『まず“皮革”のそれぞれの分類に付いてご説明します。』
皮と革の両方を総称した意味をもっています。
動物から剥ぎ取り、鞣される前の状態のことを言います。
そのままでは腐ってしまう生の状態で、これを原皮と呼びます。
鞣された後、加工が出来る様に、また腐敗や変質しないように加工をした物を言い
ます。
LEATHER(レザー)とは本来動物の革の総称ですが、一般的に「牛革」のことを差
す事が多く牛革はレザーの代名詞と言えるでしょう。
よく商品ラベルに「GENUINE LEATHER」と記載されていますが、これは「本物
の革」という意味です。
革の性質は、雌・雄の違いや去勢の有無、屠殺時の年齢などで異なることから、そ
れに合わせて革の種類が分けられています。
その中でも一般的に流通し、身の回りに多い革素材に付いてご説明します。 

 
革を利用する動物の中でも牛の流通量は断トツの一位で、一頭当たりから取れる革
面積も他の動物を圧倒しています。
一頭の牛から採れる革の面積は雄の成牛で畳2帖分ほどになります。その面積の大
きさから大きな物に使えるということで用途が広くなり、その流通量にも繋がって
います。
牛革はコラーゲン繊維が非常に緻密に絡まってるので丈夫なのも特徴です。
また、部位による革質の違いが少なく無駄なく使えるという事と、汗腺や毛穴が少
ないので表面が美しいという優れた性質があります。


生後3ヶ月から6ヶ月の間に去勢し太らせて育てられ、生後2年以上経った雄牛から
できる革の事。去勢されていない雄牛の革(ブルハイド)と比較して革質がやわら
かくなっています。重厚で平均した厚みがあり、最もよく使われる牛革素材で、何
の表示もない「牛革」はたいていの場合ステアの事を指します。ライダースジャケ
ットにも多く使用されています。(用途)・衣類 ・小物 ・鞄 ・靴など。

生後1年半以上2年以内の、子供を産んだことのある乳牛の雌牛の革。
牝牛のため皮の厚さは雄牛ほどありませんが、やや柔らかさをもっています。
肌理は細かいですが、出産を経験しているため腹部の繊維密度はやや粗くゆるいで
す。しかし仔牛のカーフスキンやキップスキンより厚みがあり、丈夫なのが特徴で
す。出産経験のない雌牛の革はカルビンといい、より高価になります。
(用途)・衣類 ・靴や靴底 ・バッグ ・ベルト ・家具など。

生後3年以上の、去勢をしていないいわゆるBull(雄成牛)の革です。
繁殖用の雄牛の革で、去勢されていないため革が固く丈夫です。
厚手で丈夫ですが、雄牛は気性が荒く喧嘩が絶えない為、表面(銀面)のあらさや傷
も目立ちます。
大型で丈夫なので、通常は靴底や工業用の革ベルトなどに使われます。
(用途)・靴底 ・工業用。

生後6ヶ月以内の仔牛の革。キズが少なく、薄手で繊維がきめ細かいため表面
(銀面)がとても美しい。
子供の革なので一頭当たりから取れる量が少なくコストが高いです。
柔らかく、薄い素材で牛革素材の中でも最高のものとされています。
なお、元となる皮が4.3kg以下のものをライトカーフ、それ以上のものをヘビー
カーフと呼びます。(用途)・高級鞄など。

生後6ヶ月〜2年程度の牛から採れるカーフに次いで上質な革。
表面のきめ細かさは劣るものの、厚み・大きさはカーフより上です。
(用途)・衣類 ・小物 ・鞄 ・靴など。

以上の様に年齢や雌雄で分けられた5種類の原皮に分けられますが、さらになめし方(クローム鞣、タンニン鞣し、クローム・タンニン混合鞣し)を掛け合わせただけでも出来る革の種類は多種類になります。
また、品種や産地、身体の部位による分類も加えると膨大な種類の牛革に分けられる事になります。 

→ 牛革のお手入れはこちらをご参照下さい。 
 


馬革は革全体としての組織構造が荒いとされ、薄く摩擦抵抗が劣り靴の裏革などに使用されることが多いです。ただし繊維は柔らかいという特徴があります。そのため、椅子などの家具製品やレザーウェアとして用いられます。また、臀部(おしり)の部分はコードバンと呼ばれその網様層は非常に緻密で美しく光沢があり、空気も水も通さない最強皮革。 全体的には供給量が減少しつつある皮革です。(用途)・ホース/衣類・バッグ・ベルトなど ・コードバン/ランドセル・靴甲など。

馬革のお手入れについては、通常の牛革製品と同じです。
コードバンの場合、使い始めはやや固い革という印象がありますが、使い込むことで馴染み色合いや風合いなどが個性的になっていきます。
普段のお手入れは、乾いたやわらかい布などでホコリを落とし、やさしく何度もなでるようにして拭き上げます。なお、コードバンの革靴の場合は皮革用のブラシでブラッシングをしましょう。念入りなケアをする場合は、皮革用のクリームなどを塗りましょう。
クリームを塗った後も、乾いた柔らかい布で光沢がでるまでしっかりと磨きます。
コードバンは革製品の中でもやや水にも強い性質がありますので、水に濡れた場合も神経質になる必要はありませんが、乾いた布で水気を取り風通しのよい場所で陰干ししましょう。


豚革は表面(銀面)に硬い毛がつきぬけており、表面に3つずつの毛穴が開いていることが特長の革。表面が他の革に比べて摩擦に強く、なめしの技術により近年ではその汎用性から利用も広がっています。従来は価値の低い革とされていましたが、固くも柔らかくも、半透明に加工することが出来るのも特徴です。軽さや通気性の良さ、摩擦に対する強さから手袋や靴などによく用いられます。最近では、豚革の毛穴のデザインも活かしてたバッグや財布なども作られています。特にスウェード調に仕上げた「ピッグスウェード」は人気が高いです。(用途)・財布 ・鞄 ・コート ・手袋 ・靴の内張り革 等

豚革(ピッグスキン)の革製品は他の革と比較しても丈夫で傷つきにくいという特徴があります。
具体的なお手入れについては、通常の革製品と同じです。
通常のお手入れは乾いた柔らかい布でふきあげて、皮革用クリームで栄養補給します。
他の革と同様に水には大変弱いので、できるだけ濡れないようにするほか、濡れた場合はすぐにふき取り風通しの良い場所で陰干しをします。 

  山羊革は感触がソフトでありながらも丈夫でやや固いことが特長の革です。
大人のヤギ革をゴートスキン、子供のヤギ革はキッドスキンと呼びます。
表面(銀面)は独自の凹凸を持っているので摩擦性能に優れています。

ゴートスキンは毛穴の形に特徴があり、繊維が緻密で固く厚みの割には強度があります。
耐摩耗性、弾力性に富み型崩れしにくいのも特徴です。
あまり厚みを持たないジャケットなどに加工されても、十分な強度を保てるという特徴があります。
(用途) ・衣類 ・靴 ・鞄 ・ブックカバーなど。

キッドスキンとは(仔山羊)の皮をなめした革の事です。
ゴートスキンと比較しても薄手で軽く、やらわらくしなやかなのが特徴的です。
肌目も美しく高級皮革として知られています。
(用途) ・高級靴 ・高級手袋 ・ブックカバーなど。


 
それぞれの山羊革はややシミになりやすいという傾向がありますので、保湿デリケートタイプのクリームを使うのがいいでしょう。
通常のお手入れでは乾いた柔らかい布で乾拭きする程度で大丈夫です。(靴の場合はブラッシングしましょう)
他の革と同じように水には弱いので、濡れた場合はしっかりと水分を拭き取り風通しのよい場所で陰干しするようしましょう。

羊革は脂肪の穴が多く、革になめし加工をした後でも中に空間が残るため、防寒能力が高い革です。
その特徴を生かしコート、ジャケット、ブーツなどに加工されることが多いです。
ヘアシープとウールシープがあり、ヘアーシープの方が薄くて軽く柔らかな高級品です。
仔羊の革は『Lamb Skin/ラムスキン』と言い、軽さに優れています。

シープスキンとは、いわゆる羊革のことを指しますが、中でも生後1年をすぎた羊の革のことを差します。シープスキンは英語表記、ムートンはフランス語表記です。毛穴が小さく肌目が細かい薄くて柔らか。強度・耐久性は弱いがしっとりと肌に吸いつく様な感覚が特徴。一般的にはなめし革の状態をシープスキン、モコモコの毛のついた毛皮の状態のものをムートンと呼ぶことが多いようです。(用途) ・コート ・ブーツ ・手袋 ・帽子など。

ラムスキンとは、生後1年以内の子羊の皮をなめした物。若い革なので柔らかさと軽さは抜群です。
(用途) ・コート ・ブーツ ・手袋 ・帽子など。

シープスキン・ラムスキンは、牛革の場合とほとんど変わりませんが、羊革専用クリームを使うようにするとよいでしょう。
ムートンのお手入れ方法についてはこちらも御覧ください。⇒ ムートンのお手入れ