ContentsTOP土屋鞄をつくる、たくさんの「ひと」鞄職人・丸 康之

丸は、美しく仕上げることへのこだわりが人一倍強い職人だ。
仕事に対して妥協のないストイックさがあり、周囲からも一目置かれている。
豊富な経験を必要とするダレスバッグも手がける、
彼の技術が培われてきた裏側には、深い探究心があった。
ものづくりを仕事にしたいと思って、やっと見つけた先には初め、あっさり断られました。でも、実際に会って頼み込んで検品の仕事のアルバイトとして雇ってもらったのが、以前に勤めていた職場です。つくり手側の仕事をさせてもらえるようになっても、1日中型抜きや革漉きを何千枚、っていう日々でした。長い下積みを経て、製品の製造に入ってからは、技術を身に付けていくことが楽しかった。やるだけ上達していくことも面白かったです。でも、ちょっと自信がついて来たころ、自分とそう年齢も変わらない職人に会いました。その人の腕の良さを見て自分の持っていた自信とかが一度崩れたことがあって。そこからは、上には上がいる、もっと自分が身に付けられる技術があると考えられるようになりました。
20も30も年上の職人が多い中で言われ続けてたことは「技術の出し惜しみはするな」ということでした。時間をかければ、これ以上のものができるのにそれをやらないのはダメ。技術は最大限使って、それを短時間でやれるように努力しろ、っていうことを言われるんです。それは、技術が認めて貰えているということなんだと思うんですが、難しかったですね。納期は決まっているし。それでも、スピードもクオリティも技術の一部だという考え方になれたことは良かったと思います。今、後輩の指導にあたるときこういったことも含めて伝えるようにしていますね。
課題を見つけたときというのは、嬉しい瞬間でもあります。どうすれば解決するのか、美しく仕上がるのかと考えだすと、通勤時間や家でも常にそのことばかりになって、ノートにアイデアを書き留めては、やってみる。仕事と趣味の境界がないんでしょうね。目標は高く、世界と戦えるようになること。壁を乗り越えて行くことでそれに近づけると思っています。