第8回 食物アレルギー
滝田雄磨 獣医師
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前回に引き続き、アレルギーに関するお話です。
今回は食物アレルギー性皮膚炎。
これは文字通り、食物が原因のアレルギー性皮膚炎です。
したがって、アレルギー反応を起こさない食物を探し出せれば、
皮膚炎を抑えることが出来ます。
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よくアトピーなのか食物アレルギーなのかと診断で分かれることがあります。
しかし、アトピーと食物アレルギーが引き起こす症状に明確な差はありません。
症状はまったく同じであると海外の学会で報告している先生もいらっしゃいました。
また、アトピーの患者さんの約半分は、
食物アレルギーも併発しているのではないかという報告もあります。
今後、アトピーの中の食物アレルギーという考え方が主流になってくるかもしれません。
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さて、そんな食物アレルギーですが、
最近では、ペットフードメーカー各社から
食物アレルギーの患者さん用のフードが販売されています。
実に多種多様なフードが販売されており、
これからもどんどん新しいものが開発されていくでしょう。
では、どのフードを選択すればいいのか。
やはり単価が高いフードの方が、
よりアレルギーに対してこだわっている物が多いです。
しかし、そもそも体質に食事が合わないために起こる病気。
体質によって、その子に合う低アレルギー食もまちまちです。 -
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私の動物病院では、
比較的効果が高いと報告されているフードを優先的にオススメしていますが、
必ずしもそのフードが患者さんにとって、最も適したフードとは限りません。
さらに、その低アレルギー食が本当に症状を抑えることができたのかどうかと判定できるまで、
実に2ヶ月ほどかかります。
低アレルギー食と水、それ以外は一切口に入れない生活を2ヶ月続け、
効果が得られなければ新しい低アレルギー食と水だけの生活を2ヶ月続ける。(除去食試験)
根気のいる治療ですが、これを乗り越えれば、
薬を使わない治療で痒みのない、あるいは少ない生活を送ることが出来ます。
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とても豊富な種類が商品開発されている低アレルギー食。
それらをざっくり分類すると、どのようなタイプの低アレルギー食があるのでしょうか。
1.新奇タンパク食
普段食べていないであろうと思われるものを原料につくられたフードです。
そもそもアレルギーはタンパク質に対する体の反応で起こります。
そして、その反応は生まれて初めて接したときには起こらず、何回か接してから起こります。
ヒトにおいて、花粉症デビューしたという言い回しがあるように、
以前は平気だった物質に対してアレルギー反応を起こすようになってしまうことがあるのです。
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コップに入った水に例えると、
ある物質に触れるたびに水が少しずつ増え、
一定の量を超えるとコップから水が溢れてしまう。
このときにアレルギー反応が起こります。
そこで、原料に使うタンパク質の種類を極力減らし、
初めて接する原料でアレルギー反応が起こらないフードを
探そうというのが、このタイプのフードです。
あひる、七面鳥、なまずなどを用いたフードがあります。 -
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2.加水分解食
タンパク質を分子レベルで細かくしてあるフードです。
タンパク質の粒が大きいと、アレルギー反応は起こりやすくなります。
したがって、口に入る前にすでにタンパク質を分解しておき、
アレルギー反応を起こしにくくするといった方法です。
この原理は、加水分解食以外のフードでも用いられており、
一般的に低アレルギー食では、なるべく消化されやすいタンパク質が採用されています。
消化されにくいタンパク質だと、より長時間おおきな粒で存在するため、
アレルギー反応が起こりやすくなってしまうのです。
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その他、低アレルギー食は
全般的に皮膚の健康維持に必要な栄養バランスを考慮して作られています。
たかが食事、されど食事。
皮膚にトラブルを抱えている子は、フードの見直しが大切です。
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アトピーの患者さんでも同様ですが、アレルギーが疑われると、
血液などを用いて何の物質に対してアレルギーを持っているかという検査をすることができます。
アレルギー検査は複数の検査機関で取り扱っており、内容もまちまちです。
一般的にはIgEという抗体を測定し、
アレルギー反応を起こしやすい体質なのかどうかを検査します。
一方、食物アレルギーに関しては、近年、
リンパ球反応試験という新しい検査が開発されました。
この検査は現在日本でしか行うことが出来ない貴重なものです。
この検査により、より信憑性の高い検査結果が得られると考えられています。
しかし、それでも現状、
あらゆるアレルギー検査において検査結果は100%合致するものではありません。
もちろん検査結果にもとづいて治療をし、奏効することもありますが、
検査結果を鵜呑みにせず、あくまでも参考として活用しましょう。
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2回にわたってアレルギーに関する
皮膚疾患について紹介してきました。
直接命に関わることはほとんどない分野ですが、
重症化すれば動物も飼い主も生活の質が著しく低下する分野です。
また、獣医医療の発達により、
どんどん治療法が進化している分野でもあります。
新しい技術や知識を随時身につけ、臨床や情報共有に活かし、
患者さんも飼い主さんもより痒みの少ない、
ストレスの少ない生活を送れるようサポートさせていただければ
幸いです。