突撃インタビュー
2018/03/02
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コンティ ゼッカ社 マリオ ゼッカ氏、フェルナンド アントニオ ロマーノ氏
1580年から続くプーリア最大規模の家族経営ワイナリー!プーリアでいち早く自社詰めを開始、品質重視のワイン造りにこだわる「コンティ ゼッカ」突撃インタビュー
1580年にナポリから移住して以来、サレント・レヴェラーノで地元の農業に大きく貢献したゼッカファミリー
レヴェラーノはプーリアの中でも南部に位置し、またイタリア半島でもっとも東に位置しています。つまりここは東方諸国の玄関口なんですね。そのためギリシャやアラビア、ビザンチン文化が入り、交易が盛んに行われ、その影響をうけて独特な文化が生まれています。
また、北からはシベリアやロシア方面からトラモンターナという冷たい風が吹き、南からはアフリカからシロッコという熱波が吹きます。暑い土地ではありますが、1年を通して風通しのよい、独特の気候条件があります。
北イタリアやヨーロッパへのバルク売りで発展したプーリア。その中でもいち早く品質重視のワイン造りに着手
フィロキセラの被害後、コンティゼッカは自社詰めを始めました。
この写真は1922年のボトルです。1935年には醸造所を整備し、本格的に自社のワインをボトル詰めして販売することを始めました。これは当時としてはとても珍しく、コンティゼッカはプーリアで最も早く品質を追求するワイナリーとしての一歩を踏み出したのです。1955年には「ドンナマルツァ」ブランドでボトリングを始めています(左から1922、1945、1953年の自社詰めワイン)。
全て自社畑のブドウから!「カンタルピ」「ドンナマルツィア」「サラチェーノ」「サント ステファノ」の4つのエステートでテロワールに相応しいワインを造る
海と海に挟まれたサレント半島は東のアドリア海と西のイオニア海までの距離が40kmほどですが、海に近いエリアと比較的内陸のエリアとでは土壌のタイプが異なります。コンティゼッカのエステートもその場所によって特徴が違うので、それぞれのテロワールに適したブドウを植え、ワインを造っています。
エステートの中で最も広いのがサリーチェ サレンティーノ地区にある「カンタルピ」です。海と海に囲まれたプーリアの中では比較的内陸部にあたります。内陸部に行けばいくほど雨水が運んできた土壌が堆積していき、表土が厚くなります。砂礫、泥土、石灰岩が混じった肥沃な土地です。「カンタルピ(Cantalupi)」とはオオカミの鳴き声、つまりオオカミの遠吠えという意味なのですが、ここは中世の頃は森だったので、オオカミがたくさん住んでいて遠吠えがよく聞こえていたからこのような名前がついています。
そしてレヴェラーノにあるワイナリー本社に隣接している100ヘクタールの「ドンナマルツィア」エステート。ここは海岸からわずか8kmほどで、海の影響を受けたテロワールです。
そして、日本には輸出されていませんが、「サラチェーノ」と「サントステファノ」の比較的小規模のエステートがあります。
プーリアの主要品種ネグロアマーロとプリミティーヴォ。伝統的にサリーチェサレンティーノはネグロアマーロ、マンドゥリアはプリミティーヴォが主体
プリミティーヴォはその名前の通り早熟のブドウです。8月には成熟します。果皮が薄く、過熟気味になる傾向があります。プリミティーヴォの産地として有名なマンドゥリアは海沿いの場所で、砂地土壌です。そのため、乾燥しやすく過熟気味で糖度の高いブドウになりやすいのです。私たちは酸をしっかりと保ち、バランスがとれるように熟しすぎないように気を付けています。
プリミティーヴォは伝統的に単一品種で造られることが多く、一方、ネグロアマーロはタンニンが非常に強い品種なので他品種とブレンドさせて使われることが多いです。酸もタンニンもしっかりとあるので、ワインにとって瓶熟も非常に重要です。
私たちレヴェラーノではやはりネグロアマーロが最も重要です。栽培している黒ブドウのうち65~70%がネグロアマーロです。サリーチェサレンティーノは伝統的にロゼワインを造っていますが、それもネグロアマーロから造るのが伝統です。
新樽バリック熟成で造るリッチで華やかなエントリーラインのシャルドネ
このシャルドネに使ったバリックは赤ワインの熟成に使います。3年ぐらいは使いますね。だから十分コストに見合うだけの利用はしています。それに、赤ワインに真新しいバリックを使うよりも少し使った樽の方がいい影響を与えることもあります。いずれにしても当社は畑から出荷までを一貫して管理していますので、トータルでコスト管理ができるので、リーズナブルな価格を可能にしています。この点は買いブドウでワインを造るワイナリーとは違います。
長期熟成ポテンシャルもあるエレガントな樽熟白
とてもリッチでコクのあるワインですし、長期熟成のポテンシャルもあります。もっとも熟成させるよりも前に飲まれてしまうことがほとんどですが(笑)。
試飲
コメント
きれいな黄金色の外観。パイナップルやバナナなど南国フルーツの香りが広がりボリュームを感じさせる。しっかりとした酸とミネラルがまろやかな味わいに複雑味をプラスして奥行きの深いスタイルを造っている。樽のニュアンスも強すぎず、とてもエレガントにまとまっている。
3つの品種のいいとこどり!やわらかい味わいで気軽に楽しめる赤
プリミティーヴォはやわらかさ、ネグロアマーロは酸とタンニンとストラクチャー、カベルネからは香りとタンニン。それぞれの個性を表現しながら、バランスをとりました。
試飲
コメント
気軽に楽しめるスタイルながら、プリミティーヴォ、ネグロアマーロ、カベルネソーヴィニョンの個性がうまく引き出されていることを感じさせる味わい。甘みが強すぎず、存在感のある酸が上手くとけあいシャープな印象さえ感じる。お手軽に上級感を味わえるカジュアルワイン。
サレントの恵みがもたらした完熟メルロー
このワインには少しカベルネソーヴィニョンもブレンドしています。法律上85%以上使用していたらその品種名を表示していいことになっています。ヴィンテージによってその比率が90%になったりもします。カベルネを加えることでタンニンをもたらし、ストラクチャーを与えます。メルローだけではちょっとまろやかすぎることもありますが、カベルネでそれを補います。ボルドーワインと同じ考え方ですね。
試飲
コメント
美しいルビーレッド。熟した赤い果実の香りが甘やかに広がるとともに、樽のニュアンスが感じられる。まろやかな味わいの中にスパイシーなニュアンスも。全体的には優しくエレガントな印象。
デイリーに楽しめる新樽100%熟成のカベルネソーヴィニョン
メルローに比べてより力強くタンニンをしっかりと感じると思いますので合わせる料理も変わります。よりしっかりとしたお肉料理が向いています。このワインは味わいがはっきりとしていてとても人気がありますね。
試飲
コメント
しっかりとした濃厚な色合い。赤い果実味とバニラやスパイスの香り。豊かな果実感の中にしっかりとタンニンが感じられ、ストラクチャーのある力強い味わい。
マンドゥリアに比べよりエレガントで食事に合わせやすいサレントのプリミティーヴォ
プーリアのプリミティーヴォは3つのタイプがありますね。糖度が高く濃厚で食後に楽しむようなタイプのマンドゥリア、バランスがとれたエレガントなサリーチェサレンティーノ、そしてプーリア北部の丘陵地のジョイアデルコッレ。ここはより香り豊かでデリケートなプリミティーヴォとなります。
この私たちのプリミティーヴォですが、熟成はバリックではなく3000リットルの大樽で行います。ブドウの個性をより表現するためです。
試飲
コメント
熟したプラムやイチジクのジャムなどの濃密な香り。たっぷりとした果実味が口の中に広がりプリミティーヴォらしい甘みを感じさせる。力強さとともに上品なビター感のあるバランスのよい、上質感を感じる。
ゼッカファミリーがこよなく愛するネグロアマーロ主体の熟成サリーチェサレンティーノ
ネグロアマーロはしっかりとしたタンニンと酸があるのでプリミティーヴォに比べるとより長い熟成をさせる必要があります。瓶熟成も必要です。先ほどもお話ししましたが、カンタルピエステートは比較的内陸にありますので表土に厚みがあり、深いです。だから熟成に向くブドウができるのです。3000リットルの大樽で14ヶ月間熟成させています。カンタルピは私たちのテロワールを表現した、ゼッカファミリーにとっても、最も重要なワインのひとつです。
試飲
コメント
ガーネットを帯びた濃厚な色合い。ベリー系ジャムやスパイスのアロマ。飲めば凝縮された果実がエレガントに口の中に広がる。ドライで上品、そして濃厚。じっくりと味わいたいスタイル。
土着品種ネグロアマーロを世界中に知らしめた「スーパープーリア」
ワインの名前の「ネロ(黒)」はネグロアマーロを表現しています。「ネグロ」「アマーロ」はどちらもラテン語(Niger)とギリシャ語(Mavros)で「黒い」という意味で、ネグロアマーロが非常に濃い黒のブドウであることからこの名がつきました。
コンセプトとしてはスーパートスカンと同じです。ティニャネッロやアンティノリでジャコモタキス氏が始めた土着品種と国際品種の融合ブレンド、そしてバリック熟成ですね。それがプーリアにももたらされ、このネロはいわば「スーパープーリア」です。ジャコモタキス氏の弟子のジョルジョマローネがコンティゼッカで長年コンサルタントとして働いています。
1997年にトライアル的な初リリースで、オフィシャル的に初めて市場に出したのが1998ヴィンテージです。あっという間に様々なワインガイドが高く評価してくれました。2003年は最近飲みましたがとてもフレッシュな果実味があって、まだまだこれから伸びていきそうですし、1998年もとても素晴らしい状態です。本数は少ないのですが、バックヴィンテージとしてストックしています。
試飲
コメント
完熟果実の香りとカカオやコーヒーの魅力的なアロマとともにスパイシーなニュアンスが広がり、香りからも奥行きの深さを感じさせる。香りの印象がそのまま味わいへとつながり、果実のなめらかな凝縮感が心地よい酸と調和して力強くも伸びやかなスタイルを造っている。
インタビューを終えて
500年近い歴史を誇る伯爵家の一族のワイナリー、ということでまさにプーリアの農産業の歴史を担ってきたゼッカファミリー。これだけ長い年月、絶やすことなく継続できたのは一族の勤勉さはもちろん彼らのために一緒に働いてきた多くの農家がいたから。醸造責任者のアントニオ ロマーノ氏もコンティゼッカのもとで親子代々働いてきたという一族だそうで、今後もこの関係が続くのだろうなあと温かい気持ちになりました。
ブドウ栽培をするのにはこれ以上にないほどに恵まれたテロワールのプーリアで、より抜きんでた存在になるには研究と改革が欠かせません。プーリアでいちはやく「量から質へ」転換を図ったコンティゼッカ。大人気となっている新樽バリックシリーズを始め、今後も新しい革新的なワインが誕生してくると思います。
試飲
コメント
フルーティーで果実由来の酸との調和がとれた、バランスの良い味わい。バニラやココナッツミルクの香りなども感じられる。程よいコクと余韻に感じる樽のニュアンスが心地いい。