キリムについて
キリムの歴史は絨毯よりも長いと言われています。約6千年前の昔から、ペルシャの遊牧民が敷物・テント・布団袋などの生活用品の内の一つとして使っていました。家畜と共に移動する生活様式の中で、素材のウールは家畜から作り、周辺にある自然の恵みから染料を作る草木染によって手織りで織り上げていきます。キリムの特徴である軽くて、携帯しやすく、絨毯に劣らない丈夫さは、遊牧民の生活にとって必需品でありました。織り方には様々な手法がありますが、大きく分けると平織り・ジャジム織り・ソマック織りの3製法に分けられます。
デザイン
キリムにあるデザインはギャッベ同様、自然の恩恵を受けている遊牧民の歴史から、身近にある自然や動物などがデザインの元になっています。写実的に作られているものもありますが、幾何学的に抽象化された文様が大半です。 それぞれ隠された意味があり、織り手である女性の恋愛、結婚、出産から家族の安泰、幸福への願いなど数多くあります。 その形から見て、隠された意味を探ってみましょう。
人物
人間賛歌を表したもので、女性の場合、多産を意味する。
手・櫛
手は邪悪なものから、身を守る意味がある。櫛は生命の誕生と結婚を意味する。
目
魔除けを意味する。三角形や菱形に形の変化したものもある。三角形や菱形は危険な力を弱めると信じられている。
イヤリング
元々、イヤリングは結婚への贈り物として使われたので、結婚への憧れ・願望の意味がある。
鳥
様々な解釈があるが、生活の安定・幸福への願という意味が多い。
動物
遊牧生活を共にする動物のモチーフは、動物達への愛情を意味する。
花
花の咲く園は遊牧民にとって、楽園であり、よく使われるモチーフ。
水差し
浄化・女性の妊娠を意味する。
水の流れ
遊牧民にとって水の確保は重要である。そのため、水の大切さを意味する。
生命の木
生命の木を象徴するザクロ・オークなど、色々なタイプの木があり、男性の成功・永遠の命などを意味する。
羊の角
遊牧民にとって、羊はキリムの原糸であったり、食糧ともなり、財産である。繁栄や力を意味する。
星
基本は6つの点であるが、8点のものもある。豊穣・幸福を意味する。
サソリ
魔除けのモチーフで、人を危険な動物から守る意味があり、このデザインを織ると織り手がサソリから家族を守る意味もある。
蛇
喜び・豊穣・多幸・財産を増やす意味がある。
愛
男性と女性の愛情を表しており、このモチーフをデザインに織ると、男女間の絆が強まるという意味がある。