世界で感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。
緊急事態宣言、ロックダウン、オーバーシュート、医療崩壊、刻々と事態は悪化し、予断を許さない状態です。 新型のため、まだまだ分からないことが多く、すべての人に慎重な行動が要求されます。 そんななか、犬猫を飼育している人はどういったことに注意をしたらよいのか。
いろいろな機関が発表している情報をまとめていきます。

※各機関が発表している情報を、分かりやすいように一部ことばを変えてまとめています。
各機関が意図する内容とズレが生じる恐れがあるため、詳細は各機関のホームページなどの原文を参照してください。

厚生労働省

厚生労働省のホームページでは、新型コロナウイルスに関する様々な情報が日々更新されています。4月2日更新のページ掲載分を見てみましょう。

「これまでのところ、新型コロナウイルスがペットから人に感染した事例は見つかっていません。一般に、動物との過度な接触は控えるとともに、普段から動物に接触した後は、手洗いや手指消毒用アルコールで消毒などを行うようにしてください。」

犬猫が新型コロナウイルスに感染するかどうかについては触れられていません。新型コロナウイルスがペットから人に感染しないと明言はしないものの、そのような事例はないとしています。

ただし、更新前の掲載文にはなかった、動物に接触した後の手指などの消毒を推奨する文章が付け加えられています。このことから、ペットを介した新型コロナウイルスの感染は否定できないという見解が伺えます。

世界規模の動物検査会社IDEXX

アメリカに本社があり、世界でトップクラスの規模(175カ国以上)をもつ、 犬猫から牛馬豚などの産業動物まで幅広い動物検査会社IDEXXも新型コロナウイルスについて情報を提供しています。
この検査会社では、以下のような項目に分けて情報を提供しています。

犬猫のコロナウイルスとの比較

犬や猫に呼吸器症状や消化器症状をひきおこすコロナウイルスは、 アルファコロナウイルス属に分類されます。 新型コロナウイルスは、ベータコロナウイルス属に分類されます。
したがって、これらのウイルスは全くの別種類と考えられます。

ペットは新型コロナウイルスに感染するか

アメリカ獣医師会の報告から以下の文章を引用しています。
「感染症の専門家や複数の関連学会の共通見解として、現時点でペットが新型コロナウイルスを発症する、または他の動物へ伝播する根拠はない」 犬猫が新型コロナウイルスによって呼吸器症状や消化器症状を示したり、感染源となったりする証拠はないという見解です。
この検査会社では、すでに数千にもおよぶ犬猫の検体を検証し、新型コロナウイルス陽性は1件も認められなかったとのことです。
数千件の検体を検証済みというのは、信憑性が高い情報ですね。

ペットが呼吸器症状を示したら、新型コロナウイルス検査をするべきか

犬猫が新型コロナウイルスに感染することに対して否定的であるため、検査もすべきではありません。 それ以前に、現在検査を受け入れていないため、検査はできません。
ペットが呼吸器症状を示したら、動物病院を受診し、一般的な検査治療を受けるようにしましょう。

飼い主が新型コロナウイルス陽性を示したら

香港で、感染者の飼育犬が新型コロナウイルスの弱陽性反応を示したことをふまえ、予防措置として、ペットとの接触を避けるようにしましょう。

犬猫で新型コロナウイルスの予防はできるか

現在のところ、人も犬猫も新型コロナウイルスに有効なワクチンは存在しません。
また、世界小動物獣医師会のワクチネーションガイドライングループの報告文章を引用し、 現在流通している一般的な犬のコロナウイルスに対するワクチンが、新型コロナウイルスに対する交叉的な防御能を示すというエビデンスは全く存在しない、としています。
動物病院で定期的に接種している、いわゆる混合ワクチンでは予防できないであろうという見解です。

東京都獣医師会

東京都の獣医師会からも、以下のような情報が公開されています。

犬猫は新型コロナウイルスにうつるか

国際獣疫事務局によると、香港当局の報告で新型コロナウイルスの弱陽性反応を示した犬は、無症状であり、その後、陰性となりました。 最初の血液検査では、感染を示す抗体価の上昇は認められませんでしたが、その後、陽性が確認されたため、この犬は新型コロナウイルスに感染したと考えられます。
3月27日にベルギー当局の報告で、猫が新型コロナウイルスに感染し、下痢、嘔吐、呼吸困難などの症状を示した後、回復したとされています。
これらのことから、新型コロナウイルスが犬および猫にうつる可能性を示しています。
ただし、ペットが人に新型コロナウイルスをうつす可能性は限りなく低いだろうと考えています。

犬の散歩は控えたほうが良いのか

犬が感染および感染源となる可能性は限りなく低いと考えられるので、犬の散歩や短時間の運動は、そのまま継続して構わないでしょう。
飼い主が新型コロナウイルスに感染しないことが、ペットを守るためにも大切であり、冷静な対応をお願いします。

犬猫のコロナウイルス感染症は人間に感染するか

犬猫特有のコロナウイルスが、人間を含めたほかの動物に感染したという報告はありません。

飼い主が新型コロナウイルスに感染したらどうすればいいか

飼い主が入院する前に、ペットの世話ができる人がいれば、その人にお世話をお願いしてください。 自宅で療養する場合は、ペットの身体にウイルスが付着しないよう、療養中の部屋にペットが入らないように注意してください。

また、マスクやリネン類にもペットが接触しないように注意してください。 ペットの身体に新型コロナウイルスが付着している可能性があるため、全身のシャンプーをすることが勧められます。
シャンプーをするときは、お湯が周りに飛び散らないよう、流水の勢いを弱くしてください。
シャンプー後、ペットを拭いたタオルは一般的な家庭用洗剤で洗濯してください。

ペットを世話する方にお渡しする際には、キャリーバッグ、首輪、リードなどのペット用品を0.05%に薄めた家庭用塩素系漂白剤で拭いた後、 塩素を拭き取るためにもう一度水拭きしてください。

ペットが新型コロナウイルスに感染したのか心配なとき

飼い主が新型コロナウイルスに感染していなければ、ペットへの感染を心配する必要はないと考えられます。
人混みに連れて行かないようにすることで、さらに感染のリスクを下げることができます。
新型コロナウイルスに感染していた人とペットが濃厚接触したことが分かった場合は、 すぐに動物病院へ連れて行くのではなく、かかりつけの動物病院に電話をし、指示を仰いでください。

まとめ

新型コロナウイルスと犬猫について、各種機関が発表している内容をまとめました。重要なことは以下の通りです。

犬猫は新型コロナウイルスに感染しないと考えられるが、これは現時点での見解である。 犬猫やそのケージ、首輪などを介して、人間が新型コロナウイルスに感染する恐れがある。
犬猫を新型コロナウイルスから守るためには、飼い主が新型コロナウイルスにかからないことが最重要である。

犬猫が体調を崩した場合、新型コロナウイルスの感染ではなく、犬猫で一般的な疾患を考えるべきである。
飼い主が、新型コロナウイルスの感染や感染者との濃厚接触の疑いがある場合は、犬猫の診察であっても、事前の連絡なく動物病院を受診してはいけない。
飼い主が新型コロナウイルスに陽性となって入院し、犬猫をだれかに預ける場合、犬猫のシャンプー、所持品の消毒が必要である。

残念ながら、新型コロナウイルスはもう身近な疾患となってしまいました。
感染しないように、感染を広げないように最大限努力するとともに、感染してしまった場合には、飼育しているペットたちとどのように接し、生活してあげればよいか。
万が一に備え、いまから確認しておきましょう。