レスベラトロールの効果
レスベラトロールは、ぶどうの果皮や赤ワインに豊富に含まれているポリフェノールの一種であり、強い「抗酸化作用」や「抗炎症作用」があります。
他にも、老化防止効果、抗糖尿病作用、心臓保護作用、神経保護作用、抗がん作用、などが知られています。
そして、レスベラトロールにおいて最も注目されている効果として「サーチュイン遺伝子」を活性化させる事が出来るという点です。
サーチュイン遺伝子とは、多くの生物が持つ遺伝子であり、特にカロリー制限やストレス応答時に活性化するとされています。
サーチュイン遺伝子が活性化すると、細胞機能の維持やエネルギー代謝の効率化に働きかける為、健康寿命を延ばす効果があると考えられています。
しかし、これらの考えは主に短命の動物モデルや細胞レベルでの研究に基づいており、レスベラトロールの効果が人間においても同様に作用するかどうかは、まだ完全には解明されていません。
参考文献 Valenzano, D. R., Terzibasi, E., Genade, T., Cattaneo, A., Domenici, L., & Cellerino, A. (2006). Resveratrol prolongs lifespan and retards the onset of age-related markers in a short-lived vertebrate. Current Biology, 16(3), 296-300. doi:10.1016/j.cub.2005.12.038 レスベラトロールは、寿命の短い脊椎動物の生命期間を伸ばす。
レスベラトロールは肥満や老化を改善する可能性がある
高カロリーの食事を摂取し続けると、健康状態が悪化し、寿命が短くなるとされています。
また、逆に必要な栄養をとって、低カロリーの食事を摂取し続ける事で寿命が伸びるといった研究成果もあります。
例えば、PubMedにて掲載されている情報では、中年のマウスに対して、高カロリーの食事と一緒にレスベラトロールを投与することで、低カロリーの食事をしたマウスと同様なくらい、生存率が向上することが示されました。
このような事から、レスベラトロールは肥満や老化に対しても有益な効果があると考えられています。この事が必ずしもヒトにも当てはまるとは限りませんが、健康効果への期待はもてます。
参考文献 Baur, J. A., Pearson, K. J., Price, N. L., Jamieson, H. A., Lerin, C., Kalra, A., ... Sinclair, D. A. (2006). Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. Nature, 444(7117), 337-342. doi:10.1038/nature05354 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17086191/
レスベラトロールは高カロリー食マウスの健康状態を改善する
レスベラトロールによる心血管疾患の改善
この学術論文によるとレスベラトロールによって、心血管疾患を改善する可能性が示されています。
レスベラトロールによる過酸化脂質の抑制
脂質が酸化する事で生じる「過酸化脂質」は、細胞に悪影響を及ぼす物質とされていますが、レスベラトロールは過酸化脂質の合成を阻害する事で、産生を抑制する効果があるとされています。
レスベラトロールによる血流機能の改善
通常血糖値が高くなると「酸化ストレス」が発生し、細胞組織にダメージが生じ、血管内部の「内皮細胞」機能が低下してしまいます。
「内皮細胞」の機能が低下すると「内皮型一酸化窒素合成酵素」の活動が弱くなり、一酸化窒素が減少します。
これにより、血管の機能や血管壁に問題が生じ、血液がスムーズに流れずに血流が悪くなります。
この「内皮型一酸化窒素合成酵素」の活動が弱くなるのは、高血糖状態である事が原因ですが、レスベラトロールを摂取する事で、「内皮型一酸化窒素合成酵素」が活性化する為、血管が拡張し血の流れが改善する効果があるされています。
このような作用から、レスベラトロールは糖尿病による血管ダメージを防ぐ可能性に期待が持たれています。
Bonnefont-Rousselot,D.(2016).Resveratrol and cardiovascular ,8(5),250.doi:10.3390/nu8050250
レスベラトロールと心血管疾患 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27144581/
サーチュイン遺伝子による抗加齢効果と細胞保護作用
サーチュイン遺伝子は、SIRT1からSIRT7まであり、7つの遺伝子を含むファミリーと呼ばれるグループになっています。
サーチュイン遺伝子の各遺伝子は、異なる構造をしていますが、特にサーチュイン遺伝子「SIRT1」は、エネルギー代謝、細胞の老化、脂質代謝、DNAの修復などを制御する、重要な役割があるとされています。
そして、レスベラトロールは、サーチュイン遺伝子ファミリーの一部であるSIRT1のタンパク質に直接結合する事で、SIRT1の活性を上げる事が確認されています。
サーチュイン遺伝子「SIRT1」が活性化すると、健康寿命が伸びる効果があるとされていますが、この作用は、酵母やマウスにおいて研究されている「カロリー制限による抗加齢効果」と同様の働きです。
参考文献 久野, 篤史, & 堀尾, 嘉幸. (2021). レスベラトロールの生体作用とその標的SIRT1.
Journal of Japanese Biochemical Society, 93(1), 100-108. doi:10.14952 SEIKAGAKU.2021.930100 https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2021.930100/data/index.html
レスベラトロールの美容効果
レスベラトロールは、皮膚がん、光老化、アレルギー性皮膚炎など、一部の皮膚疾患治療に役立つと言われています。
この作用は、レスベラトロールを直接皮膚へ塗布する事での効果です。
レスベラトロールの美肌作用は、シミを作り出す原因物質である「チロシナーゼ」の活性を阻害する事です。チロシナーゼが活動しなくなると、新しいシミが生まれないため、シミ予防や美白効果へと繋がります。
しかしながら、さらなるヒトでの臨床研究も必要とされており、レスベラトロールの安全性や美容効果を評価する為にさらなる研究が求められています。
参考文献 Ming-Hsien Lin, Chi-Feng Hung, Hsin-Ching Sung, Shih-Chun Yang, Huang-Ping Yu, & Jia-You Fang. (2021). The bioactivities of resveratrol and its naturally occurring derivatives on skin. J Food Drug Anal, 29(1), 15-38. doi:10.38212/2224-6614.1151 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9261849/
レスベラトロールの副作用
レスベラトロールは、1日に2.5g以上摂取すると、副作用として嘔吐や下痢などの症状が現れますので、過剰摂取には注意してください。
それ以外であれば、一定の量までは安全とされています。
過去に行われた「人に対しての臨床試験」では、レスベラトロールを適量摂取する事で、次のような効果がでていますので参考にしてください。
・肥満男性に1日150mgのレスベラトロールを30日間投与した結果、骨格筋のミトコンドリア機能の上昇やインスリン抵抗性の改善した。
・非肥満女性に1日75mgの投与を12週間継続しても代謝の指標に変化はなかった。
・肥満男性に1日1,000mgのレスベラトロールを4週間投与しても、インスリン感受性の改善はなかった。
・メタボリック症候群の患者に対しては、1日に1,500mgのレスベラトロールを90日間投与することで肥満とインスリン抵抗性が改善した。
・2型糖尿病患者に対して1日に1,000mgの投与を8週間継続したところ、血糖値の低下などの有効性が示された。
また、他の副作用としては、レスベラトロールを過剰に摂取し続ける事は、サーチュイン遺伝子が継続的に活性化する事に繋がる為、細胞の生存率が向上します。しかし、この作用は悪い細胞(がん細胞)の生存率も同時に向上させる事に繋がるため、必ずしもよい結果になるとは限りません。適量をまもり、適切に取り入れる事が大切です。
参考文献
●Sabina Galiniak, David Aebisher, & Dorota Bartusik-Aebisher. (2019). Health benefits of resveratrol administration. Acta Biochim Pol, 66(1), 13-21. doi:10.18388/abp.2018_2749 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30816367/ レスベラトロール投与の健康上の効果
●Tiantian Meng, Dingfu Xiao, Arowolo Muhammed, Juying Deng, Liang Chen, & Jianhua He. (2021). Anti-Inflammatory Action and Mechanisms of Resveratrol. Molecules, 26(1), 229. doi:10.3390/molecules26010229 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33466247/ レスベラトロールの抗炎症作用とメカニズム
●Abdullah Shaito, Anna Maria Posadino, Nadin Younes, Hiba Hasan, Sarah Halabi, Dalal Alhababi, Anjud Al-Mohannadi, Wael M Abdel-Rahman, Ali H Eid, Gheyath K Nasrallah, & Gianfranco Pintus. (2020). Potential Adverse Effects of Resveratrol: A Literature Review. International Journal of Molecular Sciences, 21(6), 2084. doi:10.3390/ijms21062084 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32197410/ レスベラトロールの潜在的な副作用
著者:大名町スキンクリニック 院長 橋本 慎太郎
金沢大学医学部卒、美容皮膚科クリニックを運営
https://m-beauty.jp/about/dr.html
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本成分は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。疾病に罹患している場合はかかりつけ医師に、医薬品を服用している場合は医師、薬剤師に相談してください。食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスをお勧めします。