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“座りすぎ時代”の新しい机と椅子のあり方2

日常生活の中での動きの質について

──村木教授が共著で出された『ウソだろ!? バリアフリー──切りひらけ! 不要介護時代への道』(晃洋書房)に、このような記述があります。

『ウソだろ!? バリアフリー──切りひらけ! 不要介護時代への道』(晃洋書房)より抜粋作成

村木:現段階ではまだ介護や住宅改修が必要でない方を対象に、手すりの設置など住宅内環境を調査したところ、体力年齢に9.7歳もの差が生じることがわかりました。

たとえば廊下が広く、トイレにも十分なスペースがあるご家庭では、自由に身を動かせますし、動くこと自体が苦になりません。健康であればご自身でトイレにも行きますしね。歩く機会、生活の中で身体を動かす機会が得やすい住宅に住んでいる方ほど、体力年齢が若い結果となりました。

──住宅のつくりや住宅設備の環境を変えていくことの大切さがわかります。

村木:ただ手すりは難しいところなんです。足腰が弱っている方は、安全のためにもちろん使った方がいいでしょう。その一方で、使わなくても問題ない方が手すりに頼ると下肢の筋肉活動量が減ります。階段の上り下りは、日常生活の中で下肢を動かす動きとして割合が大きいため、それがなくなってしまうと体力年齢の低下につながっていくのかなとも思います。

メンショール:ユニークな指摘ですね。いわば「動きの貧困」と言えるでしょうか。手すりや肘かけ、背もたれなどに頼ってしまうと、人間が本来持っているバランスを保つ筋力などをキープできなくなります。

バランスというのは、補助や支えに頼らずに自分自身が動きをつくることで生まれます。バランスと動きは常に連動しているため、ワークシーンの中に〈アクティブボード〉のような商品を取り入れるのは、バランスを保つための筋肉を衰えさせないためにも効果があると思っています。

──最近オフィスでも増えてきた、上下昇降式のワークデスクに使うのもいいですね。

村木:これまでの常識である「じっと座って仕事をするスタイル」から「立ち仕事を取り入れることへの理解」が広がり、上下昇降するデスクや身体を活性化する椅子の導入がさらに広がっていくかもしれませんね。

メンショール:私の故郷、北欧ノルウェーでは、90%以上の人が仕事中に上下昇降する机を使用しています。「立つこと」と「座ること」を併用しながら座りすぎを防ぐことを国全体として広がっているのです。従来の机と椅子の関係性では健康が維持できないと気づきはじめているのでしょう。

──このところ盛んに「働き方改革」が叫ばれ、生産性の向上と社員満足度の向上の両立が求められています。こうした状況の中、職場の椅子や机はどのようにあるべきか。働く人にとってよりよい椅子、机とはどのようなものなのかを見直す時期に来ているのでしょう。

村木:私は椅子の役割は2つあると思っています。1つは休むもの。たとえば歩いていて、疲れたから座る。もう1つは作業を補助するものです。タイピングや筆記など、手や指先の細かい作業を正確に進めるために上半身を使いやすくするための椅子ですね。

メンショール:たしかに休息を目的とするなら、背もたれによりかかってできるだけ足に負担をかけない方が休めるかもしれません。ただ、作業をするとなるとそうではない。

村木:そのとおりです。楽器を弾いたり、製図をしたりする人に背もたれは必要ありませんし、下半身を地面につけて安定性をキープするのもいいでしょう。座面を高くして、太ももとおなかの角度を110~120度にすると自然と体幹が真っ直ぐ立ちます。足が地面に着く態勢であれば、安定感が増し、腰への負担が軽減されると思います。

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