人気車種 試乗&ライバルチェックVol.12
トヨタ ライズ

(2020.1)

<目次>
▽ ありそうでなかったコンパクトSUV
 ▼ コンパクトSUVの空白地帯を埋める絶妙なサイズ
 ▼ 破壊力のある価格
 ▼ 誰が見てもSUVに見える
 ▼ インテリアもいまどきで実用的
 ▼ ゆとりのあるフロントシート
 ▼ 大人4人の週末旅行に十分なスペース
 ▼ パワー十分!余裕ある走り
 ▼ 煮詰め不足な一面はあるものの足回りのポテンシャルは高い
 ▼ 充実した先進安全装備、しかし全車速追従ACCには不満あり
 ▼ 最高のコスパ
 ▼ オススメグレードはこれ!
▽ ライバルはこれ!
 ▼ スズキジムニーシエラ
 ▼ スズキクロスビー

ありそうでなかったコンパクトSUV

試乗グレード

Z・1.0Lガソリンターボ・2WD(ブラックマイカメタリック×ターコイズブルーマイカメタリック)
206万0000円(試乗車244万4450円)(税込)

人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ ライズ

 トヨタブランドで最も小さなSUV、ライズが人気だ。発売から2ヶ月目の2019年12月にはトヨタカローラに次ぐ堂々の販売台数2位に輝いた。1月末時点でも納車までの期間は3ヶ月ほどとバックオーダーの列はまだ長い。今回はそんな絶好調のトヨタライズを試乗に連れ出してみた。

コンパクトSUVの空白地帯を埋める絶妙なサイズ

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 昨今の世界的なSUVブーム、日本でもホンダヴェゼルやトヨタC-HRなどのコンパクトSUVが人気だ。トヨタランドクルーザーや三菱パジェロなどの大きな車種が長らく中心だった名残で、コンパクトSUVには全長4.4mを超えるスバルXVや三菱エクリプスクロスまで含めることもあるが、現在、その中心となるのは4.3m前後のヴェゼル、C-HR、新顔のマツダCX-30などだろう。

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 今回紹介するトヨタライズと兄弟車であるダイハツロッキーの全長は約4.0mと、先行するライバルたちに比べて一回り小さい。このジャンルの火付け役であり2019年末に生産中止となった日産ジュークの4.1mよりもさらに短い。一方でライズより小さいSUVには全長3.7mのスズキイグニスやスズキクロスビー、3.5mのスズキジムニーシエラもあるが、ちょうど全長4.0m前後のコンパクトSUVは空白地帯だったことがわかる。

 全長4.0mというとちょうどホンダフィットと同じくらい、トヨタヤリスよりも少しだけ長い。つまりコンパクトカーならもっとも売れ線のサイズ、日本で使いやすいとされるサイズだ。ちなみに横幅も全長4.3m前後のコンパクトSUVたちが軒並み1.75mを超えているのに対して、ライズは1.7m以下の5ナンバーサイズに抑えている。トヨタとダイハツは実にうまいところを突いてきた。

破壊力のある価格

 うまい、と思うのは価格もそうで、これまでコンパクトSUVを名乗ってきたライバルたちは一番安いグレードでも200万円オーバーだったのに対して、ライズは167.9万円〜だ。クロスビーだって179.8万円〜である。先進安全装備レスという裏技を使ったグレードとはいえ実に破壊力のあるプライスタグではなかろうか。

誰が見てもSUVに見える

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 (CAP)左がRAV4、右がライズ。フロント周りの意匠はよく似ている



 そういったスペック部分だけでなく、商品そのものの魅力もライズは高い。なによりそれを感じるのはスタイリングだ。誰が見てもこれはSUVだと思うだろう。ヘッドライトやフロントグリルの意匠にRAV4の面影を感じるが、ダイハツのデザイン関係者によればRAV4発表以前にデザインは固まっていたので、その影響は受けていないという。

 今回、たまたまRAV4も借り出したので並べてみたが、たしかに全体的なプロポーションはかなり異なっている。すこし意地の悪い言い方だが、RAV4のような意欲的なデザインではなく、無難に流行りの要素を取り入れたデザインだと思う。

 ライズのデザインはC-HRやマツダCX-3のように個性的なデザイン、言い換えると実用性を多少犠牲にしたデザインとは異なり、また実用性はあるもののSUVらしさに少々欠けるヴェゼルのデザインとも違い、ましてクロスビーやジムニーシエラのような軽自動車の延長線上にあるデザインでもない。実はこれまでコンパクトSUVになかった実用的なSUV らしいデザインに仕立てられている。それもヒットの理由だろう。

インテリアもいまどきで実用的

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 黒ベースにシルバーと赤に近いオレンジの加飾が印象的なインテリアも、ところどころどこかで見たことがあるデザイン、もう少し踏み込んで書くとマツダCX-5あたりと似ている気もするが、スポーティでいまどきなSUV感はよく表現されている。ダッシュボードやドアトリム上部素材に安っぽさはあるが、価格を考えれば全体的な質感は合格点だ。

 使い勝手にはダイハツが設計した良さが出ている。カップホルダーがフロントは2つある上にドアポケットにも片側2つぶんのスペース、リアはドアポケットに1つずつ。USB充電端子もフロントは1つだがリアには2つある(オプションの9インチディスプレイオーディオ装着車はフロントも2つ)。

ゆとりのあるフロントシート

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 実際に乗り込んで、シートポジションを合わせようとして、ちょっと気になったのはステアリングの遠さだ。上下は調整できるが、前後調整のテレスコピック機能はない。筆者は身長の割に腕が長いのだが、それでもステアリングホイールは遠く感じた。もう一つ、パワーウインドウは運転席のみオートなのは仕方ないとして、スイッチは少々固く操作性に改善の余地がある。

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 十分なゆとりがあるフロントシートはこのクルマの特筆すべき点かもしれない。座面の角度調整は無いものの、角度が適切なのか2時間ほど運転してもお尻が痛くならず、ダイハツには失礼だが良い意味で意外だった。コンパクトなボディサイズの割に立派なシートとセンターコンソールのおかげで助手席との距離の近さを感じさせないのもSUVぽい演出でうまいなぁと感じた。

大人4人の週末旅行に十分なスペース

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 リアシートはちゃんとフロントより一段高く、足元スペースもまずまずの広さを確保している。6:4分割可倒式でリクライニングも可能だ。シート座面が少しだけ短く、またセンターアームレストがないのは残念なポイントだが、大人2人が乗っても不満は出ないだろう。

人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ ライズ

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 リアシートにスライド機構はないが、ラゲッジルームの長さはほどほど確保されている。幅もそれなりだが深さは驚くほどある。これなら大人4人の週末旅行に十分使える。

パワー十分!余裕ある走り

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 ターボで武装したエンジンは1Lとはいえパワフルだ。4000回転までの範囲であれば十分パンチがあるので、発進や中間加速は非常に良い。アクセル半分から先は回転が上がるだけでパワー感は薄まるものの、全体的には余裕のある走りが可能だ。

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 最近のホンダほどではないが、CVTの変速マナーもリニアだ。あと少しだけ踏み込んだ時の「タメ」があれば相当良くなるだろう。一方でアクセルがやや過敏で、定速走行しにくい一面があることは指摘しておきたい。

煮詰め不足な一面はあるものの足回りのポテンシャルは高い

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 足回りは新プラットホームの恩恵で「余裕」を全体的に感じる。特にそれなりに締まっている乗り心地は悪くない。それに比べるとステアリング特性はやや煮詰めが甘い。もう少しどしっと落ち着いた感じと滑らかさが欲しい。コーナリング時の安定感がちょっと足りないのだ。自然でリニアな効きのブレーキは良かった。ほんの少しサワサワした音が60km以上で右のドアミラーあたりから聞こえてくる以外は、足回りからの音も含めて遮音性にも問題はない。

走りに関しては少々開発に時間が足りなかったのかな、と思わせる部分もある。しかし基本的にはよくできたクルマだ。指摘した課題も今後の年次改良などでカバーできるレベルのものである。

充実した先進安全装備、しかし全車速追従ACCには不満あり

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 トヨタのブランドを掲げているとはいえ、ダイハツロッキーをベースとしたライズの先進安全装備は、トヨタセーフティセンスではなく次世代スマートアシストとなる。競争の激しい軽自動車にあって先進安全装備に先んじていたダイハツらしく、その基本機能は充実している。トヨタセーフティセンスではオプションとなることの多い誤発進抑制装置も前後ともブレーキ制御付きだ。

 タントに次いで採用された次世代スマートアシストの特徴は、全車速追従型ACCや駐車アシストなどの運転支援系が充実している点にある。運転支援系なのでその設定が最上級グレードのみだったり、多くがオプションだったりするのは仕方ないだろう。今回の試乗車にもACCなどが装備されていたが、正直にいえばACCはいまいちだった。加速時の車間が空きすぎるし、ブレーキタイミングも遅い。少し混み合った首都高速だったとはいえACCなのに衝突警告が出たことも一度や二度ではなかった。白線認識の精度ももう少し向上を望みたい。

最高のコスパ

人気車種試乗&ライバルチェック トヨタ ライズ

 トヨタライズとダイハツロッキーの商品力の高さは相当なものだ。サイズ、スタイル、装備、価格、どの点から見ても、実に「いいところ」を突いている。とにかくコスパは最高だ。どうしても発表を東京モーターショーに合わせたかったのだろうか、走りにはやや煮詰めの甘さがあるものの、それとて大きな不満ではない。ライバル不在といってもいい「ちょうどいい」コンパクトSUVとして、しばらくは販売ランキングの上位をキープしそうだ。



(文:馬弓良輔、写真:萩原文博)

トヨタライズのオススメグレードはこれ!

車名
搭載エンジン
駆動方式
グレード名
価格(円)
ライズ
1L直3ガソリンターボ
FF(2WD)
X
1,679,000
X“S”
1,745,000
G
1,895,000
Z
2,060,000
4WD
X
1,918,800
X“S”
1,984,800
G
2,133,700
Z
2,282,200

17インチタイヤながら抜群の 乗り心地を実現したZがオススメ

 トヨタライズはエンジンが1L直列3気筒ターボ、そしてトランスミッションはCVTの1種類のため、駆動方式とグレード選びがポイントとなる。グレードはX、X“S”、G、Zの4タイプでそれぞれ2WDと4WDが用意されているため合計8グレードとなる。

 エントリーグレードのXは価格が安いとはいえ、運転支援システムである「スマートアシスト」が装着されていない。もはや、こういった安全性を無視したグレードはないものと考えたい。

 実質的に6グレードとなるが、実際に試乗した印象では16インチタイヤ装着車より、17インチ装着車のほうが、乗り心地もよくコンパクトSUVらしいキビキビとした走りを体感できた。さらに17インチタイヤを装着したZならば、高速道路での追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールなどが装着され、ロングドライブの負担を軽減してくれるので、コンパクトカーは街乗りメインという常識を覆してくれる。

トヨタ ライズのライバルはこれ!

車名
価格(円)
ボディサイズ(全長×全幅×全高mm)
トヨタ ライズ Z 4WD (CVT)
2,282,200
3995×1695×1620
スズキ ジムニーシエラ JC 4WD (4AT)
2,057,000
3550×1645×1730
スズキ クロスビー ハイブリッドMZ 4WD(6AT)
2,185,700
3760×1670×1705

スズキジムニーシエラ - ジムニー譲りのオフロード性能が魅力

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 コンパクトSUV、トヨタライズのライバル車としてまず取り上げるのが、スズキジムニーシエラだ。2018年7月に登場した現行型ジムニーシエラは非常に高い人気を誇り、未だに納車まで1年という長い期間が掛かる。軽自動車のジムニーをベースにオーバーフェンダーを装着することで5ナンバーサイズに仕立てたボディを採用。搭載するエンジンは最高出力102psを発生する1.5L直列4気筒エンジンで、トランスミッションは5速MTと4速ATが組み合わされている。駆動方式は悪路走行に適したパートタイム式の4WD、より強い駆動力を発生する4WDローモードも設定されている。

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 その走りはジムニー譲りの高いオフロード性能が特徴で、ラダーフレームを使用した乗り味はかなりハードな味付け。街乗りでは多くの人が硬いと感じるだろう。いっぽう安全装備は、最近のクルマらしく衝突被害軽減ブレーキのデュアルセンサーブレーキサポートや誤発進抑制機能など7つの運転支援機能を搭載している。

スズキジムニーシエラスペック

 ボディサイズは全長3550 mm×全幅1645mm×全高1730mm。縦置きに搭載するエンジンは最高出力102ps、最大トルク130Nmを発生する1.5L直列4気筒DOHCの1種類で、5速MTと4速ATが組み合わされる。駆動方式は全車パートタイム式の4WDだ。新車価格はJL 5速MT車の179万3000円〜JC 4速AT車の205万7000円となっている。

スズキクロスビー - ハイトワゴンがベースの広い室内空間が魅力

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 ライズのライバル車としてもう1台取り上げたのがスズキクロスビーだ。ジムニーシエラがオフロードでの高い走行性能に特化したモデルならば、こちらのクロスビーは室内の広さが特徴のハイトワゴンをベースとしたコンパクトSUV。スズキのSUV車である丸いヘッドライトを採用したファニーフェイスのフロントマスクがアイコンとなっている。

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 クロスビーに搭載されているエンジンは、最高出力99ps、最大トルク150Nmを発生する1L直列3気筒ターボ。パドルシフトにより、MT車感覚での運転も楽しめる。このエンジンにISGと呼ばれるモーター機能付発電機と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用。JC08モード燃費は20km/L超えと優れた燃費性能を実現している。安全装備は衝突軽減ブレーキのデュアルセンサーブレーキサポートをはじめ、後退時ブレーキサポートなど9つの機能を搭載し高い安全性能を誇る。

スズキクロスビースペック

 ボディサイズ全長3760mm×全幅1670mm×全高1705mm。搭載するエンジンは1L直列3気筒ターボで、燃費性能を向上させるマイルドハイブリッドを採用。ミッションは全グレードパドルシフト付きの6速ATが組み合わされ、駆動方式は2WD(FF)と、路面状況に応じて駆動力を最適に配分する4WDの2種類。新車価格はハイブリッドMX 2WD車の179万8500円からハイブリッドMZ 4WD車の218万5700円となっている。