TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2018/11/12

ガヤ社 アンジェロ ガヤ氏、ジョヴァンニ ガヤ氏

イタリアワインの巨匠ガヤの新世代を担うジョヴァンニガヤさんに聞く!注目のボルゲリ「カマルカンダ」

ガヤ社ジョヴァンニ ガヤ氏と
誰もが認めるイタリアワインの巨匠、ガヤ。バルバレスコの偉大さを世界中に知らしめ、さらにトスカーナのモンタチーノとボルゲリへも進出。現在はシチリア・エトナでの新規プロジェクトが進行中という意欲的な生産者です。現当主で今日のガヤの地位を築いたアンジェロガヤ氏とともに、今年25歳になる長男ジョヴァンニ ガヤ氏が半年前から本格的にワイナリーに参画し、長女ガヤ ガヤ女史とともに海外マーケットの重要な仕事を任されています。今回はジョヴァンニ ガヤ氏に1996年創業のボルゲリ「カマルカンダ」について、そしてセミナーでは偉大な父アンジェロガヤ氏と偉大なガヤ親子に話をお伺いしました。

ワイナリーにとって根本を成す「職人的仕事」

ガヤ一族5人の偉大な家族
初めまして。ジョヴァンニ ガヤです。今年で25歳になります。まずガヤ社について説明しましょう。1859年に設立し、現在5人の家族で運営しています。TOPは父アンジェロガヤで今年78歳になりますが、立ち止まる事無く前進を続ける人物です。姉のガヤ ガヤは海外の輸出を担当し世界各国を飛び回っています。実際ガヤの生産量の85%は海外で消費されています。もう一人の姉のロッサーナ ガヤは母のルチアとイタリア国内マーケットを担当しています。母のルチアはオフィスの責任者でもあります。ロッサーナは生産分野も担当していて、所有する3つのワイナリーに携わっています。私はガヤガヤの14歳下、ロッサーナの12歳下になります。

私が本格的にワイナリーに参加したのは約6か月前で、姉のガヤ ガヤの海外担当のサポートが現在の仕事になります。今は世界各国へのプロモーション活動の一部を受け持っています。私自身は醸造学を一切勉強していなくて、大学では経済学を勉強してきました。

父は私に「あれをしなさい、これをしなさい」と言う事はありませんでした。「今日こんなイベントがあるから一緒に行くか?」とワインイベントに連れて行ってくれる事が良くありました。その時に父の話をしっかりと聞いていましたね。大学を卒業してからは1年半位イタリア国外(イギリス、アメリカ)で仕事をしていました。実際にワイナリーに100%仕事に入るようになって、改めて父の下で勉強をしています。

地図ピエモンテ、トスカーナに3つのワイナリーを所有
私達には3つのワイナリーがあります。それはピエモンテ州とトスカーナ州に2つです。トスカーナでは1994年、モンタルチーノにある「ピエーヴェ サンタ レスティトゥータ」を購入しました。ピエモンテ以外で初めてのワイナリーです。続いて1996年にボルゲリに新たにワイナリーを造りました。それが「カマルカンダ」です。

ワイナリーにとって根本を成す「職人的仕事」
私達は「アルティジャナーレ」(職人的仕事)な手造りにこだわるワイナリーです。この言葉はワイナリーにとって根本を成す言葉だと思っています。日本でも「アルティジャナーレ」の精神を重要と考える文化がありますね。ですから日本は私達のワインを高く評価して下さっている国だと思っています。「アルティジャナーレ」の意味するもの、それはブドウもワインも外部の物を使わない、3つのワイナリーは全て自己所有、自分たちで造ったブドウだけを使ってワインを造っている、という事です。

自分たちが納得したモノだけを販売。そうでなければボトリングしない
この考え方は60年以上も前に、祖父ジョヴァンニ ガヤが始めた時に遡ります。ボトリングをして販売するという事は、自分たちが納得したモノだけを(ボトリングして)出すことであり、土地、テリトリーの表現が出来なかった納得できなかった年については瓶詰めせずにバルクで売ります。消費者の皆様へ「ガヤ」の造るワインの責任のようなものでしょうか。

1年間通して、畑仕事をしている人、カンティーナで仕事をしている人をずっと雇い続けている
そしてもう一つ重要な事は、収穫のシーズンだからと言って季節的に人員を雇うようなことはしません。1年間ずっと通して、畑仕事をしている人、カンティーナで仕事をしている人をずっと雇い続けています。働く者同士の結びつきも強くなり、ガヤの思想を伝え深く理解してもらうためです。

私達にとって、サンジョヴェーゼとネッビオーロは非常に重要な品種です。この2つ本種はキャラクターも違いますし、正しく栽培するのが難しい品種です。そういう意味でも、その品種について深い理解を持つ人材が必要になってきます。自分たちの中には3世代に渡って働いてくれる人もいます。お爺ちゃんがやっていて、今は息子や孫もブドウを向き合っている。品種の事を良く理解してくれている人間と仕事をしています。

「家族であるからこそ、価値を守る続ける事が出来る」
家族で経営する私達にとってアドバイスを頂く外部の人間もいますが。ワイナリーの事に関しては大きなテーブルに家族5人が集まって決めています。その時は外部の人間は入りません。

私達にとって「家族である」事が非常に重要で、家族であるからこそ、今まで価値のあると思うものを守る続ける事が出来ました。そして代々受け継いでいく事が出来ていると思います。私も姉たちも非常に幸せだと思っています。4世代前の思想だったり、価値や恩恵というものを私達はしっかりと受け継ぐことが出来、更に将来的につなげていく事が出来るからです。

「自分たちが造りたいものを造る。例えそれが市場の傾向とは違っていたとしても」
もう1つ重要な事は、自分たちのモノ造りは決して流行や市場の動向に左右されずに決めてきています。「マーケットがワインをどう思っているか?」は興味がありません。自分たちが造りたいものを造る。例えそれが市場の傾向とは違っていたとしても、です。

国際品種にフォーカスした地「ボルゲリ」で1996年創業

カマルカンダ1996年ボルゲリで創業「カマルカンダ」
それではカマルカンダのお話をしましょう。

カマルカンダは1996年に始めたワイナリーです。その時には既にモンタルチーノの「ピエーヴェ サンタ レスティトゥータ」でブルネッロを造っていました。「ピエーヴェ サンタ レスティトゥータ」は既にワイナリーがあった場所を購入しましたが、カマルカンダに関しては新たに土地を購入する所から始まりました。自分たちで畑に植樹を行い、カンティーナも一から造り、3つの赤ワインを2000ヴィンテージで初リリースしました。私が1993年に産まれ、その少し後の1996年にカマルカンダは誕生しました。カマルカンダの成長と自分の成長が同じく進み向上している事に、私自身とカマルカンダと結びつきを感じています。

国際品種にフォーカスした地「ボルゲリ」
カマルカンダに関しては自分たちも非常に満足しています。植樹を始めてから、21年経って、年々ブドウの品質が上がってきています。ボルゲリ自体はバローロやバルバレスコ、モンタルチーノに比べると、「最近誕生したような」新しい土地であり、イタリアワイン産地の中でも国際品種のブドウにフォーカスした場所でもあります。

イタリアは20州ありますが。それぞれの場所で適した土着品種が栽培されています。ピエモンテのネッビオーロ、ヴェネトのアマローネのコルヴィーナやロンディネッラに、トスカーナのサンジョヴェーゼもあるし、カンパーニャのフィアーノもそれにあたります。それぞれの土地毎で沢山の品種があるので「イタリアワインは難しいね」という意見もありますが、ボルゲリは今お話したような場所とは少し異なります。カベルネソーヴィニョン、カベルネフランを中心に国際品種に特化した土地であるからです。

19回にも亘って土地に所有者に会いに行き、ようやく土地を購入
カマルカンダのワイナリー名ですが、イタリア語では特に意味を成していません。実はピエモンテの方言から来ている言葉なのです。Ca=カーザ(家)、Marcanda=マーケット(市場)という造語です。1995~1996年にかけて父アンジェロガヤが19回にも亘ってこの土地に所有者に会いに行き、タフな交渉を経てようやく土地を購入する事になった。カマルカンダの名前の由来ですが、会いに行っても何がしたいのか、話が全然前に進まない。進んだと思ったらまた後ろに下がる。まるで終わりのない商談(マーケット)のように(笑)。そのメッセージを込めた名前となっています。

気候変動に負けない「ブドウの生命力」を高める取り組み

畑気候変動に負けない「ブドウの生命力」を高める取り組み
「ガヤ」の新しい2つのトピックについてお話します。

まず、今まさに「気候変動」が起きていますね。2年前、11月に日本に来た時、寒かった事を覚えていますが、今日はとても暖かいですね。カマルカンダのブドウ畑が出来て約20年間経ちましたが、今どういった気候の状況にあるのか調査をしています。近年は夏の期間がますます長くなり、暑さが増しています。冬の期間はますます短くなり、暖かくなってきています。

「ワインのエレガントさや繊細さを保つにはどうしたら良いか」
この変化の中でワインのエレガントさや繊細さを保つにはどうしたら良いかを考えるようになりました。畑での仕事のやり方を変えなければならないという結論に至りました。つまり、気候が変わっていくという事はいい点もあれば、悪い点もある。ネガティブな面は太陽の影響が強くなり、ブドウの糖分が上がりやすくなり、アルコール度数が上昇してしまう事です。もう一つは気温が上がり、害虫や病気が起こりやすくなった事です。20年の変化で畑に対して、より「生命力の強さ」が求められるようになった。より強い畑にして、生命力を高めていかなければならない事に気づきました。

同時に色々な生物、植物が育つような「生物多様性」の環境造り
ブドウの生命力を高める為に、ブドウのクローンひとつとって見ても、何が強いのか選択する必要があり、同時に色々な生物、植物が育つような「生物多様性」の環境にする事によって、より畑とブドウが強くしていく必要があると解りました。畑に対して化学的なアプローチはこの20年で止めました。1996年からは現在はコンポスト(堆肥)を造っています。コンポストは牛の糞、骨を使いました。コンポストの使用を繰り返す事で土地の中に活動するバクテリアが増え、より畑が強くなっていきました。現在は年間700クイントリットルのコンポストを造っています。

植物学、生物学、気候学のエキスパートを招聘
もう1つは、8名の専門性の高いコンサルタント外部からを招き仕事をしています。気候変動による温暖化にどう対応するかを考えている訳ですが、ワイン造りとは全く関係のない分野のエキスパートです。2名は植物学者、2名は生物学者、残りの4名は大学教授で気候変動について研究しています。毎日毎日、それぞれの分野の意見を聞き対応しています。

特に寄生虫に対処する方法に注力しています。40~50年前は寄生虫がブドウ樹にカビを生やす病気に対して化学的なアプローチをしていたのですが、今は虫を寄せ付けないフェロモンカプセルを使い化学的なアプローチに頼らない方法を採っています。

また畑の近くに木を植えて、鳥を呼び込むようにしています。鳥がくるおかげで若干ブドウは食べられてしまうのですが、ブドウにとって害のある虫も食べてくれます。畑には花を植えています。ピエモンテ、トスカーナ、ナパといった世界各国のワイン畑を見ても、ブドウだけ、つまり1つの農作物だけを植えている状況が殆どです。一つの農作物だけだと段々と生命力は落ちていきます。それに加えて、10~15種類の花を植えました。それで色々な虫が寄ってくることが分かりました。

ミツバチ綺麗な土地に住むミツバチの巣箱を設置
一番象徴的な試みが、ミツバチの巣箱を80個ほど設置しました。ミツバチがちゃんと蜜を造ってくれる土地は綺麗な土地に限られるからです。重要な事は土地のキャラクター特徴を保つことであり、土地の性格を同じように保ち事で。生命力を高め寿命を延ばしていく。

今申し上げた取り組みの中で、ピエモンテでは1年間で1200ミリリットルの雨がまばらに強かったり、弱かったりと降るのですが、土地の持つ水の保水性が高まったおかげで影響も少なくなりました。もう1つは豆類と小麦類の2つの植物を植えました。土地の特徴により2つを使い分けています。肥沃な土壌であれば穀物を植えます。穀物類を植える事で生産が増えすぎないようにしています。土壌が痩せていれば豆類を植えます。豆類は空気中の窒素を取り入れ、土地にエネルギーとして還元してくれます。これらの植物は5月位までに育ちます。5月になったらトラクターで育った草を刈り倒していきます。刈り倒した事で夏の温度が上がっても表土に湿度を与える事が出来ます。夏の暑さから保護する役割も果たしています。

Q.8人のコンサルタントは何年前から行っていますか?

ビオロジックとかオーガニックとかカテゴライズされたものではない「メト ド ガヤ」
8~10年前程です。ガヤの考える「良いブドウ」を造る為に行っています。つまり「メト ド ガヤ」と言えますね。一般的に言われているビオロジックとかオーガニックとかカテゴライズされたものではありません。まさにメトドガヤ(ガヤ方式)なんです。15年位前から取り組み、沢山の失敗もしているし、また多くを学んでいます。私達がやっている事は、自分たちの中で当てはまる事です。他の生産者とは違います。唯一の方式だと思います。

高い品質」と「環境のリスペクト」「150年間脈々と受け継がれるワイン造り」
私達はワインを売っている訳ですが、ビオロジックのワインを売っている訳ではありません。私達は「ガヤ」のブランドを売っています。そこには「高い品質」と「環境のリスペクト」「150年間脈々と受け継がれるワイン造り」が存在しています。「ビオロジック」だとか「オーガニック」といった何か一つのカテゴリーに入る事は決して成りえません。

これらの仕事は全て畑で行われます。一般的な生産者の4倍以上の労力と時間をかけて畑仕事をやっています。こだわりを持って仕事をしていますが、結果こういったワインとなるという確実な保証は出来ませんが、自分たちが目指しているワイン造りの方向性は「長期熟成出来るワイン」です。それはより強いブドウ由来のものであり、土地のキャラクターをずっと保ちつつ、環境の変化に適応するブドウでなくてはなりません。それが「長期熟成出来るワイン」となる手助けになると思います。

人間に例えると、熱が出たり病気になると薬を飲みますよね。そしてまた病気になって薬を飲む。何度も繰り返すと最終的には体が薬に侵されてしまう。しかしそもそも薬が必要無い肉体があれば、外敵が入ってきたとしても対応出来、結果的に強い体になっていきます。つまり何か攻撃されたとしても自分の力で対応できる。そういうブドウこそが必要なのです。

Q.ガヤのワインに感じられる「エレガントさ」と「生命力に溢れる強いブドウ」の関係性はどのようなものですか?

エレガントなワインを造るには収穫のタイミングを図る事が重要です。例えばネッビオーロ一つとって見ても今は10月になったら収穫をします。昔は11月になるまで収穫はしませんでした。気候変動により以前にも増してブドウが凝縮していくのが早くなっています。遅すぎるとアルコール度数が高くなりますから。収穫のタイミングを見極める事が重要です。凝縮感のあるブドウはアルコール度数も高くなり、円やかで分かりやすいワインとなりますが、エレガントなワインというものは良質な酸を伴います。個性が豊かで複雑な、一種の「解りにくさ」のようなものが感じられます。ここ20年の気候変動でエレガントなワイン造りを目指していますが、実際にこれまでのワインと比べて長期熟成できるかどうかはまだ分かっていません。その違いや結果が解るにはまだ先になるかと思います。

~カマルカンダ テイスティング~

ボトル赤ワインで有名なトスカーナにおいて白ワインにチャレンジ「ヴィスタマーレ」
ここからは試飲しながら2番目の新しいトピック「カマルカンダ」のワインについて詳しくお話しましょう。カマルカンダでは1つの白ワインと3つの赤ワインを造っています。白「ヴィスタマーレ」は2009年に誕生したワインです。このワインを造ったのはトスカーナで白ワインのポテンシャルを証明したかったからです。まずトスカーナと聞いて、白を思い浮かべる人はそう多くはないですよね。トスカーナと言えば「赤」であって、モンタルチーノ、キャンティに使用されるサンジョヴェーゼが一般的にイメージされるものだと思います。カマルカンダは設立当初は70ヘクタールで現在126ヘクタールになります。一部はビッボーナ地区で「プロミス」と「ヴィスタマーレ」用の畑となります。ヴィスタマーレは畑から海が広がる景色が見える事から名付けられています。

2017年からヴェルメンティーノ、ヴィオニエ、フィアーノのブレンドへ
トスカーナの白ではヴェルメンティーノ、トレッビアーノが有名かと思います。トスカーナのボルゲリで白ワインを造る事を決意し、様々な品種を実験的に栽培し、色々試した結果ヴェルメンティーノとヴィオニエに落ち着きました。ヴェルメンティーノとヴィオニエは全く反対のキャラクターを持つブドウです。ヴェルメンティーノはリグーリア、トスカーナの海岸部、サルデーニャ等海に近い場所を好む品種です。一方ヴィオニエは暑さを好むブドウです。真逆の個性をもつブドウがお互いを補い合う事でヴィスタマーレは成立しています。ヴェルメンティーノのフレッシュ感と、骨格やアロマを与えるヴィオニエの個性です。

ボルゲリは元々暖かい土地であったので、気候変動を受けてさらに暖かくなりました。ヴェルメンティーノにとって、酸を保つために栽培において手助けが必要となりました。2017年からフィアーノを新たにブレンドする事にしました。フィアーノはカンパーニャ州の土着品種で暑さに好むと同時に酸を保つことが出来る品種です。つまり、フィアーノはヴェルメンティーノとヴィオニエが持つ2つの個性を有しています。2017年のヴィスタマーレは40%ヴェルメンティーノ、40%ヴィオニエ、20%フィアーノという新たなブレンドになりました。ボルゲリでヴィオニエ、フィアーノを栽培している生産者はいたかも知れませんが、この3品種のブレンドで造ったのは私達が初めてです。

2015年から、メルローは「プロミス」のみに使用
続いて赤ワインについてですが、2014年までは3つの赤ワインのベースにメルローを使っていました。2015年から、メルローは「プロミス」のみに使う事になりました。「マガーリ」と「カマルカンダ」に関してはカベルネソーヴィニョンとカベルネフランをより重視したワインとなっています。メルローの使用を減らした分、カベルネソーヴィニヨン、カベルネフランのブレンド比率を増やしました。20年間造ってきたこれまでの経験によって、どの土壌にどの品種が適切でどのように活かせるか理解が更に深まった事、そして気候変動が今回のブレンド比率変更の要因です。

気温が高くなる事でメルローのもつ本来の個性が失われつつあります。メルローあまり暑さを好む品種ではなく、暑すぎるとジャムのような果実味になり、ボディも大柄になっていく傾向があります。

Q.ボルゲリ全般で近年カベルネフランを使ったワインが増えているような印象をうけますが?

カベルネフラン主体「マガーリ」
カベルネソーヴィニヨン、カベルネフランもメルローに比べると晩熟型です。フレッシュさと酸を保ったまま成熟していくブドウです。メルローに比べて暑いエリアも好む性質があります。私達もそうした事からカベルネソーヴィニヨン、カベルネフランにより注力しています。2014年のマガーリは50%メルロー、25%カベルネフラン、25%カベルネソーヴィニヨンブレンドでしたが、2015年からは60%カベルネフラン、30%カベルネソーヴィニヨン、10%プティヴェルドのブレンドに変わりました。プティヴェルドという品種は暑さを好み、かつ酸も保てる特徴があります。2015年はカベルネフランの特徴がはっきりと出ていますね。

カベルネソーヴィニヨン主体「カマルカンダ」
カマルカンダは良い年しか造らないトップキュヴェになります。年産約2万本です。2014年はカマルカンダを造っていません。2013年のカマルカンダがメルローを使った最後のヴィンテージになります。2015年は80%カベルネソーヴィニヨン、20%カベルネフランのブレンドとなっています。

「プロミス」の品質が向上
この変更により、3つの赤ワインの個性が明確に特徴付ける事が出来ました。例えば「プロミス」2015、2016年は私達が造ってきた中で一番の仕上がりとなりました。カマルカンダ、マガーリに使われていた一番良いメルローが2015年以降プロミスに使用される事になったからです。

ラベル 3つの赤ワインの特徴が鮮明に際立つ仕上がりに
2015年の4月、一番良いメルローが植えられている畑を選定し、良い場所のメルローだけを残し、そうでない場所は夏にカベルネソーヴィニヨン、カベルネフランを植樹し直しました。今となっては唯一メルローを使っているワインがプロミスになります。55%がメルロー、35%シラー、10%サンジョヴェーゼのブレンドとなります。プロミスの比率は以前と変わっていません。2015、2016年のプロミスは私達の一番良いメルローが使われているので、品質も各段に上がりました。それによりマガーリはよりカベルネフランの特徴が出て、カマルカンダはカベルネソーヴィニヨンの特徴が出ています。それぞれ3つの赤ワインの特徴が鮮明に際立つようになりました。

ボルゲリの風景を切り抜いたラベルデザイン
カマルカンダのラベルデザインはボルゲリ通り(Via bolgheri)の風景を切り抜いたものです。プロミスの名前の由来は“プロミス”いわゆる約束された「品質」がある事、マガーリの意味はイタリア人なら、何度の口にする「マガーリ」(・・・だったらいいな)という意味がありますが、私達が望む方向性を指した意味となっています。

「アンジェロガヤ氏祖母の4つの言葉」と「ラベルに込められたガヤの誇り」

セミナー「アンジェロガヤ氏祖母の4つの言葉」と「ラベルに込められたガヤの誇り」
翌11月13日はアンジェロ ガヤ氏のセミナーに参加させて頂きました。アンジェロガヤ氏のお話は地球全体の気候変動から始まり、未来の地球を守る為に一人一人が意識をしなければならないというものでした。常に新しい事へチャレンジするガヤさんらしいお話でした。

ガヤの祖母アンジェロ ガヤのお話の中でも特に印象的だったのが、「ガヤ氏の祖母の4つの言葉」と「ラベルに込められたガヤの誇り」のお話でした。

祖母が常々言っていたのは立派な職人になる為には4つの段階があるという事です。

1.FARE:(何かを)行う事です。
仕事に取り組む、何かを造るという意味です。

2.SAPER FARE:技能を会得する事です。
職人が自分の構想をもって何かを造る。「会得をする」という事です。一生をかけて学びより知見を増やしていかなければならない。より高い品質を求め、自身の目的を実現していかなければならない。それが認められると「マエストロ」と呼ばれます。

3.SAPER FAR FARE:伝える事です。
会得した職人としての技能を(やらせる事が出来る)で伝授する事が出来、次の世代、会社の社員たちに伝える事が出来なければならない。

4.FAR SAPERE:知らせる事です。
職人が何をしているか、多くの方に知らせる。祖母はいつも私にこう言っていました。「職人にならなければいけません。そしてこの4つのステップを全うしなければなりません」と。(職人は)どのような職種であっても自分のプロジェクトの中でより良い品質を目指し、進んでいく。それが大切です。加えて、他の人が思いつかないような事を考える能力がある事、信念をもって品質を追求する。そして、一般的に大多数が思っている事を安易に納得しない事です。自分の考えを持つ。それが重要です」と。

故ジョヴァンニガヤ氏ガヤの歴史において最も偉大な職人「ジョヴァンニ ガヤ」
私の父、ジョヴァンニガヤ(1908~2002)はガヤの歴史において最も偉大な職人でした。私の師匠です。ガヤ社の仕事における一番大切な基本原則を示してくれました。

左側に見えるボトル(1937ヴィンテージ)ですが、父の名前が入った(父の代の)最初のボトルです。父がガヤと言う名前をラベルの高い位置に大きく表示しました。当時ラベルにこれだけワイナリーの名前を大きく出している所はありませんでした。



旧&新ボトル父はワインを買うにあたり「何という名前の職人がこのワインを造っているか」知る必要性があると信じていたからです。バローロだから買うとかバルバレスコだから買うという事ではなく、「誰が造っているのか?」生産者を知る事が大切だと考えた訳です。父のコンセプトを継承しつつ、ガヤのブランド名がハッキリと分かる、現在のガヤのラベルに至っています。

「まだ引退はしたくありません。新しい事にもチャレンジしたいと思っています」
私は今78歳ですが、まだ引退はしたくありません。もちろん子供達への(仕事の)スペースを大きくさせてあげなければなりませんので、ある部分では後ろに引く事が必要だと解っていますが、新しい事にもチャレンジしたいと思っています。

明るいトスカーナの海岸の光景からインスピレーション「ヴィスタマーレ」

2017年からフィアーノを新たにブレンドする事にしました。フィアーノはカンパーニャ州の土着品種で暑さに好むと同時に酸を保つことが出来る品種です。つまり、フィアーノはヴェルメンティーノとヴィオニエが持つ2つの個性を有しています。2017年のヴィスタマーレは40%ヴェルメンティーノ、40%ヴィオニエ、20%フィアーノという新たなブレンドになりました。ボルゲリでヴィオニエ、フィアーノを栽培している生産者はいたかも知れませんが、この3品種のブレンドで造ったのは私達が初めてです。
ヴィスタマーレ2017

試飲
コメント

眩しい太陽と青い海。明るいトスカーナの海岸の光景からインスピレーションを受けて名づけられた、爽やかな白ワインです。ヴィスタマーレに使われているブドウは、実際にトスカーナのパノラマの水平線をのぞむ畑から収穫されたもの。潮風と明るいブルーの海に健やかに育まれました。それぞれのブドウの特徴がうまく重なりあい、豊かな香りと複雑さ、爽快感が生み出されています。

凝縮感がありながらスマートな印象の美味しさ「プロミス」

2015年から、メルローは「プロミス」のみに使う事になりました。例えば「プロミス」2015、2016年は私達が造ってきた中で一番の仕上がりとなりました。カマルカンダ、マガーリに使われていた一番良いメルローが2015年以降プロミスに使用される事になったからです。
プロミス2016

試飲
コメント

プロミスはメルロー50%にシラーとサンジョヴェーゼをブレンド、品種ごとに別々に発酵、バリック(一部新樽)で12ヶ月間熟成後、数ヶ月間瓶熟成させてリリースされます。森の果実や甘いスパイスを感じるアロマ、濃厚でみずみずしい果実味、豊かなタンニンといきいきとしたフレッシュ感が広がる味わい。凝縮感がありながらスマートな印象の美味しさです

まろやかな口当たりと調和したバランスの取れたエレガントな美味しさ「マガーリ」

カベルネソーヴィニヨン、カベルネフランもメルローに比べると晩熟型です。フレッシュさと酸を保ったまま成熟していくブドウです。メルローに比べて暑いエリアも好む性質があります。私達もそうした事からカベルネソーヴィニヨン、カベルネフランにより注力しています。2014年のマガーリは50%メルロー、25%カベルネフラン、25%カベルネソーヴィニヨンブレンドでしたが、2015年からは60%カベルネフラン、30%カベルネソーヴィニヨン、10%プティヴェルドのブレンドに変わりました。プティヴェルドという品種は暑さを好み、かつ酸も保てる特徴があります。2015年はカベルネフランの特徴がはっきりと出ていますね。
マガーリ2015

試飲
コメント

2015年からはカベルネフラン主体に変更、カベルネソーヴィニョンと、プティヴェルドをブレンドしています。品種ごとに醸造し、12ヶ月以上のバリック熟成を行います。深みのあるルビー色、ベリー系の果実とジャム、甘いスパイスやカカオ、海岸に育つ植物のようなニュアンスも感じられます。やわらかな口当たりのまろやかな味わいにきれいに溶け込んだタンニン。はっきりとした酸味が心地よく調和したバランスの取れたエレガントな美味しさが楽しめます。

まろやかな口当たりと調和したバランスの取れたエレガントな美味しさ「カマルカンダ」

カマルカンダは良い年しか造らないトップキュヴェになります。年産約2万本です。2014年はカマルカンダを造っていません。2013年のカマルカンダがメルローを使った最後のヴィンテージになります。2015年は80%カベルネソーヴィニヨン、20%カベルネフランのブレンドとなっています。
カマルカンダ2015

試飲
コメント

一つの確かなボルゲリ。ルビー色のトーンの色合いはとても濃い。控えめな香り、でも表現力があり洗練されている。甘草や桑の実、ラズベリーのジャム、ブルーベリー、などが桁外れにしっかりと表れたクリーミーな香りだ。非常に精密で計算された味わい。骨格がエレガントさと調和する。とても長く甘い余韻。バリック(新樽)で18ヶ月間熟成。長期熟成にふさわしい偉大な赤ワインとして名が知られる1本。洗練されたエレガントなスタイル、しっかりとしたミネラル感も印象的。

インタビューを終えて

ジョヴァンニ ガヤ氏はインタビュー中もずっと、ガヤのこだわりについて、話し続けて下さいました。インタビュー翌日のセミナーでジョヴァンニ氏の偉大な父、アンジェロガヤ氏も1時間近くノンストップで、気候変動、植物生態系を配慮した栽培の取り組みと、お話された内容が親子で殆ど一緒である事に驚きました。ガヤ社の「確固たるポリシー」と揺らぐ事の無い「ファミリーの強い絆」を感じた瞬間でした。

「私は今78歳ですが、まだ引退はしたくありません。もちろん子供達への(仕事の)スペースを大きくさせてあげなければなりませんので、ある部分では後ろに引く事が必要だと解っていますが、新しい事にもチャレンジしたいと思っています」というアンジェロ ガヤ氏の力強いメッセージにワイン造りにかける情熱に尊敬の念を持たずにはいられませんでした。
ガヤ社ジョヴァンニ ガヤ氏とトスカニースタッフ

20歳未満の方の飲酒は法律で禁止されています。
当サイトでは20歳未満の方への酒類の販売は行っておりません。