国産の綴織(つづれおり)爪掻本綴織(つめかきほんつづれおり)は生産数が少なく希少で、店頭にならぶことはほとんどありません。実際にみたりさわったりできる機会も少ないため、綴織(つづれおり)についてかんたんに特徴をまとめました。
伝統的工芸品産業の振興に関する法律により指定されている西陣織は12種類あり、それぞれ工程や技法は異なり、1.綴 2.経錦 3.緯錦 4.緞子 5.朱珍 6.紹巴 7.風通 8.綟り織 9.本しぼ織 10.ビロード 11.絣織 12.紬 の12種類に分類されます。西陣爪掻本綴織は西陣織のひとつ「綴」に分類され、西陣織工業組合の登録商標です。
爪先で文様となる糸を1本1本掻きよせるため、織師は爪をノコギリ刃のようにギザギザに刻んでいます。 そのノコギリの歯のようにギザギザに刻まれた爪先で 文様となる糸を1本1本、掻きよせて文様を織り描きます。 その技法を『爪掻(つめかき)』といい、爪掻で織り上げた綴織(つづれおり)を爪掻、爪つづれ、 本つづれなどと呼びます。
爪で糸を1本1本掻きよせて織る爪掻のつづれは 「日に寸、五日に寸、十日に寸」 と伝えられるほどの月日と高度な技術が必要であり、 複雑な文様になると1日にわずか1cmしか織り進めないものもあります。 そのため極めて生産数も少なく希少価値の高い織物となっています。 元来、生産数の少ないうえに職人の高齢化と後継者不足にともない 高度な技術をもった織師は年々減少しています。 その高度な技術と希少性から、他の織物とは別格とされており最高の格を誇ります。
綴機(つづればた)で人の手が織り上げています。 機械織りの手織綴や紋綴ではありません。 手織綴や紋綴はジャガード織機で紋紙(型紙)で織りますので、 完全に同じものを短期間に量産することができますが、 綴機で織る綴れ織りはその反対で機械も型紙も使用しません。 ゆえに完全に同じものはふたつとありません。
文様は織師の感性にたより織り上げられるため、ひとつひとつに個性が表れます。 商品の大きさにあわせてタテ糸の本数を調節して 1点ずつ人の手で織り上げ、人の手で仕立てています。 天然の絹糸は染め上がりも同じにはなりません。 糸のつなぎ目やわずかな歪み、色柄寸法に個体差が生じます。 完全におなじものができない手仕事の特性と 天然の絹のもつ個性があわさり、 ひとつひとつちがう顔をもつものが生まれます。 たとえ同じ商品であっても厳密に同じ仕様にしあがりません。
特徴として生地ウラには糸のつなぎ目があります。 極太の絹糸で織り上げるため厚手の絹織物となる綴織の特徴を生かし、基本的に綴地のみで仕立てています。商品により生地裏が見えるデザインは糸のつなぎ目がみえる場合がありますが、 本綴織の特性として避けることができないものです。 本綴織の証としてご了承ください。 織物としても不良ではございませんので、ご理解の上お求めくださいませ。
ヨコ糸となる絹糸の束を管(くだ)に巻き取り、 管を杼(ひ)に取り付けて上下に分かれたタテ糸の間に通します。絹糸が巻かれているのが管です。 ひとの手で織るため機械織りの杼とはちがい、小さな手のひらサイズの杼をつかいます。 管も杼にあわせて小さく巻かれる糸の量も少なめです。 管に巻かれた糸がなくなると次の管に巻かれた糸で織り進み、 このとき糸をつなぎあわせます。糸のつばぎ目はこのときにできます。文様の場合は文様により多少があります。
細かなこと
絹糸
上質な天然シルクの太い絹糸を使用しています。タテの絹糸をヨコの絹糸で包み込むように織るためタテの絹糸は見えず、ヨコの絹糸だけで織りを表現する厚手の絹織物になります。
金属糸風繊維
金属糸風繊維は俗に言う金銀糸のことで品質表示規定の名称です。砂子と呼ばれる糸は絹糸(きぬいと)に金銀などの細い糸状のラメを撚り合わせた糸で全体の割合から絹100%の表示になります。杢と呼ばれる糸は絹糸(きぬいと)に金銀などの細い糸を撚り合わせた糸で全体の割合から絹90%金属糸風繊維10%(ポリエステル6%指定外繊維(和紙)4%)の表示になります。
保管
湿気、直射日光をさけて保管してください。 金属糸風繊維(金銀糸】はゴム製品や防虫剤などにより変色しますのでご注意ください。