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Interview

突撃インタビュー

2019/02/05

パイティン社 ルカ パスクエロ エリア氏

バルバレスコ誕生の黎明期にいち早くボトリングを行った歴史的カンティーナ!古典的魅力あふれる力強さと美しさ「パイティン」

パイティン社 ルカ パスクエロ エリア氏と
バルバレスコはかつてバローロとして売られていた時代がありましたが19世紀末にバルバレスコとして区別されるようになりました。このバルバレスコの黎明期にいち早くボトリングを行った歴史的カンティーナの一つが「パイティン」です。ネイヴェ東部「セッラボエラ」地区で8代続く歴史を持ち、しなやかで緻密なボディに隠された立体感のある凛々しいタンニンが特徴の古典的な魅力に溢れたバレバレスコを今も造り続けています。現オーナーのご子息のルカ パスクエロ エリア氏に、バルバレスコに新たな歴史を切り開いたパイティン社についてお話を聞きました。

ネイヴェ東部「セッラボエラ」で8代続く歴史的カンティーナ

1796年ネイヴェ東部「セッラボエラ」の畑を購入
地図まずパイティンの歴史からお話ししましょう。パイティンを設立したベネデット エリアが一番最初に畑を購入したのは1796年の事でした。

ネイヴェの東側にある「セッラボエラ」地区のソリ パイティンの畑です。私達はとても小さな畑からのスタートとなりましたが、カンティーナを少しずつ大きくするとともに、畑も広げていきました。
家族

セッラボエラで8代続くカンティーナ
カンティーナは今も変わらずセッラボエラの中にあります。私で8代目になります。バルバレスコエリアでは長い方だと思いますが、バローロエリアの造り手「モンテツェモロ」がランゲ地方で恐らく一番古いカンティーナではないでしょうか。私の先代である父、祖父(91歳)はともに畑仕事もしますし、カンティーナの中の仕事もします。2人とも非常に元気です。

現在は約18ヘクタールの畑を所有しています。セッラボエラの畑はカンティーナから南側斜面に広がっています。ネッビオーロ(約12ヘクタール。内2ヘクタールがアルバ地区)、バルベーラ(3ヘクタール)、アルネイス(1.8ヘクタール)、ドルチェット(1ヘクタール弱)を栽培しています。昨年に違うエリアのバルバレスコの畑「バザリン」を購入しました。違うエリアと言っても、バルバレスコエリア自体が幅4キロ程しかない小さなエリアですから、それほど遠くはありませんね。

1893年、バルバレスコの黎明期にいち早くボトリングを行う

樽1893年、バルバレスコの黎明期にいち早くボトリングを行う
19世紀末、パイティンにとって大きな転機が訪れます。それはバルバレスコを瓶詰して販売を始めた事です。

それ以前というのはバローロとして売られていましたが1893年に瓶詰めして、新たにバルバレスコとして販売を開始しました。この年を境に、バルバレスコエリアで重要とされる生産者達も同じく自分達でボトリングし販売を始めた時期でもあり、まさにバルバレスコの黎明期と言えます。

1898年にはロンドンやブエノスアイレス、ニューヨークへと樽の状態で海外輸出も開始しました。長い歴史の中で現在カンティーナに残る最も古いバルバレスコは1909年です。

バルバレスコ初の生産者組合を創設「バルバレスコの父」ドミツィオ カヴァッツァ氏との出逢い
バルバレスコにとってこの歴史的な重要な時期に、私の曾祖父ジュゼッペ エリアが「バルバレスコの父」と呼ばれるドミツィオ カヴァッツァ氏と出逢う訳です。

~ドミツィオ カヴァッツァ氏(Domizio Cavazza)~
ドミツィオ カヴァッツァ氏「アルバ醸造農学校のドミツィオ カヴァッツァ博士が1894年に9つのブドウ農家を結集しバルバレスコ初の生産者組合を創設。「バルバレスコの父」と呼ばれる。同組合は1930年に一度解散するものの、1958年に零細なブドウ農家を存続させるため19のブドウ農家が新たに結集し「プロドゥットーリ デル バルバレスコ」がスタート。ドミツィオ カヴァッツァ氏のポリシーを継承し高品質なバルバレスコを産み出す事に注力。生産者協同組合でありながら、バルバレスコにおける偉大な作り手としての世界に知らしめている。『ワインアドヴォケイト』誌で「世界のどの協同組合よりも高水準のワイン作りを継承している」と言わしめ、今も素晴らしいワインを産み出しています」

戦後、祖父セコンド パスクエーロ エリアが再びワイン造りを始める
曾祖父ジュゼッペ エリアはドミツィオ カヴァッツァ氏と出逢い、1893年に自らバルバレスコのボトリングを行いワイン造りを続けていくのですが、1938年ジュゼッペ エリアが亡くなった事で、一時期ワイナリーとしての活動が止まってしまうのですが、1948年祖父セコンド パスクエーロ エリアが再びワイン造りを始める事になります。その頃は第二次世界大戦の影響を受け、セッラボエラの畑もかなりダメージを受けましたが、畑の回復と周辺エリアの畑も徐々に買い足していきました。またネッビオーロだけではなく、バルベーラも植えていきました。

「ネッビオーロの果皮に含まれる個性がテロワールを全て表しています」

ブドウ「いかに健康で質の良いブドウを育てるか」
私達がワイン造りで一番大切だと考えているのは「畑での作業」で、「いかに健康で質の良いブドウを育てるか」という事こそが最も大切です。その後に醸造であったり、熟成の工程だと考えています。

「ネッビオーロの果皮に含まれる個性がテロワールを全て表しています」
ネッビオーロというブドウは「果皮の品質」が非常に重要です。果皮に含まれる個性がテロワールを全て表しています。果皮をマセレーションは中~長期間行います。年によっても違いがありますが、バルベーラであれば約3週間、ネッビオーロであれば4~6週間かけてマセレーションを行います。特にネッビオーロに関しては手作業でマセレーションを行います。長い期間をかけながら、ネッビオーロの果皮が持つ個性をゆっくりと引き出していきます。

ですので、畑に関しては化学的なアプローチ、殺虫剤等は使用しませんし、20年前から化学的な肥料も使っていません。オーガニック栽培ですが、周辺の生態系や環境を尊重した栽培を行っています。

「一般的な醸造学よりも、自分の生まれ育った場所で幼い頃から仕事を学んだ方が重要」

パイティン

Q.家族の中で仕事の役割分担はありますか?
誰がどのパートをやるとは決まってはいませんね。祖父、父、私と3人同じく仕事を行い、その中で仕事を分けています。祖父は早くに父を亡くしたので、早い段階で自身で全てが出来るように栽培から醸造までの知識を身に付けていました。その教えが私にも受け継がれています。

Q.ワイン造りは何処で学びましたか?
ワイン造りに関して外部で修業した事はありません。私が小さい頃は畑仕事を手伝い、13歳位からカンティーナの仕事を手伝いました。カンティーナの仕事を継ぐを決めた時、また畑仕事に取り組み再度学びました。技能を会得し(Saper Fare)、それを伝える事(Saper Far Fare)を父や祖父から学んでいます。

インタビュー1父がブドウ栽培の先生であり、エノロゴであり化学者のような存在
父から「ワイン造りを勉強しなさい」と言われたことも無いですね。「自分でワイン造りがしたい」という情熱が無ければワインを造る事は難しいと考えていたからだと思います。父は「(仕事を)継ぎたいのだったら入ってきても良いから」というスタンスでしたね。父がブドウ栽培の先生であり、エノロゴであり化学者のような存在ですね。

また、祖父が1948年にワイナリーを再興した時、曾祖父が残した書物がありました。そこには、1909~1936年までの全ての年の収穫の様子、日々の気温の記録、醸造方法に至るまで記されていました。とても重要な資料だと思います。

「自分の生まれ育った場所で幼い頃から仕事を学んだ方が重要」
私達のような小さなカンティーナでは、外部で醸造学を勉強する必要はあまりないと思っています。ランゲ地方の畑は小高い丘が多く存在し、特徴もそれぞれ異なります。いわゆる一般的な醸造学というものは通用しないと思っています。むしろ、自分の生まれ育った場所で幼い頃から仕事を学んだ方が重要だと考えています。この事はずっと父からも言われて来ましたね。

力強くもミネラルとエレガンスを感じるセッラボエラの「バルバレスコ」

セッラボエラ畑

非常に長命なセッラボエラ地区のバルバレスコ
私達が造るバルバレスコは「セッラボエラ」と「ソリパイティン」と2種類ありますがそれぞれキャラクターが異なります。飲み比べるとその違いが良く分かると思います。その後の熟成は主にスロヴェニア産の伝統的な大樽(25~50ヘクトリットル)で熟成させます。

セッラボエラのバルバレスコは非常に長命です。それには畑の3つの特徴が挙げられます。まず畑が「南西向き」である事でワインは大きなポテンシャルを持ちます。次に「砂質を含む土壌」である事でタンニンがとても滑らかになります。そして「標高が300メートルを超えている」事でフレッシュな味わいでありながらミネラルと酸も感じられるバランスのしっかりとしたスタイルになります。

力強くもミネラルとエレガンスを感じるセッラボエラのバルバレスコ
バルバレスコとしては非常に力強さが感じられますが、セッラボエラのバルバレスコは常にミネラルとエレガンスを感じる個性を有していて、ブルーノジャコーザが持つ畑「サントステファノ」と同じように、セッラボエラもクオリティの高い畑です。セッラボエラ内のクリュ「ソリパイティン」と「セッラボエラ」の2つのバルバレスコは同じ醸造法をとっています。味わいの違いはそれぞれのテロワールとなりますので是非飲み比べてみてください。

現在注目を集めるブルーノジャコーザのエノロゴ「フランチェスコ ヴェルジオ氏」
現在非常に注目されているブルーノジャコーザのエノロゴ、フランチェスコ ヴェルジオ氏は私達のカンティーナでも一時仕事をしていましたよ。その後ルイジ オッデーロに行きましたね。「ルイジ オッデーロは多くのクリュを持っている大きいカンティーナだから、それだけ多種のワイン造りに携わる事が出来る。経験になるから行った方が良いよ」と私が彼に進言したんです。その後の彼の活躍は凄いですね。

インタビュー2フラチェスコ氏がブラインド試飲で「このワインは絶対私が造ったバローロだ」
ソリパイティンは1953年に植樹された高樹齢のネッビオーロから造られます。昨年の夏、レストラン「ラ チャウ デル トルナヴェント」でソムリエが中心にとなってランゲ地方のワインをそれぞれ持ち寄りでブラインドテイスティングをする定期的な会がありました。

ブルーノ ジャコーザのエノロゴ、フランチェスコ ヴェルジオ氏が「このワインは絶対私が造ったバローロだ」と言って、周りのソムリエもとても興味をもってテイスティング、試飲用のワインが無くなってしまい、そのワインの銘柄を確認してみたら私達の「ソリパイティン」2012年だったんです。私としてはとても光栄な事ですね。「ソリパイティン」はバルバレスコとしては強さもありますが、セッラボエラ地区の特徴であるタンニンの滑らかさがあります。バローロエリアのカステリオーネ ファレットにあるクリュ「ブリッコ フィアスコ」の滑らかなタンニン質と共通する個性があります。

それでは試飲をしましょう。

ボトル

熟成出来るポテンシャルを備えた豊かな果実感、酸、ミネラルの調和!パイティンが唯一造る白

私達が造るアルネイスはシュールリーをしっかりと行っているので熟成出来るポテンシャルがあります。1999ヴィンテージから比較試飲をしましたが、ワインの経年変化としてある所で落ちるのですがまた盛り返して良くなっていく傾向がある事が分かりました。ヴィンテージにもよりますが、私たちのアルネイスはシュールリーをしっかりとしているので4年位かけて向上します。その後3~4年落ちる時期がありますが、それを過ぎるとまた状態が向上します。直ぐにリリースされるような一般的なアルネイスは2~3年の内に飲んだ方が良いでしょうね。
ランゲ アルネイス ヴィーニャ エリザ2016

試飲
コメント

グレープフルーツの涼し気でクリーンなアロマに完熟した白桃のニュアンスが重なります。ジューシーで豊かな質感で中盤から広がる豊かな果実感と酸、ミネラルの調和が感じられ、イキイキとしたフィニッシュがあります。少しずつ温度を上げていくと香り、味わいともにより豊かな表現を魅せていきます。白身魚のムニエルやホタテ、エビのソテーと合わせたいワインです。

バルバレスコと同じテロワールで産まれるシルキーでエレガントな上質バルベーラ!

バルバレスコと同じセッラボエラ地区でなだらかな東側の斜面の畑で栽培されているバルベーラです。ランゲでは大まかに分けて2種類の斜面の畑があると言えます。一つは急斜面。もう一つはなだらかな斜面です。急斜面は痩せた土壌で水はけが良すぎる特徴がありネッビオーロの栽培が適しています。なだらかな斜面は割と肥えた土壌で保水性にも優れ、バルベーラの栽培が適していますね。果実の凝縮感が良く出ています。
バルベーラ ダルバ セッラ2015

試飲
コメント

赤い果実の表現力豊かなアロマを持つシルキーなバルベーラです。スミレの花、果実の豊かな印象がありながら、酸とミネラルが屋台骨にしっかりと走っているので、緻密でもたつきがなく、とてもデリケートで引き締まったボディがあります。タンニンは滑らかでセッラボエラ地区の特徴が感じられます。非常に品質の高いエレガントなバルベーラです。

1500年代から続く歴史区画「カ ヴェヤ」!しっかりしたボディと緻密な果実感が楽しめる味わい豊かなネッビオーロ

元々母方の所有だったアルバ地区ジュリアーノ村南部の畑に栽培されているネッビオーロで造られています。1995年に私達の所有となり、その年に植え替えを行いました。バローロのカステリオーネファレットやモンテフォルテに非常に良く似ている土壌で砂質の圧縮された大きな石がゴロゴロしている土壌に小さな石灰岩が沢山混じっています。
ネッビオーロ ダルバ カ ヴェヤ2014

試飲
コメント

「カ ヴェヤ」は1500年代から続く歴史的区画でこの土地の方言で「古い家」を意味します。 野苺やミント、バラの花びらの際立った伸びるような力強いアロマ。飲むと骨格がしっかりしたボディと緻密な果実感が感じられます。タンニン質は豊かで細やか。現時点でも楽しめるバランスがあります。

美しい芯があり素晴らしい純度の高さ!力強くもミネラルとエレガンスに富むい古典的バルバレスコ

セッラボエラのバルバレスコは非常に長命です。それには畑の3つの特徴が挙げられます。まず畑が「南西向き」である事でワインは大きなポテンシャルを持ちます。次に「砂質を含む土壌」である事でタンニンがとても滑らかになります。そして「標高が300メートルを超えている」事でフレッシュな味わいでありながらミネラルと酸も感じられるバランスのしっかりとしたスタイルになります。バルバレスコとしては非常に力強さが感じられますが、セッラボエラのバルバレスコは常にミネラルとエレガンスを感じる個性を有していて、ブルーノジャコーザが持つ畑「サントステファノ」と同じように、セッラボエラもクオリティの高い畑です。
バルバレスコ セッラボエッラ2013

試飲
コメント

しなやかで優雅な印象のワイン。レッドチェリー、ミント、白コショウに石灰のニュアンスが重なる充実したアロマが感じられます。クリーミーなフィニッシュにバラの花びらやミント、シナモンの風味が溶け合います。抜栓翌日に更に深みを増し、柔らかな旨みが舌に残ります。ブルゴーニュ型のグラスで数日かけてゆっくりと楽しみたい、古典的スタイルが実に魅力的な味わい深いバルバレスコです。

パイティン

パイティンを代表するクリュバルバレスコ!バローロ「ブリッコ フィアスク」とも共通する力強くも滑らかなタンニン「ソリ パイティン」

ソリパイティンは1953年に植樹された高樹齢のネッビオーロから造られます。標高が高く、日当たりの良い場所で、この地方の方言で「ソリ」と呼ばれます。バルバレスコとしては強さもありますが、セッラボエラ地区の特徴であるタンニンの滑らかさがあります。バローロエリアのカステリオーネ ファレットにあるクリュ「ブリッコ フィアスク」の滑らかなタンニン質と共通する個性があります。
バルバレスコ ソリ パイティン2013

試飲
コメント

赤い果実の華やかさにレザーやハーブ、甘やかなスパイスのニュアンスが重なります。骨格のしっかりとした堂々たるボディ、豊かなタンニンがありますが、とても滑らか。力強さはありますが、中盤から落ち着いた果実の豊かな風味、滑らかさが際立つ古典的な魅力にあふれたバルバレスコです。

インタビューを終えて

1796年設立でバルバレスコの黎明期から自社でボトリングを始めた歴史的カンティーナ「パイティン」。以来ずっとセッラボエラ地区にカンティーナを構え、変わらず素晴らしいワインを造り続けています。久しぶりに試飲する機会となりましたが、しなやかで緻密なボディに隠された、立体感のある凛々しいタンニンを持つ古典的な魅力にあふれた素晴らしいバルバレスコです。また優雅なスタイルのバルベーラダルバの完成度の高さも光りました。

以前からレストランのソムリエ等、プロフェッショナルの方に絶大な信頼を得てきた「パイティン」。8代目のルカ パスクエロ エリア氏は今回が初来日。インタビューでは自らが調べ上げたバルバレスコエリア全体の温度マップを見せて下さり、「この地図に標高も加えて更にエリアを理解していきたい」とバルバレスコのテロワールへの理解を更に深め、知らしめていこうとする情熱が感じられました。

そしてバローロエリアの生産者とも交友関係も広く、バローロの「オッデーロ」の栽培醸造担当のピエトロ氏とは同じ大学で勉強していた仲だとか。現在も進化を続ける歴史的カンティーナ「パイティン」。是非一度お試し頂きたいカンティーナです。
パイティン社 ルカ パスクエロ エリア氏とトスカニースタッフ

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