第20回 犬猫に寄生するダニ。マダニ。

滝田雄磨 獣医師

  • 気温が上がり、外におでかけしたくなる今日このごろ。

    虫たちも、春になると活発になります。

    しかし、活発になって困るのが、ダニ、マダニ

    犬猫に寄生して、様々な弊害を引き起こします。

    今回は、このマダニについてご紹介します。

  • 世の中には約4万種類のダニがいると言われています。

    そのうち、日本には1700種類のダニがいると言われています。

    膨大な種類のダニがいるわけですが、そのなかで、
    特に犬猫に弊害のあるダニにはどういったものがいるのでしょうか。

    代表的なところで挙げると、
    マダニ、ニキビダニ、ツメダニ、ヒゼンダニなどです。

    今回は、マダニについてご紹介します。

    マダニは他のダニと比べると、とても大きいダニです。

    成ダニが動物に寄生して、充分に吸血すると、その大きさは1cmを超えます

    そのため、飼い主でも発見しやすく、犬猫に寄生する、代表的なダニと言えます。

  • マダニは、日本全国の野生動物が多い森林に生息しています

    しかし、それに加え、市街地の植え込み公園の茂みにも生息しています。

    市街地で散歩をしていて、マダニがついたと来院される方もいらっしゃるので、注意が必要です。

    マダニは幼虫から成虫まで、動物の血液を吸って生活します。

    吸血すると、一度地上に落ち、脱皮して大きくなります。

    脱皮した後、草や木に登り、動物が近づくのを待ちます

    動物が近づくと、ふたたび寄生し、吸血します。

    成ダニが充分に吸血すると、地上に落ち、産卵します。

    産卵する卵は、一度に3000個ほどにもなります。

    マダニは、春から秋にかけて活動が活発になります。

    そのなかでも、5-6月、9-10月が特に活発になります。真夏より少し涼しい、行楽シーズンです。

    アウトドアで出かけることが増える時期なので、より注意が必要です。

    温暖な地域では、冬も活動しています。寒い地域では、ダニは冬に活動できず、

    それぞれの発育ステージのまま、落ち葉の下などで越冬します。

    成ダニの吸血は、メスだと長くて2週間ほど続きます

    最初の12日ほどは、ゆっくり吸血します。

    そして、最後の2日ほどで一気に吸血し、身体が膨大します。

    このタイミングで飼い主が気づきます。

    一方、オスの成ダニは、交尾をするため、少量の吸血が終わると次の動物に寄生します

    身体もそれほど大きくならないため、発見が難しいです。

  • ①貧血

    マダニは吸血するとき、血液のうち余分な液体成分は、口から宿主の皮膚の中へと吐き戻します。

    これを繰り返すことにより、凝縮された血液を体内に取り込むことができます。

    そのため、たかが1匹のメスのマダニでも、約1mlの血液を失います

    100匹いたら、約100ml。
    大量寄生されたら、貧血を引き起こすのに充分な血液を失うことになります。

    ②皮膚炎

    マダニが吸血するとき、吸血の効率をよくするために、

    様々な生理化学物質が皮下に送り込まれます

    これが原因で、ひどい皮膚炎を引き起こすことがあります

    ③感染症

    ・バベシア症

    バベシアとは、とても小さな原虫で、犬の赤血球の中に感染します。

    バベシアに感染された犬は貧血を起こし、無治療では死にいたります。

    マダニは吸血によって犬の赤血球を体内に取り込みます。

    バベシアを摂取したマダニが産卵すると、

    新しく生まれてくるマダニもバベシアを体内に宿します。

    バベシアに感染された犬はバベシアを体内に宿したダニが次の犬を吸血すると、次の犬もバベシアに感染します

    ただし、幼ダニが吸血する時間は短いため、おもに成ダニが吸血するときに感染が成立すると考えられています。

  • ・猫ヘモバルトネラ症

    ヘモバルトネラフェリスという細菌による感染症です。

    マダニを媒介として感染します。

    猫が感染すると、貧血、元気消失、体重減少、食欲不振などの症状がみられます。

    感染した猫が出産すると、仔猫にも菌が移行します。

    また、輸血によっても感染することがあります。

  • マダニは人間も吸血し、感染症を伝播します。

    日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎・・・

    なかでも近年話題になっているのは、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)です。

    SFTSは、2011年に新しいウイルス感染症として報告されました。

    人間が、ウイルスを保有しているマダニに咬まれることで感染します。

    感染すると、6日〜2週間後に発熱、倦怠感、
    消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)などが現れ、
    重症の場合は死に至ることもあります。ワクチンや治療法はまだ確立されていません。

    また、症状が出ていない間は、病院を受診しても感染しているかどうかを調べることは出来ません。
    万が一症状が出たら、内科を受診し、マダニに咬まれた旨を伝えましょう。

    マダニが寄生してしまったら、マダニを駆除する必要があります。
    ただし、吸血して膨れ上がったマダニを見つけても、安易に引き抜いてはいけません

  • マダニは、蚊などとは違い、長時間吸血できる吸血様式をとっています。

    具体的には、酵素を含む唾液で表皮を溶かし、
    ハサミのような器官で皮膚を切り裂き、
    その先の皮下に溜まった血液を吸います。

    このとき、口からセメント質なるものを分泌し、皮膚に強固に固定されます。

    そのため、安易に引っ張ると、胴体がちぎれ、口先の構造が皮膚に残ってしまうのです。

    マダニに吸血されていることに気づいたら、マダニに効く駆虫薬を使うようにしましょう

    昨今、どんどん新しいダニの駆虫薬が開発されており、
    スーパーなどの市販で手に入るものから、動物病院でしか処方できないものもあります。
    背中に垂らすタイプ、経口投与するタイプ、フィラリアも同時に駆虫できるおやつタイプなど、
    投与形態にも様々なものがあります。
    ここで注意していただきたいのが、ノミ、ダニの駆虫薬の中にはマダニには効果がない駆虫薬もあるという点です。
    しっかりとマダニに効くことを確認してから投薬するようにしましょう。

  • マダニの寄生は、駆虫薬で予防することができます。
    たかがマダニ、されどマダニ。
    一度寄生されると、命の危険をともなうこともあります。
    大事に至る前に、日頃からしっかりと予防をしましょう。
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