80年代から90年代にかけてのバンドブーム全盛の時代、Reck(フリクション)、酒井泰三、山木秀夫、富樫春生といった、ひと際異彩を放つ個性派揃いのミュージシャンが会した、強力かつ無双な集団が日本にありました。

その名は“IMAバンド”。
その首謀者こそ、JAZZ、Rockというジャンルを超越した活動で、音楽シーンに足跡を残す孤高の表現者/トランペッター・近藤等則氏、その人でした。
自身が率いた伝説の「近藤等則&IMA」の活動以外でも、ソロワークはもちろん、ビル・ラズウェル、ジョン・ゾーン、ジム・オルーク、ハービー・ハンコック、DJ Krushら先鋭ミュージシャン達との競演を重ね、更には、ライフワークともいえる『地球を吹く』において、地球の大自然を相手に、歩みを止めることなく、その表現活動を続けてきた近藤氏。

そして、2013年2月26日、東京青山CAY。
近藤等則氏のシリーズライブとなる「響命」、その第一回が開催されました。

IMAバンドの鋭角的サウンドと不意に訪れるフリーキーな音に震えた若かりし沼田。
今回、機会を得て、遂に近藤等則氏にインタビューを決行!2部構成のライブのブレイク中にお邪魔致しました!ドキドキです!!
それでは早速!

- なぜ備え付けのPAスピーカーを使用せず、RCF社のスピーカーを持ち込まれているのでしょうか?
その前に、まず、サウンドシステムの変遷について話そう。
これまで、アメリカを軸とするロックに対応する音響機材の評価基準は、『音量』だった。スピーカー・メーカーは“ラウドに”再生する方向、音を大きく、効率良く鳴らす事に注力していた。
しかし近年、90年代以降、ヨーロッパのサウンドシステムが台頭し、アメリカ主導だった音響システムの有り方が変化して来た。『音量』ではなく、『音質』にプライオリティーがシフトして来た。
今までのロックを基準とした『音圧』を重視した音の捉え方から、もっとセンシティブで繊細な音楽の捉え方、いわばヨーロッパ的な、『音質』を重視する音の捉え方へ変わって来た。
私自身も、ここ最近はヨーロッパ製のマイクに始まって…

- DPAのマイクですね。
そう。そこからどんどんヨーロッパの製品を使用する機会が増えていった。

今回のライブで使用しているイタリアのRCF社のスピーカーもそう。とにかく『音量』よりも『音質』、純粋に音のクオリティーを重視する様になった。
例えば、肌着として、「木綿」と「絹」、身に付けた時にどちらの素材が気持ちいいか・・・それは、絶対に「絹」。素材の質が違う。それと同様に、これからは、音楽ももっと『質』を追求して行かなければならない。徹底して『音質』の追求をして行かないと。
それが観客/オーディエンスにとって一番気持ちの良い事だから。
『音量』だけでは気持ち良くはなれない。『音量』で得られる気持ち良さは、20世紀のロックの体験で既に終わってる。
現在の私は、ステージでは、より良い音で観客に伝える事が演奏者としての“使命”だと考えている。
- 今の近藤さんの機材のセレクトは、『音質』の良い機材を選ぶ、という点を重視されているのですね。
■DPA 4060
世界の舞台音響を大きく変えた、直径わずか5.4mmの高性能ミニチュア・マイクロホン。
そのサイズ、堅牢な耐湿設計、そして驚くべき高音質で、舞台用ヘッドセットマイク、ラベリアマイクとして、そして様々な楽器用マイクとして、世界中の現場で、「目立たつことなく」活躍しています。
同シリーズには、感度の違いによるバリエーションモデル(4061、4062)がラインナップされています。

そう。演奏する機材もそうだし、再生環境もそう。
サウンドシステムに関しても、今回のRCFの様に、出来る限り“『音質』の良い”機器を使いたいと思っている。
■api Channel Strip
USAスタジオ・サウンドを代表する伝説的ブランド、api社を代表するマイクプリ「512C」、EQ「550A」、コンプ「527」が一体化した高品位ストリップ。
存在感のある立体的なサウンド、ナチュラルかつ的確な効きのダイナミクス、そして現場での使用に耐えるタフなパーツ・セレクトが、絶対的な信頼感をプロフェッショナルに与えます。
■Ruper Neve Designs Portico 5032 Mic Pre / EQ
プロ・スタジオ機器界の巨人、ルパート・ニーヴ氏が生み出す、現代の“ニーヴ・サウンド”。
明瞭感、サウンドの奥行きだけでは無い、決定的なサウンド・マジックを持つプリアンプ。そして、廻す程に音楽的なEQ。
“SILK”スイッチによる、自らの古き良き響きへの回顧も併せ持つ、懐の深き一品。
- 先程の、マイクを『DPA 4060』に変えられたきっかけも『音質』の追求からというわけですね。
そう。以前は当時の定番だった、「バーカス・ベリー」のマイクロホンを使用していた。
もっと良いマイクを と探していた時、トランペットでは無い他の楽器で『DPA 4060』が使用されている事をヒントにして、トランペットでの使用を考えてみた。
トランペットの専門業者に相談し、マイクを固定するソケットを旋盤で削り、製作してもらった。ソケットの固定の仕方も自分で色々と試行錯誤して。このソケットが無いと、せっかくのDPAも上手く機能しない。現在の音には満足しているが、既に1本壊れ、2本目を購入した(笑)
- 近藤さんは以前から、マイクが繋がる「マイクプリアンプ/ヘッドアンプ」も色々と試され、検討されていましたが、現在はどちらの機種をご利用なのでしょう?
今は『api Channel Strip』を使っている。その前は『RupertNeveDesigns Portico 5032』を使っていたのだが、ヨーロッパツアー中に紛失してしまった。そこで改めてマイクプリアンプを探している時に、apiを紹介してもらい、それ以来、apiを使用している。

■digitech Whammy
■Eventide SPACE
■Eventide TIMEFACTOR
- 近藤さんのライブセットは、トランペットにエフェクトを多用する“エレクトリック・セット”が大きな特徴となっています。どのようなエフェクターを使用されていますか?
エフェクター・セットには、『Digitech Whammy』とデュッセルドルフの小さなメーカーのワウ、Eventideのリバーブ『SPACE』とディレイ『TIMEFACTOR』、そしてフィルターを2種類使っている。
- エレキギター用のエフェクターが並んでいるのですね。
そう。
エフェクターもマイクプリアンプも、ここまで何台変えてきたのか判らない位、色々と試してきた。
そもそも私が行っている「エレクトリック・トランペット」用の機材という物は無い。
マイクに関しても、トランペットの“ベル”にマイクを付ける人は多くても、マウスピース部にマイクを取り付ける人は少ない。
だから、自分で試行錯誤するしかない。ここまでのシステムの開発には、相当な時間が掛かり、色々な苦労を重ねてきた。
- 『地球を吹く』でも同様の機材群を使用されているのですか?
そう。昔、アンデス山脈で吹いた時には、機材のセットはもっと大きく、16Uのラックを担いで上がった。それが今ではこんなにコンパクトになって。凄いよな!
- コンパクトでも今の機材は高品位であるということですね。
その通り。
そして『地球を吹く』では、世界中を回っており、マイナス10度から40度近くまで、気温の差も激しいので、機材にとっては非常に過酷。
どうしてもダメージが避けられない。


ところで、エフェクターの発祥はトランペッターだと知ってる?
デキシーランドJAZZがあるだろ?そこで使われるワウからフランジャー、ミュートまで、皆、JAZZのトランペッターが生み出したアナログのエフェクト。それをエレキギターが登場後、同じ効果を生むために電気で開発したものが、ギターエフェクター。
エフェクターを成立させたのは、エレキギターでは無く、トランペットが先。そういう意味で、私の「エレクトリック・トランペット」は邪道を行っているのではなく、JAZZの本道を行っている訳だ。
JAZZのトランペッター達が、なぜ、エフェクトを産んだのか?それは、音色の違いでもっと色々な表現を増やしたかったから。
エフェクターが先に在ったのではなく、自分のイマジネーションを表現するためにエフェクトを作った。
つまり、自分がどんな音を出したいのか、そのイマジネーションがしっかりあれば、そうしたエフェクターに巡り合った時に、その性能をフルに発揮できる。何のイマジネーションも持たない人が使っても、機械に振り回されるだけで、機械を使い込む事は出来ない。 イマジネーションが大事。
ギターをやっている人達も、その点を意識して、エフェクターを更に楽しんで、面白い音楽をどんどん作って欲しいね。

“人間同士のコミュニケーションのためだけの音楽から、いのちの大本、すなわち地球の大自然と共振・共鳴する音楽を追求する為に始めた”「地球を吹く」。
その18年に渡る活動の後、2013年、“気持ちを新たに”人々に向けた演奏活動に還って来た近藤氏。
その「響命 ひびきあういのち」とタイトルされたシリーズライブ、第一回。


2部構成のライブでは、前半は深遠な世界で音場を作り上げるソロ・ライブを展開。
エレクトロニック処理された近藤氏のトランペットが響き渡ります。

そのサウンドは、これまで体験してきた他のライブよりも“鮮烈に”、そして“ダイレクトに”
かつ“極めて自然に”耳に飛び込んで来ます。

IMA時代の鋭角的サウンドを彷彿とさせる現代のエレクトリック・ドラム
Roland V-Drums TD-30KV-S
山木秀夫氏使用セット

ライブ後半。
あの「IMAバンド」の強靭なビートの牽引者、山木秀夫氏の登場!
今や日本を代表する名ドラマーである山木氏は、『Roland V-Drum』のセットに座ります!

山木氏を"the best friend in the world"であり、"Brother"と呼ぶ近藤氏。
山木氏が繰り出すエレクトリック・ドラム・サウンドが、即、近藤氏のエレクトリック・トランペット・サウンドと化学反応を起こします!

強烈にカッコいい!!!


【バックトラックの再生用にMR-2000Sを使用】
- バックトラックを手元で再生されていましたが?
「自分で作ったトラックをライブ用に2ミックスに落とした物をDSD再生できる『KORG MR2000S』で再生している。手動スタートだよ(笑)」
そう、V-drumを駆使する山木秀夫氏との連携に関しても、同期信号はナシ!
長い親交を持つ両者ならではの超絶なアンサンブルに会場唖然!

PA席には…
RolandのV-Mixer『M-380』と、ご存知、間瀬哲史さん!

- RCFスピーカーの音、いいですね!
「スピード感があり、解像度が高い。音出しの際に再生した自分の持ち込み音源も、いつもより情報が多く聴こえてきました(笑)」
今回、会場に持ち込まれたRCFスピーカー群
■メイン・アレー:RCF TTL31-A / TTS18A (4/1対向)
■近藤さん用モニター:RCF NXM12A
■ドラム用モニター:RCF NX10SMA
■DJブース用モニター:RCF NX10SMA
■ディレイ・スピーカー:RCF TT052A

更にDJ Sahib氏も参戦!
研ぎ澄まされた音の応酬が、くっきりとした情報としてRCFスピーカーより繰り出されます!
自然に体が動きます!


更に、武道家・青木宏之氏による刀による演舞も!!!会場にキリリとした空気が張り詰めます!!


充実した演目、そして良質な音場。素晴らしいライブに会場も大満足!

「イマジネーションした表現を“最良”の状態でオーディエンスに届けたい。」
そのシンプルかつ困難な命題に挑み続ける求道者、近藤等則氏。今後も沼田は注目し続けます!

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