私たち開発者の役割は、
パナソニックとしての「ごはんのおいしさ」を創り上げること
まずはじめに、加古さんの役割と、普段の業務について教えてください。
最終的には、人が食べてどう感じるかが大切
製品開発のために、とにかくたくさん炊いて食べています
まず第一に、実際にごはんを試食して食味を評価することが重要なのですね。
何回も食べているんですか?
パナソニック 加古 そうですね、やはり最終的においしさを判別するのは人なので、人が食べてどう感じるかが一番大事だと思っています。当然機械でもおいしさは測りますが、食べることは欠かせません。基本的に開発する時は、ひたすら炊いて食べてを繰り返しています。多い時は1日に2~3合くらい食べることもありますね。
くりや 徳永社長 「くりや」でも、お米の食味評価はもちろん行っていますが、僕はそんなには食べてないですね(笑)
加古 私も今はそんなにたくさんは食べてないですが(笑)、開発が佳境になった時はとにかくたくさん炊いて食べないと製品にならないですね。
パナソニックの炊飯器は
各銘柄の特長を最大限に引き出すこだわりが魅力だと思います
パナソニック炊飯器の印象はいかがでしょうか?
徳永 パナソニックの炊飯器はトータルバランスがとてもいいですよね。お世辞ではなく、それぞれの銘柄米の特長を最大限に引き出すこだわりが魅力的です。それを実現するために、加古さんのような「ごはんのおいしさ開発の技術者」のみなさんの存在が大きいのだと思います。
加古 私たちも、メンバーそれぞれで味の物差しが違うから、一つのごはんをみんなで同時に食べて食味検査をしないと、基準がぶれてしまうんです。誰が炊いても「パナソニック推奨のおいしさ」でごはんを炊き上げられる炊飯器を作らないといけないのが難しいところです。
徳永 よくわかります。個人の好みで考えると、どうしても味の基準がぶれてしまうんですよね。パナソニックさんは、『パナソニックなりの炊きあがりの味の基準』を決めておられますが、「くりや」でも毎年、お米の出来や理化学的な数値、食味などを元においしさやお米の質の基準を決めています。基準を定めるのは、飲食店さんへの提案のための準備でもあり、取ったデータをうまく活用して、提案の目的の設定とそれに合わせた基準の調整を行っているんです。
「色々なお米を食べる楽しさに気づいた」
というお声をいただくことが一番うれしいです
「くりや」の目指している姿について教えてください。
パナソニック 加古 「くりや」さんでは、個性豊かな全国のおいしいお米がセレクトされていて、ラインアップが豊富なところがいいですよね。精米品質ももちろん信頼できます。たくさんの銘柄米を取り扱っている、それだけでも実はとても大変なことですよね。
徳永 全国のお米を取り扱うのが、たしかにとても大変で、面倒なことも多いです。まず、47都道府県からお米の生産者を探すこと自体が一苦労ですし、おいしくても値段が高ければなかなか買っていただけない。色々と考えなければいけません。
加古 そこまで情熱をかけて取りそろえたお米ならなおさら、各銘柄の産地に思いをはせて、目一杯楽しんでいただきたいですね。
お米の楽しみ方は、日本酒やコーヒーといった嗜好品と同じ
「銘柄炊き分け」でお米に込められた産地のこだわりを楽しんで
パナソニック加古 ごはんは、お米の銘柄ごとにそれぞれ特徴や味わいが違います。これは、日本酒やコーヒーといった嗜好品と同じです。お米は「くりや」さんのようなお米マイスタ―の方々の目利きでおいしいものを選ばれていると思いますが、ごはんは、さらにその炊き方によっても特徴が変化します。おいしいお米を選んだら、それを生かす最適な炊き方を選んであげてほしい、つまり「銘柄炊き分け」を使ってほしい!と思います。
くりや 徳永社長 せっかく「銘柄炊き分け」の機能があるのに活用してくれていない人がいるのはもったいなく感じます。どうごはんを炊きたいかをもっと意識して、体感していただきたいですね。
加古 「銘柄炊き分け」の機能では、「こういう意図で作ったからこういう特長を引き出してほしい」という産地の人の思いを再現する努力をして、それぞれの銘柄米に合った炊き方ができるようにしています。日本全国のお客様が、どこにいてもそれぞれの産地のこだわりが詰まったごはんを食べていただけるようにという願いを込めています。
2021年度モデルの炊飯器(SR-VSX1シリーズ)は対応する銘柄米の種類がさらに増えましたが、開発で苦労した点はありますか?
加古 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、お米の産地の方と一緒に食味確認をする場を設けることができませんでした。遠隔での評価を強いられ、一緒に同じ釜の飯を食べることができないまま、言葉だけで味の確認をやりとりしなければならかったので、大変苦労しましたね。開発の終盤では、産地の方と協力して密に連絡を取りながら、短期間で最終的な食味評価を進め、なんとか納得の出来に仕上げることができました。
徳永 パナソニックさんが情熱をもって完成させた「銘柄炊き分け機能」を今以上に活用していただくために、個性豊かな全国の銘柄米がきっかけのひとつになってくれたらいいなと思います。
「銘柄炊き分け」は「ふつう」以外にも「かため」「やわらか」も選べるので
ご家族の好みに合わせていろいろと楽しんでほしい
加古 「銘柄炊き分け」はパナソニック推奨の炊き加減である「ふつう」以外にも、「かため」「やわらか」が選べるんです。それだけではなくて、13通りの食感で炊き分けられる「食感自在炊き分け」でさらに細かく、好みの炊きあがりを探ってみてほしいですね。
例えばお弁当には、「もちもち」モードで粘りと弾力の強いもっちりとしたごはんを炊いたり、チャーハンなら「しゃっきり」モードで、しっかり粒感とハリのあるごはんを炊いたりとか、その日のメニューに応じて硬さを変えてみるなどして、食感の変化を楽しんでいただきたいです。
徳永 パナソニックのみなさんは変態的なごはんのプロですよね・・・。
徳永 本当にリスペクトしています。食べている量も僕たちの比じゃないと思いますし。先ほど加古さんが言われたように、このお米はこういう意図で、こういう風に特長を出していきたいという産地の意図というのはやはりあると思います。そこをうまく引き出すというのは、最後は食べないとわからないし、トライアンドエラーの繰り返しというのは想像を絶するなと感じました。
加古 私も、2016年に一度「くりや」さんの工場や食堂を見せていただいた際に、毎日3銘柄ずつ、お昼に当番で炊いて食べているというのを伺って驚きました。私たちは、どっちがどっちというのがないくらい、お互いごはんをとてもたくさん食べているんじゃないかと思います(笑)
田んぼから食卓までをつなげて「おいしいごはん」をつくりたい
「ごはんが主食」の食文化を守り続けるために
お米とごはんの将来はどうなっていくと思いますか?
パナソニック 加古 お米は、植物のときはイネ、穀物になると米、食物になるとごはん、と呼び方が変化していきます。稲、米、ごはん(炊飯器)の3つが連携しておいしいごはんを食べていただけるのが理想だなと、常々感じています。
くりや 徳永社長 加古さん以上のコメントはないです。炊飯工程に問題があれば、おいしさが落ちてしまうことがありますが、パナソニックの炊飯器なら安心できます。「くりや」のような米屋としても、お米の本当の良さを引き出してもらえることがうれしいです。
加古 将来はお米屋さんや、お米農家さんたちと、今よりももっともっと連携して、田んぼから食卓まで、信頼できるおいしいごはんを召し上がっていただけるような仕組みがつくれたらいいなと思います。夢は大きくなりますが、それが持続可能な食・農業・産業の発展につながると思いますし、同時に日本のごはんを主食とした食文化を守り続けていきたいと考えています。
今回の対談は、昨今の情勢を考慮してWEB上で実施いたしました。今後もより多くの人に「わが家のごちそうごはん」がある暮らしをお届けしたい、という熱意にあふれた対談となりました。