TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2016/11/11

コンタディ カスタルディ社 ヴィタリアーノ ティッリート氏

フランチャコルタをよりカジュアルに!ベッラヴィスタのオーナーが設立した「コンタディカスタルディ」モダンでフレッシュなスタイルのフランチャコルタ

コンタディカスタルディ輸出責任者ヴィタリアーノ氏
コンタディカスタルディはフランチャコルタの名門ベッラヴィスタのオーナー、モレッティ家が「フランチャコルタをよりカジュアルに楽しんでほしい」という思いで1991年に設立したワイナリーです。ベッラヴィスタが培ってきた伝統と知識、経験をもとにしながらも、異なるコンセプトで造りだすコンタディカスタルディのフランチャコルタは幅広く支持を受けています。今回はコンタディカスタルディの輸出責任者ヴィタリアーノ ティッリート氏からフランチャコルタの歴史、そしてベッラヴィスタとの違いなど詳しくお話をお聞きしました。

「フランチャコルタ」には3つの意味がある。「醸造方法」「生産地」「ワイン名」

コンタディカスタルディは1987年にモレッティ家によって創業したワイナリーです。モレッティは4つのワイナリーを所有する一族で、2つはフランチャコルタ(ベッラヴィスタとコンタディカスタルディ)、2つはマレンマ(ペトラとテヌータラバディオラ)にあります。さらに2つのホテルも所有しています。そのホテルのレストランはひとつはグアルティエレマルケージ、もうひとつはアランデュカスがシェフを務めています。

フランチャコルタが造られるエリアでは1400年代に微発泡を造っていたという記録が残っていますが、「フランチャコルタ」という名前が付いたワインは1960年代になってからです。ご存じだと思いますが「フランチャコルタ」には3つの意味があります。①醸造方法、②生産地、③ワイン名です。これはフランスのシャンパーニュと同じです。

伝統のベッラヴィスタに対してより身近でモダンスタイルのコンタディカスタルディ

ベッラヴィスタとコンタディカスタルディはオーナーは同じですが、全く違うコンセプトを持っています。たとえて言うならば、フォンタナフレッダとミッレフィオーリのような関係です。

ベッラヴィスタは190ヘクタールの畑はすべて自社所有です。ベッラヴィスタは伝統的なスタイル、一方コンタディカスタルディはモダンでフレッシュ、若々しいスタイルがコンセプトです。この2つの比較をするのに私が好きなのがアルマーニとディーゼルです。ベッラヴィスタはアルマーニ、コンタディカスタルディはディーゼル。アルマーニはエレガントで長熟、コンタディカスタルディは心地よさとすぐ飲める若々しさ。ベッラヴィスタはフルマラソン選手であり、コンタディカスタルディは5Kmを走るアスリート。イメージがつかめていただけるのではないでしょうか。

もうひとつ、ベッラヴィスタとコンタディカスタルディの違いがあります。ベッラヴィスタでは房をプレスするにコカルダという機械を使います。これは上からと横からのみプレスして、決して粒をこするような動きをしません。一方、コンタディカスタルディはプレスは一般的なミロスという機械で行います。ミロスは気圧式であらゆる方向からプレスされます。10000kgのブドウを圧搾するのにミロスは90分で終了しますが、コカルダは4時間かかります。

フランチャコルタには6つの土壌(土質タイプ)がある。その6つの土壌の畑をまんべんなく使って生まれるのがフランチャコルタ。コンタディカスタルディの125ヘクタールの畑は130の区画に分けられる。つまり130のワインを造り、ブレンドしてフランチャコルタは造られる

フランチャコルタには6つの土壌があります。フランチャコルタはもともと氷河に覆われた地域です。その氷河がとけて流出し、押し出された土地が現在のフランチャコルタを形成しています。土壌はいわゆる氷堆積土壌で、堆積物の厚みや種類によって6つの土壌タイプ「DEPOSITI FINI」「FLUVIO GLACIALE」「COLLUVI DISTALI」「MORENICO PROFONDO」「COLLUVI GRADONATI」「MORENICO SOTTILE」にわかれています。

コンタディカスタルディの畑は全部で125ヘクタールです。そのうち25ヘクタールが自社所有畑、100ヘクタールが借りている契約畑です。なので125ヘクタール全部を私たちが栽培をしていることになります。6つの土壌タイプそれぞれで最適な畑を探し、賃貸契約しています。フランチャコルタのワイナリーのほとんどは、カデルボスコもベッラヴィスタも、1か所の同じタイプの土壌の畑だけを使うということはなく、異なる土壌タイプの畑を所有して、それをブレンドすることでワインを造っています。ミックスするということがフランチャコルタにとって重要なのです。

コンタディカスタルディは125ヘクタールの畑がありますが、実際には130の区画に分けられます。そして、それぞれの区画ごとにワインを醸造します。そしてその130のワインをブレンドしてフランチャコルタを造っています。

このワインには限定した区画のブドウを使う、といういわゆる単一畑という概念はスプマンテにはありません。ブレンド、キュヴェ、によってフランチャコルタは造られるのです。毎年、安定した品質のワインを造り続けるためには研究を重ねていくしかありません。そうしないと、今年は良いけど来年は品質が落ちる、ということになりかねません。

フランチャコルタの土壌分布

コンタディカスタルディはジャンルーカ ウッチェッリ氏がエノロゴに就任した2005年から飛躍的に品質が向上。ロゴに込められた2つの言葉と思い

コンタディカスタルディ醸造家ジャンルーカ氏実はコンタディカスタルディは創業してから20年ほどは品質が安定していなかったんです。それが2005年にジャンルーカウッチェッリがエノロゴに就任してから劇的に変わりました。ジャンルーカは大学卒業してすぐ、ベッラヴィスタに就職しました。そこで5年間醸造の仕事をしていたのですが、ベッラヴィスタの醸造責任者と考えが合わず、辞めたいとオーナーのヴィットリオモレッティ氏に伝えます。しかし、モレッティ氏はジャンルーカが優秀なエノロゴだとわかっていたので、コンタディカスタルディに転職させたのです。

ジャンルーカが来てからコンタディカスタルディは本当に変わりました。品質が安定し、進化を続けています。生産本数も2005年までは年間25万本ほどだったのが、今では100万本にまで伸ばすことができました。

ジャンルーカウッチェッリは本当に素晴らしいエノロゴです。300万人にひとり出るか出ないかの泡のスペシャリストです。もし彼がコンタディカスタルディを去る時が来たら、コンタディカスタルディはワイナリーをクローズしなければならないでしょう。その彼のもと、コンタディカスタルディはさらに上を目指しています。今はまだ、フランチャコルタの一生産者ですが、7,8年後にはフランチャコルタを代表するワイナリーになりたいとみんな思っています。

フランチャコルタは造るのに時間がかかるワインですから、今やっていることが4,5年先に結果となって現れます。つまり、今の失敗が数年先に跳ね返ってくるのです。そうならないためにも今できる最高のことをやらなければなりません。

コンタディカスタルディのロゴのモチーフワイナリー名のコンタディカスタルディは2つの言葉の組み合わせです。コンタディとは中世の領土、カスタルディはその領土で働く人たちです。これは土地と人間という意味を込めています。そして、ロゴマークも2つの図形になっています。これは瓶の底を表現しています。瓶内熟成をさせている間、瓶と瓶が重なっているのを瓶の底から見た形です。これはワインを寝かせている時間、育てている時間、それぞれにかかる長い時間を表しています。

コンタディカスタルディのロゴフランチャコルタというワインを理解するのは短時間ではできません。なぜなら、土壌と地域という特徴だけでは説明できない、造り手の技術による部分が大きいからです。たとえばバローロは土地(畑)ごとの特徴が明確なので1年もあれば理解することができます。でもフランチャコルタはブドウの品質と醸造技術に負うところが大きい。だから、なぜこの造り手のフランチャコルタはこういう味で、別のフランチャコルタはこういうスタイルなのかを理解するのは、どのように造っているのかを知らないとわからないのです。

フランチャコルタは北のイゼオ湖と南のモンテオルファノ山に挟まれた小さいエリア。その温暖な気候は有機栽培にも適している

気候条件もフランチャコルタにとって大切な要素です。ワイン産地として成功したのもその温暖な気候のおかげです。フランチャコルタはイゼオ湖とモンテオルファノ山に挟まれたとても小さいエリアです。北からの冷たい空気がイゼオ湖によって暖められます。そして南のモンテオルファノ山が、南からの風を防ぐ役目を果たしてくれています。

比較的安定した気候ですが、もちろん年ごとに変わります。2004年は雹の被害がありましたし、2012年はいい年ではありましたが、最良というわけではありませんでした。狭いフランチャコルタにもミクロクリマは存在します。だからさまざまな場所に畑を持っておくことが重要になってきます。

また、日照条件の良いフランチャコルタは有機栽培にも適しています。現在、どのワイナリーも有機に取り組み始めています。おそらく、4,5年後にはほぼ全てのワイナリーが有機認定をとれるぐありになるのではないでしょうか。もしかすると、イタリアで初めて100%有機栽培のDOCGになるかもしれません。もちろん、全生産者の同意が必要ですが。密植度もそれぞれ違いますから。一方、シャンパーニュは約30000ヘクタールありますが、有機栽培をおこなっているのは200ヘクタールほどしかありません。というのも、冷涼で、湿度も高いので有機栽培には不向きなのです。

スパークリングワインは泡で有機か有機でないかがわかります。ブラインドテイスティングをしたとき、有機栽培のブドウで造ったスパークリングの泡は胃に優しいですが、そうでないものは胃を焦がすような痛みを与えます。

フランチャコルタを知ってもらうノンヴィンテージのフランチャコルタブリュット

コンタディカスタルディの顔ともいえるブリュットで、年間50万本生産しています。伝統的なフランチャコルタの造り方、つまりシャルドネ、ピノネロ、ピノビアンコの3品種を使います。今飲んでいただいているのは70%シャルドネ、20%ピノネロ、10%ピノビアンコですが、年によってその比率は変化します。ヴィンテージによってよくできた品種が違いますので年ごとに変えます。比率にこだわるのは重要ではありません。

ブリュットは130区画のうち、110区画のワインをアッセンブラージュして造っています。1区画全量を使うというわけではなく、区画ごとの部分部分を使います。
フランチャコルタ ブリュットNV

試飲
コメント

最初から最後まで心地よさが続くフランチャコルタ。花や白桃などの甘くフレッシュな香り、程よい香ばしさのある爽やかな味わいがのびやかに口の中を広がります。きめ細かな泡が飲んだ後までも感じられます。

ピノネロの個性をうまく引き出したモダンなロゼ

シャルドネとピノネロで造るロゼです。ピノビアンコは使いません。ピノネロの比率は30~35%です。このライトなロゼ色はピノネロからきています。生産本数は15~20万本です。
フランチャコルタ ロゼNV

試飲
コメント

淡く上品なピンク色が印象的。ワイルドベリーやバラの花のアロマとともにイキイキとした南国フルーツのニュアンスも感じられます。しっかりとした骨格を感じるバランスのとれた美味しさが長く続きます。

繊細でクリーミーな泡と口当たり。やわらかな味わいのサテン

サテンはフランチャコルタだけに使われるカテゴリーで、白ブドウだけで造るフランチャコルタです。エレガントでガス圧が弱めです。「クレマン」がコンセプトですがその名称は使えなかったので「サテン」と名付けました。非常にフェミニンなワインです。

泡がとても柔らかく、絹のような舌ざわりです。口当たりがとてもクリーミーで、繊細です。
フランチャコルタ サテン ヴィンテージ2010

試飲
コメント

きめ細やかな泡の鎖が光り輝きます。白い花やフルーツとともにパンの皮、アーモンドなどの香ばしいニュアンスも。とてもクリーミーな口当たり、やわらかな味わいとともにしっかりとした酸とミネラルもあり非常にバランスが取れています。

ピノネロの力強さを表現したドサージュゼロの男性的なフランチャコルタ

シャルドネ50%、ピノネロ50%で造るゼロはエクストラブリュットのカテゴリーのゼロです。ゼロとはドサージュゼロのことで、ピノネロの力強さが表現された、男性的なワインです。食事に合わせるのが面白いワインだと思います。食事も骨格のある、味のしっかりとした料理がふさわしいですね。

エクストラブリュットはイタリアでは「高品質ワイン」とみなされています。というのも、イタリア人は甘いものに対して「欠点を隠すために甘くしている」とマイナスの評価をする傾向があるからです。もちろん実際は甘いから品質が悪いということはありません。でも、歴史的には「辛いほど高品質、いいもの」と考えられています。
フランチャコルタ ゼロ ヴィンテージ2010

試飲
コメント

今までの3本にはない力強さを感じるフランチャコルタ。香りも味わいも複雑さがあり個性的。柑橘系のアロマとハーブやナッツ類の香り。シャープな骨格ながら豊かさも感じられる味わい。

澱とともに50ヶ月間熟成。個性あふれるミレジマートロゼ。ピノネロの素晴らしい長所を余すところなく表現

ピノネロとシャルドネで造るミレジマートロゼです。
フランチャコルタ ロゼ ヴィンテージ2009

試飲
コメント

美しく光り輝く銅色、花や森の果実などの香りとともにはっきりとしたスパイスのニュアンスが味わいへと続きます。口の中で力強さのある果実味とともに甘苦いスパイシーさが広がりバランスのとれたボリュームのある味わいに。

平均樹齢35年の最高のシャルドネだけを厳選して造るフラッグシップサテン

最高のシャルドネで最高のフランチャコルタを造る、というコンセプトでスタートしたのがソウルサテンです。ジャンルーカがエノロゴに就任してから、ようやく完成することができました。

最良のものを探し見つけた、平均樹齢35年の8日区画のシャルドネだけを使います。骨格があり、力強さもあり、そして複雑味もあります。
フランチャコルタ ソウル サテン ヴィンテージ2007

試飲
コメント

きめ細やかな泡の鎖がとても美しく、花やイースト香、ナッツなどの複雑な香りがグラスから広がります。果実感を伴うしっかりとした豊かな味わい。

インタビューを終えて

カジュアルに楽しめるフランチャコルタ、というイメージのあるコンタディカスタルディについて、同じオーナーのベッラヴィスタとの違いも含めて説明していただき、とてもよくわかりました。

ぶれないはっきりとしたコンセプトのもと、成長を続けるコンタディカスタルディはまさに飛ぶ鳥を落とす勢い。若い醸造家と技術チーム、販売チームが一丸となって夢を追っている、そんなイメージを強く感じました。大御所に追いつき追い越せという前向きなスタイルのコンタディカスタルディ。彼らの思い通り、気軽に、カジュアルに楽しんでいただければと思います。
コンタディカスタルディ輸出責任者ヴィタリアーノ氏と

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