マリメッコのデザイナーとして30年以上活躍して、今は日本で作陶を続けている石本藤雄先生。北欧デザインに興味があればきっと1度は名前を聞いたことがあるのでは?少しシャイで目を伏せがちに話してくれる先生。かと思えば、世界を旅行してマリメッコに自分を売り込む強いお人。そんな石本先生とスコープの関係を書き進めようと思います。

編集:スコープ野田

石本先生デザインのアイテム



年表

2009 6月 日本の展示会で石本さんと初対面

2010 6月 東京の石本藤雄展で花の陶板に驚く

2011 11月 アラビアアートデパートメントの皆様と食事

2012 1月 石本藤雄宅のサウナにお呼ばれ

2013 9月 里帰り初個展でスコープも作品貸出

2015 9月 Sieppo復刻で2大巨匠のコラボ実現

2016 12月 作品フルーツオブジェを販売

2018 6月 Ski柄タオル販売開始

2020 11月 ヒラヒラ皿 販売開始

2020 12月 手ぬぐい ヒラヒラ 販売開始

2021 2月 伊賀石本ウメッス・花絵皿 販売開始

2022 10月 手ぬぐい 干し柿 販売開始

2022 11月 手ぬぐい 野道・田田道 販売開始


2009-06

石本先生がイッタラのティーマに紫陽花を描いたホルテンシア。2009年に日本限定で販売された柄です。この展示会が日本で行われ、石本先生自らホルテンシアの広告塔になっていました。そこへ恐る恐る近づくシャチョウ。実はシャチョウも人見知り。シャイで人見知り同士の会話は盛り上がる事もなく、ホルテンシアの説明を一通り聞くとお互いフェードアウト。

まだ小さな倉庫で細々と営業していたスコープに石本先生は偉大すぎです。シャチョウも特にインパクトを残せないまま石本先生との出会いは終了しました。

「イーッタラ アラービアの展示会へ行って参りました。」より

2009-09

フィンランドで行われるデザイン見本市ハビターレ。各社のブースを見学していると、1人で歩いている石本先生を偶然発見!勇気を出して「石本先生、スコープの平井と言います。展示会でちょっとだけお話したのですが、、、」と声をかけてみると、「ホームページ見てますよ」と斜め上!予想外すぎる返事が!なんであの石本先生がスコープを知ってるんだろう!?日本で少し話しただけなのに。。スコープの事を誰かに聞いたのか真相は謎ですが一気に親近感が湧いちゃいます。

「石本藤雄さまとバッタリ。」より

2010-06

ある日取引先から送られてきた「石本藤雄展 布と陶に咲く花」のポスター。「ホームページ見てます」と言われたからには、先生の事をもっと知らなければ!そう思って訪れた美術館でシャチョウはビックリ。ブローチサイズを想像していた陶の花が、実は40cmほどの巨大な花で、それが壁一面に配置されていたのです!

壁中に飾られた陶の花に感激したシャチョウ。作品を何度も何度も見直し、最終的にポスターに使われている2つを気合いで購入します。この頃からアーティストがポスターに使っている作品、つまりど真ん中作品を購入するという技を習得したシャチョウ。センターピース盗賊と僕が呼んでいたのは内緒です。

「石本藤雄展 - 布と陶に咲く花へ行ってきました。」より

2011-02

オイバ・トイッカのバードを全種販売し、オイバ・トイッカデザインのカステヘルミも特注するなどオイバ推しだった2011年。フィンランド出張を予定していたらオイバ先生から石本先生と一緒にご飯に行こうとお誘いが!実はこの2人は大の仲良し。巨匠達の間でシャチョウが話題にでもなっているんだろうか。ちょうど東京で作品も購入してるしこれはアピールチャーンス!緊張しながらもオイバ先生の助けで石本先生と少しずつ距離が縮まります。

「フィンランドで最も古い中華料理のレストラン」より

2011-11

スコープがイッタラ・アラビア製品をガンガン特注していたこの時期、お礼も兼ねて(?)アラビアに所属するアーティスト、カティさんが親睦を深める食事会を開いてくれることに。食事会の前に立ち寄った、イッタラショップで石本先生の陶の花を見るや日本の部屋でも飾りやすい小さな陶の花を作ってもらおう!と思いついたんだとか。

「イーッタラ エスプラナーディ」より

夕刻、待ち合わせたレストランでアラビアアートデパートメントのアーティスト一行とお食事。もちろん石本先生もご一緒に。シャチョウはこの時、鈴木マサルさんがデザインしてくれた冬限定タオルを、テキスタイルの大先輩、石本先生に勝手にプレゼントします。数年後にマサルさんから「マリメッコのお仕事をする事になった!」と聞いた時は、「おおーー、すげー!」まさかこのタオルが!?と思ったものです。でもきっと関係ない。

「合コン 緊張の冬、シャチョウの小心」より

食事会から数日後、陶の花効果か、石本先生に自宅へ招かれます。そしてフィンランドといえばサウナ。石本先生のお宅には共用サウナがあるのでお願いして利用させてもらいました。もちろん先生も一緒に。その後ビールも一緒にいただくと一気にリラックス!途中、オイバ先生も遊びに来て、2人の昔話で大変盛り上がったとか。

テーブルの上には石本先生の生地とオイバ先生のグラス。そんな夜を過ごしたシャチョウはオイバ先生や石本先生の作品を取扱いしたい!と心に誓うのでした。

「石本藤雄先生宅訪問」より

フィンランド出張のイッタラ・アラビア見学でアーティストの工房へお邪魔することに。工房ではアーティスト自ら作品を紹介してくれます。これまで写真NGの場所だったけど、アラビアからようやく写真OKに!ようやくブログでアトリエを紹介できたや〜ってシャチョウも嬉しそう。

「ARABIA ART DEPATMENT」より

2012-01

ヌータヤルヴィでとある商品の試作をするため出張したシャチョウ一行。試作の前日、お誘いがあった石本先生宅にお呼ばれ。いつものようにサウナに入って、特製ソーセージ料理を振舞われます。石本宅には東屋の伊賀シリーズもあり ロールストランドのCoboltiもあり 沖縄の湯呑もあり 石本先生デザインのテーブルクロスやオブジェや中国の器もある。そういった長年蓄積された好きなものの集積に刺激をもらったようです。人見知り同士で緊張していた2人の関係も程よく和らいでリラックスムードに。そして陶板やオリジナル作品の取扱いリクエストをやんわりと繰り出していきます。

「FUJIWO ISHIMOTO」より

2012-01

この日は慌しかったようで、出張先のフィンランドから石本先生の工房の写真がテキストなしでアップロードされていた。なので写真から察するに、どうやら陶板について話をしている模様、、

これまでチラリとしか写ってなかった先生の陶板達を今回は取り外して写真をパシャ。今まで以上に素材感がよくわかる。そして。。。

ん?梱包??。。妙に壁がスッキリとしてる、、、、これ、、買ってるな。しかも工房のど真ん中、完全にど真ん中ピース!これはもうセンターピース盗賊確定!ど真ん中、ど祭り男も確定です!

2012-12

1年半ぶりに石本藤雄展「布と陶」が東京で開催。場所は前回と同じスパイラルガーデン。シャチョウが初めて石本作品を購入した思い出の展示会で、アトリエで購入した作品もあるし、ここまできたら、もっと購入したい。やる気元気ど祭り男!なのですが、残念、会場に着いた時にはセンターピースは売り切れ。ショック!肩を落として2つだけ購入して帰ります。

ところが後日、展示会で売却済みとならなかった「陶の花」は全てスコープで購入する!とシャチョウが宣言しまして、スコープ所蔵コレクションは一気に爆発します。かなり気合いをいれた購入でした。この頃よりシャチョウは知り合いに海賊と呼ばれ始めます。

「石本藤雄大先生の展示会へ行ってきました!」より

2013-01

先生の故郷松山で初めて展覧会をすると聞いて、バックアップ体制に余念がないシャチョウ。日本で滞在中にちょっとした小旅行を企画します。

季節はちょうどお正月。昔ながらの温泉旅館が好きと聞き、奥三河の宿へ案内します。そこで発見したのが「冬瓜」。白い半紙が敷かれ、その上に丁寧に置いてあります。それを見た先生は「なんですかこれは!」と。人生で初めて見る冬瓜に驚き、「野菜をありがたく飾るなんて日本人らしいですねぇ」と、いたく感心したようで、次の展示会「冬瓜」のルーツとなったのでした。

下の写真の冬瓜は実際に先生が初めて見た冬瓜。この時置いてあった冬瓜がとても大きいサイズだったため先生が作る冬瓜はどれも大きな冬瓜に。。「大きい冬瓜しか見たことなかったですから」と先生笑ってました。

2013-09

東京の展示会から9ヶ月後。石本先生の故郷松山で初めて展覧会が開催されます。地元松山ということもあり、多くの方々にサポートされた個展は大盛況。スコープもこれまでシャチョウが集めた作品を貸し出してバックアップ!ここまでくると社内でも先生の作品が欲しくなってくる人続出。

「石本藤雄展 布と遊び、土と遊ぶ を見に行きました」より

2015-01

石本先生に初めて会ってから5年半。誰も口にしないが、食事ばかりしてないで何か作って欲しいという社内のプレッシャーが伝わったのか、シャチョウが動き出します。

その頃進行中だった、オイバ先生とスコープ特注のオリジナルバード。この記念すべきオリジナルバードに特別なことができないだろうか?そう考えていたシャチョウが思いついたのは、

「バードを包む布を石本先生にデザインしてもらおう。」

というアイデア。石本先生はマリメッコを退職してから、テキスタイルの仕事はしていない。もしかしてマリメッコと取り決めでもあるんだろうかと、まことしやかに囁かれていたほどのタブー。。。それでも、オイバ作品と石本作品が1つなった、石本先生の自宅のあの風景が頭をよぎり、ある日、石本先生に聞いてみたのでした。すると、、、

えーっと、突然ですが シエッポを復刻します。

シエッポは布で包まれ 皆様のお手元に届く予定ですがその布は石本藤雄先生が新たにデザインしてくれます。というかしてくれました。

僕はシエッポを復刻したかった。そしてオイバと石本先生はとても仲良くされていて、よく二人並んでいる。そんな光景が僕の頭によく浮かびます。それらが混ざり2015年スコープ最大企画シエッポ復刻が組みあがっていきます。

シエッポ復刻が大体決まり、その発売時に、何か特別な事をできないだろうか?そんな事を考え続けていた2014年12月のヘルシンキ出張中に、あっ!と閃きました。復刻するシエッポをフローラのように布で包もう、その布を石本先生にデザインして貰おう。そうキラッときたわけです。

まぁ、これは途方もなく無茶な発案でして無理過ぎて誰も思い付きもしない。でも、僕は絶対に実現させたかったから、まずオイバに話してみた。で、これがオイバの反応。

『それができたら素晴らしいがフイ(石本先生の事)はテキスタイルのデザインは、もうしないだろう。』

よくよく考えればマリメッコでの仕事が終わってから、布の仕事をしていない石本先生ですから、そんなのは所詮無理な話というわけです。

それでも、まぁ、言ってみようとその日の夜にオイバと石本先生、そしてイッタラの人々と大勢で夕食に行く機会があったので、話してみました、すると。

『デザインするのは凄い力がいるんです。これで正月休みがなくなりましたね。』

えっ?やってくれるって事?サクッと一発返事でお受け頂きました。凄い流れだなって我ながら思います。流石のオイバも少し驚いてました。

『フイがやるのか?ブラボー!』

という事で、スコープはSieppoを復刻しそのSieppoは石本先生が新たにデザインした布に包まれまして、皆様のお手元に届く事となりました。

遂に石本藤雄大先生もスコープとタッグでポン!やったでポン!ポポンのポン!」より

2016-12

ついに石本先生とオリジナルテキスタイルを実現したシャチョウ。電話越しに「お父さん!」と間違えて言ってしまうほど距離は縮んで、心の底ではスコープオリジナル作品の和食器も、手ぬぐいも、と色々作ってもらいたい。でも会うたびに何かしらのプロジェクトが進行してて、展示会用の陶板をせっせと制作している。そんな忙しそうな大先輩を見ていたら、なかなかオーダーできないのがシャチョウの性分。

そんなある日、工房の窓際に小さな丸いフルーツのオブジェが。小ぶりで飾りやすそうなオブジェを見た瞬間シャチョウは「先生。これ、これをオーダーしたいです。」とついつい口走ります。そこから、先生も「じゃぁ、作ってみましょうか」と道具や型を運んできて、スコープスタッフも粘土を捏ねたりしてお手伝い。その日のうちに2つ形ができました。そして数ヶ月後、先生は訪日ついでにスコープまでいくつか持ってきてくれたのです!ついに念願だった石本先生のアートピースを販売できました。

「Fujiwo Ishimoto Fruits」より

フルーツオブジェの販売をきっかけに何か詰まっていたものがスーーーっと取れたのか、これまでなかなか進まなかった石本先生との共同作業がスススーと進んでまいります。

2018-06
house towel Ski

定番のボーダー柄だからこそ石本先生に作ってほしかった。撮影はフィンランドのご自宅前。先生も撮影に協力してくれてます。

2020-11
木瓜角皿ヒラヒラ

スコープ20周年記念に合わせて描いてくれたヒラヒラ柄を東屋の木瓜角皿に。かなりの人気者でした。

2020-12
手ぬぐいヒラヒラ

角皿から始まったヒラヒラ柄がとても良かったから手ぬぐいにも展開。こちらは在庫限りで終了。

2021-02

シャチョウが漫画「ヘうげもの」にハマってたのが2010年ごろ。それ以来、集めた古物のなかで多種多様な形や色がある「向付」に興味津々。もし花の陶板を作る石本先生が作ったらどうなるんだろう。先生は日本へ来ると窯元を周っていたほど古物が好きで詳しいし、「アートと食器の中間のような器を作ってみたい」。と数年前に鍋を突きながら先生に話していたのです。

その当時は「向付なんて今誰も欲しくないんじゃない?」と言って、軽くあしらわれたのに、ある時先生の工房に行くと、向付の絵が置いてあるではないですか!石本先生のやらないと見せかけてからのサプライズ!細かい部分はシャチョウと会って決めようと思っていたのか、その場で粘土を捏ね、あーでもないこーでもないとディテールを仕上げ、工房で突如「伊賀石本 ウメッス」の原型が爆誕!

その後、東屋さんの協力を得て釉薬を決め完成に至ったウメッス。陶芸家、アーティスト、テキスタイルデザイナー、石本藤雄テイストが全部詰まってる。ちょっとしたものを食べる時、食卓に変化を加えたい時、持ってると色々と想像が膨らむウメッス。ようやくスコープに「石本」を冠した商品が誕生しました。

「伊賀石本 ウメッス商品ページ」より

2021-02

ウメッスと同じタイミングで工房に置かれていた数枚の小皿。「先生これお借りしていいですか?」と持ち帰ったのが伊賀石本 花絵皿の始まり。

ウメッスは先生の絵から一気に完成まで進んだけど、こちらは難航して1年ほど後に完成します。というのも絵付と価格のバランスが実に難しかった(by シャチョウ)。サンプルでもらってきたお皿は10cmほどの小皿だったから、どうしても頭が小皿になる。1つずつ伊賀の職人さんが手で轢き、絵を描くとなると、小さなお皿にしては高額になってしまう。。どうしたものかとしばらく悩んだ挙句、「小さいと高く感じるなら、大きくしたらどうだろうか」と方向を修正し、値段とサイズのバランスをなんとか成立させゴール。手書きの絵付の良さ、少し立ち上がったリム、伊賀の土らしさ、そしてすっと持ち上やすく、最後のひと掬いも簡単。石本先生からも凄い!と快諾いただき、晴れて「伊賀石本 花絵皿」販売開始となりました。

「伊賀石本 花絵皿 商品ページ」より

2022-11月~

テキスタイル、和食器、アートピースと石本先生の世界観を商品という作品でお伝えしてきたシャチョウ。もう少し気軽に手に取ってもらえるものといえば手ぬぐい、それで少しづつ柄を増やしていき2023年4月現在7種類。石本先生にはこれからもテキスタイル作品を多く残してもらわんば。

2022-10
手ぬぐい 干し柿

2022-12
手ぬぐい 田田道

2022-12
手ぬぐい 野道

2023年4月15日から6月11日まで高松市美術館開館35周年記念
「フィンランドのライフスタイル ~暮らしを豊かにするデザイン~」
でこれまでシャチョウが集めた石本作品はもちろん、フィンランドの貴重な作品を貸出しして、会場でトークショーも行いました。最近のシャチョウは親子ですか?と言われるぐらい石本先生に似ている。遺伝子レベルで近づいてます。同行した僕らスタッフといえば、ホテルから展示会場まで一緒に歩いた際、道路脇の木々に花が。それを見た先生が、

先生「あれは何の木ですか?」
サカイ「ハナミズキですかねー」
先生「・・・・・」

記念すべき会話は1往復で終了〜。僕たちが先生の心を掴むのはまだまだ先になりそうです。ともあれ今後ともシャチョウと旅や食事をし、リラックスして作品の源にしてもらいたいものです。

あ、そうそう。最後に。先生はスコープのホームページが「目覚めにちょうど良い」って毎朝見てるんだとか。先生。おはよーございます。

(2023/04/15現在)

「展示会準備風景を見に来てますー」より

ノッチャンネル アーカイブ

ノッチャンネル

03. FUJIWO ISHIMOTO

第三回はマリメッコのデザイナーとして30年以上活躍して、今は日本で作陶を続けている石本藤雄先生。スコープシャチョウと石本藤雄先生の歴史を掘り起こします。

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02. 王子クラウス

第二回はフィンランドの民話や動物をベースに神秘的なイラストを描くアーティスト、クラウス・ハーパニエミ。スコープでは王子と呼ばれている。。。いや、呼ばれていた。

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01. ヘイニとスコープ

スコープ社内のハードディスクに散り散りとなっていた写真や文章、そして過去データを引っ張りだしては整理して一つにまとめてみる企画。第一回はルノのデザイナーヘイニ。