私は、趣味が高じて本業になったハム屋です。ビギナーでハムを作ろうとされてる方の気持ちは、手に取るように解っているつもりです。さあ、力を合わせて、目茶苦茶美味しいハムを作りましょう。





工程は大体こんな感じです。いっぱい工程があるように感じるかもしれませんが、大丈夫です。私が出来たのですから(笑)
ロースハムもベーコンは、途中まではまったく一緒です。最後の仕上げが違うだけ。

では、ハム作りの開始です。 まずは、ロースハムを作ってみましょう。一緒にベーコンの準備もしましょうね。
もう仕上がるのが楽しみですね。



お肉屋さんで買うとブロックが手に入ります。スーパーでも店員さんに言えば希望のサイズに切ってくれるはずです。
では、下記の量を注文しましょう。

豚ロース肉1kg→約800gのロースハムが仕上がります。
豚ばら肉1kg→約800gのベーコンが仕上がります。
*多いようなら調整して下さいね。

1kgで800gですから、400gのサイズを2本作りましょう。1本は自分用、もう1本は、友人に褒められる分です。

さあ肉を選ぶポイントです。まずは消去法で行きますよ。

◎見るからにお肉からドリップが出ているものは、避ける。買う前にその店の別の肉を見てください。ドリップが多く出てれば、お店を換えて下さい。ドリップが出る肉は、美味しい肉汁が外に出てしまうので、ジューシーなハムにはなりません。

◎肉色は、赤めのピンクが良い。変に白い赤身は、必ず避けてください。又色が黒い肉も避けたほうが良いです。赤めのピンクで選べば間違いありません。

◎脂身は、白で極端に硬くないものが良い。極端に硬いものは勿論ですが、極端に柔らかいのもあえて外しましょう。

この3点だけ注意して頂けたら、まず肉選びは、ほぼ完璧です。

ブランド肉であっても、必ず3点にご注意下さいね。

*暮らしの知恵
上記の豚肉選びですが、美味しい焼肉もとんかつ肉も、同様です。美味しいお肉を選ぶ事が重要です。


買ってきた豚肉を整形します。原則は出来るだけ整形せずに作りましょう。それはもったいないからです。まず脂身は、ハムにすると最高に旨いです。ましてベーコンは、脂身が少しずつ溶け出して、野菜などと一緒の料理を美味しくしてくれます。

整形で注意するポイントは3つです。

◎血管があれば、包丁・ナイフ・はさみなどで除去してください。

◎骨があれば除去してください。そんなの解らないよと思われるかもしれませんが、お肉の周りをぐるっと手で触れて見ましょう。骨があれば、すぐ解ります。

◎筋があれば取り除きましょう。筋は白く繊維状になってる事があります。でもあまり気にしないで下さい。仮に取り忘れてもハムは美味しく出来ます。





ハム作りには、塩に漬けこむ作業があります。 2つの方法があります。一つは、肉に塩をすり込む方法と、塩を水に溶解してその液(ピックル液)に肉を漬ける方法です。好みはありますが、ピックル液で作る方がシットリとしたハムが仕上がります。 私は、ピックル式をおススメします。理由は美味しいからです(笑)
ではここでピックル液のレシピをご案内しましょう。

◎水 800cc 水に氷・食塩・砂糖・煮出し香辛料を入れ氷が解けるまで、良くかき混ぜます。
氷(製氷機のもの) 100g
食塩(赤穂の天塩)
砂糖(三温糖)
煮出し香辛料 100cc

*煮出し香辛料の作り方
煮出し香辛料は、鍋に水と5種類の香辛料を入れ、加熱し、約半分の水分が飛んだ所で火を止めます。
水 200cc こし器を使って、香辛料の繊維質を除去します。これで出来上がりです。
ローリエ 1枚
ホワイトペッパー
ナツメグ
コリアンダー
マジョラム



さあ、お肉とピックル液が用意出来ました。ここで漬け込みに入ります。お肉にピックル液が染み込むスピードはおおよそ一日1cmです。 一日1cmは覚えて置いてください。なのでロース肉の中心まで約5cmとすると5日は最低必要になります。ところがそう簡単には行かないのが、実は脂身なのです。脂身の染み込みスピードはもっと遅いのです。そこで、ちょっとだけお肉の処理をします。
では、漬け込みに入りましょう。

◎千枚通しをご用意下さい。お肉にピックル液が平均して染み込むように、お肉を千枚通しで、叩いて下さい。大体1cm間隔で叩きます。

◎叩き終わったら、厚めのビニール袋を用意し、肉と作ったピックル液を均等に入れます。空気は出来るだけ抜いて、ビニール袋を閉じます。閉じたら、冷蔵庫に入れます。1日1回天地返しして下さい。あとは1週間待ちましょう。1週間(7日)はキッチリ漬け込んでくださいね。



1週間経ちました。漬込み完了です。袋を開封して、お肉を取り出します。取り出したお肉を軽く水洗いして下さい。あくまでも軽く水洗いをお願いします。
この後、いよいよ火入れをする訳ですが、時にはタコ糸やネットを使って整形する場合もあります。私も使用することはありますが、最近は基本的には、そのままの格好で仕上げる事にしてます。その方が自然な感じで好きです。



乾燥はスモークするための前段の工程です。表面の乾燥によりスモークの煙がお肉の中に入りやすくするためです。いよいよスモークハウスの登場です。スモークハウスは何でも良いのですが、ハムは温燻(温度をかけてスモークする)で作るので、くれぐれも加熱できるスモークハウスをご用意下さい。私は趣味の時は、ドラム缶を使って手製でスモークハウスを作りました。最近では、ホームセンターでしっかりした物が、売られてますね。
では乾燥の工程に入りましょう。

◎スモークハウスの網にお肉を乗せます。スモークハウスの下のガス台に火を入れ、スモークハウス内の温度を60℃に保ちます。60℃で1時間程加熱すると、お肉の表面の水分が飛びます。お肉を実際触ってみて、表面に水分を感じなければ乾燥終了です。水分が飛ぶと表面に若干脂がにじむ場合があります。スモークハウス内の温度を60℃に保つのは結構難しいと思います。温度計とのにらめっこが続きます。仮に温度が上がりすぎても、あまり悲観的に考える必要はありませんので、付け加えておきます。



乾燥が終了したらいよいよスモークです。スモーク=燻製ですね。スモークの時間は個人の好みです。これだけは、何度も繰り返して自分の好むスモークの香り付けを見つけてください。私は、あまり強いスモークよりも軽い方が好きです。ところで、スモークが強い弱いって何?と思われた方も多いと思います。簡単に説明します。
ハムの表面がこげ茶色になるほど、スモークが強くかかってます。仕上がったハムを食べた時に、スモークの香りが口の中で広がります。その強弱が一番正しい表現です。では実際のスモークに入りましょう。

◎スモークチップを用意します。チップは桜が一般的です。ホームセンターで購入できます。林檎のチップは品の良い香り、ヒッコリー・ならなどは、ワイルドな香りがします。ブレンドも楽しいですね。用意したスモークチップをスモークハウスの過熱コンロの上に鉄の皿を用意し、チップを乗せます。乾燥の時より、火力を上げてゆくとチップが燃え出します。あくまでもゆっくり煙をかけた方が良好です。基本はスモークハウス内温度60℃で約1時間を目安にして下さい。かけ具合が気になったら、お肉を除いてみてください。ほのかな琥珀色が目安ですね。




さあここまで来たら、目の前にハムを美味しく食べる光景が浮かんできますね。もう少しだけ我慢。この工程では、ハムの中心まで加熱し、製品化することです。ここでロースハムとベーコンの仕上げ方は違って来ます。それぞれ順を追って説明します。ここでご用意頂くのは、食品用中心温度計です。ハムが仕上がったかどうかは、肉の厚みの一番ある所の中心に中心温度計を指し、温度を計測する事で、見分けます。勘は許されませんよ。中心温度計とにらめっこ状態が続きます。いよいよ仕上げに入ります。まずはロースハムから行きましょう。

ロースハム
スモークをかけ終えたロースハムをスモークハウスから取り出します。そしてボイル又は蒸しの工程に入ります。趣味の段階では、ボイルが一般的です。スモーク終了時間に合わせて、鍋にお湯を用意しておきます。お湯の温度は75℃です。スモークをかけ終えたロースハムを鍋に入れます。出来るだけ大目のお湯が入る大きな鍋が理想的です。温度管理が安定するので、おススメです。お湯の温度は75℃を維持してください。80℃は越えないように注意してください。後は、中心温度計を指し、中心温度が68℃になるのを待ちます。68℃になったら出来上がり。

ベーコン
スモークをかけ終えたベーコンに、さらにスモークハウスの中で熱をかけてゆきます。基本はスモークハウス内温度80℃以内として下さい。80℃以上はあまり越えないように注意して下さい。後は、中心温度計を指し、中心温度が70℃になるのを待ちます。70℃になったら出来上がり。もしどうしても温度が80℃に上がらないようでしたら、中心温度が60度になるのを確認した後、蒸し器に移して、中心温度が70度になるまで蒸し揚げてください。ご注意いただきたいのが、70℃以上は超えないで下さいね。実際には75℃が限界なのですが、70℃以上上げてゆくとせっかくの美味しい動物性たんぱく質が、凝固してしまい、パサパサのハムになってしまいます。

これでロースハム、ベーコンが出来上がりました。仕上がり具合はいかがですか?食べてないから解らないよ。そうですよね。では試食される事をお許ししましょう。冷却しなくて良いの?冷却は日持ちさせるための作業です。どうしても待ちきれなくて食べたい時は、体に悪いから食べましょう。これだけ手間暇かけて作ったかけがえの無いハムです。絶対旨いはずです。出来立てが、本当は一番美味しいのです。ご飯も用意できてますか(笑)



出来上がったロースハムは、冷蔵庫で冷却します。どうしても日持ちを延ばしたい場合は、ボールに氷水を用意して下さい。約1分ほど水道の流水で冷やして下さい。荒熱を取ります。そのあと用意した氷水に1分冷やし、水分を拭いた後、冷蔵庫で冷却して下さい。一晩冷やした後は、ラップに包んで保存してください。加熱だけで出来上がったベーコンは、30分ほどそのままスモークハウスに入れたままにして、自然冷却します。その後冷蔵庫に入れてください。




エピローグ
最初に話をさせて頂きましたが、私は趣味が高じてハム屋になった人です。自分自身を振り返ると、確かに今工場で出来上がってくるハムは、20年も前の 趣味で作っていたハムとは、段違いで旨いのだと思います。しかし私の趣味で作っていた思い出の中のハムは、今のハムに勝るとも劣らない かけがえの無いハムであることに間違いはありません。今回、ハムを作られようとされてる方の一助になればと思い、ページを製作しましたが、あくまでも参考の域にしてくださいね。きっと何人かの方が参考にされてハム作りをされる事を期待してます。世界に一つしかない私だけのハムを作ってみて下さい。