肝機能の低下―酒以上に恐いこの栄養不足

「どうも最近、アルコールに弱くなって…」などと酒席を断るために弁解する人も少なくない。誰もが年齢とともに酒が弱くなるのは当たり前だと思っているからだろう。
若いころのように体力がなくなったのだから、酒だって無茶飲みができなくなったのは
不思議でもなんでもないというのだ。しかし、暴飲は別として、アルコールに弱くなるというのは内臓の働き、特に肝臓の機能が確実に衰えたことの明らかな証拠である。

核酸と肝臓

たしかに老化現象のひとつではあるが、決して年齢のせい、体力の衰えのせいだけにして すませる問題ではない。ご存知のように、アルコールは肝臓で分解される。健康で若々しい肝臓はこの機能が盛んだから新陳代謝は活発で、かなりの酒を飲んでも充分にアルコールは処理できる。しかし反対に、衰えた肝臓はアルコールの処理能力がきわめて低くなっている。

その結果、少量の酒でも酩酊したり、悪酔いしたりするのだ。ところで、私は医者だから、 立場上、あなたにお酒をどんどん飲みなさいとはいえない。酒飲みが主張する酒の利点より、医者が臨床データをあげて主張する酒のデミリットの方がより深刻だからである。
しかし、酒を飲まないのと、酒がのめないのとでは大ちがいなのである。飲める酒が飲めないという状態は、医者として憂慮すべき事大である。

というのは、肝臓は食事から取った栄養分を身体が吸収しやすいようにする器官であり、また体内の有毒な物質を解毒する器官でもあるからだ。酒量が落ちるということは、 アルコールを解毒する肝臓の機能が弱まった証拠であり、それは、食事から取った栄養分 を処理する能力も衰えていることである。ふだんは沈黙の臓器だけに、いったん肝臓が弱ってくると全身に老化が進んでいく。

肝臓の機能が衰えた結果、せっかく食べた食事の栄養分は身体の中で利用されないため、 栄養のロスが大きくなり、また同時に解毒作用が衰えるので、中毒症状を起こしやすくなる。肝臓病につきものの黄疸はその典型的な例である。したがって、いままでそんなことはなかったのに、ちょっと酒をのんだだけでも悪酔いするようになったり。酒量がめっきり衰えてきたという人のために、私はここで強調しておきたい。酒が弱くなったこと自体 に問題はないのだが、その裏にある肝臓の機能の低下が重大なのであるということを―。

このような肝臓の機能低下はさまざまな肝臓病―肝炎、肝硬変、肝臓ガン―によっても 起こるが、むしろ老化によることが一般的である。

肝臓の老化は特にタンパク質、 各種のビタミン、核酸が欠乏すると、

肝機能は衰退する一方なのである。 私たちはこのような不幸な症例を、伝統的に穀類以外の食品をほとんど食べない南米や アフリカの原住民にみることができる。彼らはヤセ細り、たいていはいくつかの病気を 併発している。穀類のとりすぎというより栄養のバランスを欠いたことによる肝臓障害 であり、肝臓が衰退している証拠なのである。

もちろん、最近のあなたが若い頃とくらべ酒量が落ちたといっても、彼らのように 極端な症状がでるわけではない。いかし、酒量が落ちたことは年齢のせいだからしかたがない、あたりまえのことだと自己暗示にかけ安心してしまわないで、ぜひ栄養不足による 肝臓の機能低下を疑ってほしいのである。
                

「老化は食べ物が原因だった;ノーベル医学生理学賞からの大発見」