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Interview

突撃インタビュー

2018/10/31

ナルス マルグライド社 ゴットフリード ポリンガー氏インタビュー

多様性に富む畑からイタリア最高峰のエレガンスワインを造り出すアルト アディジェの協同組合「ナルス マルグライド」突撃インタビュー

ナルスマルグライド マネージャー
ナルス マルグライドは、イタリア最高の白ワイン産地として知られるアルト アディジェの生産者協同組合です。優れた協同組合がしのぎを削るアルト アディジェで、ナルス マルグライドは「シルミアン ピノ ビアンコ」が『ガンベロロッソ』年間最優秀白ワインを受賞するなど、トップの品質を誇っています。138もの組合員が所有する150ヘクタールの畑の多様な土壌を生かしたワイン造りについて、統括マネージャーのゴットフリード ポリンガー氏にお話をお聞きしました。

創立1932年。アルプスとドロミテの2つの山地の恩恵を受けるテロワール

ナルスマルグライドはナルス(Nals)とマルグライド(Margreid)の2つの村の名前が付いた生産者協同組合です。畑の面積は約170ヘクタールで138の組合員がいます。2つの村に広がっているので北から南までは100kmもあり、畑の標高も200~900メートルまであります。そのため、気候や土壌の特徴が様々なので、私達は14の地域に分けています。

ナルスマルグライドのエリア

私達のワインは「アルプスのワイン」です。すぐ北にはアルプス山脈がそびえ、そのおかげでフレッシュでミネラル豊かな、長熟力のあるワインが造られます。また、アルプス山脈と、もうひとつドロミテ山脈もあり、畑の土壌や気候に独特の個性を生んでいます。

南北に長く畑が広がっているのですが、北と南では気候は大きく異なります。北部は大陸性気候で、昼夜の寒暖差が大きいのが特徴です。一方南部は地中海性気候で温暖な気候です。それぞれの気候の特性にあわせて、品種を選んで植えています。

生産本数は全部で95万本です。それをセレクションラインとクラシックラインの2つに分けて造っています。生産量の70%が白ワインです。

大切な5つのポリシーを組合員たちと共有し、「ナルス マルグライド」のスタイルを作り上げる

ナルスマルグライドはワイン造りで5つの大切なポリシーがあります。Elegance(エレガンス)、Creativity(独創性)、Uniqueness(独自性)、Exclusivity(唯一性)、Diligence(義務・責任)です。

組合員たちは一人ひとりが個々の存在ですが、私達の哲学を彼らと共有するために、毎週のようにミーティングを行い、指導します。栽培専門のアグロノモが各栽培農家を訪問し、管理しています。クローンの選定、畑仕事のスケジュール、剪定方法、そして収穫と、年間を通して細かくチェックしていきます。

どの畑に何を植えるのかについても畑の位置や向き、そして土壌や気候条件を調べて、最も適した品種を選びます。ひとりの組合員が複数の品種を植えている場合もありますが、単一品種が多いですね。ソーヴィニョンブランだったら低いところ、ピノビアンコは標高の高いところに植えています。

畑はほぼ自然な造りをしています。オーガニックは当たり前ですが、認証は取っていません。ですが、ビオディナミの考えに沿った畑づくりをしています。昆虫や、植物、そして山羊などの動物と共存する環境を築いています。

アグロノモが畑を毎日細かくチェックし、熟成具合を見極め、2日前にSMSで組合員に収穫を指示

畑の管理を徹底することで品質を維持できます。特に、収穫時期を見極めることが重要で、熟成具合に応じてブドウの粒の様子を日々チェックします。例えばシャルドネだと8月以降は毎日ずっと粒を味見します。味の日々の変化の確認を続け、収穫のタイミングを見極めるのです。そして、ベストなタイミングを決めたら2日前に組合員たちにSMSで収穫日を指示しています。

ナルスマルグライドの畑

ワインの品質は80%が畑、20%がカンティーナで造られる

ワインの品質の良し悪しは、80%が畑で、残り20%がカンティーナで造られると考えています。だから、カンティーナの中ではできるだけ機械的なものを取り入れず、醸造テクニックに走らないようにしています。

6年前に新しいカンティーナを建設しました。その際、建物に使う素材はワインを醸造する容器の素材と同じものだけを使うようにしたのです。つまり、「木」、「セメント」、「ステンレス」の3つです。例えばバリックの並ぶ熟成庫は全て木材で造られています。ワイン醸造はグラヴィティーフローによる流れで行われるように、傾斜と高低差を利用しています。ブドウや果汁をポンプで吸い上げ、タンクへ送ると言う様な負担を与える作業をしなくてもいいような構造です。
ナルスマルグライド カンティーナ

ガンベロロッソ年間最優秀ワインに輝くピノビアンコ「シルミアン」。冷涼な気候と氷堆積土壌でフレッシュでミネラリーな味わいに

シルミアン トレビッキエリナルスマルグライドのフラッグシップ的存在が「シルミアン ピノビアンコ」です。『ガンベロロッソ』で12年連続で最高評価のトレビッキエリを獲得しています。2012ヴィンテージが年間最優秀白ワインにも選ばれました。

シルミアンは畑の名前です。ここはナルスマルグライドしか所有していない、モノポールになります。アルプスにより近い北部の、標高が500~900メートルの斜面に広がる畑です。冷涼な気候なので収穫は通常よりも2ヶ月ほど遅い10月中旬です。土壌は200万年前の氷河が削り堆積したモレーンで、石灰質や雲母などが含まれています。表土は50cmほどしかないので、ブドウの根は地中の約6m下にまで石灰岩の間を縫うように伸びています。

アルプスに近く、寒暖差が激しく、豊かな香りと美しい酸が特徴です。フレッシュでミネラルが豊富でスパイシーなニュアンスもあります。熟成は半分を大樽で行います。

ナルスマルグライド シルミアンの畑
シルミアンの畑

マルグライドエリアのシャルドネで造る豊かな味わい

これはマルグライドエリアの畑のシャルドネで造っています。南のエリアなので比較的暖かく、豊かな果実味とエレガントな酸が特徴です。醸造はすべてステンレスです。2015年は少し暑い年でしたのでその特徴が出た味わいになっています。
シャルドネ2015

試飲
コメント

甘いフルーツのニュアンスが広がる心地よい香り。果実味の豊かな味わいの中に上品な酸がすっと伸びていく。バランスがきれいで心地いい。

果実味と酸のバランスのとれた美しいピノビアンコ

ペノンのエリアのピノビアンコで造っています。標高の高い畑で美しい酸のある、エレガントな味わいとなっています。これもステンレスタンクのみで醸造しています。食前酒から魚料理にも、肉料理にも合います。
ピノ ビアンコ2015

試飲
コメント

リンゴやパイナップルなどの甘い果実の香り、味わいはしっかりとした酸がきいた辛口で、スムーズな飲み心地。

『ガンベロロッソ』年間最優秀に輝く白ワイン

ナルスマルグライドのフラッグシップ「シルミアン ピノビアンコ」です。2012ヴィンテージが『ガンベロロッソ』で年間最優秀白ワインに選ばれました。畑はナルス村にある「シルミアン」という単一畑で、ナルス マルグライドのモノポールになります。
シルミアン ピノ ビアンコ2014

試飲
コメント

ふくよかな果実と柑橘のニュアンスなどの果実の香りとミネラリーなニュアンス。香りに感じた果実味がそのまま口の中に広がり、さらに深みのあるミネラルと酸が鮮やかに交差する、飲みごたえのある美味しさ。

クリーンなミネラルが秀逸リースリング

リースリングはアルザスやドイツなどの冷涼なエリアで造られる品種です。畑のあるナルス村のピツォンはリースリングやケルナーに向く土壌で、氷堆積の岩混じりの土壌です。根が深く張り、ミネラルを吸収するため、その特徴が現れます。ステンレスタンクだけで造っています。
ピツォン リースリング2014

試飲
コメント

酸とミネラルがとてもクリーンな印象。しっかりとした果実味と複雑な要素が絡み合った飲みごたえのある美味しさ。印象に残る。

品種名の起源の土地トラミン村で造る華やかでふくよかな味わいのゲヴルツトラミネル

ゲヴルツトラミネルはアルトアディジェのトラミン村が起源の品種です。リュラの畑はトラミンの「ゼル」という地区にあり、粘土質を多く含む石灰質土壌でゲヴルツトラミネルに最適の土壌です。この華やかなアロマと力強い味わいがゲヴルツトラミネルの特徴ですが、私達はあまり強くなりすぎないように心がけています。

バラやライチ、そして丁子などのスパイシーなニュアンスがありますよね。『サクラアワード』ではてんぷらに合うベストワインにも選ばれました。
リュラ ゲヴュルツトラミナー2016

試飲
コメント

ゲヴルツトラミネルの特徴的なアロマが実に上品で華やか。説明通りに重すぎない味わいで飲み心地もスムーズ。絶妙なバランスで造られた、という印象。

上質なアロマ、凝縮感のある豊かな味わいのソーヴィニョン

北のエリアのアリジェ渓谷にある、ナルス村の中心のマンテーレの畑のソーヴィニョンブランで造ります。土壌の特徴としては30%が斑岩、70%がチョークを含む石灰質の砂利です。昼夜の寒暖差が大きいのでソーヴィニョンにとって理想的です。
ソーヴィニヨン2015

試飲
コメント

グレープフルーツ、ハーブなどの爽やかなアロマ。存在感のあるフレッシュな酸と、それに対応する果実味のバランスのとれた上品で力強さのある美味しさ。

エレガントでやわらかながらスパイスの効いたピノネロ

ピノネロは200年前にアルトアディジェに植樹された品種です。畑はマッツォンにあります。丸みのあるフルーティーな味わいが特徴で、スパイシーなニュアンスもあります。熟成は15ヶ月間バリックの旧樽を使っていますが樽のニュアンスは控えめで、前面に果実味を感じるスタイルに造っています。

赤ワインの生産量は30%です。赤の品種はピノネロ以外にラグライン、メルロー、カベルネがあります。
マッツォン ピノ ノワール2013

試飲
コメント

ベリー系の果実の心地よいアロマとこしょうやチョコレートのニュアンスも感じる華やかなアロマ。やわらかな味わいでなめらかなタンニンがきれいに溶け込んだ調和のとれたエレガントな美味しさ。

インタビューを終えて

アルトアディジェは優れた生産者協同組合がいくつもありますが、ナルスマルグライドもそのひとつ。数多くの組合員たちを束ね、自分たちのポリシーを表現したワインにするためには何をすべきかを徹底的に追及していると感じました。そしてゴッドフリードさんの理論的な考え方も伝わってきました。ゴッドフリードさんのような方々が結集して、恐ろしく丁寧なワイン造りをしているのだと思います。

畑の特徴のバラエティの豊かさにも驚きました。北から南まで100kmにもわたって畑があり、その特性に合わせた栽培を行い、ワインを造る。研究し尽くした結果のワインなので、それは間違いなく美味しいはずだと飲んで改めて実感しました。もっと多くの方にナルスマルグライドのワインを知って頂きたいと思います。
ナルスマルグライド

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