突撃インタビュー
2017/05/12
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カステッロ デイ ランポッラ社 ルチアーノ ディ ナポリ ランポッラ氏
高貴な凝縮感と美しい深みを持つ珠玉のトスカーナ「カステッロ デイ ランポッラ」
約300年続く歴史ある畑でキャンティクラシコを1975年に初リリース
1960代に父アルチェオがブドウ栽培を始める
畑の歴史は1739年に遡ります。その当時はオリーブや小麦、家畜を育てていた歴史がありました、その後少しずつブドウやオリーブ畑に切り替わり、ワイン造りはランポッラ家で3代目となります。1960年代に父のアルチェオがブドウ栽培に取り掛かりました。最初は育てたブドウを売る栽培農家でしたが、その後少しずつ畑を広げ1970年代頃からボトリングを始めました。初リリースは1975年のキャンティ クラシコで約6000本をボトリングしました。
キャンティ クラシコエリアに初めてカベルネ ソーヴィニョンを植樹
当初黒ブドウはサンジョヴェーゼのみでしたが、1980年代からカベルネ ソーヴィニョンを造り始めました。当時キャンティ クラシコエリアでカベルネを植えたのは、私たちランポッラが初めてです。(ちなみにトスカーナでカベルネフランを最初に植えたのはサッシカイアです:ルチアーノ氏)
1980年にスーパートスカン「サンマルコ」をリリース
1980年にカベルネソーヴィニョンを使って初めてボトリングしたスーパートスカン「サンマルコ」がアメリカをはじめ、世界各国で人気に火が付きました。続いて1991年にダルチェオの名前を付けた畑にブドウを植えました。しかしその一年後に父が亡くなり、ワイナリーの仕事を引き継ぎました。
黄金の谷「コンカドーロ」が持つ多彩なテロワールと「天才エノロゴ」ジャコモタキス氏の存在
黄金の谷「コンカドーロ」が持つ多彩なテロワール
私たちがワイナリーを構えるパンツァーノには「コンカドーロ」(黄金の谷)と呼ばれる程、様々なタイプの土壌と向きの異なる畑が存在し、数十メートル進んだだけでテロワールが変わります。
「サンタルチア」で造られるランポッラのブドウ
私たちの畑がある「サンタルチア」ではサンジョヴェーゼ、カベルネソーヴィニヨン、メルロー、プティヴェルド、シャルドネ、トラミナー、ソーヴィニョン、そして少しのマルヴァジアを植えています。白ブドウは良年の時のみ、ブドウ樹に生ったまま乾燥させて甘口ワインを造ります。ヴィンサントは現在販売していませんが、将来的にはリリース予定で目下熟成中です
カベルネソーヴィニョンに適した「ダルチェオ」のテロワール
トップキュヴェ「ダルチェオ」の畑は他の畑に比べ、標高が高く、土壌や畑の向きがカベルネソーヴィニヨンに非常に適しています。カンティーナを中心に様々な向きに畑が広がり、日照時間も異なります。ですので、同じサンジョヴェーゼ種一つとってみても、畑の位置により出来上がる味わいは異なります。カンティーナのすぐそばには白ワイン用のブドウが2ヘクタール植えられています。元々は自家用として造っていました。
「天才エノロゴ」ジャコモタキス氏が勧めた「カベルネソーヴィニョン」と「サンジョヴェーゼ」のブレンド
父のダルチェオはサッシカイアの産みの親である「天才エノロゴ」ジャコモタキス氏と親しい間柄でした。父がタキス氏に「サンジョヴェーゼをより力強く表現するにはどうしたら良いと思う?」と相談したところ、カベルネソーヴィニヨンをブレンドすると良いと教えてくれました。1979年に同じトスカーナ州でいち早くカベルネを植えていたカルミニャーノ地区のブドウ樹を持ち込み、接ぎ木し栽培しました。そしてサンジョヴェーゼとカベルネソーヴィニョンをブレンドした「サンマルコ」を1980年にリリースしました。現在ではカベルネのブドウ樹も成熟し、ブレンド比率が約80~90%に上がっています。
1994年から「ビオディナミ農法」を始める
1994年から「ビオディナミ農法」を始める
1994年からは農薬を使わない「ビオディナミ農法」を始めました。畑には草木や花が咲きます。それにより、すべての仕事がゆっくりと進むようになりました。(農薬を使わないので植物の動きがゆっくりと進むようになったから:ルチアーノ氏)
自然な生命力が宿るとても良いブドウ樹へと進化
ビオディナミの導入で畑、技術的な事も変わりました。雑草や花もそのまま残る草生歳馬で、雑草たちがブドウ樹の良い競争相手となり、自然な生命力が宿るとても良いブドウ樹の状態に変わっていきました。土地がより豊かに潤い、それ以降人の手を加える事が少なくなりました。ヴィンテージにより天候も変わりますが畑自体の生命力が上がり、天候が悪い年も大きな影響を受けにくくなりました。
エネルギーを集約するスパイラルシステム「フローフォームス」
自然な素材「コンチェピスト」を醸造に使用
セメントタンク、テラコッタ、1700リットルの卵型のタンク「コンチェピスト」を使っています。コンチェピストの成分は自然が造った産物です。(石灰分、テラコッタ、草の繊維)人工的なものでなく、より自然に近い素材を使う事で、ワインがストレスを感じずに、より純粋な状態で保たれます。卵型のタンク内部では液体が流動的に動くため、多方向に回転のエネルギーが働く為、攪拌された状態が断続的に起こります。
自然なエネルギーを集約するスパイラルシステム「フローフォームス」
畑に使用する水、カンティーナで樽から樽へのワイン移し替えの際は「フローフォームス」を取り入れています。2007年頃から取り入れた手法です。ビオディナミ農法の一つで「ディノミザシオン(攪拌)」の原理に沿っています。
攪拌することにより、大気中の存在するエネルギーを取り込む事を目的としていて、アメリカ等で湖の浄化の為に用いられていた方式です。液体をスパイラル上に流し入れる事で外気に触れる表面積を増やし、エネルギーを取り込みやすくしています。一般的なタンク熟成だけでは得られない効果があります。(ワインの香りや味わいを引き出す時にグラスを廻すでしょう?それもスパイラル効果によるものと言えます:ルチアーノ氏)
ブドウのイキイキとした生命力が感じられる
この作業を畑とカンティーナで行う事で、「フローフォームス」を一つに繋げています。ヴィンテージの特徴によってはフローフォームスを年に2~4回行います。(味わいが閉じこもりがちなヴィンテージであれば多めに行います)年によっては必要に応じてタンクも使います。フローフォームスを経たワインとそうでないワインを飲み比べると、明らかに前者の方がブドウのイキイキとした生命力が感じられます。つまり、ビオディナミ農法が自然とカンティーナ、人間との関わり方を変えてくれたと言えます。
自然と向き合い、受け入れ「ワイン造りの感性を磨く」
私たちは「どうしたらより良いワインとなるか」を常に考えています。ワインは、造る人間のコンディションも大切です。健全な精神を持つ元気な造り手からはワインもそうしたキャラクターを持ったものに自然となっていくと思っています。
醸造理論だけではない「感性を磨く」
自然の力を活かして体と心も鍛え、醸造理論だけではない「ワイン造りの感性を磨く」ことが大切です。「畑が今何を必要としている事を感じ取る」事が重要です。しかし畑からしてみれば、「そんなに手を加えなくてもいいよ」ときっと言っている事でしょうね(笑)。ビオディナミ導入以前、春になったら畑を耕す必要がありました。今考えると、まるで人間の皮膚をひっかくような作業をしていましたね(笑)。
管理するという視点だけではブドウは健全に育ってくれない
今では土に手を加えずとも花や草が共存する健全な畑となりました。管理するという視点だけではブドウは健全に育ってくれないのです。人間は自然の一部であり、自然は変化しているという事に気づかせてくれます。例えば、雨が多い年でもブドウの周りに草木があれば、水をすいあげて緩和してくれます。自然の生態系がブドウ樹を助けているのです。
ヴィンテージの特徴をしっかりと反映できる
畑はヴィンテージや天候による大きな影響を受けにくくなってきています。例えば2008、2009年はバランスの良い品質の良いブドウが獲れました。2009年の方がやや生産量は少ないです。2010年は他の年に比べ、暑く過ぎない夏となりました。暑すぎるとブドウの成熟が止まってしまうのですが、2010年は15~20日おきに少しの雨が定期的に降り、昼夜の寒暖差も大きく、重すぎず、酸も確りとした完璧なバランスとなりました。ビオディナミ農法により年ごとのキャラクターがしっかりとワインに反映していて、とても満足しています。
芳醇な風味と美しい飲み心地!ランポッラのスタンダードキャンティクラシコ
高貴な凝縮感と美しい深みを兼ね備えた珠玉のスーパートスカン「サンマルコ」
試飲
コメント
カシスやプラムの豊かな果実香に、スパイス、杉、森の下草の深く艶やかなニュアンスが綺麗に重なります。凝縮した果実の風味に寄り添う洗練されたタンニンと伸びやかな酸による深い味わいがありつつも、あたかも上質なシルクを一枚纏ったかのような極めて美しいタッチで舌の上を滑らかに駆けていきます。サンマルコのもつ自然な力強さと精緻な美しさが心地よく口中に広がります。偉大なスケール感がありながら緻密で隙の無い洗練された輝きを放つ珠玉のスーパートスカンです。牛フィレ肉のステーキ等、上質なお肉料理と素晴らしい相性を魅せてくれます。
カベルネの圧倒的な深みと群を抜く美しいボディランポッラ最高峰キュヴェ「ダルチェオ」
試飲
コメント
ブラックベリーやプラムなどの黒系果実やチョコレートのような甘い深いスパイスのアロマが感じられます。飲むと圧倒的な果実感と濃度を感じる力強い存在感があるワインでありながら、野暮ったさや荒さは無く、端正で洗練された上品な余韻を持つ素晴らしいスタイルを堪能できます。著名なスーパートスカンの中でも「ダルチェオ」の持つボディの深さと美しさは群を抜いています。
良年のみ極僅かにリリース!芳醇なアロマに溶け合う美しい飲み心地!ランポッラが造る傑出した極上甘口白ワイン
試飲
コメント
杏やアプリコットの深い果実香に、ハーブを思わせる爽やかさ、イキイキとしたミネラルのニュアンスが重なる上品で甘美な香りがあり、思わずグラスに吸い込まれそうな魅力を放っています。豊かな甘味と芳醇なアロマが広がりますが、しなるような美しい酸とミネラルがワインの屋台骨を確りと支えていて、舌を優しく撫でる滑らかで清らかな味わいがあります。素晴らしいレベルの甘口ワインですが、生産量は極僅かで毎年は造られていません。それ故、世界中のランポッラファンが待望する隠れた人気ワインなっています。フォアグラ、デザート、焼き菓子、ブルーチーズ等と一緒に楽しんでみたいワインです。
インタビューを終えて
しかしワイン造りの核心に迫ると、
「ワイン自身は心をもっているから、開けて楽しまれる事を望んでいる」
「自然について考えると自分がその小さな一部であると気づかせてくれる」
「畑が何をして欲しいか耳を傾ける」
と非常に詩的でシンプル、かつとても深い表現でした。テクニックや理論ではなく、自然の本質を常に考えているルカさんの真っすぐで熱い思いが言葉の節々から伝わってきました。
今回、トスカニーオフィスでの試飲で「靴を脱いでワインを飲む」事にいたく喜んでくださったようで、「リラックスしてワインを飲む事は素晴らしいですね。イタリアに帰ったら靴を脱いでワインを飲むよ。よりリラックスしてワインを楽しめば、もっとも美味しいワインが出来るようになると思うからね」と、とてもポジティヴで常に前を向いている印象がありました。
ビオディナミ農法で、より自然に回帰した手法をとっていますが、栽培におけるリスクも大きく、科学的に実証されていない点も多く、懐疑的な見方もあります。
しかし、ランポッラが造るダルチェオ2010年は『アントニオガッローニ』で100点満点、世界最高得点をマークしました。「言葉で表現しがたい息を呑む崇高なワイン」と最大級の賛辞が送られています。2010年は世界中で争奪戦となり現在入手困難なワインとなっています。今回試飲した2011年ダルチェオからも極めて純粋で力強くも深く滑らかな舌触り、美しく広がる風味にただただ圧倒させられました。理論や醸造テクニックだけではない、もっと深い部分の「ワインの凄み」を感じさせてくれました。トスカーナの自然は勿論、ルカさんの純粋で情熱的な人柄がワインにもしっかりと現れているように思いました。
試飲
コメント
スミレやベリー、仄かなスパイスのニュアンスが入り混じるイキイキとした香りです。飲むと、サンジョヴェーゼの凛としたエレガントさを感じる芯の通ったスタイル。フレッシュで力強く、しっかりとした果実味とともに心地よい酸と目の細やかなタンニンが感じられる、美しい飲み心地とバランスのとれた味わいです。野菜を使ったトマトソースパスタやと鶏肉のグリル等と相性が良いです。