突撃インタビュー

2012年5月11日 ジェンナーリ訪問

ジェンナーリと記念撮影

ガンベロロッソが発行するチーズのガイドブックで最高賞
「イ フオーリクラッセ」受賞!おめでとうパオロさん!

前回訪ねた時は、新婚ほやほやだったパオロさんも、その後赤ちゃんが産まれたりと、ますます仕事にも精が出る様子が日本にいても伝わってきており、久しぶりの再会を楽しみに、イタリアは北部、パルマのコッレッキオにある小さなカゼイフィーチョ(チーズ工房)を訪ねました。
ジェンナーリは、チーズガイドで賞を取る(注1)知る人ぞ知る、有名パルミジャーノ生産者。もちろん、イタリア国内は、超有名レストランやホテルで愛用されている優秀なパルミジャーノ生産者さんです。ジェンナーリの凄いところは、ミルクの為の牛の飼育から、製造、製品に仕上げるまでをすべて、家族の手で行っていること。彼らのチーズ造りへの情熱やこだわりは、牛の飼育から始まり、製品になるまで、すべてに注がれているという点です。
尊敬するチーズ職人パオロさんに、今回牛の飼育からチーズの製造工程まで改めてすべて見せて頂けるということで喜び勇んでカゼイフィーチョを訪ねてきました。

(注1)ガンベロロッソが発行するチーズのガイドブック『formaggi i migliori d'Italia2012』で72ヶ月熟成が最高賞「トレスピッキ」のさらに上の「イ フオーリクラッセ」を受賞。この賞は、ガイドの最高賞であるトレスピッキのなかでも、特に美味しく、バランスがとれていてエレガントな味わいが桁外れ(フオーリクラッセ)のチーズに贈られるもの。この「イ フオーリクラッセ」を受賞したのは掲載された316のチーズのうちの17のみ。パルミジャーノでは2個だけの受賞
ちなみにジェンナーリの36ヶ月熟成はトレスピッキを受賞。
スピッキ というのはひとかけ、という意味の複数形です。
チーズ工房
パオロさんへの訪問は朝8時。
この時間にはチーズ作りの一番最初の工程であるミルクを混ぜる作業の真っ只中です。
みなさん真剣な眼差しで作業中…。
レンネット作業中トスカニー:「パオロさん、こんにちは!今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
早速ですが、ここではなにを行っているんですか?」

パオロさん:「今ここでは、樽に入れたミルクを25℃まで温めて、そこにレンネットを加え固めていく作業を行っています。
温度を保ったままゆっくりかき混ぜていくと、だいたい20分くらいで形が浮かび上がってくるんですよ。」

トスカニー:「まるで日本酒の櫂入れみたい(*^。^*)手作業で混ぜているんですね。なんだか重そう!これってやっぱり難しいものなんですか?」

パオロさん:「うーん、難しいと思います。この作業でだまになってしまうと、よいチーズは出来ないから。熟練した技術が必要です。現代のチーズ工場ではこの作業を機械でやっているところがとても多いんですが、私たちは全て家族だけの手作業でかき混ぜています。なかなか人に任せられない重要な作業なんですよ。」

トスカニー:「ひえ〜、そんなに難しいんですね。この大変な作業毎日しているんですね。恐れ入ります。」
パオロさんの手作業
工房では、毎朝、昨晩搾ったミルク半分に、その日の朝搾ったミルクを足してチーズを作っています。これによりチーズが固く、しっかりとしたものになります。
パオロさんの母
▲パオロさんの75歳のお母様。とてもお元気で、じっと作業を見つめ、てきぱきと指示を出しています。 
トスカニー:「ここへは毎朝何時にくるんですか?」

パオロさん:「6時ですね。夜はだいたい11時くらいに寝ます。まるで日本人と同じような生活リズムでしょう?(笑)」

トスカニー:「たしかに!イタリアは日が長いので、イタリア人は夜更かしのイメージがあったのですが、パオロさんは牛の世話もあるし、一体どんな生活をしているのかな〜なんて、実は気になっていたんですよ。(笑)」

毎日ミルク約25トンから44個分のパルミジャーノを製造

大量のミルクトスカニー:「それにしてもすごい量のミルクですが、いったいどれくらいあるんですか?」
パオロさん:「1日25トン分のミルクを他には売らずに自分たちで使っています。だいたい1100リットルで2個のチーズができるので、毎日44個分のチーズを作っていますよ。」
トスカニー:「25トンと聞くとすごい量だと思いましたが、チーズにするとあっという間ですね。残ったらどうしてるんですか?」
パオロさん:「残りは粉ミルクやビスケットの原料にするために工場にもっていきます。」
トスカニー:「なるほど、無駄にせず、いろいろ利用しているんですね。」
と、話をしているうちに、なにやら様子が…
パオロさん:「チーズが固まってきましたよ。これを丸い形にするんです。」
トスカニー:「うわぁ、すごいすごい。これがあのパルミジャーノになるんですね。」
チーズ成型
チーズのプレスパオロさん:「これを木製の筒型にいれて上から重しをのせてプレスします。その日の夜に、こちらのプラスチックの枠にいれます。この型には、ほら(型を見せながら)、字が彫られていて、これでチーズ表面の印字を行っているんですよ。」

トスカニー:「本当だ、面白いですね。」

パオロさん:「これで一晩置いた翌朝に、今度は金属製の型に入れ、2日間乾燥させます。その工程を終えたら…」

―パオロさんについて、奥の部屋に移動。なにやらプールのようなものがあります。

パオロさん:「ここはチーズを塩水漬けにする部屋です。見て下さい、この底の方にあるのが、パルミジャーノです。ここで、パルミジャーノを20日間塩水漬けにします。」

トスカニー:「なるほど。塩や濃度にもやはりこだわりがあるんですか?」

パオロさん:「ピュアなシチリア産岩塩を使用していますね。塩水濃度も、22%になるように保っています。」

1万個のパルミジャーノが眠る熟成庫

パルミジャーノ
熟成庫塩水漬けの部屋を出て、最後に案内されたのは、と約1万個のパルミジャーノ・レッジャーノが眠る熟成庫。
高く積み重ねられた膨大なパルミジャーノチーズは、圧巻!

パオロさん:「この部屋は夏場でだいたい16、17℃、冬場で14、15℃くらいの温度に保たれています。特に重要なのは湿度で、ここでは常に80%になるよう設定されています。
また、15〜20日に1回は、回転させたり、上下で位置替えを行っています。そうして年月を重ねていって、24〜90ヶ月程までの長期熟成パルミジャーノ・レッジャーノが出来上がります。」

トスカニー:「これだけの膨大な量を管理されるのは本当に大変だと思います。でも、これら1つ1つの作業から、あの美味しいパルミジャーノ・レッジャーノが生まれているんですね。
丁寧に説明して下さってありがとうございました! 」
 
別の仕事があるパオロさんと、この工房でお別れし、私たちは車で10分ほど離れたパオロさん所有の牧場へ伺いました。

約1500頭を飼育するジェンナーリの牧場

牧場
牛ジェンナーリの牧場には、約1500頭の牛が飼育されています。種類はレッジャーナ、ブルーナ・アルピーナ、ヴァッケ・ブルーネなど様々。年齢ごとに牛舎に分けられ、管理されています。
牛がミルクを出すようになるのはおよそ、2歳頃から。
1500頭のうち、現在は700頭ほどの牛から、毎日、朝4時と午後4時にミルクを搾っています。
子牛と肥料
▲(左)わずか生後1ヶ月の仔牛/自然な牛の飼料/
(右)より脂肪分の高いミルクを出すヴァッケブルーネは、他の牛とは区別され飼育されています。
▼ミルクは、牛のお腹をきれいに洗ってから、搾乳機のある別の部屋に移動して搾られます。
最初はおっかなびっくりの牛も、詰まったミルクを出してもらえるとわかると、翌日からはすんなりと部屋に移動するようになるといいます。
牛舎

ジェンナーリの工房訪問を終えて

今回、ジェンナーリのカゼイフィーチョを訪ねた後に、ボローニャやモデナで地震がありました。多くのパルミジャーノの保管庫のチーズが転げ落ちてだめになったという話がニュースで流れて、驚いて連絡したところ、ジェンナーリでは被害はなかったとのこと、そっと胸をなでおろしました。

ジェンナーリでは800年前から今も、伝統を重視し製造を行っています。現在では効率化を図り多くの工房で機械化が進む中、ミルクを混ぜたり重いチーズを移動するなど、一見細かい作業も、地道に、そして丁寧に、手作業で行うジェンナーリ・ファミリー。
「1年中、休みはないよ。クリスマスも!」と苦笑しながらも、機械化による安易な効率化を避け、熱いまなざしでチーズ作りに取り組む姿に、『美味しいチーズを作り続ける』という強い信念を感じました。
現地の高級ホテルや一流レストランからの信頼の厚さはこうした真面目な姿勢から培われるのだな、と思い、改めて、トスカニーのお客様に自信を持っておすすめ出来る逸品だと実感した、貴重な訪問となりました。今回のジェンナーリの「イ フオーリクラッセ」賞の受賞一緒に喜んで頂けますと幸いです。
ジェンナーリの長期熟成チーズはこちら⇒
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