脳の老化―脳細胞の代謝をスポイルするのも

あなたは自分の記憶に自信があるだろうか。
昨日の出来事をできるだけ克明に思い出せるかためしてみてほしい。まだ昨日のことなら
ちょっとしたことははっきり思い出せて、あなたは自分の記憶に自信をもつかも知れない。
脳の老化

では、つぎにちょうど一週間前の出来事を思い出してほしい。今日が月曜日なら先週の
月曜日、あなたはどこへ行ったのか。誰と会ったのか。どんなテレビ番組をみたのか。
手帳を見ずに、その日一日、朝から夜までの出来事をスラスラ思い出せるようなら、あなたは自分の記憶力を誇ってもいいだろう。

だが、悲しいことに、ほとんどの人は、たった一週間前のことさえうろ覚えだ。外出先も、
人の名前も、テレビ番組もすぐには思い出せない。この傾向は年を取るにつれてますます
強くなり「物忘れ」「度忘れ」もひんぱんにおこってくる。
その人のイメージははっきりしているのだが、どうしても名前が思い出せない。またいつも待ち合わせに使っている喫茶店の名がなぜか出てこない。こんなことは年をとでるにつれて誰にでも起こる現象であり、これも老化の一つの大きな特徴である。

他の能力と同様、記憶力もまた、二十歳をピークにして、それ以降は少しずつ衰えていく。
というのも、生なれた時に百四十億個あった脳細胞が、二十歳以降は減る一方、一日に
十万個ないし二十万個ずつ破壊されていくからである。もちろん、この脳細胞は、
記憶力だけをつかさどっているわけではないが、脳細胞がどんどん死滅していくにつれて
記憶力も衰えていくのは間違いない。破壊された脳細胞は二度と再生されない。つまり
減少するだけなのだ。

ところが、体力の衰えと同じように、脳細胞の減り方も人によってかなり違ってくる。
毎日よく頭を使い、脳細胞の代謝に必要な成分を食事からたっぷりとっていれば、脳細胞の減少は一日十万個以下に抑えられる。しかし、反対に頭もあまり使わず、脳が必要とする栄養も不足していれば、一日に二十万個以上の細胞が次々に死滅いていく。
条件しだいで、こんなにも老化の差が極端に現れる器官を私はほかに知らない。この理由
はいったいどこにあるのだろうか。

ふつう成人の脳の重さは、1・1~1・4キロ、つまり体重の二十%にあたる。ところが、
驚くべきことに、私たちが身体を動かさずに休息している時でも脳は身体全体が消費する
エネルギーの二十%も費している。心臓がストップしなくても、呼吸が停止したとき、
まっ先に表れるのが酸素が欠乏しての脳死であるのはこのためだ。

これほど脳が大量の酸素を消費するということは、脳細胞の膨大なエネルギーを使って、
多くの栄養をたえず代謝していることの証明でもある。この脳細胞の活動にはさまざまな
物質が関係しているが、とりわけ重要な要素は核酸、タンパク質、鉄、そしてビタミンE
である。

核酸と脳老化関係

核酸は細胞の活動をコントロールするものだ。この核酸のはたらきは食物などの補給、
しないかぎり、年齢とともにしだいに低下していく。したがって、核酸をたくさん含んだ
食物を取って補ってやれば、細胞はまだ活力を取り戻す。タンパク質はいうまでもなく
細胞の主成分である。脳細胞も同じだから、良質のタンパク質を取れば脳細胞は健全な
活動をするが、不足すると老化しやすい。

鉄はいうまでもなく、血液中のヘモグロビンの主成分となって、脳が大量に必要とする
酸素を運ぶ。その血管をいつもでも若々しく保ち、動脈硬化を防ぐのがビタミンEという
わけである。これらの栄養素を充分に備えている食品、つまり「健脳食」を食べたうえで、
毎日、頭をフルに使っていれば、記憶力の低下に悩むこともないし、老人ボケも心配しなく
てよい。いわれる「健脳食」と私のすすめる食事法は共通する点が多いのである。

核酸を含んだ食べものを取りながら、毎日頭を使う―これが頭をよくし、ボケない秘訣
なのである。しかし、もしあなたが、これらの核酸補給を怠り、たとえば記憶力がわるくなるのは自然の老化現象なのだからしかたがないとあきらめてしまえば、脳細胞はますます死滅するばかり。つまり、あなたはボケてしまうのである。
「老化は食べ物が原因だった;ノーベル医学生理学賞からの大発見」