ContentsTOP土屋鞄をつくる、たくさんの「ひと」 鞄職人・東洋佐保里

今年入社4年目の職人、東洋。
明るい性格の彼女は、話を聞いている合間合間にも笑いを挟んでくれる。
仕事をすることは楽しいこと、そう言い切れるのは簡単なことではない。
それも彼女の持ち前の朗らかさと、仕事に対する誠実さの現れなのだと思う。
父が建築関連の仕事、母も服飾を学んでいたひとだったので、「ものをつくる」ということが身近にあったんです。大学で空間デザインの学科に進み、卒業後、インテリアや内装などを手がける仕事につきました。でも、図面を引くばかりの仕事に違和感を感じていたんです。もともと自分の手でものづくりをしたかった。それで探して見つけたのが土屋鞄製造所です。

ミシンは家庭科の授業以来でしたね。苦労したことで思い出すのは、ランドセル前ベルトの2目ステッチでした。まっすぐ2目だけ縫うことがどうしてもうまくいかず、就業後に何百回も練習をして、やっと納得いくようになりました。手を動かして習得したことは自信につながりましたね。
そんな時期にも、意欲だけは認められ、先輩が一緒に残ってくれていました。はじめから、「失敗しないとうまくなれない」という事を言われていたんです。「先行投資」だと。なのでミスして商品にならなくなっても怒られるということはありませんでした。でもそれが、次は失敗しないでやろうという思いに繋がりましたね。誰かが失敗しても周りがサポートするし、怒ったり、泣いたりしてる時間があれば手を動かそう、っていう感じです。職人っぽいですよね。自分が指示を出す立場になっても、そんな工夫の仕方もあるんだと後輩から教わることも多くあります。本当に学ぶことが多い毎日です。
人が変わればやり方も変わる。機械ではないものづくりの現場ならではです。得意不得意はありますから、やれないことはやれる人に任せることも重要なこと。当初は全部一人でやりたがったんですけど、いい製品を作ることを一番に考えられるようになりました。大人になったなあと思います。うまくできるようになる努力はもちろんしますけどね。
思ったことは言うようにしているし、議論になることもあります。考えが受け入れられなくても、萎縮はしません。それも、冗談を言い合ったり笑顔も多い職場だから言いやすいっていうのはあると思います。 働くことは楽しいことです。楽しくするのもつまらなくするのも自分次第ですから。その気持ちを裏切らないためにも誠実でいることをこれからも大切にしていきたいですね。