TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2017/06/29

ジーニ社サンドロ ジーニ氏、フランチェスコ ジーニ氏

樹齢100年超!圧倒的な深みを魅せる世界屈指の白「サルヴァレンツァ」を産み出すソアーヴェ最高峰「ジーニ」

ジーニ社サンドロジーニ氏と
樹齢100年を超え、圧倒的な深みを魅せるソアーヴェ最高峰キュヴェ「サルヴァレンツァ」。イギリス『デカンター』誌で97点を獲得し、世界屈指のワインとして注目を集めています。造り手のジーニ社は1600年も前からソアーヴェクラシコエリアでブドウ栽培を続ける、ソアーヴェの偉大な歴史的生産者。元々900ヘクタール以下であったソアーヴェ生産地域は、1960年代に平野部も含めてなんと8倍もの7000ヘクタールまで拡大されました。ジーニの畑が位置するのは元来あったソアーヴェ クラシコの中心部。拡大前の900ヘクタールの中に位置しています。「元来のソアーヴェエリアは火山性土壌でミネラルと酸に富んだ長期熟成も可能なワインである」と語るジーニ氏のワインはまさに別格の美味しさ。「何年も前から来日のオファーがあって、今回ようやく念願がかなったよ。」と初来日のソアーヴェの偉大な生産者ジーニ社のサンドロ ジーニ氏、息子のフランチェスコ ジーニ氏にじっくりお話を聞きました。

1600年以上前から代々ソアーヴェクラシコエリアで生きる歴史的生産者「ジーニ」

畑

1600年以上も前から続くソアーヴェでブドウ栽培を行う
私達ジーニ家はソアーヴェクラシコエリアのモンテフォルテダルポーネに産まれ、今から1600年以上も前からずっとブドウ栽培をこの地で行ってきました。私で16世代目となります。ですので、エリアの中でも最も良い向き、火山性土壌の中でも最良のブドウ畑を所有しています。

「伝統を守り続ける」ワイン造り
ジーニ家の最大のポリシーは「伝統を守り続ける」という事です。先代が造り続けてきた歴史ある畑のなかの一番良いブドウを私達は選び抜いてワイン造りを行っています。ソアーヴェの中でも最も古いブドウ樹を持っていると言えます。

古樹ガルガネガ「良いソアーヴェを造るには40~50年のブドウ樹が不可欠」
私達は生産量こそ落ちますが、古いブドウ樹が一番良いワインを造ると考えています。樹齢の若いガルガーネガは樹勢が強く、物凄く量ばかりを生産してしまうのです。

生産量の60%は大手に売り、40%の良いブドウのみをボトリング
ブドウ樹が良いバランスを持つ状態になるまで、少なくとも40~50年は不可欠です。私達の畑には70~140年のガルガーネガが育っていて、平均樹齢で言うと100年となります。樹齢の若い樹のブドウも勿論植えていますが、それは大手にブドウを売っています。ジーニとして販売するワインは質の高いブドウのみを厳選するので、年によっても変動がありますが、総生産量の僅か40%しかボトリングをしません。

地中深くまで根を伸ばす古樹のブドウの力

インタビュー中火山性土壌の深くから吸い上げるミネラル
古い樹齢のブドウで一番大切なことは「根が深くまで伸びている」という事です。ソアーヴェ本来の土壌と言われる火山性土壌の奥底にあるミネラル分を吸い上げる事が出来ます。私達のワインを飲むと、最後に塩味を感じると思いますが、これは火山性土壌の深くから吸い上げるミネラルに関係しています。以前86歳のワインジャーナリストが私たちのソアーヴェを試飲して、「これはピッカンテ(辛い)だね!」という程です。別の機会に2001年のサルヴァレンツァを夕食で開けたら皆さんがその塩っぽさとパワフルさに驚いていました。

10メートル以上も地下に根を伸ばす古樹のブドウ
例えば樹齢70年のブドウ樹は深さだけでも10メートル以上は伸びています。縦だけではなく横、いろんな方向に伸びていきます。たとえ収穫前に雨が降ってしまっても、根は奥深くまで伸びているのでブドウにとってはさほど影響はありません。

「若いブドウ樹だとこうはいかない」
若いブドウ樹だとこうはいきません。根が深くはないので、地上からの影響をどんどん吸い過ぎてしまう。雨の影響も然りですが、例えば化学肥料等を使っている畑となるとその影響は計り知れません。

草生栽培一切化学肥料を使わない自然な状態におかれたブドウ
私達の畑では一切化学肥料は使いません。常にブドウは自然の状態であり、畑には野生の草花と共にブドウが育っています。空気中にある窒素を草花が吸い、それが肥料となっていきます。花にはミツバチが集まります。自然に良い生態系が産まれ、最良のバランスを保つ事が出来ます。化学肥料や除草剤等、ブドウにとっても人間にとっても良くない物質を使用しないのはこうした理由からになります。

世界中で初めて果汁の状態でSO2を添加しないワイン造りに成功

ジーニ氏火山岩をくり抜いたカンティーナ
カンティーナは火山岩をくり抜いた地下に位置しています。自然に出来た環境はワインにとっても適切な環境となります。ブドウは全て手摘みで収穫され、醸造は上部から下部に向かって自然な重力により醸造を進めるグラビティシステムを採用しています。

世界中で初めて果汁の状態でSO2を添加しないワイン造りに成功
1985年に世界中で初めて果汁の状態でSO2を添加しないワイン造りに成功しました。収穫したブドウを破砕し、その果汁を5度に冷却キープする事で果汁自体の活動が止まります。元来ブドウのアロマ成分は果皮に多く含まれているものですが、私たちは収穫をギリギリまで待つ事でブドウが成熟し果皮に含まれるアロマ成分が果肉に移すようにしています。

カンティーナの中に存在する野生酵母で醗酵が始まる
これにより5度に冷却キープされた果汁はアロマ成分を多く含んだものとなります。健全で病気のないブドウがキチンと熟している事が大前提になります。それを4~5日間かけてゆっくりと抽出させていきます。一般的な生産者だと6~8時間位のマセラシオンですぐに醗酵させるようです。

カンティーナの中には野生酵母が存在し、それにより自然にゆっくりと醗酵を始めます。醸造用のタンクに移し替えた時に徐々に温度が上がり、12度位からブドウが醗酵を始めます。

ブドウ酵母は普段「寝ている」ような状態で、収穫の時期の秋ごろになってやっと起き始めてくる
私見ですが、酵母は畑には存在せず、カンティーナの中の至るところに隠れていると思っています。有名な醸造学校の先生方は「酵母は畑にある」と言っていますが、私が調べたところでは、畑には存在せず、自分のカンティーナの中で酵母を見つけました。それはセメントタンク、木樽、ポンプチューブに至るまで色々な場所で。酵母は普段「寝ている」ような状態で、収穫の時期の秋ごろになってやっと起き始めてくるようです。

他の生産者の使った樽や容器はカンティーナに持ち込まない
それから醗酵の働きが始まります。私たちは他の生産者の使った樽や容器はカンティーナに入れこんだ事はありません。それは「よその酵母」が入ってくることを防ぐためです。酵母は不安定な特性をもっていて、中には危険は病気をもっているものもあるからです。

「収穫」と「破砕」のタイミング
私達は幸運なことに良い土壌、ブドウに恵まれています。あまり手を加えずにワインを造りその素晴らしさを表現したいと思っています。毎年毎年、経験を基に収穫時期を見極めます。極論を言えば、私たちにとって「収穫」とブドウの「破砕」のタイミングが一番重要となります。

ソアーヴェクラシコエリアで最も寒暖差が大きい「サルヴァレンツァ」

地図

火山性土壌で南東向きの畑「サルヴァレンツァ」
ソアーヴェクラシコに話を戻しましょう。私たちが所有する畑は1600年以上の歴史があります。特にサルヴァレンツァ、フロスカは火山性土壌、南から南東向きでソアーヴェエリア内で一番良いとされている好条件となっています。(南西向きではブドウにとって暑すぎるそうです)

「サルヴァレンツァは一番寒暖差が大きく、他のエリアと最大7度も差がある」
このテロワールに興味を持ったコネリアーノの大学教授「ディエゴ ドマージ氏」がソアーヴェ エリアで5年間、全てのブドウ畑を調べ歩いた結果、「サルヴァレンツァは一番寒暖差が大きく、他のエリアと最大7度も差がある」という発表を出しました。

インタビュー2「もっと標高の高いクラシコエリアよりも、実はサルヴァレンツァの方が寒暖差が大きい」
ドマージ氏は、ジーニ氏に「解ったよ!なぜ君が造るワインがこんなにアロマティックなのか!」と興奮気味に話してくれました。北から吹く冷たい空気が円形のすり鉢状に広がるサルヴァレンツァ地区に夜間滞留しているのです。もっと標高の高いクラシコエリアよりも、実はサルヴァレンツァの方が寒暖差が大きいのです。

後日、ジーニ氏はドマージ教授に「素晴らしい研究を発表してくれてありがとう。だけどね、サルヴァレンツァが素晴らしい畑なのは、ジーニ家では私の祖父や父、その前の世代を含め、もうずっとずっと昔から知っている事なんだよ(笑)」と伝えたそうです。

それを裏付けるのは私の祖父が1800年代の文献を購入した際、その中に「サルヴァレンツァは寒いエリア」と既に記述があったそうです。南東向きの畑は太陽が昇りすぐに温まる、午後になると日が強くなり、寒さから守ってくれる地でもあるのです。

1987年にヴァルポリチェッラエリアに畑を購入
私達の畑の広さは60ヘクタールになります。その内ソアーヴェクラシコエリアに30ヘクタール、ヴァルポリチェッラエリアに30ヘクタールを所有しています。ヴォルポリチェッラエリアは1987年に購入し、2000年からワイン造りをしています。ヴァルポリチェッラ東部、標高500メートルにあるカンピアーノ村という場所でバチカンにある古地図等にも載っている歴史ある村です。風が吹き抜ける素晴らしいテロワールが有しています。1950年代以降、農民達が平野部に降りてしまい、見捨てられた土地となってしまいました。将来的にはこのカンピアーノ村でアマローネを造りたいと思っています。皆さんから「ジーニのアマローネはいつリリースするの?」と聞かれますが、今は待っていてくださいね。

樹齢100年超のブドウ樹を接ぎ木をせずに増やしていく

娘レンツァをサルヴァ(守る)が由来の「サルヴァレンツァ」
サルヴァレンツァですが、2013年がイギリスの『デカンター』で97点を獲得しました。イギリス人はこのワインがお気に入りのようですね。サルヴァレンツァの由来について話しましょう。200年ほど前の逸話なんですが、レンツァという娘がブドウ畑を散歩中に悪者が襲い掛かってきました。その時に助けたのは実はお巡りさんではなく、ブドウ畑の農夫だったと言われています。レンツァをサルヴァ(守る)という事がこの地名の由来です。

自根のガルガネガ樹齢100年超のブドウ樹を接ぎ木をせずに増やしていく
「サルヴァレンツァ」は土地、ブドウ、代々受け継がれてきた知恵の結晶と言うべきワインです。非常に注深く、自然をリスペクトして栽培を行います。10~20年の熟成に耐えうるポテンシャルがあります。プレフィロキセラの自根は樹齢140年ブドウ樹もあります。自根のみで増やす方法をとっています。枝を一度地中まで伸ばし、地中で根を生やした枝がまた地表へ顔を出します。こうして、新しい樹を伸ばしていきます。ですので、接ぎ木せずに古い自根を伸ばしていく方法を採っています。(接ぎ木せずに増やしていく方式は近年ピエモンテのロアーニャ、トレンティーノのファラドリが始めています)

ベーシックラインでありながら平均樹齢60年以上!上質な酸とミネラルが調和した上品で深い味わい

私達のソアーヴェは5つの大切なクリュ(フロスカ、フォスカリーノ、モンテグランデ、サルヴァレンツァ、ヴァル デ アックア)の厳選したブドウから造られています。それぞれを別々に醸造し、ブラインド試飲をベースにブレンドしボトリングします。年によっても変わりますが、生産されたブドウの60%は他に売り、厳選された40%のブドウのみをジーニのワインとしてボトリングします。
ソアーヴェ クラシコ2015

試飲
コメント

熟した深い果実のアロマが印象的です。過度な派手さはなく、実に優美で上品な調和があります。ミネラルと酸が美しく磨き上げた滑らかでしなやかな果実味があり、飲む度にその飲み心地の良さに驚されます。余韻にはスッキリとした塩味をほんのり感じます。樹齢が60年以上のブドウが造られた素晴らしい完成度を誇るスーパースタンドードソアーヴェです。

10~20年は熟成可能!圧倒的な深い味わいを持つ「ラ フロスカ」

フロスカの初ヴィンテージは1985年で、当時世界で初めて果汁にSO2を加えずに醸造したワインです。そんなワインが熟成するのか?という疑問があるかもしれませんが、今から3年ほど前に友人のエノロゴに1985年をブラインドで飲んでもらいました。友人は「2~3年前のヴィンテージ」と思ったようで、1985年と知ると、「信じられない!」ビックリした様子でした。ブドウの持つ力と土壌、ミネラルにより、長期熟成を可能にしています。
ソアーヴェ クラシコ ラ フロスカ2014

試飲
コメント

熟した西洋梨やリンゴの穏やかな果実香に、アカシヤの花の優雅さ、豊かなミネラル、柑橘類の皮の清らかさが折り重なるような美しいアロマの層が感じられます。滑らかで豊かな果実感は古樹由来の蜜っぽさがあり、魅力的な風味を放っています。深いミネラルと伸びやかな酸味、白コショウのアクセントがこのワインのシェイプを美しく引き締めています。細部まで目の詰まった非常に精緻で隙の無い口当たりがあり、中盤からは煌びやかな酸味と円やかな果実の旨みが交錯する、とろけるような旨みとなり喉元を優雅なタッチで駆けて抜けていきます。今飲んでも素晴らしさを堪能できますが、10~20年は熟成可能でブルゴーニュ特級ワインと同等クラスのポテンシャルを備えています。甘エビやホタテ、蟹等の魚介料理と合わせたいワインです。

樹齢100年超希少ソアーヴェ!宝石のように煌めくミネラルと滑らかな果実感

英『デカンター』誌で97点と高く評価されたワインです。フィロキセラの被害を受けなかった樹齢100~140年のガルガネーガを使用した非常に希少なキュヴェです。本来のソアーヴェは火山岩土壌からくる独特の鉱物感、ミネラル香が個性。アロマではなく鉱物のニュアンスが重要、果実感よりもミネラルが主体で、長く熟成することが出来ます。
ソアーヴェ クラシコ サルヴァレンツァ2013

試飲
コメント

美しいミネラル香と澄んだフルーツの瑞々しさに溢れた魅力的なアロマ。グラスを廻すと、奥底にある黄桃やハニーシロップのニュアンスがじわりと立ち上ってきます。細部にまで目の詰まった隙の無い緻密で滑らかな果実味、澄んだミネラルと伸びやかな酸味の高貴なハーモニーが形成されています。現時点でもバランスが良すぎて、クリーンな飲み心地ですが、芯に感じるボディの強さは軽く10~15年の熟成能力を備えています。圧倒的存在感を示す「別格」のソアーヴェです。お寿司や上質な和食と是非合わせてみたいワインです。

インタビューを終えて

初来日のソアーヴェの偉大な歴史的生産者、ジーニのお話は全てが興味深いものばかりでした。

ベーシックラインのソアーヴェであっても樹齢40~50年以上経たないと良いバランスのブドウにならないと言い切るジーニ氏のこだわりに驚かされました。ボルドー、ブルゴーニュの特級ワインの著名な生産者にも匹敵する厳選ぶりです。もし、ソアーヴェに特級格付けがあるとするならば、間違いなくジーニのソアーヴェは第1級に値する品質を備えていると思いました。

今回のインタビューで印象に残った話が、「大切なことは「勇気をもつ」こと。」天候がどうであれ、ジーニとしてボトリングに適さないブドウは使わないという事。これが代々伝わる「教え」のようなもの。私の父が常々言っていたのは「頂点に立つにはゆっくりと上っていく事が重要で、失敗するとあっという間に落ちてしまう。急いではいけない。毎年丁寧に美味しいワインを造っていかなければならない。」という言葉でした。

常に頂点を見据えながらも決して急いてワイン造りをすることなく、土地、ブドウ、先人の知恵を大切にするジーニのワイン造りに、なぜだが日本の職人文化と似通う部分があると思いました。

そんなお話を聞きながら試飲したジーニのワインは全てにおいて格別の美味しさがありました。ジーニ氏も日本のお寿司と自分が造るワインが抜群の相性だったととても喜んでいらっしゃいました。是非とも多くの方に飲んで頂きたい「格別」の美味しさが詰まったソアーヴェです。
ジーニ社サンドロジーニ氏とトスカニースタッフ

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