ケニア紅茶のおはなし

ケニア西部Nandi Hills の茶園

Kenya Tea (ケニアの紅茶)

ケニアは赤道直下の熱帯の国ですが、標高1,500〜2,250m、気温12〜25℃の冷涼な高地や山地でお茶が栽培されています。

ケニアの紅茶の総生産量は33万トン(小規模農家13万、エステート19万)と、スリランカの生産量を超えて中国・インドに次ぐ世界第三位のお茶の生産国で、輸出国としては世界一です。(2004年の実績)

お茶の総栽培面積は14万ヘクタール(小規模農家9.2万、エステート4.8万)、茶栽培・製造・流通・関連産業とその家族を含めると3,430万人の人口の一割以上に当たる4百万人が茶の産業に関わっています。

お茶の輸出はケニア総輸出額の26%を占め主にパキスタン(28%)、エジプト(22%)英国(15%)アフガニスタン(6%)スーダン(6%)UAE(3%)ロシア(3%)イエメン(3%)その他世界中の紅茶消費国に輸出されています。 (日本向けには0.4%)

イギリスでは普段用の紅茶としては旧来のアッサム紅茶を抜いてケニア紅茶が一番多く消費されています。

残念ながら日本での知名度は未だほとんどありません。しかし大手メーカーのティーバッグの箱の裏の原産地をみるとケニアが一番先に表示されるようになってきました。 (※ 商品の表示ラベルの原材料や紅茶の原産地は、使用料が多い順番に記載されます)

KTDAのKangaita製茶工場にて

History (茶栽培の歴史)

お茶の樹は1903年に英国人によってケニアに持ち込まれ、1924年から商業的に栽培が始まりました。 英国からの独立前はケニア人が茶園を所有することや商業目的で茶を栽培すること禁じられていました。

独立後に政府によって小規模農家による茶栽培が奨励され、今では45万軒の小規模農家が9.1万ヘクタールの茶畑でケニアの60%のお茶を生産しています。

Kangaita製茶工場

Feature (ケニア紅茶の特徴

ケニアの紅茶の品種は基本的にアッサム系の交配種ですが、それぞれの産地に適した45種類もの品種が栽培されています。

ケニア紅茶は、茶樹の樹齢が若くて紅茶にもその若々しさが出ること、カテキン成分が多いこと、一年中生産されており品質が安定していること、近代的で衛生的な工場で製造されていること、高地栽培茶であること、鮮やかなオレンジ色の水色(すいしょく)などの特徴があり、ケニアから輸出された紅茶はインドやスリランカなどの紅茶とブレンドされてミルクティー用の紅茶として世界中で飲まれています。

ケニアではほぼ100%がCTC製法で作られていますが、産地の気候と土壌成分による違い、品種による違い、工場での製造仕様の違いで108工場それぞれに特徴のある紅茶が作られています。

CTC紅茶以外にも、世界一の規模のインスタント緑茶とインスタント紅茶の工場があり、日本のインスタント紅茶もケニアから一番多く輸入されています。また、少量ですがCTCの緑茶やオーソドックス製法の紅茶の製造も行われています。

ケニア産オーソドックス紅茶
ケニアCTC紅茶
ケニアCTC緑茶

Crop season & Qality season
(生産シーズンとクオリティーシーズン)

赤道直下のケニアではほぼ一年を通じて紅茶が作られているため、年間を通じて安定した品質として評価されていますが、厳密には季節によって紅茶の品質も変化します。

季節的には大雨期(4〜6月)、大乾期(7〜9月)、小雨季(10〜12月)、小乾期(1〜3月)に分かれ、雨期には生産量が増え、大乾期には気温も下がって収量も減りますが品質的には一番良くなります。

ケニア産シルバーチップティー

Agricultural Chemicals (農薬使用)

ケニアの100年以上の栽培の歴史の中で殺虫剤や防カビなどの農薬が使われたことはありません。

それは主に以下の理由によります。

1) アジア大陸とはインド洋で隔離されており、アジア大陸からの病害虫が渡りにくい

2)高地栽培のために、病害虫はあるものの、農薬を使用するほど重大な問題ではない

3) 密植栽培のために茶畑の中に雑草が生えにくい
4) 茶業試験場で開発された土地と気候にあった病害虫に強い品種を栽培している

5) 全てのお茶畑では新芽が出てくるたびに、7日〜10日の周期で熟練者によって一芯ニ葉が丁寧に摘み取られ、機械による茶摘みと比較するとお茶の樹を傷めない

6) 日常の茶畑の管理も、機械を使わず、クワやスラッシャー、パンガ、剪定ナイフなどを使用してお茶の樹に優しい農法である

日本でもケニア紅茶の残留農薬検査は日本紅茶協会が定期的に行っているほか、輸入時に厚生労働省のモニタリング検査や輸入した企業によって分析検査が行われ、ケニア紅茶の安全性が確認されています。

※ トラクターが通る道路わきなどで除草剤を使用しているエステートもあります。

製茶工場ではお茶を乾燥させるためのボイラーを使いますが、薪を燃料に使っています。その膨大な量の燃料用の薪を確保するために全ての製茶工場では植林をしています。


Tea industry & Enviroment (茶産業と環境)

お茶の樹は「つばき科の常緑樹=Camellia sinensis」で商業的な栽培でも何十年も寿命があり、お茶の栽培は環境に優しい産業ですが、無計画な栽培を防ぐために一般農家にも栽培地の高度や山の傾斜角度、適した栽培品種、栽培の方法などの指導が行われています。

ケニアのお茶の花

ケニアのお茶の産地は水はけの良い土壌や昼夜の寒暖の差が大きい茶の栽培にとても適しています。十分な雨量にも恵まれいるため灌漑は使わずに、自然の降雨で栽培されています。 (2005年末〜2006年初はケニアで大規模な旱魃が発生し、そのため世界中のお茶の価格が高騰する原因になりました。)

Tea growing area (お茶の産地)

ケニアでは、中部と西部の高地でお茶が栽培されています。

中部としては、

1) キリマンジャロ山に次ぐアフリカ第2の高峰のケニア山の山麓のエンブ・キリニャガ・メル地区
2)首都ナイロビの近郊から北へ連なるアバデア山脈の麓のニエリ・オザヤ地区、首都ナイロビ近郊のキアンブ・リムル地区。

西部はビクトリア湖の近く、世界最大の地溝帯の台地にある
3) ケリチョ・キシイ地区
4) 対岸の台地のナンディヒルズ地区

西部は広大な平坦地が広がっているため、White Highlandとしてもともと白人の入植地が多く、今でも外資系の茶園が多く存在しています。

CTC紅茶製造工場
トラクターから生葉の受け入れ
萎凋漕
粗粉砕機(ローターベーン)から
CTC機へ
CTCロール機(3基と連続発酵コンベア)

Tea Company & Factory (製茶会社と製茶工場)

ケニアでは30万トン以上(日本は10万トン)のお茶が作られていますが、製茶工場の数としてはわずか108工場(2007年現在)です。 ひとつの工場では年間2千トン以上の紅茶が作られており、約90茶園で1万トンの紅茶が生産されているインドのダージリンと比較しても20倍以上の規模です。

108の製茶工場のうち56工場はKTDA(ケニア茶業開発機構 Kenya Tea Development Agency)の傘下にあり、KTDAでは小規模農家からの茶葉を使ってケニアの全生産量の60%の紅茶を作っています。

残りの52工場はユニリーバ、カメリア(イースタンプロデュース)、スワイヤ(ジェームスフィンレー)などの国際資本のほか英国系やインド系など約15企業による大規模農園方式でお茶が栽培されています。

ケニアの製茶工場はいずれも近代的な設備の大規模な工場です。工場の従業員はユニフォーム着用、入室時の手洗いとアルコール消毒の励行を義務付けられています。

農家や茶園で摘採された茶葉は集荷場や工場での受け入れの時に一芯ニ葉の品質が検査され、枝や強葉が入っていると再選別されるまで農家からの買い付けや受け入れが拒否されます。

CTC製法では萎凋が終わって製造室に搬入された茶葉は連続式に粉砕・発酵・乾燥・貯蔵・サイズ分類が行われるために製造工程の中で茶葉が床に落ちることはなく、清潔な環境で製造され、異物の混入の心配も殆どありません。

Traceability (トレーサビリティー=生産履歴追跡)

製茶会社も製茶工場も少なく、大規模生産ということは、栽培や製造・記録などの管理もしっかりしており、日本に輸入された紅茶の製造工場・担当者・畑の場所・製造日などの追跡も可能です。

Kerichoの茶業試験場

工場で作られるCTC紅茶の種類

サイズ選別機
輸出梱包

Export (ケニアからの茶の輸出)

通常製茶工場で作られた紅茶は内側がアルミ張り紙袋に55〜70kg詰められます。

袋はさらに木製のパレットに40袋(1段4袋x10段)綺麗に段積みされます。

40袋積まれたパレットは、20フィートコンテナなら6枚 (約14トン)、40フィートコンテナなら12枚(約24トン)積み込まれてモンバサに向けてトラックや貨車で出荷されます。

ケニアの紅茶の総生産量の約2割は各国の輸入者が直接製茶会社から買い付け、7割は積み出し港にあるモンバサのティーオークションで売買されます。(約1割は国内消費)

モンバサのオークションでは、パレットごとに競売に掛けられ、落札された紅茶はフォークリフトでコンテナに積み込まれて輸出されます。

モンバサのオークションはスリランカのコロンボオークションに次いで2番目の取扱量があり、ケニアの紅茶のほか、タンザニア・ウガンダ・ルワンダ・コンゴ・ブルンジ・マラウィなどの近隣諸国や内陸国からの紅茶のほか、モザンビークやマダガスルからの紅茶も持ち込まれて競売にかけられています。

当店も、モンバサの茶商を通じてオークションでアフリカ各国の紅茶を仕入れ、紅茶によってはモンバサでブレンドしてコンテナで輸入しております。