第25回 公衆衛生とワンヘルス


滝田雄磨 獣医師

  • 前回に引き続き、ワンヘルスのお話です。
    人間、動物、環境のすべてを健康にすることが大切である
    という考え方です。
    このなかで、環境を健康にするという概念に関わるのが、
    公衆衛生
    です。

  • 公衆衛生とは、難しく言いうと、
    組織された地域社会の努力を通して、疾病を予防し、生命を延長し、
    身体的、精神的機能の増進をはかる科学であり技術であると定義されています。

    つまり、身の回りの環境を整え、清潔な社会で健康に過ごそうということです。
    職場などの身の回りの掃除から、広くは街の下水道の整備なども公衆衛生に含まれます。

  • 犬猫などの動物を飼育していると、
    より一層、衛生管理に務める必要があります。
    犬猫の排泄物に含まれる菌やウイルス、
    散歩中に感染した寄生虫により、感染が拡大してしまう可能性があるため
    です。

    近年、都市部を中心に犬猫の室内飼育が増加しています。
    室内飼育になると、室外飼育と比べて飼い主と犬猫との距離が近くなり、感染に対する意識が薄くなります。
    しかし、いくらかわいい犬猫でも感染症の感染源となる可能性があるのです。

    飼い主にはその知識を身につけ、適切な飼育をする義務があります。

    犬猫などの動物と人間との間を、自由に行き来することができる感染症を、
    人獣共通感染症もしくはズーノーシスといいます。

  • これに対し、人間から動物、
    動物から人間には感染しない感染症も存在します。
    鳥が感染するインフルエンザは人間にも感染するため、
    問題となっています。
    鳥インフルエンザや狂牛病など、
    ニュースで取り上げられている有名な疾患もありますが、
    今回は犬猫における人獣共通感染症について少し紹介します。

    犬の混合ワクチンを接種するとき、しばしば話題にでる疾患です。
    レプトスピラとは、螺旋状の細菌で、人間が感染すると感冒(かぜ)症状がでます。
    重症化すると黄疸、出血、腎障害などを伴い、死亡することもあります。

    犬が感染すると、発熱、嘔吐、脱水が起こります。
    重症化すると出血、腎不全、肝不全を伴い、死亡することもあります。

  • 現在の国内では、レプトスピラで人間が死亡することは希ですが、 タイでは毎年数千人規模の大流行を起こしている、恐ろしい感染症です。

    レプトスピラは土壌や川、水たまりなどの環境中からの感染のほか、感染動物の尿などから皮膚や口を介して感染します。

    げっ歯類が保菌するという特徴があり、
    都市部にいるドブネズミが感染を拡大する可能性があります。
    東京都内において、今年(2018年)も犬の感染死亡報告があり、比較的身近な疾患です。
    犬にレプトスピラのワクチン接種をすることで、感染の拡大を抑えることができます。

    犬や猫に感染する回虫という寄生虫による感染症です。
    人間に感染すると、トキソカラ症や内蔵幼虫移行症と呼ばれます。

    回虫とは、糞便のなかに含まれる線虫の一種です。
    動物病院において、糞便検査で日常的に認められる身近な寄生虫のひとつです。
    糞便中に認められる寄生虫ではありますが、その幼虫は体内移行し、肝臓、肺などいろいろな部位に移動します
    乳汁にも移行するため、感染母犬から子犬に感染することもあります。

  • 人間が感染すると、免疫力が低い幼児などの場合は、
    幼虫が体内を移行して発熱、咳、
    肝臓の腫れ
    など様々な症状を起こします。
    幼虫が幼児の眼に移行すると、永久的に失明することもあります

    幼児が回虫に感染してしまう場所の筆頭として、公園の砂場があげられます。
    地域ネコにとって、砂場は格好のトイレ。寄生虫の温床となります。
    実は近年、幼児への回虫などの感染症を考慮し、砂場を廃止している公園が増えています。
    砂場を廃止することも効果的ですが、犬猫に駆虫薬をつかって、
    感染の拡大を防ぐことも大切です

    多くのフィラリア予防薬で回虫も駆虫できるため、フィラリア予防薬の利用も勧められます。

    公衆衛生を考えるときに欠かせないのが、清掃と消毒です。
    消毒薬を使って感染源をやっつけることが効果的であることはもちろんですが、 ノミ・ダニなどの消毒薬に強い寄生虫を考えた場合、 掃除機などで物理的に排除することはとても効果的です。

  • また、排泄物など、感染源となりやすい物は、
    素手で触らないようにする、速やかに処分する、
    触れたものは消毒する
    といった適切な対処が大切です。

    消毒薬を使うときは、その消毒薬が何に対して有効なのかという点を考える必要があります

  • 身近なものでいえば、
    アルコール系の消毒薬よりもハイターなどの塩素系の消毒薬のほうが多くの感染症に有効です。
    しかし、より強力であるハイターは皮膚への刺激が強く
    漂白作用があるなどの注意点もあります。

    一般的ではありませんが、
    さらに強力な消毒薬としてグルタルアルデヒドという消毒薬があります。
    グルタルアルデヒドは、吸引するだけで刺激があり、
    扱うには厚手の手袋とエプロンとゴーグル、マスクと換気が必須という危険な薬品でもあります。

    消毒薬は強ければ良いというわけではなく、適した消毒薬を適切に使用することが大切です
    近年では、家庭用として、高い消毒作用をもちつつ、 刺激が少なく安全性が高い製品も開発されています。

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  • 身近な公衆衛生と、犬猫から移る感染症について一部紹介しました。
    犬のワクチンで予防しているレプトスピラが、実は人間にも感染し、
    死亡することもある感染症であることを知らなかった方も多いのではないでしょうか。

    薬剤耐性菌問題もしかり、
    近い将来、感染症がとても身近になる時代がやってきます。
    そうしたとき、公衆衛生の概念を身に着けておくことはとても大切です。

    ワンヘルスの考え方のもと、
    身の回りの感染症についても意識できるように勉強しましょう。