最高峰のワインと称される伝説的ワイン「オルネッライア」と「マッセート」を産み出した名門アンティノリ家のロドヴィコ アンティノリ伯爵が「新しい伝説」を実現させたプロジェクトです。トップキュヴェのスーパートスカン「ロドヴィコ」はヨーロッパで既に生産量の10倍のオーダーが入る等、市場では垂涎の的となり、新たなアイコンワインとして既に入手困難なプレミアムワインとなっています。世界最高評価で絶対的存在に築き上げた「オルネッライア」「マッセート」を売ってまでロドヴィコ伯爵が無名の地「ビッボーナ」で挑戦を続ける偉大なワイン造り、伯爵が歴史に名を刻むスーパートスカンを産み出してきた独自の哲学についてテヌータ ディ ビセルノ社のニコロ フィニツォーラ氏にお話を聞きました。

テヌータ ディ ビセルノ社 ニコロ フィニツォーラ氏

ニコラ フィッツオーラ氏テヌータ ディ ビセルノ社
マーケティング&ホスピタリティマネージャー

ニコロ フィニツォーラ氏


1977年トスカーナ、モンテカティーニ テルメでホテル業を営む家に生まれる。

ホスピタリティとファインダイニングに傾倒し、1995年よりフォーシーズンズホテルにて勤務。

その後コンシェルジュ、フロント、フード&ビバレッジマネージャーとして数々のホテルで経験を経て5つ星ホテル、ファインダイニング、ファインワインの世界で造詣を深める。

サヴォイホテル(フィレンツェ)、バウアーホテル(ヴェニス)、ローズウッドホテル(ニューヨーク、ロンドン)、フォーシーズンズホテル(ミラノ、ロンドン)等

ホテルマンとして、またニコロのパーソナリティに惚れ込んだロドヴィコアンティノリ伯爵によってテヌータディビセルノにヘッドハントされ2015年より現職に就く。ワインの他、料理、旅行、写真が趣味。

「オルネッライア」「マッセート」を産み出したアンティノリ伯爵が実現させた最後の伝説

ロドヴィコアンティノリ伯爵「オルネッライア」「マッセート」を産み出したアンティノリ伯爵が実現させた最後の伝説
今回初めて日本に来ることが出来ました。テヌータ ディ ビセルノの当主ロドヴィコ アンティノリ(75歳)の兄はトスカーナの名門、アンティノリ家26代目現当主ピエロアンティノリ伯爵です。ロドヴィコ伯爵はこれまでにイタリア最高峰のワインと称される伝説的スーパートスカン「オルネッライア」と「マッセート」を生み出し一世を風靡しました。しかしながら1999年にスーパートスカン「オルネッライア」を売却し、2000年にピエロ伯爵と「自身の最後で最高の夢」として兄弟で新たに「テヌータ ディ ビセルノ」を設立しました。

地図「マッセート」の土壌にも通じる偉大な畑で新たにカベルネフラン種に挑戦
テヌータ ディ ビセルノはトスカーナの西部、ティレニア海を臨む北にビッボーナ、南にボルゲリに挟まれたワインの銘醸地、アルト マレンマの丘陵地に所在します。テヌータ ディ ビセルノでは土壌、向き、気候等から考慮して、どの畑でどのブドウを栽培するかをロドヴィコアンティノリ伯爵とオルネッライア時代から旧知の中であり、ブドウ畑に深い見識を持つ栽培家ラニエーリ オルシーニ氏が全て決めています。

テヌータ ディ ビセルノの畑は地中海から吹くミネラルを多く含む海風により気温が上がり過ぎず、出来上がるワインもエレガントで調和のとれたスタイルになります。この土地はサン テミリオンとポムロールの特徴を併せ持つ、メルロー種の超高級ワイン「マッセート」の土壌に通じるものがありながら、ロドヴィコはカベルネフラン種の栽培に可能性を見出し、これまでには行っていなかったカベルネフランを主体としたワイン造りを行うことを決断します。ボルゲリの地から生み出してきた伝説的ワイン「オルネッライア」「マッセート」と同様、ボルドースタイルに傾倒しながらも、カベルネフランに可能性を見出した新たな挑戦と言えます。

ミシェルロラン氏シンデレラワインを産み出す天才「ミシェル ロラン」をコンサルタントに迎える
現在テヌータ ディ ビセルノ4種類の赤ワインを造っています。計47ヘクタールの畑を所有し、生産量は約50万本超です。インソリオ40万本、イルピーノ8万本、ビセルノ2万5000本、トップキュヴェの単一畑「ロドヴィゴ」は5000~1万5000本、良いヴィンテージにしかボトリングしません。

コンサルタントには「オルネライア」や「マッセート」を一緒に産み出し、フランスの「シャトー ル パン」や「シャトークリネ」、カリフォルニアの「ハーランエステート」等、無名だったワインを一躍高級ワインに引き上げた「シンデレラワイン」を次々産み出した天才ミシェル ロラン氏。長年のロドヴィコ伯爵と友人でもあったロラン氏はこの申し出を快諾します。

エレナリンドバーグ女史女性醸造家エレナ リンドバーグ女史
醸造を担当するのはスウェーデン出身でオーストラリアのバロッサヴァレー、ヤルンバヴァレー、ニュージーランドのマールボロで醸造経験をもつエレナリンドバーグ女史です。2004年からテヌータ ディ ビセルノで醸造家として従事しています。彼女がボルドー大学在籍時代に造ったワインをロドヴィコアンティノリ伯爵が飲み、「このワインを造ったのは?」と彼女が造るワインの品質の高さに強い興味を持ったことが始まりです。ワイン販売数量においてはスイス、ドイツ、オーストリア、イタリアの順です。アジアでは日本以外に香港にも輸出しています。

オルネッライアが有名になる前と売れ方と似ているトップキュヴェ「ロドヴィコ」

#畑大画像

ボルゲリとキャンティ地区の間にアンティノリ家が所有していた古城「ビセルノ」
ワイナリーの名前ですが、ボルゲリとキャンティ地区の間にアンティノリ家が所有していた「ビセルノ」という古城から名づけられています、ビセルノ城は戦争で焼けて今は残っていませんが、非常に美しい城でロドヴィコアンティノリ伯爵がアンティノリ家の文献から見つけたものです.ワイナリーのロゴはアンティノリを表す「A」の文字の囲み、ロドヴィコ、ピエロの兄弟が向き合っているイメージです。

「オルネッライアが有名になる前の売れ方と似ている」
2000年にワイナリーがスタートし、ワイナリーを代表するハイレベルなワインが出来たのが2007年。私達の歴史はまだまだ浅いながら、常に新しいヴィンテージのリリース前には全てのワインが売り切れている状況となっています。ロドヴィコアンティノリ伯爵もテヌータ ディ ビセルノがこのまま成長を続けていくと感じており、その様子はまるで1980年代に「オルネッライア」や「マッセート」が急激な伸びを示したことに似ており、伯爵は「オルネッライアが有名になる前の売れ方と似ているものがあり、まるでデジャヴ」と感じています。

ロドヴィコラベルヨーロッパでは既にアイコンワインとして認知。トップキュヴェ「ロドヴィゴ」
トップキュヴェ「ロドヴィゴ」はこれまで5ヴィンテージ(2007、2008、2011、2012、2013)しかボトリングしていません。完璧に近い完成度を求めています。ヨーロッパでは既にアイコンワイン(象徴的なワイン)として認知されています。要するにハイクラスのボルドー、ブルゴーニュ、著名なスーパートスカンと並び、「将来的に価値の上がるワイン」としてワイン愛好家、収集家の皆様から注目され人気、知名度共に上昇しています。私達も極限られた機会にしかテイスティングしない、非常に稀少なワインです。

「マッセート」が3万3000本生産に対し、「ロドヴィコ」は僅か5000~1万本
この事はロドヴィコアンティノリ伯爵が過去に手掛けたスーパートスカン「マッセート」の初リリース(1987年)からの変遷を見ても良く分かります。当時のマッセートに関しては80ユーロ程の価格でしたが、今や1000ユーロ近くまでに価格が上昇しています。正直「金」よりも上がっていますね(笑)

また本数が限られているワインだという事も影響しています。著名な画家が100枚しか描かなかったリトグラフのようなもので、そういったものには非常に価値があると思います。「マッセート」が3万3000本生産に対し、「ロドヴィコ」は僅か5000~1万本となっています。

ワインサーブ生産量に対してほぼ10倍のリクエスト!既に市場では垂涎の的
ロドヴィコアンティノリ伯爵はこれまでに「オルネッライア」、「マッセート」を産み出し、押しも押されぬ超一流のワインに築き上げてきた経験があります。既に彼は1980年代に世界的なアイコンワインを造り上げてきているのです。「誰がこのワインを造っているのか?」という事を考えると、このワイン「ロドヴィゴ」は現代の新たなアイコンワインとして素晴らしい魅力を備えています。既にヨーロッパ市場では垂涎の的になっていますし、生産量に対してほぼ10倍のリクエストが来ている。既にそんな状況となっています。「ロドヴィゴ」は日常的に開けるという機会はなかなか無いでしょうね。そんな時は私達の「インソリオ」や「イルピーノ」で楽しんで欲しいと思います。勿論、どのワインも開けて飲んで頂くことが私達にとって一番嬉しい事ではあるのですが。

「天才的な創造力」に富むロドヴィコアンティノリ伯爵

Q.世界的なアイコンワインを次々と産み出すロドヴィコアンティノリ伯爵はどのような方ですか?

まず「天才的な創造力」に富んだ方である事が言えます。DNAの中に書き込まれているような「生まれ持った資質」と言えるでしょう。先を読む才能がある人でもあります。しかし基本的に伯爵は「自分で飲みたいワインを造ってきただけの事」と言います。「オルネッライア」「マッセート」「ロドヴィゴ」のワイン造りの根底にもしっかりと流れています。

「これまでに無かった新しいものを造りだしたい」
テヌータ ディ ビセルノのプロジェクトにおいては「これまでのスタイルを変えたい」という伯爵の思いもあり、これまでに一世を風靡したメルローやカベルネソーヴィニヨン主体では無く、カベルネフランをチョイスしました。要するに「これまでに無かった新しいものを造りだしたい」という欲求、情熱、衝動から産まれたものでした。「立ち止まらず前に進む」という伯爵のポリシーが情熱的なワインを産み出していると言えます。

ニュージランドでもワイナリーを所有していて、そこではソーヴィニョンブランを栽培しています。トスカーナの小さな造り手が、ニュージランドでワイン造りを行うのは普通では考えつかないようなアイデアだと思うのですが、伯爵の天才的な発想によるものが大きいと思います。

試飲Q.どうして「オルネッライア」、「マッセート」売却してまで新しいワイナリーを立ち上げたのですか?

「オルネッライアを超える新たなワインを造る」
オルネッライア1998年が『ワインスペクテーター』2001年TOP100で第1位を獲得しました。今と違ってイタリアワインが第1位は珍しい存在であり、フランスワインではなくイタリアワインで最高評価を得た事が話題になりました。

「オルネッライア」初ヴィンテージ1985年から僅か15年程で最高評価を得た伯爵は「最高地点に達し、後は下がっていくだけでは」という思いに駆られたのと同時に、「オルネッライアを超える新たなワインを造る」という新たな想いが産まれました。

折しもモンダヴィから「オルネッライア」に破格のオファーが舞い込む
2000年以降カリフォルニアのワインメーカー、モンダヴィからオルネッライア購入に関して信じられないような金額(当時としては宝くじに当たったかような金額)での非常に良いオファーがありこの時点でオルネッライアを売る事が一番最適ではないかという結論に至りました。オルネッライアは先代から受け継いだアンティノリ家の土地ではありましたが、元々は何も無かった場所でしたから。後にロドヴィコ伯爵が畑を造りオルネッライアとしてワインをリリース、そして破格の金額でオファーが来るとは誰も想像する事は出来なかったでしょうね。

同じ場所にはとどまらない芸術家、アーティストのような側面を持ち合わせるロドヴィコ伯爵
ロドヴィコ伯爵は決してオルネッライアを造る事に飽きた訳ではありません。最高のワイン造りを目指して、それが「世界最高」と評価された。これを何回も繰り返すというよりは、「まだ誰もやった事の無いような新しいワイン造りにチャレンジしたい」「カベルネフランというブドウにチャレンジしたい」という衝動の方が強かったと思います。そういった意味では伯爵はワイン生産者でありながら、同じ場所にはとどまらない芸術家、アーティストのような側面を持ち合わせていると言えますね。

歴史を変え、新たな現実を造り続ける「スーパートスカンの持つ力」

歴史を変え、新たな現実を造り続ける「スーパートスカンの持つ力」
現在は昔とは状況が変わっていて、サッシカイアしか無かった1960年代後半に比べるとボルゲリも非常に有名なワイン産地となりました。今や生産者も非常に増え、年々ボルゲリ全体のクオリティが上がってきています。今後のますます価値が上がっていくそんな可能性のあるワインが産まれるエリアだと思います。サッシカイアの古いヴィンテージなどは著名なフランスワイン、「ペトリュス」「シュヴァルブラン」と並びオークションで高値で取引されています。歴史を変え、新たな現実を造り続けるスーパートスカンの持つ「力」みたいなものがこのエリアにはあると思います。

カベルネフラン種ビッボーナの畑はボルゲリDOCとはどのくらい離れていますか?

ボルゲリから約1キロ半くらいですね。土壌特性はボルゲリと同じです。標高や土壌構成のちょっとした差はありますがほぼ共通した特徴があります。実のところ、私達はボルゲリDOCには興味がありません。ボルゲリとは違う質のワインを追求しているからです。

無名のワイン産地「ビッボーナ」を伯爵が選んだ訳
ビッボーナには小さな生産者、ブドウ農家はありますが、本格的にワインを造っているのはテヌータ ディ ビセルノだけとなります。ロドヴィコ伯爵は既に有名になったボルゲリではなく無名のビッボーナを選んだ理由として土地のポテンシャルの高さだけではなくまだ誰もいない場所、つまり「白いキャンバスに絵を描きたい」芸術家のような欲求もあったと思います。実際購入したビッボーナには元々ブドウ畑は無く、森や植物に囲まれた場所で一から畑を起こしました。先ほど申した通り、まさに「テッラビアンカ」(手つかずの土地)と言えます。

ロドヴィコ伯爵はナンバーワンのパイオニア精神を持っています。誰もいない場所に一人でやってきて、素晴らしいワインを造る。他の生産者はあとからやってきました。つい最近ではテヌータ ディ ビセルノの畑の直下にガヤ(カマルカンダ)が5ヘクタールの畑(賃貸畑)でワインを造り始めました。

ワイン造りの中にこそ、伯爵のプレゼンス(存在意義)がある
ロドヴィコアンティノリ伯爵はとてもシンプルな思考の持ち主で精神の豊かさがあります。600年以上の前から続いているアンティノリ一族の家系ではあります。自分の情熱を注ぎこんでワイン造りをしています。働いていますし、仕事もしています。それはブドウ畑から販売に至るまで全ての工程においてです。ワイン造りの中にこそ、伯爵のプレゼンス(存在意義)があるのです。

「情熱」と「仕事」が伯爵の中で双方が一致している。伯爵はお金があるから良いワインが造れると考える方もいらっしゃるかも知れません、しかし仮にお金があっとしても「情熱」と「仕事」のどちらかでも欠けていたら(伯爵は)幸せではなかっただろうし、両方があってこそ「フェリチタ」(幸せ)を感じる事が出来ていると思います。

伯爵は120%ワインに情熱を注ぎこんでいます。例えば、高級スキーリゾートに行くと、必ず伯爵の友人や仲間が居て一緒にテヌータディビセルノのワインを飲んでいる。ドイツの自動車メーカー「アウディ」の社長もロドヴィコ伯爵の友人です。伯爵にとって「遊び」も「仕事」もイコールで、全てが一体となった究極のライフスタイルなのです。

Q.伯爵自身の名前が付けられたトップキュヴェ「ロドヴィゴ」について、エピソードがあれば教えて下さい。

このワインがリリースされる前の事です。伯爵がラベルデザイン、ワインの名前をどうしようかと考えていた所、友人でアルピナBMWの社長であるボーフェンジーペン氏がワインを試飲して「素晴らしいワインだね。このワインがリリースされたら生産量の半分は僕が買うよ。これは何という名前のワイン?」聞かれ、伯爵は「まだ名前は決まっていないが、畑の特徴の「ヴィーニャノルド」(北向きの畑)にしようと思っているのだけど」と。

「そのワインを買うから小切手に好きな金額を書いて構わないよ」
ボーフェンジーペン氏は「そんな名前はダメダメ。僕が名前を付けるから」と。彼は金額の書かれていない白紙の小切手を渡し、「そのワインを買うから小切手に好きな金額を書いて構わないよ」と。彼から渡された白紙の小切手の枠外に小さくLodovicoと書かれていて、後日「これは何?」と伯爵が尋ねたら、「それがワインの名前だよ」と。ボーフェンジーペン氏が金額の入っていない白紙の小切手を渡した事はまさに「伯爵のワインを信じている」証しのようなもの。伯爵は心良く「ロドヴィコ」とネーミングし、ファーストヴィンテージ2007年をリリースしました。ワインテイスティングに関してもボーフェンジーペン氏は非常に先見の明があったと思います。

(ボーフェンジーペン氏はアルピナBMWとは別にワインの輸入販売会社も行っていて、テヌータディビセルノのワインは勿論、オルネッライア、マッセートも販売しています)

テヌータ ディ ビセルノとミシュラン1つ星「ハインツベック」の素晴らしい料理とのマリアージュ
ディナーハインツベック

インタビューの前日5月22日は丸の内にあるミシュラン東京2018で1つ星のリストランテ「ハインツベック」さんでニコロ氏とテヌータ ディ ビセルノのワインでディナーを楽しみました。力強くも滑らかでバランスのとれたビセルノのワインと「ハインツベック」さんの非常に美しい盛り付けの芸術的な6皿のメニュー。ビセルノのワインが持つ力強くも完成された美しいハーモニーとハインツベックさんの素晴らしい料理とのマリアージュを体感することが出来ました。

秘めた味わいの深さを見事に引き出したダブルデカンタ―ジュ
ワインサービスに当たってはお店の方がディナーの1時間前にダブルデカンタージュを行う事で秘めた味わいの深さを見事に引き出していました。ディナーが進んでいくにつれ、香りと味わいが時間共に開いていくのが実感出来ました。メインディッシュの「和牛フィレ肉 ナスのピューレ マスタードとグラナパダーノ セージのソース」はロドヴィコ、ビセルノと抜群の相性である事は勿論、イルピーノやインソリオにも好相性でした。

シラー主体でカベルネソーヴィニヨン、プティヴェルド、メルローのブレンドから成ります。インソリオは28ヘクタールの広さで他の3つのワインとは少し離れた畑で栽培したブドウを使っています。砂質中心の土壌で小石が多くミネラルを多く含む特徴があります。砂質の畑はシラー種との相性が良いです。2016年は暑い8月から9月にかけて少しずつ涼しくなりました。若飲みのワインですが、5~10年の熟成も可能です。生産量は約40万本です。フレッシュさと厚みがあり、トスカーナの赤ワインらしい飲み応えもあります。
インソリオ デル チンギアーレ2015

試飲
コメント

(試飲は2016ヴィンテージ)ベリー、カシスのイキイキとした香りにスパイス、ブラックオリーブの香りが入り混じるシラー種主体の特徴が感じられるワイン。味わいの強さがありながらも飲み心地が良く、バランスの取れた味わい。前菜、濃厚なソースの魚料理、赤身肉のグリルと好相性です。

カベルネフラン、メルロー、カベルネソーヴィニヨン、プティヴェルドのブレンドです。2014年はカベルネフランのブレンド比率が少し多めで50%となっています。また、2014年はトップキュヴェの「ロドヴィコ」を造らす、セカンドキュヴェのビセルノも少量しか生産していない事もあり、普段なら上級ワインに使われるべきカベルネフランがイルピーノ2014年には使われています。ハイクオリティに関わらず非常に競争力のある魅力的な価格となっています。生産量は8万本でフレンチオークのバリック(新樽と2回目の樽)で12ヶ月間熟成させています。タンニンはしっかりとありますが、エレガントでバランスが取れている。熟成により更に向上していくワインです。
イル ピノ ディ ビセルノ2014

試飲
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圧倒的な力強さと美しさが共存しています。ブラックチェリーやプルーンの豊かな果実感にビターチョコレートやコーヒー、クルミ、スパイスの複雑なニュアンスが美しく纏まっています。力強いボディはタンニンと溶けあい非常に風味が豊かで、セカンドでありながら、素晴らしい構成で堂々たる存在感を示してくれます。「ビセルノ」の素晴らしいポテンシャルを受け継いだ内容充実のキュヴェです。是非一度お試し下さい。

カベルネフラン主体で、メルロー、カベルネソーヴィニヨン、プティヴェルドのブレンドとなっています。2万5000~3万5000本の生産量です。2013年は暑い8月から9月になり気温が下がり成熟期を迎えました。収穫は10月半ばで最高の状態で収穫を迎えました。タンニンはしっかりとあるのですが、非常に滑らかで素晴らしいバランスがあります。60%を16ヶ月新樽バリック、残りを大樽(古樽)で12ヶ月間熟成、12ヶ月間の瓶内熟成を経てリリースされます。
ビセルノ2013

試飲
コメント

赤や黒の果実の豊かさにスパイスやコーヒー、ビターチョコレートの複雑性がありますが、粗さは無く層状に広がる上品で魅惑的な香りがあり、グラスに吸い込まれてしまいそうな奥深さがあります。圧倒的な分厚い果実のインパクトがありながら、エレガントなタッチで広がる目の詰まった流麗な口当たり、洗練されたタンニンと酸が高次元で素晴らしいバランスを成しています。

95%カベルネフラン、5%プティヴェルドのブレンドです。畑はベッラーリアという地区で、ボルゲリの中でも最も優良なエリアとされています。5000~1万本の少量生産でこれまで僅か5ヴィンテージのみ(2007、2008、2011、2012、2013)しかリリースされていない希少なワインで、年々需要も高まってきています。フレンチオークの新樽バリックで18カ月熟成、ボトリング後12~18カ月間の瓶内熟成を経てリリースします。2014年は造っていません。18カ月間フレンチオークの新樽バリックで熟成させます。非常に骨格の確りとした長期熟成向きのワインです。20~25年は熟成させることが出来るワインです。
ロドヴィコ2013

試飲
コメント

先も見通せない程濃密な色調。完熟したプルーンや黒スグリにローズマリーやスパイス、レザー、甘草のニュアンスが複雑に溶け合っています。力強くも過度に突出した印象が無く、全てが滑らかに溶け合う芳醇な香り。偉大なスケール感と力強い骨格、厚みのある果実感、タンニンの力強さ、穏やかな酸味、全ての要素が美しく調和しています。芯に感じる圧倒的なパワーがありながら、絹のようにシルキーな舌触りは驚愕の一言。全く隙の無い緻密さと余韻の長さはまさに圧巻の一言。

インタビューを終えて

「オルネッライア」、「マッセート」で世界最高のワインを産み出した稀代の天才「ロドヴィコアンティノリ伯爵」が新たに始めた「テヌータ ディ ビセルノ」は想像を遥かに超える偉大で深い味わいに驚かされました。トップキュヴェ「ロドヴィコ」の生産量はあの「マッセート」の半分以下。既にヨーロッパを代表するアイコンワインとして生産量の10倍のオーダーが殺到しているようです。

お話の中で印象的だったのが、「まだ誰もやった事の無いような新しいワイン造りにチャレンジしたい」「カベルネフランというブドウにチャレンジしたい」という衝動の方が強かったと思います。そういった意味では伯爵はワイン生産者でありながら、同じ場所にはとどまらない芸術家、アーティストのような側面を持ち合わせていると言えますね」と。

オルネッライア、マッセートという世界最高評価の絶対的な存在がありながら、そこに安住することなくきっぱりと新しいチャレンジを行う伯爵の凄さ。天才的な先を読む力と類まれなセンスは75歳になった今も全く衰え知らずのようです。畑から醸造まで、ひいてはニコロ氏とモスクワへセールスに飛ぶ等、世界中にテヌータ ディ ビセルノを精力的に発信をしています。

既に入手が難しくなりつつある「ロドヴィコ」。シンデレラワイン「オルネッライア」、「マッセート」が歩んできた「成功への系譜」を確実に踏襲していく事でしょう。ロドヴィコ伯爵の新しい伝説を目の当たりに出来る今だからこそ、購入しておきたい世界屈指のお宝ワインです。
テヌータ ディ ビセルノ社 ニコラ フィッツオーラ氏とトスカニースタッフ

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