愛媛県の中学を卒業後、集団就職により大阪の大手筆記具工場に就職した大西氏。台湾や中近東への輸出が盛んだった万年筆最盛期、当時15歳の大西氏は、セルロイドやプラスティック製の筆記具製作に携わり、基礎から製作経験を積み上げていった。途中、工場の倒産など厳しい時代もあったが、筆記具製作のみに留まらず、卸しや販売などその豊富な知識と経験を生かし筆記具の世界に携わっていく事となる。
そして転機が訪れたのは平成19年、65歳にて前職を退職した大西氏は一人の万年筆職人と偶然にも出会う事となる。
|
大西慶造氏 |
数々の逸品を世に送り出してきた加藤清氏の工房「カトウセイサクショ」の歴史に、幕が下ろされたのはまだ記憶に新しい。加藤氏と大西氏は古くからお互いを知る関係であったが、この時偶然にも共通の知人の紹介により、忙しい加藤さんの筆記具製作を手伝うことになる。再びセルロイド万年筆の製作を開始した大西氏は晩年の加藤氏のもと研鑽を積んでいった。
そして平成22年9月、カトウセイサクショの機械や道具などを引き継ぎ「大西製作所」を創業。加藤氏から受け継いだ万年筆に対する「想い」と、大西氏の正確無比の職人技が紡ぎ出す手作り筆記具が話題を呼び、万年筆ファンをはじめ各種メディアからも注目を集めることとなる。
画像左が大西さん、右は加藤さんの当時の製作風景。同じ機械、同じスタイルなのがなんとも印象的。
しかし物静かに製作する加藤さんに対し、大西さんはリズミカルに作業を行うのがお二人の違いである。