本綴は職人も少ない上、製作日数がかかり、極めて生産数が少ないために、店頭にならぶことはほとんどありません。実際にみたりさわったりできる機会も少ないため主な特徴をまとめました。
ノコギリの歯のようにギザギザに刻まれた爪先で 文様となる糸を1本1本、掻きよせて文様を織り描く爪掻の技法が特徴の綴織は、機械化により量産されるジャガード織機の綴織(手織綴や紋綴)とは異なり、 西陣織で最も歴史のある綴機(つづればた)で全工程を人の手足で機を操作して織ります。
文様となる糸を必要な部分に必要なだけ爪で1本1本織り込みます。必要な部分に必要なだけ織るため、ジャガード織機の綴のように織巾全体(左右)にヨコ糸が通らず表も裏も同じ文様が表れます。爪掻の特徴である文様と文様の間に生じる隙間を『ハツリ目(ハツリ孔)』と言います。
織っている時に見えているのは裏面で、織師は表面の文様をイメージしながら織ります。手に持っているのは「杼(ひ)」、杼の中にあるのは絹糸(ヨコ糸)を巻いた「管(くだ)」。 足下にある「踏木(ふみぎ)」を踏むことで綜絖を上下に動かしタテ糸を開口し、杼を通すことでヨコ糸が通ります。
黄色の糸状の物は『綜絖(そうこう)』といい、2つの輪がタテに連なったものを1本として、その輪と輪の間にタテ糸1本を通し、タテ糸を上下に分ける役割をします。
『框(かまち)』にはめ込んだ『筬(おさ)』の細い隙間1つに綜絖を通ったタテ糸が1本通っています。ヨコ糸を1本タテ糸とタテ糸の間に通したら框を手前にひきよせてヨコ糸を織り込みます。おもに無地を織るときにつかいます。
『踏木(ふみぎ)』は足元に2本、左右に並んであり、交互に踏み換えることでタテ糸を上下させ杼を左右に通し框で打ち込む動作を繰り返し織っていきます。
文様はヨコ糸を爪で掻きよせ、ある程度織り込んだら仕上げに小さな櫛で織り固めます。
ヨコ糸だけで文様を織り表すため、ヨコ糸はタテ糸よりも3倍から5倍も密度の大きい綴糸(つづれいと)とよばれる太く丈夫なヨコ糸を用い、タテ糸を包み込むように織るため、表面にはタテ糸は現れず表裏ともに同じ文様となります。
ヨコ糸を引き上げる角度や引っ張る力加減、框を打ち込む力加減によって織り上がりが左右されるため、単純な作業ではありますが、重要な基本の技で熟練の職人でもきれいに織るのは難しいものです。
織師の手によって長年使い込まれた色艶に歴史を感じる綴織の道具『杼』(ひ)、絹糸を巻いた『管』(くだ)を取り付けて、ヨコ糸を織り込んでいきます。 色を使うときは色の数だけ『杼』を用います。
伝統の技で織られた西陣爪掻本綴織の帯に貼付されます。証紙の色は「濃い紫色」で生産者固有の番号が印字されています。
伝統的工芸品の検査に合格した西陣爪掻本綴織の帯に貼付されます。管理番号によって生産者がわかるようになっています。