マスクとは何か?/マスクの種類と使い分け
< そもそもマスクってよくわからない! >
私たちが普段何気なく使用している「マスク」。
この「マスク」は、素材・構造・デザインによって用途は様々。
みなさんは、マスクの種類がどれだけこの世に存在しているのかご存じでしょうか?
飛沫を防ぐマスク。
細菌やウィルスも防げるマスク。
医療用マスク。
防塵用マスク。
ファッション用マスク。
・・・など、思い付くだけでも様々な種類が存在していることが分かりますよね。
そして、2020年のコロナ禍によりマスクが、より日常的になりました。
マスクの使い方一つとってみても、予防のために着用する方もいればファッションとして楽しむ方もいます。
それが悪い事とは思えません。
使い方は人ぞれぞれですからね。
ただ・・・マスクの使い分けというものを覚えておくとまた違った世界に出会えるかもしれません。
ここでは、
・マスクとは何か。
・マスクの歴史。
・マスクの種類。
・マスクの素材について。
・マスクの性能について。
・マスクの選び方。
の順にお話ししようと思います。
< マスクとは何か? >
そもそもマスクとは何か?
たぶん、みなさんがご想像した通りのものです。
一般的には、衛生用具・お面や仮面・スポーツの防具など・・・対象の部位を覆い保護または隠す道具のことを指します。
特に、衛生用具としてのマスクは、近年こそ認知度が高まっていますが、
その存在は・・・実は・・・大昔から人間の暮らしを支えていたという事も分かってきました。
< マスクはいつ生まれたのか? >
〇日本の歴史
日本でのマスクのはじまりは、明治初期だったと言われています。
当時のマスクは真鍮(しんちゅう)製の金網を芯にして、布地をフィルターとして取り付けたもの。
炭鉱などで働く人たちの粉塵(ふんじん)除けが、おもな用途だったため「工場マスク」と言われていたそうです。
ところが・・・
1918(大正7)年。
インフルエンザ(スペインかぜ)の大流行をきっかけにマスクが予防品として注目を集めるようになりました。
出典元: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』スペインかぜより
スペインかぜは、世界保健機関(WHO)によると、当時約20億人だった世界人口の25~30%が感染したと推定され、
日本でも1918~1920年の3期で計約2400万人が感染、40万人が死亡したといわれています。
当時、国が配布したポスターには「マスクをかけぬ命知らず!」と書かれ、
黒いマスクを着用した紳士と婦人が描かれています。
(当時の需要はブームともいえるもので、2020年2月以降に起きた「COVID-19」と同じように
供給が追いつかなかったようです。加えて2020年度の時はマスクメーカーが乱立し、品質の低下を招きました。)
その後、マスクは徐々に普及し、1923年、内山武商店から発売された「壽マスク」が、商標登録品第1号に認定。
マスクは徐々に改良され、金網をセルロイドに変えたものやフィルター部分に別珍や皮革などを使用したものが現れます。
そして、1934(昭和9)年。再びインフルエンザが猛威をふるった時にマスクは大流行しました。
これ以降、インフルエンザがはやるたびに、マスクの出荷量も爆発的に増加。
1950年頃には日本初のガーゼマスクが誕生。
マスクは次第にその形を変えていき、
1973年に不織布製プリーツ型の原型が日本で生産販売されるようになりました。
1980年代から爆発的に増え始めた花粉症やインフルエンザの予防が、一般家庭でのマスクの普及を促進させることとなり、
現在に至っています。
〇世界の歴史
呼吸器を保護するマスクの起源は、およそ1世紀までさかのぼります。
古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスの著書には、
動物の膀胱を利用したマスクが紹介されています。
これはローマの鉱山で働く人々を赤い酸化鉛の塵から守るためのものでした。
布製マスクの起源は16世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチが発明したといわれています。
このマスクはきめの細かい布を水に浸して使うといったもので主に船乗りのために考案されたものだそうです。
そして17世紀。
多くの方は、この特徴的なマスクをアニメやゲーム、漫画や書籍などで目にしていると思います。
そう、ペストマスクです。
出典元: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ペスト医師より
黒死病流行時に欧州の医師たち(ペスト患者を治療する医師)が身に着けたマスクです。
鳥のくちばしを連想させる独特なフォルムのマスクは、先端に薬草や香草を入れ臭いから身を守る構造になっています。
当時、このペストマスクを装着する医師たちは、病気は「腐った物質や悪臭によって空気が汚染(瘴気)されているからだ」と考えられていました。
その為、薬草や香草を使い、臭いから身を守ったと言われています。
(※感染症・伝染病に関する内容は、このコラムでは割愛いたします。)
そして、時が流れ。
1918年、インフルエンザ流行時にアメリカでマスクが広まるようになりました。
2003年には、重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時に、香港などでマスクが日用品と認知されるようになりました。
身近に存在するマスク。
このマスクが一般的に使われるようになったのは、20世紀後半~21世紀にかけて。
本当にごくごく最近だったということが分かりますね。
< 多種多様なマスク >
一口に「マスク」と言っても、その種類は膨大。
ここでは代表的なマスクをご紹介します。
〇家庭用マスク(簡易マスク)
用途:異物(唾液の飛沫など)の飛散防止・ほこりの吸入防止・花粉対策など
我々が日常もっとも多く目にするマスクが、この家庭用マスク(簡易マスク)です。
その目的は、ほこりや花粉からの防御または自らの呼気や唾液の飛沫の拡散を防止するなどの役割もあります。
このマスクは不織布やガーゼなどで構成されており、鼻と口を覆うタイプの簡単な構造をしていることが一般的です。
市販されているものでは、1層から複数層の平板の素材をプリーツ構造にしたプリーツ型や、鼻と口の形状に沿うように
立体裁断されたより密着性の高い立体型などがあります。
また、鼻と口を覆うドーム型のカップをあてるタイプのカップ型、防臭・微粒子吸着効果のある活性炭を練り込んだものなど
種類が豊富です。
〇医療用マスク(サージカルマスク)
用途:医療現場や医療用向けに開発
マスクを装着した人から排出される微生物を含む粒子が大気中に広がるのを防ぐ目的で使用されるマスクです。
耐水加工の施された医療用マスクも存在しており、こちらは着用者が血液・体液由来の病原体に曝されるリスクを軽減するという目的も兼ね備えています。
装着方法はオーバーヘッドタイプになります。
〇N95マスク
用途:感染症対策・PM2.5対策
N95マスクとは、米国労働安全研究所の認定規格N95を満たした高性能のマスクです。
0.3μmの微粒子を95%以上捕集する性能を備えているため、結核やSARS、PM2.5、また放射性物質からの防御に効果があるとされるマスクです。
形状は球体を半分にカットした様なカップ型や鳥のくちばしのような二つ折り、三つ折りの様な物まで様々。
気密性が必要な為、装着にはオーバーヘッドタイプのゴム紐を後頭部で固定しなければならないため呼吸がしづらいです。
〇KN95マスク
用途:感染症対策・PM2.5対策
KN95マスクとは、中国規格の基準(基準内容は米国労働安全研究所の認定規格と同等)を満たした高性能マスクです。
n95マスクと同様に0.3μmの微粒子を95%以上捕集する性能を備えているマスクです。中国国内では、主に工事現場で粉じんを吸い込まないようにするためのマスクとして用いられていますが、メルトブローン布を複数枚使用した医療仕様のタイプもあります。形状はどちらも鳥のくちばしのような二つ折りの物。またこちらは民間用に開発されたマスクなので、耳掛け仕様となっています。
さらに詳しく知りたい方はコチラ→なぜKN95マスクなのか?
〇防塵マスク
用途:粒子状物質の吸入防止
防塵マスクは「産業用マスク」とも呼ばれ、工事現場や各種製造現場などにおいて空中に飛散する粒子状物質の吸入防止のために着用マスクです。
この防塵マスクは、使い捨て式と取り替え式の2タイプに分けられます。
使い捨て式は、濾過材と面体部分が一体型となった簡易式のタイプで、一回きりの使用で使い捨てるものです。
一方、取り替え式は、何度も使用する面体部分と、取り替えできるカートリッジの形となった濾過材を組み合わせるタイプとなります。 防塵マスクの規格は、「D」、「R」、「S」、「L」の4つのアルファベットを用いて表しており、「D」は使い捨て式、「R」は取り替え式、「S」は固体粒子、「L」は液体粒子を意味しています。 また、アルファベットの末尾に1~3の数字が付いており、数字が大きいほど捕集性能が高いことを意味しています。たとえば、DS3という規格のマスクは、使い捨て式で、固体の試験粒子を99.9%以上捕集することができるマスクになります。
ただし、環境に応じた適切なスペックの防塵マスクを使用しなければなりません。(詳しい内容は割愛します。)
〇防毒マスク
用途:有毒ガスおよび混在する粒子状物質の除去
有毒ガスや、混在する粒子状物質の除去において活躍するのが防毒マスクです。
有機ガス、ハロゲンガス、酸性ガス、アンモニア、亜硫酸ガス、硫化水素などの有毒ガスに対して、それぞれに合ったカートリッジ型吸収缶を取り付けたマスクを着用し、人体を防護します。 ただし、有毒ガスの濃度が規定の上限を超えている場合や、酸素濃度が18%未満の環境では使用できません。また、ガスの種類に応じた専用の吸収缶を使用しなければ、防御の効果がないため注意が必要です。
(今回ご紹介したマスクと用途は異なりますが、マスクと呼ばれるものは、実はまだまだたくさんあります。
バイク用フルフェイスマスク・ファッションマスク・ダイビング用マスク・ガスマスク(サバイバルゲーム用)・メッシュマスク(サバイバルゲーム用)・シートマスク(美容グッズ)など。)
マスクは、日常的に使用する簡易的なものから、病や死の危険から身を守ることができる高性能のものまでさまざまな種類があります。目的や場面に応じて、適切な規格・作業者の身体にフィットした適切な形状のマスクを選択し、快適で安全な環境で作業を行いましょう。
< マスクの素材 >
一般的に使われている家庭用マスクの素材についてご紹介いたします。
素材を知ることで適切なマスクを選択できるようになります。
〇一般的なマスクの素材
家庭用マスクに使わている素材は、主に「ガーゼ」「不織布」「ポリウレタン」の3種類。
ガーゼ
綿の糸をゆるくひねって織った生地で、肌当たりが良く、肌への刺激が少ないのが特長です。 このガーゼを使用したマスクは吸湿性・吸水性があるうえ、速乾性・通気性が高いのも魅力です。 睡眠時やエアコンの効いたオフィスなどで、乾燥からノドを守るのに役立ちます。 近年、内側に特殊フィルタなどを縫い込んだものも登場しており、使用感の良さだけではなく機能性も優れているといえるでしょう。ただし、ウイルスなど小さい粒子のものをカットする効果は低いです。
不織布
繊維や糸を織らずに熱や機械などで接着させたり絡ませたりして、シート状に作らているのが特徴です。 不織布は、原材料や製法によってさまざまな質感・形状に加工することが可能で、不織布を重ねたりフィルターを使用することで目の細やかさを調整できます。 そのため、「花粉用」や「ウイルス用」など状況を分けて使用することができます。 また基本的に使い捨てとなるため衛生的に使うことができます。
※メルトブローン布(メルトブローン不織布)とは
主にポリプロピレンでできており、繊維の直径は0.5〜10ミクロンといわれています。 独特な極細繊維構造は優れたろ過性、シールド性、断熱性、吸油性を備えています。 空気、液体フィルター材、断熱材、吸収材、マスク材、吸油材、拭き取り布の分野で活躍しています。 一般的な不織布マスクの中央層に使われており、細菌をろ過して細菌の拡散を防ぐフィルターとして重要な役割を与えられています。
ポリウレタン
伸縮性のある柔らかい素材で、速乾性が高いのが特徴です。 洗って使いまわしができるタイプによく使われています。 ホコリを防ぐことはできますが、ガーゼと同じようにウイルスをカットする効果は低いです。
< マスクの性能と特徴について >
市販されているマスクには「フィルターが99%カット」や「99%カットフィルター」と記載されている商品を多く目にすると思います。「何を」カットしているのかも知る必要があります。
マスクのパッケージに性能を表すものとしてPFE・BFE・VFEというものがあります。これはマスクのろ過率を表す表記で、マスクのろ過機能=バリア性になります。ちなみに、医療や病院用マスクでは、このろ過率が95%以上であることが必要とされています。
〇BFE(細菌/バクテリアろ過効率)
細菌を含む粒子(約3μm)が捕集(カット)された測定値です。
花粉や咳・くしゃみに伴う水分を含んだウィルスの飛沫(ひまつ)などが対象となります。
〇VFE(ウイルスろ過効率)
ウイルスなどの飛沫(約0.1㎛~5.0㎛)が捕集(カット)された測定値です。
インフルエンザウィルス、咳・くしゃみを伴う水分を含んだウィルスの飛沫(ひまつ)などが対象となります。
一般的にそれぞれの粒子の大きさは以下のようになっております。
スギ花粉:30~40μm
黄砂 :0.5~5μm
PM2.5 :2.5μm以下
ウイルス:0.1μm
水分を含んだウイルス:1~3μm
〇PFE(微粒子ろ過効率)
試験粒子(0.1μm)が捕集(カット)された測定値です。
インフルエンザウィルス、ウィルス単体、結核菌ウィルスなどが対象となります。
ウィルス性の感染予防にはVFEやPFEの数値がより高いものを、花粉の予防にはBFEの数値がより高いものを選択するようにしましょう。
〇形による違い
(※2023年9月11日更新)
平型 |
プリーツ型 |
立体型 |
リーフ型(柳葉型) |
|
ガーゼなど天然布を使った昔ながらの四角い形状で、高い保湿性と保温性が特長です。睡眠時やエアコンの効いたオフィスなどで、乾燥からノドを守るのに役立ちます。 |
目の下からあごまですっぽりと覆うことができ、口を動かしてもずれにくいのが特徴です。また口と鼻を押さえつけないため、呼吸しやすく締め付け感が少ないです。 |
立体的にデザインされたマスク。フィット感が良く口周りの空間が広く確保できるため「口紅が付く」といった女性ならではのトラブルも回避する事ができるでしょう。 |
2021年韓国で爆発的に人気になったデザインのマスク。ファッション性が高く女性に人気です。立体型と同じく口周りの空間が広いので口紅も付き難いマスクです。 |
〇吸い込みと吐き出しの飛沫量
※2021年2月18日追記 |
< マスクの選び方 >
ここまでご覧になられた方には、もう大方予想がついていると思います。目的に合わせた物を使用しないと、まったく効果がないもしくは、オーバースペックになってしまいます。危険な粉塵が舞う工場の中をファッションマスクで入る人なんていませんよね?
ここでは一般的に手に入るマスクの選び方についてご紹介します。
【目的別】
◇飛沫防止
使用マスク:ガーゼ・布・ウレタン・不織布
マスクは形質上内側から外側への飛沫を防ぐ作りになっています。
ただ飛沫を防ぐことだけを目的とするのであれば「ガーゼマスク、布マスク、ウレタンマスク、不織布マスク、サージカルマスク」を身に着ければ基本的には飛沫防止に繋がります。
◇ウィルス・細菌・花粉から身を守る
使用マスク:メルトブローン布入り不織布マスク・サージカルマスク・N95マスク・KN95マスク
医療用として作られたメルトブローン布が必要になるため、「不織布マスクやサージカルマスク」が挙げられます。
より高性能なマスクとなると「N95やKN95」といったマスクになります。
特に、N95やKN95のマスクは密閉性が高く漏れが少ないので、対ウィルス・対細菌・対花粉といったところで非常に役立ちます。
またメルトブローン布には「99・95・92・80・・・」といったろ過率が違うものが存在しています。現在確認できている中では99メルトブローン布が最も高いろ過率を誇っていると言われています。
【使用場所別】
【開けた場所or外】散歩・ジョギング・サイクリング・外での作業など
おすすめのマスク:不織布マスク、布マスク、ウレタンマスク
あまり人と接する機会が少ないため、布マスクやウレタンマスクが最適です。
中には通気性の良い不織布の2層マスクという物も存在していますので、手に入るのであれば不織布2層マスクがおすすめです。
【室内or屋内】会議・事務室・スーパーなど
おすすめのマスク:不織布マスク
人との距離が近いため、こちらはメルトブローン布を使用した不織布3層マスクが最適です。
不安な方はN95・KN95クラスのマスクを使用すると安心です。
【病院・公共交通機関・イベント会場】不特定多数の人間が集まる場所
マスク:N95マスク・KN95マスク
人が大勢集まる場所は、いつどこで風邪をもらうかわかりません。
特に公共の乗り物は、体調が悪くても利用してします人が存在しています。
リスク回避のためにも密閉性が高く、高いろ過率を誇るN95やKN95マスクが最適で安心です。
このようにマスクは目的と性能に合わせて使い分けをすることでより効果的にマスクの機能を活かすことができます。
いかがでしたか?
このコラムを参考にマスクについて少しでも理解を深めてもらえると嬉しいです!
マスクの特徴を知ることは、より効果的にマスクを使えるようになります。
マスクの使い分け。
この言葉を頭の片隅に置いてもらえると嬉しいです。