日本酒の飲用温度は、ビールやワインと比較すると幅があり、5〜55℃くらいまでの広範囲にわたっています。
日本酒の飲用温度表現は、「冷や」か「燗」の二区分しかなく、また「人肌」「ぬる燗」「あつ燗」とあるものの、非常に曖昧であり、総じて日本的にこれまですませてきていました。一歩踏み込んで、5〜10℃の低温、10〜20℃の常温、30〜60℃の燗と大まかに分類することはできますが、各タイプの酒はわずかな温度差により、その香り、味わいがきわめて複雑多彩に揺れ動くように変化します。ここでは、日本酒のタイプごとに、適した引用温度は何度かを具体的にお話します。
吟醸、大吟醸酒が代表的です。生酒や本醸造酒にもこのタイプに該当する酒もあります。
清涼感のある香味が特徴的であり、冷やすことによって、爽快さが映えます。しかし、あまりにも冷やしすぎると、持ち味である華やかな香りが感じにくくなったり、酸味や苦味などの刺激的要素が突出したりと特性が活かせない場合があるので注意が必要です。香りが控えめで旨味成分がわりとしっかりしたタイプならばぬる燗も可能です。
適した飲用温度帯:8〜12℃、または10℃前後、10〜15℃等
生酒(生貯蔵酒)が代表的です。本醸造酒、純米酒にもこのタイプに該当する酒もあります。
軽快な酒質と爽涼な飲み口、フレッシュな味わいが特徴的なこのタイプはしっかりと冷やすことでその特性が活かされます。また味わいの成分中に刺激的な要素が少ないため、冷やしすぎてもこれらの要素が突出することはありません。
適した飲用温度帯:5℃前後、5〜10℃等
純米酒が代表的です。本醸造酒にもこのタイプに該当する酒もあります。山廃や生もとの酒はこのタイプです。
飲用温度帯が最も広く、品温の違いによってさまざまな変化を見せるタイプです。コクと旨味成分をしっかりと持つことが特性であり、この要素を活かすことがポイントになります。旨味のふくらみが映えるやや高めの温度設定が適しています。また燗するのに最も適したタイプでもあります。
適した飲用温度帯:15〜20℃、または40℃前後、40〜50℃、45〜50℃等
古酒が代表的です。一部純米酒にもこのタイプに該当する酒があります。