なるほど治療食

わかりやすい慢性腎不全の食事

■腎臓のプロフィール

(1)腎臓の位置と形

腎臓は、横隔膜の下、脊椎の両側に位置し、そら豆に似た形をした左右一対の臓器です。
腎臓の大きさ
重さは片方120〜150g位、両方で240〜300g位です。
大きさは、長さ11cmで幅が5cmです。

(2)腎臓の構造

糸球体は毛細血管が 集まった球体で、 周囲をボーマン嚢(のう) と呼ばれる特殊な袋で おおわれています。 この糸球体と尿細管からなる小さな単位をネフロンと呼びます。 1つの腎臓に約100万個のネフロンがあります。

(3)腎臓の生理

腎臓に入った血液は糸球体でろ過され、尿細管に流入します。 尿細管はろ過された物質の中から必要なものを再吸収し、 残りを老廃物として排出します。

(4)腎臓の機能

  1. 排泄機能
    • 老廃物・毒素の排泄

      栄養素がエネルギー源として体内で利用され、燃えカス(老廃物・毒素)を尿の成分として排泄します。

  2. 体液の調節機能
    • 水分の調節

      体内の水分を一定量に保つため、尿の排泄を調節します。

    • 電解質および酸アルカリの調節

      電解質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなど)の濃度や量を調節し、血液が酸性にならないように維持します。

  3. 内分泌機能
    • ホルモンの分泌

      血圧を調整するホルモン(レニン)や赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)などを作り、分泌しています。

    • ビタミンDの活性化

      ビタミンDは腎臓で活性化され、腸からカルシウムを吸収できるようにします。

■慢性腎不全とは

(1)病態

慢性腎不全とは腎機能が 1/3以下になった状態を いいます。 図1は正常な腎の状態を 示し、図2は腎臓の組織 が萎縮し、働けるネフロンの数が減り、血液をろ過する働きが低下して老 廃物や水分を十分排泄できなくなった状態をしめしています。

(2)症状と身体所見

いったん慢性腎不全にな ってしまうと回復が望めないばかりか、どんどん進行して腎臓がほとんど機能しなくなっていくのが特徴です。 進行とともに多彩な症状と合併症が出現します。

(3)主な合併症について

  1. 心不全
  2. 心臓のポンプ機能が障害され、全身の代謝に必要な血液を十分に送りだすことができなくなり  ます。一方、全身を流れている血液が十分に心臓に戻れず、全身がむくみ、胸水や腹水がたま  ります。ナトリウムや水の排泄障害、高血圧、貧血などが原因となっておこります。腎不全で  最も危険な合併症です。

  3. 貧血
  4. 赤血球は、腎臓で産生されるエリスロポエチンというホルモンでつくられます。  腎不全になるとこのエリスロポエチンの産生ができなくなり貧血になります。

  5. 高血圧
  6. ナトリウムや水の貯留で体液量が増加し、また腎臓の血流量が減少することにより血圧を上昇  させるホルモンである、レニン・アンジオテンシン系が活性化されて高血圧を生 じます。

  7. 浮腫
  8. 腎機能障害によりナトリウムや水が体内に貯留して浮腫を生じます。 さらに腎不全に合併しやすい心不全により、全身の毛細血管から血漿成分が漏出して浮腫を生 じます。

  9. 二次性副甲状腺機能亢進症と腎性骨症
  10. 腎不全ではビタミンDの活性化障害により、腸からカルシウムが吸収できず低カルシウム血症  となります。この低カルシウム血症により、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌する二次性副甲状  腺機能亢進症がおこり、骨からカルシウムが溶け出して腎性骨症の原因になります。

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