ペパーミントの香りは、私たちの日常にとってなじみ深く、リフレッシュや集中力アップなどに役立つイメージがあります。
実際に、ペパーミントオイルは古代から食品や医薬品、化粧品など様々な用途で使われており、近年ではその科学的な働きにも注目が集まっています。
今回の論文では、ペパーミント精油(エッセンシャルオイル)が脳の活動にどのような影響を与えるのかを、色による視覚刺激との関係性を含め調査しています。
参加者には、白・赤・青の視覚刺激を見せながらペパーミントの香りを吸入してもらい、そのときの脳波の変化を測定。脳波解析には、高速フーリエ変換という専門的な分析方法が用いられました。
その結果、次のような興味深い変化が確認されました。
●白色刺激+ペパーミントの香り
脳の前頭前野で「アルファ波」が増加。これは、学習や思考が活発になる状態を示しています。
●青色刺激+ペパーミントの香り
赤色よりも落ち着いた脳の反応が見られ、視覚に関わる後頭部の脳活動が安定していたことから、視覚処理機能が高まった可能性が示唆されました。
この研究は、香り(嗅覚)と視覚が組み合わさることで、脳に複雑な影響を及ぼす可能性があることを、科学的に示した初めての試みです。
ペパーミント精油は単なるリフレッシュアイテムにとどまらず、脳の働きや感覚の調整にも影響を与えるかもしれないという可能性が、この研究から見えてきました。今後は、他のエッセンシャルオイルでも同様の調査が進められることで、香りがもつ科学的な力について、より深く理解が進むことが期待されています。
参考文献 Lin, S., Wang, Y., Wu, K., Yu, G., Liu, C., Su, C., & Yi, F. (2022). Study on the effect of Mentha × piperita L. essential oil on electroencephalography upon stimulation with different visual effects. Molecules, 27(13), 4059. https://doi.org/10.3390/molecules27134059