小麦粉案内

製菓製パンの専門店に行くと、並んでいる小麦粉の種類に圧倒されたことはありませんか。日本では、パン、お菓子、麺など、それぞれの用途に応じた小麦粉が多数販売されており、その種類は世界一多いのではないかと言われています。ここでは、小麦粉選びに役に立つ、小麦粉の基礎知識についてまとめてみました。

小麦の構造

小麦粉の原料となる小麦は、表皮、胚乳、胚芽の3つの部分に分かれています。

表皮(小麦粒の約15%)

外皮ともよばれる部分で、製粉過程で「ふすま」として除去されます。家畜の飼料に使われるほか、食物繊維を多く含み特有の風味をもつことから健康食品としても利用されています。

胚乳(小麦粒の約83%)
小麦が成長するときに必要な栄養分となる部分で、大半はデンプンとタンパク質です。この胚乳部分を製粉したものが小麦粉になります。

胚芽(小麦粒の約2%)

成長すると芽になる部分で、製粉過程で除去されます。脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでいるため、健康食品などに利用されています。

タンパク質と灰分

小麦粉のおもな成分は全体の70~75%を占めるデンプンですが、パンやお菓子、麺などを作るときの重要な要素となるのは、タンパク質と灰分の含有量です。

タンパク質(小麦粉の約7~13.5%)

小麦粉に含まれるタンパク質の大部分が「グルテニン」と「グリアジン」という2種類のタンパク質です。これらに水を加えてよくこねると、小麦特有の弾力性と粘着性をもった「グルテン」が形成され、パンがふくらんだり、コシのあるうどんができるのは、このグルテンの働きによるものです。

灰分(小麦粉の約0.3~0.6%)

灰分(かいぶん)とは、表皮や胚芽部分に含まれるリン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルのことで、胚乳部分では、表皮に近くなるほど多く含まれます。灰分は高いほど小麦の香り、味わいが強くなり、色味はくすんだ色合いに。逆に、灰分が低くなると小麦の風味が軽くなり、色味は白くなります。

小麦の種類

小麦粉の原料となる小麦は、胚乳が硬いほどタンパク質量が多く、「硬質小麦」「中間質小麦」「軟質小麦」に分類されます。
胚乳の硬さ 特長
硬質小麦 硬い タンパク質量が多く、おもに強力粉の原料となる。
中間質小麦 中間 タンパク質量は中間で、おもに中力粉の原料となる。
軟質小麦 軟らかい タンパク質量が少なく、おもに薄力粉の原料となる。

小麦粉の分類

日本における小麦粉の分類は、タンパク質量によって分類されるのが一般的で、タンパク質量の多い順に「強力粉」「準強力粉」「中力粉」「薄力粉」に分けられます。
タンパク質量(%) グルテンの質 粒子の大きさ 主な用途
強力粉 約11.5~13.5 強靭 粗い パン、麩など
準強力粉 約10.5~11.5 やや強い やや粗い フランスパン、麺(ラーメン)など
中力粉 約8.5~10.5 細かい 麺(乾麺・うどん)など
薄力粉 約7.0~8.5 軟弱 極細かい 菓子全般、天ぷらなど
「硬質小麦が強力粉で、軟質小麦が薄力粉?」と言われてもなかなかイメージがわきません。そんなときは、実際に打ち粉をしてみるとその違いがよくわかります。粒子が粗くサラサラとした強力粉は薄く均一に広がり、一方の粒子が細かくしっとりとした薄力粉はダマになってうまく広がりません。そのため、パンだけでなくお菓子作りでも、打ち粉は強力粉を使用します。
また、強力粉か薄力粉かわからなくなったときも、粉の特長を覚えておけばすぐに見分けることができます。粉を手でギュッと握って、指の跡がしっかりと残れば薄力粉、粉が崩れて固まらないのが強力粉です。

保存について

小麦粉は温度の高い場所に置くと劣化しやすいため、直射日光、高温多湿を避け、風通しの良い場所に保管してください。また、小麦粉はにおいを吸着しやすいため、においの強いもののそばに置かないでください。開封後は、賞味期限に関わらずお早めにご使用ください。
※開封後は袋口をしっかりと閉めてください。密閉容器に入れると、におい移りや湿気、虫害から防ぐことができます。
※冷蔵庫での保存は、室温との温度差で結露が生じ、ダマやカビの原因になる場合があるのでご注意ください。

その他の小麦粉

全粒粉・グラハム粉

一般の小麦粉は、表皮や胚芽をのぞいて製粉しますが、全粒粉は文字通り、小麦の粒をまるごと挽いているため、食物繊維やミネラルが豊富に含まれています。全粒粉は、小麦の種類によって薄力粉タイプと強力粉タイプがあり、さらに挽き方によって粗挽きと、細かく挽いた粉末状の細挽きがあります。

セモリナ粉(デュラム粉)

セモリナ粉に使われるデュラム小麦は、薄力粉や強力粉などの原料となる小麦とは品種が異なるため、タンパク質が多い硬質小麦ながら、グルテンに可塑性があり変形させやすいという特長があります。その性質をいかしておもにパスタ用として使われています。カロテノイド系色素を含んでいるため、粉は薄黄色になります。

その他の粉類

ライ麦粉

ドイツパンによく使用されるライ麦は、食物繊維やミネラルが豊富で、低GI食品としても人気です。グルテンのもとになるタンパク質を含んでいないため、発酵によるふくらみはほとんど得られません。そのため、小麦粉をブレンドしてグルテンを補ったり、サワー種という発酵種が使われます。

米粉

昔から和菓子の材料として使われていた米粉。製粉技術の発達によって粒子の細かい米粉の製造が可能になったことから、今ではパンやケーキなど、幅広い用途で利用されています。ライ麦同様、グルテンのもとになるタンパク質は含まれていません。

CONTENTS