いであつしのメイド イン フントニモー
「ケルティの正しい背負い方」
 前回のバスのペニーローファーにひき続きまして秋のバックトゥキャンパスシリーズ第2弾、西海岸編ということで、今回は『ケルティ』のデイバックである。
そしたらなんとアータ、セプティズの玉木店長に聞いたところによると、あまりにも人気があって入荷したとたんにすぐ売り切れてしまって、現在追加入荷待ち状態のために、お店に在庫がないらしいのだ。
玉木店長んとこのセプティズだけではない。ビームスプラスなんかでも入荷するそばから売れてソク完売という状態が続いてるらしい。 ええ〜、ウソッ、ホントぅ?「今年はデイパックが再びブーム!」みたいなこといって騒いでるのは知ってたけど、まさかそれほどまでケルティのデイパックが人気があるとは、オジサン、思いもよらなんだったよ。いったい世の中、どうなっちゃっておるのだ。 うーむ…、これはもう、どこかわたしらの知らないところで「アメカジ、アメトラときたら、次はヘビアイでもまた流行らしちゃおうか」なぁんていう大きな政治力か何かが秘密裏に動いているとしか思えない。
だってアータね、ケルティだぜ。ケルティ。 「え、まだあったの?」である。いまどき、アメリカ人でもケルティのデイパックなんて持ってる人なんかいないと思うよ。ていうか「え、なにそれ?」っていうかもしれない。それがなぜ今?しかもなんで日本で?
まぁでも、確かにケルティはティアドロップ型の小ぶりのデイパックの中では一番カッコよかった。他にもMEIだとかREIだとかいろいろあったけど、すげぇー欲しかった。グレゴリーなんて売ってなかった時代の話ね。
  あの小ぶりで中に仕切りもなんにもない、シンプルなまさにデイパックと呼ぶに相応しいサイズ、シェラのロクヨンにも似た、ザラついたナイロンコーデュラ地のオレンジやグリーン、ブルーのカラー。背中のブタ鼻と、いかにも70年代のアウトドアブランドっぽいデザインのタグ。
それらすべてはもうまさしく、小林泰彦がポパイの創刊号やメンクラで描いていた西海岸のUCLAの学生たちがキャンパスで背負って歩いてるデイパックそのもので、リュックサックしか知らなかったワシらに衝撃的で、憧れの存在であったのだ。
画伯イラスト
でもこれがまた前回のバスのローファー同様、どこにも売ってやいねぇーし、売ってても値段も高くてねぇ。たいていみんな親に買ってもらおうとせがんだら「リュックのくせになんでそんな高いの!」と言われてしまっていたのだ。
で、仕方なく、オレの友達なんかはタラスブルバなんていう日本のメーカーがアウトドアブームに便乗して出したノースフェイスそっくりの安いやつを買って背負って歩いてたりしたわけさ。でもノースフェイスタイプは底にレザーが張ってあって、アウトドア臭が強くてちょーっと違うんだよなぁ〜、西海岸の学生が背負ってるデイパックとは。
オレはそれが嫌で、ケルティの代わりにアメ横のる〜ふで買ったUCLAのサイクリングパックを背負って、片手にはスケボーを持って、キャンパスを歩くUCLAの学生のように家の近所の田舎の畦道を歩いてたわけさ。あ、ここ、笑うとこでないから。
 しかしセレクトショップの若いにいちゃんたちのデイパックを背負った格好を見ると、またちょこっとひとこと言わないわけにゃあいかんな。なにあれ。なんかさぁー、オダギリジョーみたいな無精髭生やしたヘアスタイルでさぁ〜、ぴたぴたのシャンブレーワークシャツをアウドドアパーカーの下から袖だして着ちゃったりしてさぁ〜、モダナイズしたディッキーズのチノパンとかを腰ばきしちゃってさぁ〜、そういう格好してデイパックを背負って野外フェスとかに行ってんだよな、たぶん。フントニモー、そんなのアウトドアでないやいっ。ヘビアイでないやいっ。
 やっぱケルティのデイパックを背負って一番似合う格好といったら、ラグジャである。それもバーバリアンみたいなイングランド型の襟じゃなくて、アンブロとかカンタベリーみたいな1ツボタンのニュージランド型の襟がいいやね。もちろん、色はUCLAのスクールカラーのブルーにイエローの太縞ね。それにリーバイスのコーデュロイのブッシュパンツをはいてだね、四角いバックルのぶっといギャリソンベルトをしてだね、ナイキのナイロンコルテツとかアディダスのカントリーをはくのさ。そして「♪サンシャア〜インオンマイショルダア〜メイクスミ〜ハッピイ〜(あと知らない)」と、ジョンデンバーの歌を口ずさんで歩くのさ。
これが正しいケルティのデイパックの背負い方である。いまどき、そんな恥ずかしい格好した学生、アメリカにもいないけど。