コラム

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2023.4.26

竹の子の噺



\竹の子、竹の子、にょっきっき/
\1にょっき!/

この懐かし~いフレーズ、ご存知でしょうか?

竹の子は3月~5月にかけてが旬ですが、成長が早いため生の竹の子を楽しめるのは限られた期間となり、生えてから早くて10日間ほどで竹に成長します。

香りや歯ごたえが独特で、煮ても、焼いて食べても美味しい竹の子は、縄文時代には既に生息していたと言われています。

旬の時期が短いため、江戸時代では既に様々な料理法があったそうで、汁物、和え物、漬物、刺身、焼き、蒸しなどなど……日本人の食えのこだわりが感じられます。

江戸時代では落語になるほど珍重された竹の子。

隣の家から生えてきた竹の子をめぐる、こんなお噺があります。

■落語「竹の子」の噺




ある日、武士が家来に昼食の肴を尋ねると「竹の子だ」と答えます。

どうやって手に入れたのかを訪ねると、隣家の竹藪がこちらの庭にも竹の子を生やしたと言うのです。
武士は「盗泉(※1)の水を飲まずとは個人の戒め、隣家のものを無断にて掘り取るとは何事か」と叱りますが、やはり竹の子は食べたい。
そこで家来に、隣家に断りを入れて来いというのです。

家来は武士に言われた通り「ご当家の竹の子がこちらの屋敷内に土足で踏み込んだので、召し取って手打ちにする」と伝えます。

ところが、隣家の主も負けじと「お手討ちはやむを得ないが、亡骸はこちらへ引き渡しを願いたい」と応じます。

鰹で出汁を取り待っていた武士に、家来がこのことを伝えると武士は負けじと「不届きな竹の子はすでに手討ちにし、丁重に腹の中へ葬った。明日には高野の雪隠(※2)へ納まるであろう、とな」と、竹の子の皮を形見に渡して来いというのです。

竹の子の皮を渡された隣家の主は嘆きます。
「いやはや、お手討ちに相成ったか。あ~可哀や、かわいや、皮や」

(※1)盗泉:とうせん…自分がいかに困苦していても、不正なことや不義理なことには、一切かかわらないこと
(※2)雪隠:せっちん…便所


会話から「竹の子が食べたい!」という気持ちが、とても伝わってきますね。

何だか竹の子が食べたくなってきませんか?

現代でもし、隣家の竹の子が境界線を越えていたとしても、勝手に食べるのは民法上禁止されているので、この武士のように召し取ってしまうのは止めましょう。

旬の野菜、竹の子のお噺でした。