TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2019/08/08

ラヴィス 醸造責任者 エツィオ ダッラジャコマ氏

2012年オスカー デル ヴィーノ最優秀生産者に選ばれたラヴィスが『究極のトレンティーノワインを造る』という創業精神の原点に立ち返り製品ラインを刷新!

トレンティーノ州、ドロミテ渓谷のラヴィスといえばイタリア初の窒素置換式自然派醸造やぶどうの『適地適品種』栽培など時代を先取りした農業運営の取組で知られています。

2012年にはイタリアのワイナリー全38万社の頂点に立つ最優秀生産者として表彰されました。そのラヴィス社が改めて製品ラインを一新し、ラヴィス村の最高の畑だけに絞ったワイン造りへと歩み出しました。醸造責任者エツィオ ダッラジャコマ氏からお話を伺いました。

世界が変わっても変わらない信念をもってワインを造る

ラヴィスはドメーヌ800軒の集合体

ラヴィスの最大の特長は、それが800軒ものぶどう栽培農家の集合体だということです。個々の農家は平均して1ヘクタールの畑を所有しています。ここで特筆すべきことは、ラヴィスは共同組合ですがぶどうの取引価格が全員均一ではないのです。そのため、各農家は畑の個性を存分に引き出す高品質のぶどうを栽培するということにモチベーションをもって臨んでいます。

ユネスコ無形文化遺産に認定された石積芸術の段々畑

ぶどう畑の周辺に生息する昆虫たちのための「ホテル」も作りました。ラヴィス村のぶどう畑は急斜面に位置しています。どれだけ急斜面かというと、表土の流失を防ぐために段々畑にしなければならないほどです。そしてこの、段々畑の工法として、古来よりこの地に伝わる石積み工法が用いられています。この石積み技術は、石と石の間に接着素材を使わず石材だけで組むというもので、2018年11月にユネスコの無形文化遺産に登録されました。

機械が導入できる平地でのぶどう栽培に比べて、急斜面での手作業には4倍もの時間がかかります。通常200時間必要なぶどう栽培の作業工程に、この土地では800時間も時間をかけなくてはならない計算です。これは大きな負担です。でも私たちにとって、畑の作業に時間をかけることは、先祖から引き継いだ遺産を大切にすることと同じです。受け継いだ歴史への誇りと未来への希望、これがラヴィスのモチベーションです。

生物の共生・共栄がラヴィスのぶどう栽培の哲学

1970年代 世界初の『適地適品種』ぶどう栽培のための土壌研究調査(イタリア語でゾナツィオーネ、英語でゾーニングと呼ばれる地質と土壌環境の科学調査)を実施しました。小さな区画ごとの土壌環境に応じて最適のぶどう品種を定め、できあがりのワインの品質を担保するのが目的です。調査は1998年に終了し、『適地適品種』栽培によりそれぞれのぶどうがそれぞれの畑で完熟するようになった結果、ラヴィスはオスカー賞を受賞することができました。

最近の気候変動により再開した土壌調査

けれどもここ10年の気候変動もあり、我々は同調査を再び行ないました。10年前と今日では気候条件が変わり、かつては良いぶどうができた畑が、いまでは暑すぎて果実が過熟するようになり、より冷涼な位置にぶどうを植え替える必要がでてきたのです。

微生物にも昆虫にも役割があり意味があることを忘れない


『適地適品種』を割り出すための土壌研究調査は、地質だけでなく、土中の微生物フローラの状態もも調べます。良いぶどうを得るためには、ぶどう樹の根の健康管理がとても大切なのです。

そして、これは土中の環境ではないのですが、地質調査のついでにぶどう畑周辺の昆虫の生息域の確保も心がけています。※本文脇の写真は、ぶどう畑の周囲に生息する昆虫が安心して暮らせるための「虫のホテル」だそうです。


虫は農業にとって重要な意味をもっています。なんでも害虫ばかりではありません。たとえば蜂はぶどう畑でよくみかけるありふれた虫ですが、いま世界的にミツバチが減少傾向にあります。このことの意味は、わかりますよね?ミツバチがいないと作れなくなる作物がどれだけあるか。土地の生命力を維持するということには、生態系の保存も含まれています。


新しく発表された日本向け製品ライン

土壌調査の結果をふまえ、ラヴィス社はこの機に創業精神である「究極のトレンティーノワインをつくる」ことにフォーカスして製品構成を根本的に見直しました。その結果、これまでよりも狭い地域の重要な畑だけでラヴィス社のワインを生産することに決めました。製品ラインは、エントリー向けの「トラディション」、ラヴィスを広く代表する「クラシック」、そしてこれらすべての頂点に立つ「セレクション」の3つのラインになり、製品数も11アイテムに集約しました。いずれのワインも、ラヴィス村の風土気候を明確に表現したものであり、800軒の組合員の献身と努力の結晶です。

別格級の旨安シャルドネ。後戻りできないおいしさ!

標高370メートルに位置するラヴィス村の中心地からチェンブラ渓谷周辺の南西向きの畑。粘土や小石、砂が複雑に混じる石灰質土壌。温度管理をしたステンレスタンク内でアルコール発酵を行なったあと、そのまま5ー6か月間のシュールリーを行なう
トラディション シャルドネ2017

試飲
コメント

ミネラルや洋梨などの白い果実、花などの香り。果実の香味とフレッシュな酸の切れが心地よい。この土地の特徴である塩味が若々しい酸を穏やかに中和して、飲みあきない味わい。旨い!!!

ブルゴーニュと見紛うエレガンス・・大ぶりのグラスでご賞味ください

標高370メートルに位置するプレサーノ地区とソルニ地区の丘陵部で西向きの畑。砂質ローム土壌および白亜質を起源とする石灰質土壌。温度管理をしたステンレスタンク内でアルコール発酵を行なったあと、全体の10%を3年以上利用した古いバリックで半年間熟成させる。
トラディション カベルネ2017

試飲
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ヴィオラのかかった深いルビー色。ブラックベリーやプラムにヴァニラとチョコレートの香りもほのかに感じられる。熟した果実味にすべらかなテクスチャーがあり、キメ細かい酸とタンニンのバランスがすばらしい。ボルドーよりもブルゴーニュの赤ワインを想起させるエレガントな印象をもつ赤ワイン。

イタリア土着品種ラヴァーな貴方にお薦め!間口が狭くて奥行きの深い白!

標高400メートルに位置する南向きから南西向きの畑。土壌はシルト、氷河堆積、斑岩と石灰質。手積みで収穫し、温度管理をしたステンレスタンク内でアルコール発酵を行なったあと、そのまま5ー6か月間のシュールリーを行なう。
クラシック ノジオラ2016

試飲
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 トレンティーノの土着品種「ノジオラ」。透明感の高い淡いイエロー。ジャスミンや薔薇の花びらの美しい香り。ノジオラの特徴とされるヘーゼルナッツやローストしていないアーモンドのニュアンスのある味わいも。切れの良い心地よい酸味が余韻にながく残る。

ラヴィス村の畑が生んだ典型的で疲れない模範的なリースリング

標高550メートルの高地にある畑。南、南東向きの日当たりのよい区画。ローム層砂質、氷河堆積、斑岩と石灰土壌が混じる。手積み収穫されたあと、ぶどうを傷めないように優しくプレスを行なう。温度管理をしたステンレスタンク内でアルコール発酵を行なったあと、そのまま5ー6か月間のシュールリーを行なう。
クラシック リースリング2016

試飲
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青味がかるニュアンスのあるペールイエローの色調。砂糖漬け果実のような凝縮感のある甘い香りをもち、果実味と酸味が広がる。塩味とミネラルと酸味の一体感がすばらしい。アフターテイストに火打石のニュアンスがながく続く。

食卓が華やぐ芳香をもちながら、飲み飽きない均衡性。お祝いの席に◎な白!

標高350メートルで南向きの畑。粘土、シルトを多く含むローム層、石灰岩が混じり合う土壌。ぶどうを傷めないように優しくプレスを行なう。温度管理をしたステンレスタンク内でアルコール発酵を行なったあと、そのまま5ー6か月間のシュールリーを行なう。
クラシック ゲヴェルツトラミネール2018

試飲
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バラの花びら、クローヴやナツメグ等のスパイス、甘い花の香りが混じる。濃縮感のある果実味とミネラルが溶け合ってながいアフターテイストとなる。華やかさがあり飲みごたえもあるが、エキスの重い感じがなく和食に合う。

冷涼でミネラル豊かなラヴィスのテロワールが生んだエレガントな極上ピノネーロ

標高550メートルの高地に位置する畑。西~南向き。ローム層砂質、氷河堆積、斑岩と石灰土壌。手積み収穫をしたあと、ステンレスタンクで発酵。フランス産の木樽で5ー6か月間熟成させる
クラシック ピノ ネロ2016

試飲
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微かに干したキノコの香りや土の香りがある。甘く熟したさくらんぼの香り。酸味は優しいが果実のフレッシュ感があり、シルキーなタンニンと相まって、全体的にとてもエレガント。アフターにさくらんぼの香りが続く、

土着品種マルツェミーノ100% リアルワインガイド2017旨安賞受賞ワイン

標高240メートル。南西~南東向きの畑。ローム層砂質土壌。手積み収穫をしたあと、ステンレスタンクでアルコール発酵を行なう。コンクリートタンクでマロラクティック発酵を行ない、半年間ほど熟成。一部にフランス産の木樽を使用して熟成させる。
クラシック マルツェミーノ2017

試飲
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濃いはっきりとしたルビー色。凝縮感のある濃い果実味。豊かなタンニンと果実のバランスが良い。モーツァルトがこよなく愛してオペラの作中に記載したといわれる。

希少土着品種テロルデゴ。ポリフェノールが極めて豊かなのにシルキィでまろやか!

標高370メートル、西~西南向きの畑。ローム質土壌。収穫遅く10月上旬に行なう。ステンレスタンクでアルコール発酵を行なう。コンクリートタンクでマロラクティック発酵を行ない、そのままコンクリートタンクで半年間ほど熟成させる。一部にフランス産の木樽を使用する。
クラシック テロルデゴ2016

試飲
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若干青いニュアンスのある果実の香り。バランスよく凝縮感のあるプラムやベリー系の果実味と酸味にきめ細かなタンニンが心地よい。口当たりはまろやか。

ぶどう本来のエネルギー感で包み込まれる!クリスピィで濃密しかも切れのよいシャルドネ

標高270-330メートル、プレサーノ地区の丘陵部に位置する。南西向き斜面。石灰岩、粘土、シルト岩。温度管理されたステンレスタンクで発酵後、全体の30%をフレンチオークで3ヶ月熟成させる。フィルターを使わない。半年間の瓶熟成を行なう
ディアオル シャルドネ2016

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地中から吸い上げた太古の昔の海の存在を感じさせる香味のニュアンスを生かすため、ノンフィルターで出荷されているという。青味のかかったイエロー。蜜のあるリンゴや完熟した洋梨の香り。酸とミネラルの調和が美しい。長い熟成のポテンシャルを感じさせる。

爽やかで精妙、上品な甘みと水晶の玉のような透明感をもつ華やかで和食に合う極上の白

標高330メートル、プレサーノ地区の丘陵部に位置する南西向きの畑。鉄分を含む粘土、泥岩が混じる石灰性土壌。8時間の低温浸漬のあと、温度管理されたステンレスタンクで発酵を行なう。フレンチバリックで10ヶ月熟成したあと、半年間の瓶内熟成を行なう
クリンガ ゲヴェルツトラミネール2015

試飲
コメント

ライムやローズヒップの爽やかな香り立ちに混じって、石や岩のニュアンスもあり。百花の蜂蜜。たっぷりとした厚みがあるが、ミネラルの豊かさが全体をすっきりと辛口にまとめている。エレガントな余韻が長く続く。和食、とくに寿司に合う。

インテリジェンスとデリカシーを感じさせるマルゴー村の上質赤ワインのようなカベルネ

標高380メートル、プレサーノ地区の丘陵部に位置する南西~西向きの斜面。アイオライトを含む、粘土の多い土壌。温度管理されたステンレスタンクで発酵したあと、フレンチバリックで18ヶ月熟成させる。10ヶ月の瓶内熟成を行なう。
コドロス カベルネ ソーヴィニヨン2013

試飲
コメント

 間口が狭くて深い香りと味わいが特長。濃いルビーの色調。ブルーベリーやミント、カルダモン、ヴァニラなどのスパイスの香り。柔らかいタンニンが、純度の高い豊かな果実味と優しい酸と上品に調和している。

インタビューを終えて

トレンティーノのワインはバラエティ豊かでキレイで飲みやすい口当たりがあり、シンプル。そんな印象を上書きしてしまう滋味のある赤ワインや、軽いだけではない深さと奥行きのある、でも飲みつかれない適度に肩の力を抜いて毎日飲める心地よいワインの数々でした。
エツィオさんは土壌調査の写真を何枚もテーブルに広げ、目をきらきらさせて畑の様子を話してくれました。畑周辺に生息する昆虫たちの居場所が次第になくなっているから、といって昆虫のための家を建ててやったエピソードなど、コンピュータのモニター越しでは感じられない【ワインづくりの現場の空気】を感じたひとときでした。造り手のみなさんの、土地への愛、手掛けているワインへの愛をしっかりお伝えできるように、精進したい、と思いました。

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