2015年12月
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ランゴー(1893-1952):
音楽劇「アンチキリスト」LANGGAARD, R.: Antikrist (Royal Danish Opera, 2002) (Blu-ray, HD)
発売日:2015年12月23日
Blu-ray日本語字幕なし価格:3,420円(税込、送料無料)
作曲家ルース・ランゴー(1893-1952)がこの「世界の終わり」についての歌劇を書こうと思い立ったのは、1921年、彼が弱冠27歳の時でした。若い作曲家は自身のメッセージを音楽で完璧に伝えることができると確信していたに違いありません。彼はそのために様々な資料を集め台本を書き「悪の視点によるキリストの受難曲」としての作品を書き上げたのです。 しかしデンマーク王立劇場に提出されたこの作品は、「台本に曖昧性が高い」と拒否され、別の台本を調達することができるのなら上演を考慮しようと言われてしまいました。何度か書き直しをしたもののの、その2年後に結局のところ劇場からは上演を拒否されてしまうのです。1936年、ランゴーはこのオペラに再度手を加え、原曲のかなりの部分を省略し、最終的にはオペラではなく「オラトリオ」のような形に落ち着きました。各々の登場人物が一人ずつ登場し、彼らは決して一緒に歌うことはなく、あくまでも単独で主張します。 ここに付けられた音楽はまるでリヒャルト・シュトラウスを思わせる重厚な後期ロマン派の響きを持つもので、全体的に不可思議な活気に満ちています。ダウスゴーをはじめとした名手たちによる演奏で、知られざる作品をぜひ味わってみてください。
収録作曲家:
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“さあ、天使の歌を” …
「リコーダーと合唱」の新しいアレンジによるヨーロッパのクリスマス・キャロルと歌曲集 [デンマーク国立声楽アンサンブル/ペトリ/ボイェセン]LET THE ANGELS SING - European Christmas Carols and Songs Arranged for Recorder and Choir (Danish National Vocal Ensemble, M. Petri, Bojesen)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:6.220615
SACD Hybrid価格:1,988円(税込)
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VENUS
グラウゴー(1957-):作品集 [ニューヨーク響/ニューヨーク大学現代音楽アンサンブル]GRAUGAARD, L.: Venus / Book of Throws / Layers of Earth / Three Places (New York Symphony, Contemporary Music Ensemble and Percussion Ensemble)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:6.220628
SACD Hybrid価格:2,325円(税込)
デンマークを代表する現代作曲家、ラース・グラウゴー(1957-)の4つの新作を収録したアルバムです。これらはニューヨーク大学のスタインハート(教育、文化、芸術に特化した学部)のアンサンブルのために作曲されたもので、知覚と感情の複雑な関係を示唆した面白い作品が並んでいます。弦の音から電子音まで多彩な音を駆使し、出来上がった緻密で繊細なテクスチュアを完璧に捉えた見事な録音にも驚愕です。不可解で不定形な音の海に揉まれる快感をどうぞ。
収録作曲家:
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Sounds Like You - あなたみたい
セアンセン(1958-):作品集 [ウィッレ/リクセンベルク/アスムッセン/ダウスゴー]SØRENSEN, B.: Intermezzi / Sounds Like You (Mads and Marie Louise Wille, Lixenberg, Asmussen, Dausgaard)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:6.220632
SACD Hybrid価格:2,325円(税込)
作曲家ベント・セアンセン(1958-)と、劇作家ペテル・アスムッセンによるコラボレーション。「Sounds Like You - あなたみたい」はベルゲン音楽祭からの委嘱作品で、2人の俳優と声楽アンサンブルによる緊迫した物語は、刺激的な無調の部分や、民謡の断片、子供の歌などが入り混じり、夢幻的な雰囲気を構築しています。「インテルメッツォ」は2人の共同作であるオペラ「空の下で」がベースになったもので、2人のメゾ・ソプラノ歌手とオーケストラによる5つの小品からなる小さな物語です。
収録作曲家:
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バーディングス(1907-1987):
交響曲 第4番&第5番 [ボーフム響/ポルセライン]BADINGS, H.: Symphonies Nos. 4 and 5 (Bochum Symphony, Porcelijn)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777669-2
CD価格:2,608円(税込)
オランダの作曲家、バーディングス(1907-1987)の交響曲集の第3集です。インドネシア、ジャワ島で生まれ幼い頃にオランダに移住した彼は、その経歴の独自さ(もともと鉱山技師&古生物学者)や、独自の音階を使用したことで知られ、少しずつ注目が集まっている人です。 このアルバムには交響曲第4番と第5番が収録されていて、第4番は第二次世界大戦中の重苦しい雰囲気を持ちながらも、古典的な構造と流麗な音楽に満たされた力作です。第2楽章のスケルツォ、甘美ささえ感じさせる第3楽章、いずれも後期ロマン派の流れに属する音楽です。第5番の交響曲はコンセルトヘボウ管の設立60周年記念のための委嘱作で、まるで映画音楽のような迫力を持っています。とりわけ終楽章は勇猛果敢。感動的な作品です。
収録作曲家:
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リース(1784-1838):
ヴァイオリン・ソナタ集 [ダスカラキス/ブルンナー]RIES, F.: Violin Sonatas, Op. 8, No. 1, Op. 16, No. 2 and Op. 71 (Daskalakis, W. Brunner)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777676-2
CD価格:1,824円(税込)
熱心な愛好家の存在で知られるベートーヴェンの弟子、友人であったフェルディナント・リース(1784-1838)。最近になって彼の作品の録音が相次いでいることは本当に喜ばしいことです。どちらかというと師であるベートーヴェンの影響からか、ピアノ曲の作曲家のイメージが強い人ですが、彼の父は優れたヴァイオリニストであったことからもわかるとおり、ヴァイオリンにも強い愛着を抱いていたことは間違いありません。 彼の18曲あるヴァイオリン・ソナタは活動の初期の時代から書かれていて、もちろんここでもベートーヴェンの影も感じられますが、それ以上に独自の音楽を作っていこうとしたリースの奮闘振りが明らかになっていくのが面白いところです。Op.8-1はまるでベートーヴェンの「春」を思わせる雰囲気で始まりますが、突然の転調やユニークなメロディラインからは確かにリースの個性が見え隠れしています。 古典派からロマン派まで多彩なレパートリーを持つダスカラキスと、フォルテピアノのブルンナーがふくよかな響きで歌い上げています。
収録作曲家:
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J.S.バッハ(1685-1750):
ミサ曲 ロ短調 BWV 232 [ケオハネ/ラン/ポッター/コボウ/ハーヴェイ/コンチェルト・コペンハーゲン/モルテンセン]BACH, J.S.: Mass in B minor, BWV 232 (Keohane, Lunn, A. Potter, Kobow, P. Harvey, Concerto Copenhagen, L.U. Mortensen)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777851-2
SACD Hybrid 2枚組価格:5,700円(税込、送料無料)
北欧のオーケストラの特徴とも言える透明なハーモニーを最大に生かした「ロ短調」ミサの登場です。デンマーク出身の名手モーテンセンは、鍵盤奏者、指揮者として優れた活動をしていますが、今回の「ロ短調ミサ」曲では、合唱、オーケストラ全てを統括し、生き生きとした素晴らしい音楽を導き出しています。 1981年にアメリカの指揮者ジョシュア・リフキンが確立した「バッハ作品の合唱部分のほとんどはソロの声のために書かれたであろう」の理論を継承しながらも、モーテンセンはその理論に更に考察を加え、オーケストラのサイズもバッハ(1685-1750)の時代に合わせた小さなアンサンブルにすること(26人)で、各々のパートに顕かなコントラストを付けています。そしてSACDのフォーマットで録音することで、曲のすみずみまでを見通すことが可能になり、この偉大なる作品を改めて味わうことが可能になったのです。
収録作曲家:
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ゲンミンゲン(1759-1813):
ヴァイオリン協奏曲 第3番&第4番
ゴセック(1734-1829):
交響曲 Op.6-2 [レッシング/ミュンヘン放送管/シルマー/ヴァイグレ]GEMMINGEN, E. von: Violin Concertos Nos. 3 and 4 / GOSSEC, F.J.: Symphony, Op. 6, No. 2 (Lessing, Munich Radio Orchestra, U. Schirmer, Weigle)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777866-2
CD価格:2,608円(税込)
ドイツ生まれの作曲家ゲンミンゲン(1759-1813)。ビュルテンブルクの騎士の末裔であり、ベルリンで裁判官として働いたという経歴の片鱗がわかっていますが、その他の詳しいことはほとんどわかっていません。しかし、以前cpoから発売されたヴァイオリン協奏曲第1番&第2番(777454)の雄弁な音楽は、この作曲家が並々ならぬ才能の持ち主であったことをはっきりと示すものでした。 この第3番と第4番の協奏曲も世界初録音であり、古典派の一つの失われたピースを埋める貴重な物証となることは間違いありません。同時収録はフランスの交響曲の礎を築いた作曲家ゴセック(1734-1829)の交響曲で、古典派からロマン派へと移り変わる激動の時代を反映させた堂々たる作品です。
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ヘンデル(1685-1759):
牧歌劇「エイシスとガラテア」
カンタータ「私はとても幸せになりましょう」 [シーハン/ワキム/ウィリアムズ/ボストン古楽音楽祭合唱団&管弦楽団/スタッブス]HANDEL, G.F.: Acis and Galatea [Opera] (Sheehan, Wakim, D. Williams, Boston Early Music Festival Chorus and Orchestra, Stubbs)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777877-2
CD 2枚組価格:5,216円(税込、送料無料)
これまでにも権威ある賞を獲得しているボストン古楽音楽祭室内管弦楽団と指揮者のポール・オデット、並びにスティーブン・スタップズによるヘンデルの「エイシスとガラテア」です。この1718年版の「エイシスとガラテア」というのは、イギリスの貴族ジェイムズ・ブリッジズの元で働きだした頃、ブリッジズがロンドン郊外のキャノンズに建築していた館で上演するために書いたもので、ちょっとした劇に付けられた音楽でした。初演後はそのまま放置されていましたが、いつの間にか人気が出て、周囲がヘンデルの許可なく勝手に演奏するようになります。 それに業をにやしたヘンデルが自ら改訂版を作成したのですが、そちらは規模も拡大され、英語、イタリア語が混在するというもの。そのため、1739年にもう一度改訂を行い、現在はほとんどがこちらの1739年版が演奏されています。 このCDで演奏されている初稿版は5人の歌い手と7台の楽器のみという小さな編成で演奏されるほのぼの感溢れるもので、ヘンデルの最初の意向が遺憾なく発揮されています。同時収録のカンタータも、あまり録音のない貴重なものです。
収録作曲家:
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ラッソ(1532-1594):
マニフィカト集 [ジングフォニカー]Vocal Music - RORE, C. de / LASSO, O. di / BERCHEM, J. de / JOSQUIN DES PREZ / LASSO, O. di / SERMISY, C. de (Magnificat) (Die Singphoniker)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777957-2
CD価格:1,824円(税込)
ドイツが誇る名ヴォーカル・アンサンブル、ジンクフォニカーによるオルランド・ディ・ラッソ(1532-1594)の第2集です。前作(777751)のモテット集に続く、今回のマニフィカト集は、全てラッソが他の作品を元に創り上げた(パロディ…他の作品の旋律を転用した)ものであるため、このアルバムでも、まず素材となった原曲のメロディが歌われ、続いてラッソのマニフィカトが歌われるという方式をとっています。 原曲のシンプルな様式を重んじながらも、そこに豊かなポリフォニーを加え、なおかつ敬虔な表情を持たせるラッソの手法は驚くべきものであり、また、ジンクフォニカーはこれらの曲に現代的な雰囲気も加えながら、実に見事に歌いあげています。
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R.シュトラウス(1864-1949):
クラリネットとファゴットのための二重協奏曲
組曲「町人貴族」 [1947]STRAUSS, R.: Bourgeois Gentilhomme (Le) / Duett-Concertino / Lieder (Giuffredi,Poschner, Brun, Poschner, R. Strauss) (1947)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:777990-2
CD価格:2,608円(税込)
指揮者マルクス・ポシュナーは1971年ミュンヘン生まれ。コリン・デイヴィス、ロジャー・ノリントンなどの名指揮者のアシスタントを務めた後、インゴルシュタットの室内管弦楽団の首席指揮者に就任。2004年にはドイツ音楽協会、ドイツ・オーケストラ連盟から「ドイツ指揮者賞」を授与され、一躍脚光を浴びました。以降、着々とキャリアを重ね、2015/16シーズンより、スイス・イタリア語放送管弦楽団の首席指揮者に就任しました。彼はジャズ・ピアニストの顔も持ち、この分野でも創造性に満ちた演奏を繰り広げ、ジャンルを超えたファンを獲得していることでも知られる才人です。 この演奏は、スイス・イタリア語放送管弦楽団への就任記念ですが、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)作品の中でも比較的地味な曲を選択したところが、いかにも彼らしいと言えるのではないでしょうか。伸びやかに歌う独奏楽器を自由に操る彼の手腕にご注目ください。 余白に収録されているのは、晩年のシュトラウス自身の指揮による4曲の管弦楽伴奏つきの歌曲です。まるで目の前にシュトラウスがいるかのようなリアルな録音をお楽しみください。
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ジョン・マッコーマック
録音集 第11集 [録音:1924年]MCCORMACK, John: McCormack Edition, Vol. 11: Victor Talking Machine Company Recordings / Gramophone Company Ltd. Recordings (1924)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.111402
CD価格:1,900円(税込)
世紀の名テノール、ジョン・マッコーマックのコレクション第11集です。1884年にアイルランドで生まれたマッコーマックは、最初公務員を目指していましたが、ダブリンの教会で聖歌隊に参加したとき、自らの音楽への探究心に火がついたと言います。その後猛勉強を続け、オペラにデビューするも、やがてはコンサート歌手として活躍することを決意します。 多くの歌曲を当時のSPレコードに録音し、それを復刻した何枚ものアルバムが発売されていますが、この録音集のユニークなところは、同じ曲の別テイクが収録されているところでしょうか。現代のような録音技術(編集技術)もなかった時代、1回ごとのテイクに漲る緊張感といったら、それは言葉では尽くせないものです。実際に使われたのがどのテイクなのかわからないものもありますが、どのテイクにも真摯な魂が込められていることは間違いありません。 クライスラーが参加している曲や、エドウィン・フィッシャーがピアノ伴奏をしている曲、そして4つの未発表テイクも含まれた、ファンにとっても嬉しい1枚です。
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ゴドフスキー(1870-1938):
〈ピアノ作品集 第13集〉 [シチェルバコフ]GODOWSKY, L.: Piano Music, Vol. 13 (Scherbakov) - 6 Pieces for the Left Hand Alone / Transcriptions
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.225367
CD価格:1,815円(税込)
ポーランドで生まれ、アメリカで活躍した天才ピアニスト、レオポルド・ゴドフスキー。彼の「難攻不落」のテクニックを要する作品群は、今日も世界中のチャレンジャーに愛されています。この第13集には、一連の「左手のための」作品と、他の作曲家の作品を元にした「パラフレーズ」=「元々の作品を置き換えること、編曲の意味もある」が収録されています。彼のオリジナル作品もそれは見事ですが、やはり聴きものは「パラフレーズ」でしょう。ある楽曲を他の楽器に移し変える「トランスクリプション」よりも自由度の高い「パラフレーズ」の形式は、ほとんどの場合、原曲を自由に解釈し、新たな命が吹き込まれることが常であり、もちろんゴドフスキーもオリジナル作品に実にユニークな編曲を施しています。 サン=サーンスの「白鳥」は比較的耳にする機会が多い曲ですが、他の作品も聴いてみてください。特に最後の「こうもり」は彼の代表作の一つです。名手シチェルバコフのテクニックはここでも冴えまくっています。
収録作曲家:
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スーザ(1854-1932):
〈吹奏楽のための作品集 第15集〉 [オランダ王立海軍軍楽隊/ブライオン]SOUSA, J.P.: Music for Wind Band, Vol. 15 (Marine Band of the Royal Netherlands Navy, Brion)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.559745
CD価格:1,900円(税込)
“マーチ王”フィリップ・スーザ(1854-1932)の膨大な作品をくまなく録音している指揮者ブライオンによる第15集のアルバムはオランダ王立海軍軍楽隊を率いての演奏です。今作にも世界初録音の曲が含まれるなど、ファンにとっても嬉しいものとなっています。20世紀末前後のアメリカで、驚くべき人気を得たスーザ・バンドは7年間で3500回ものコンサートをこなしながら常にレパートリーを拡大し、また楽器編成もハープを加えるなど多彩なものとなっていきます。 時には社会情勢を反映し、時々のエピソードも盛り込みながら書かれた行進曲やオペレッタは実にユニークで洗練されたものであり、こんなことまで題材にするのかと驚いてしまうのではないでしょうか? トラック7の「ショパンの夜想曲」の吹奏楽版の編曲では、舞台裏に金管楽器を配置し、夢のような響きを紡ぎだしていますし、収録曲の中で一番長い(13分を越える)トラック3の「バンド・ケイム・バック」には「幻想的エピソード」の副題がつけられていて、途中には聞き覚えのあるメロディがいくつも聞こえてくるなど凝った作りになっています。 この大人気シリーズも、残り1作を数えるのみになりました。ぜひお楽しみください。
収録作曲家:
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ケージ(1912-1992):
〈フルート作品全集 第1集〉
龍安寺/Two/フルート二重奏のための3つの小品/2人のための音楽 [ゼンツ]CAGE, J.: Flute Works (Complete), Vol. 1 (Zenz)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.559773
CD価格:1,900円(税込)
東洋思想を愛し、沈黙を考察し、内なる響きに耳を傾けた人、ジョン・ケージ(1912-1992)。彼の飽くなき探究心から生まれた特異な「音楽」は、21世紀の現在でも論争を巻き起こし、また彼に追随する人も後を絶ちません。 彼の“音の出る”代表作の一つ「龍安寺」は、切り詰めた音の隙間から感じられる無限の空間と、極限の禅の精神を具現化したものとされるもので、ここからは実際の砂の流れを感じるもよし、人生の侘び寂びを感じるもよしと、それぞれの捉え方ができる作品です。ナンバー・ピースと呼ばれる作品群ははたくさんのヴァリエーションがあり、このフルートとピアノ版の「TWO」が記念すべき第1作となったものです。3つの音だけで構成されたフルートパートと、シンプルな和音を置いていくピアノパートが幽玄な世界を描き出します。 初期の作品である「3つの小品」はケージらしからぬ旋律的な作品。2人のための音楽は、「Music for …」のシリーズの中の一作品。スコアはなく、音声や楽器のための17の部分から構成されており、各部は沈黙と静寂が支配するという観念的な作品です。このような作品は、理解するのではなく感じるものなのかもしれません。
収録作曲家:
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ボルコム(1938-):
ロルカの歌
プロメテウス [バーベラ/ビーゲル/パシフィック・コラール&交響楽団/セント・クレア]BOLCOM, W.: Canciones de Lorca / Prometheus (R. Barbera, Biegel, Pacific Chorale and Symphony, St. Clair)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.559788
CD
通常価格:1,900円→ 特価!:390円(税込)ピューリッツァー賞と複数のグラミー賞を受賞したアメリカの作曲家、ウィリアム・ボルコム(1938-)はラグタイムをはじめとした親しみやすい音楽を多く書いています。しかし彼は音楽学者でもあり、またクラシック音楽の作曲家としても高名であり、例えば「ゴスペル・プレリュード」(8.559695)や2台ピアノのための音楽集(8.559244)などでの豊かな音楽は確かにジャンルを越えて愛されるものなのです。 とは言え、ここでのボルコムは極めてシリアスな表情を見せています。日本でも人気の高いスペインの詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカの作品は多くの芸術家に広範に渡ってインスピレーションを与えていますが、ボルコムはロルカの詩を音楽にするにあたって、名歌手プラシド・ドミンゴに協力を求め、議論を重ね、最もふさわしいと思える音楽をつけたと言います。シュールなユーモア、情熱とミステリー。これらが渾然一体となった印象的な歌曲集です。 また古代の伝説から題材を得た「プロメテウス」はベートーヴェンの「合唱幻想曲」を思わせるピアノ、合唱、オーケストラのための作品です。人類に火を与えたため、ゼウスから限りない苦悩を与えられたプロメテウスを描いたというこの作品には、様々な示唆が込められているのです。
収録作曲家:
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モーラン(1894-1950):
民謡編曲集 [トンプソン/ファーンズワース/タルボット/ウェーブリッジ男声合唱団]MOERAN, E.J.: Folksong Arrangements (A. Thompson, Farnsworth, Talbot, Weybridge Male Voice Choir)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.571359
CD
通常価格:1,900円→ 特価!:490円(税込)1894年にロンドンに生まれるも、育ったのはノーフォーク。そのためアイルランドと強い絆を持っていた作曲家モーラン(1894-1950)。彼の作品は日本でも一部の愛好家に深く愛されています。幼い頃からピアノとヴァイオリンを学び英国王立学校に入学した彼は、スタンフォードに師事しましたが、ヴォーン・ウィリアムズの作品にも強く感銘を受けたのです。 第1次世界大戦で重傷を負ったものの、それを乗り越え、以降自身のためにノーフォーク州を始めとした各地の民謡収集を始めます。イギリスの田舎の精神を反映させたこれらの素朴な音楽は、海に生きる船乗りと、大地を耕す農民、その双方の気分を完璧に反映させたもので、それらは表情豊かな男声の歌唱によって、時にはシリアスに、時には情熱的に伝わってきます。
収録作曲家:
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グラツィアーニ(1604-1674):
オラトリオ「アダエ(アダム)」
「放蕩息子」 他 [コンソルティウム・カリッシミ/コモー]GRATIANI, B.: Adae / Filli Prodigi / 5 Motets (Consortium Carissimi, Comeaux)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573256
CD価格:1,900円(税込)
17世紀頃、ローマ・カトリックの教会では毎週新しい典礼音楽が演奏されていました。いくつかの声部と楽器を伴う曲は、複雑な書法で書かれ、演奏もかなり困難なものであったことは間違いありません。そのため、これらを演奏するための練習用として小規模なモテットが多く書かれたのです。 グラツィアーニ(1604-1674)はミラノで生まれた作曲家で、1646年にイエズス会の母体ジェス教会の関連教会セミナリオ・ロマーノの楽長に就任、オルガンを弾きながら合唱団を指揮、多くの作品を書き残しました。彼の作品は、同時期に活躍したカリッシミのものと似ていますが、それはグラツィアーニが5歳のときに、カリッシミの住むマリーノに移住したことも影響しているかもしれません(2000人ほどの小さな町の同年代の音楽を志す少年たちは、恐らくお互いに影響しあったことでしょう)。 このアルバムでは、前述のような小さなモテットと、これまで存在が確認されていなかった2つのオラトリオを聴くことができます。コンソルティウム・カリッシミによる、この「隠れたバロック作曲家」の演奏は、この時代の音楽を愛する人にとってまたとない贈り物になることは間違いありません。
収録作曲家:
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ヴィヴァルディ(1678-1741):
宗教音楽全集 第4集 [セヴィーニェ/アラディア・アンサンブル/マロン]VIVALDI, A.: Sacred Music, Vol. 4 (Sévigné, Soulis, Aradia Ensemble, Mallon)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573324
CD価格:1,900円(税込)
ヴェネツィアで生まれ、ウィーンで没したバロック時代の大作曲家ヴィヴァルディ(1678-1741)。多くの人はヴァイオリン協奏曲「四季」を書いた人として認識しているでしょうが、実は膨大な数の作品を残しているのです。それは500を越える協奏曲、歌劇は52作以上、他にもたくさんの室内楽曲やソナタがあり、そしてとりわけ重要なのがオラトリオや40曲ほどのカンタータなどの宗教作品です。 これらの宗教曲のほとんどは、彼が司祭を務めていたヴェネツィアのピエタ慈善院付属音楽院のために書かれたものとされていますが、高いテクニックを必要とする声楽パートは、当時の女声歌手がすばらしい技術を持っていたことの証明でもあります。宗教曲の体裁をとりながらも、実際はまるでオペラのアリアのように表現力を駆使した華麗な作品は、現在でも歌いこなすには大変なことであり、広い声域とメリスマ(歌詞の母音に多くの装飾的な音符を当てはめて歌わせる作曲技法。オペラでは「コロラトゥーラ」とも呼ばれる)を歌いこなす技術を持った歌手でないと完璧な演奏にはなりません。この鮮やかで劇的な音楽は、教会の中だけでなく広く聴かれるべきものでしょう。
収録作曲家:
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ヴュータン(1820-1881):
〈ヴァイオリン作品集〉
コレッリ変奏曲/6つの小品
狩り/演奏会用練習曲 [クッペル]VIEUXTEMPS, H.: Violin Solo Works - 6 Morceaux / La Chasse (version for violin solo) / Etudes, Opp. 16 and 48 (Kuppel)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573339
CD価格:1,900円(税込)
ベルギーのヴァイオリニスト、作曲家アンリ・ヴュータン(1820-1881)は、ピエール・ローデ、シャルル・ド・ベリオといったフランスのヴァイオリン音楽の潮流を受け継ぐ名手として知られています。彼の師のベリオと同じく、主としてヴァイオリンのための作品を残し(弦楽四重奏曲なども存在する)中でも7曲のヴァイオリン協奏曲は、独創的な作風が現在でも愛されています。 このアルバムに収録されているのは、技術を磨くための練習曲が中心ではありますが、これらは単なるテクニックの上達を目指すのではなく、高い音楽性と表現力を養うためのものでもあることは間違いありません。Op.48の練習曲はパリ音楽院に献呈されていて、彼自身の手引きの言葉が添えられています。1845年に書かれたOp.16の練習曲は若書きの作品であり、作曲技法を磨こうとするヴュータンの努力のあとも垣間見える力作と言えるでしょう。それに比べ、死後に出版されたOp.55の6つの小品は彼のキャリアの最終段階の円熟を示すもので、まさに「バッハへのオマージュ」とも呼べる高い完成度を誇っています。緊張感漲るヴァイオリンを演奏するのは、1997年から2013年までバイエルン放送交響楽団のコンサートマスターを務めたドイツの名手クッペルです。
収録作曲家:
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ヴィエニャフスキ(1837-1912):
〈ヴァイオリンとピアノのための作品集〉
ヴァイオリン・ソナタ/ソナタのアレグロ
ポーランド風大二重奏曲 [リフ&マリアン・ミグダル]WIENIAWSKI, J.: Violin and Piano Music (L. and M. Migdal)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573404
CD価格:1,900円(税込)
ポーランドが生んだ名ヴァイオリニスト、ヘンリク・ヴィエニャフスキ(1837-1912)は作曲家としても数々の名作を残しましたが、彼の弟ユゼフもまた優れた音楽家として当時の音楽界に足跡を残しました。彼はヴァイオリンではなくピアノを選択し、活動の初期は兄ヘンリクとともに演奏活動をしていましたが、やがて独立。ヴィルトゥオーゾとしてヨーロッパを演奏旅行し、自作のほか、数多くの協奏曲、独奏曲を演奏したのです。フランツ・リストによれば、難曲として知られるショパンの練習曲全曲の初の公開演奏をしたとされていて、このエピソードだけでも彼がどれほどまでに、先進的なピアニストであったかを伺い知ることができるのではないでしょうか。 このアルバムには、彼自身のヴァイオリン・ソナタと兄ヘンリクとの共作である2つの小品(アレグロはユゼフ11歳のときの作品)が収録されています。メインのソナタは、冒頭からキャッチーなメロディが炸裂。凝ったピアノ・パートと華やかなヴァイオリン・パートが互いに高めあうかのような充実した作品となっています。
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ヒル(1869-1960):
〈弦楽四重奏曲集 第6集〉
弦楽四重奏曲 第15番-第17番 [ドミニオン弦楽四重奏団]HILL, Alfred: String Quartets, Vol. 6 (Dominion String Quartet) - Nos. 15-17
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573416
CD価格:1,900円(税込)
オーストラリアが生んだ作曲家アルフレッド・ヒル(1869-1960)。彼の17曲ある弦楽四重奏曲の全曲録音ツィクルスは、このアルバムが最終巻となります。彼は2歳から17歳までニュージーランドで過ごし、その後はライプツィヒに留学、ブラームス、ドヴォルザーク、チャイコフスキーら当時の音楽を吸収しました。彼はここでピアノとヴァイオリンを学び権威ある「ヘルビッヒ賞」を獲得、またオーストラリアに戻り、ニュージーランドを行き来しながら、ヨーロッパの伝統と、この地の音楽の融合を図り、時にはマオリの民謡を取り入れながら、数多くの作品を生み出したのです。 このアルバムには第15番から第17番の3つの作品が収録されています。彼が探求したものが表出された作品群で、民俗的な要素が含まれる(シューベルト風でもある)第15番、タイトル通り「ケルト民謡」が使われた第16番(とりわけ終楽章が素晴らしい)、全体的に陰鬱な雰囲気に彩られながらも、終楽章でドヴォルザークを引用するという第17番。歴史に取り残された秀作がここにあります。
収録作曲家:
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期待の新進演奏家シリーズ
アリ・アランゴ ギター・リサイタル [アランゴ]Guitar Recital: Arango, Alí Jorge - BROUWER, L. / CLERCH, J. / PUERTO, D. del / ARANGO, A.J. / LUCIA, P. de
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573506
CD価格:1,900円(税込)
1982年、キューバの首都ハバナで生まれたギタリスト、アリ・アランゴは2014年のアルハンブラ国際ギターコンクールをはじめとした数々のコンクールで入賞しています。また彼はすでに優れた作曲家として活動し、スペインやラテンアメリカの伝統とイディオムを継承する作品をいくつも発表しています。もともと20世紀に活躍したギタリストたちは、同時にこの楽器そのものを熟知している作曲家でした。そこで自身で演奏するために高い技術を駆使した作品を書きあげ、ギター音楽の発展に寄与してきたのです。 ここでのアランゴはまさにギターと一体になったかのような見事な音楽を聴かせています。それはブローウェルの作品であれ、パコ・デ・ルシアの作品であれ、また彼の娘ルーアのために書いた子守歌であれ、どの曲にも渾身の愛情を込めているのです。時には激しく、時にはまるで愛しい人を愛撫するように、彼の手はギターをかき鳴らします。
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シベリウス(1865-1957):
劇音楽「スカラムーシュ」Op.71(1913) [トゥルク・フィル/セーゲルスタム]SIBELIUS, J.: Scaramouche [Ballet] (Turku Philharmonic, Segerstam)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573511
CD価格:1,900円(税込)
1912年に作曲が始められ、その翌年12月に完成されるも、実際に上演されたのは9年後の1922年という、いわばシベリウス(1865-1957)の“不遇の作品”ともいえる劇音楽「スカラムーシュ」です。クヌーセンの台本は、対話を含むパントマイム形式のもので、レイロンという男の妻をせむしのヴィオラ弾き「スカラムーシュ」が誘惑、怒ったレイロンに殺されてしまうという悲劇ですが、当時のウィーンの劇作家アーサー・シュニッツラーが書いた「ピエロのヴェール」(エルノ・フォン・ドホナーニが音楽をつけた)の模倣とされてしまったのです。もちろんクヌーセンは、シュニッツラーよりも前にこの物語を計画していたと主張しましたが、シベリウス自身は「この仕事を引き受けたために神経がぼろぼろになった」と日記に記すほど消耗していたようです。 しかし、この音楽は見事なもので、弦楽器中心のオーケストラをバックに独奏ヴィオラが活躍、そこにチェロが絡みながら、明快な情景を描き出していくのです。しきりに現れる舞曲が印象的で、時にはスペイン風のボレロのリズムを刻んでみたり、幻想的なゆったりとした音楽になったりと、変幻自在です。そして、その響きは常にシベリウスのもの。まるでオペラのように物語と音楽が融合した壮大な作品となっています。
収録作曲家:
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フローラン・シュミット(1870-1958):
アントニーとクレオパトラ
交響的練習曲「幽霊屋敷」 [バッファロー・フィル/ファレッタ]SCHMITT, F.: Antoine et Cléopâtre Suites Nos. 1 and 2 / Le Palais Hanté (Buffalo Philharmonic, Falletta)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.573521
CD価格:1,900円(税込)
パリ音楽院でマスネとフォーレに師事し、1900年にはローマ大賞を受賞。ピアニストとしても優れた才能を持ち、ワーグナー愛好家でもあったというフローラン・シュミット(1870-1958)。彼の作品には独自のスタイルがあり、精緻な筆致による管弦楽は、後の作曲家たちに強い影響を与えています。 この「アントニーとクレオパトラ」は幕間にバレエの情景を持つ劇音楽で、1920年にパリ・オペラ座で上演された際にクレオパトラ役を踊ったイダ・ルビンシュタイン(後にラヴェルに「ボレロ」を依頼したダンサー)は神秘的な姿で観客を魅了したと言われています。この組曲は、初演後にシュミット自身が名場面を選び出し、刺激的な音楽を付けたものです。印象派風の響きと、リヒャルト・シュトラウスを想起させる激情的な音が融合した、豊かな色彩を持つ音楽です。「幽霊屋敷」はマラルメがフランス語に翻訳したエドガー・アラン・ポーの詩からインスピレーションを得たもので、詩の持つ不可解なニュアンスが的確に描き出された、いかにもシュミットらしい神秘的な作品です。 バッファロー・フィルの厚みのある音色は理想的なシュミットの音楽を創り上げています。
収録作曲家:
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ワーグナー(1813-1883):
楽劇「ニーベルングの指環」 - 序夜「ラインの黄金」 [ゲルネ/デヤング/ベグリー/シドム/ケンジェロシ/香港フィル/ズヴェーデン]WAGNER, R.: Rheingold (Das) [Opera] (Goerne, DeYoung, Begley, Sidhom, Cangelosi, Hong Kong Philharmonic, van Zweden)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:8.660374-75
CD 2枚組
通常価格:2,900円→ 特価!:990円(税込)ワーグナー(1813-1883)が創り上げた壮大なる叙事詩「ニーベルングの指環」は、北欧神話を下敷きとし、欲望、愛憎、人智を超越した物語が重厚な音楽とともに描かれる大作です。全曲完成までに26年を費やしたこの作品は、演奏時間も15時間を必要としますが、1876年に書かれた序章である「ラインの黄金」は物語の入門編とも言える部分で、コンパクトに纏められた(と言っても2時間以上)ストーリーとなっています。世界中の歌劇場で上演される人気作ですが、歌手の選択から演出、オーケストラのテクニック、そして指揮者の力量など、多くの問題をクリアしない限り、名演にはならない難しい作品です。 この香港フィル初の「指環」は演奏会形式で上演されたものですが、鬼才ズヴェーデンの指揮によって文句の付け所のない演奏に仕上がっています。また名バリトン、ゲルネがヴォータンを演じているところにも注目が集まりました。ちなみにジャケットデザインはこのコンサートのポスターがそのまま用いられています。
収録作曲家:
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ドヴォルザーク(1841-1904):
スターバト・マーテル Op.58 [ウォール/藤村実穂子/エルスナー/リー・リアン/バイエルン放送合唱団&交響楽団/ヤンソンス]DVOŘÁK, A.: Stabat Mater (Wall, Mihoko Fujimura, Elsner, Liang Li, Bavarian Radio Chorus and Symphony, Jansons)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:900142
CD価格:2,085円(税込)
「スターバト・マーテル=悲しみの聖母」
13世紀に生まれたカトリック教会の聖歌の一つで磔刑に処されたキリストの元に佇んだ聖母マリアの悲しみが歌われています。この詞を書いたのはヤーコポーネ・ダ・トーディとされています。どのような理由があるにせよ、愛しい息子を失くした母の悲しみはいつの世にも普遍のものであり、この詞に心打たれた芸術家たちが多くの作品を書いています。 ドヴォルザークの「スターバト・マーテル」は、彼自身の個人的な悲しみが深く投影されていることで知られています。1876年、彼の生まれたばかりの娘ホセファが生後たった数ヶ月で世を去ったことに落胆したドヴォルザークはこの曲のスケッチを始めたのですが、その翌年1877年の8月には幼い娘ルジェナがたばこの誤飲で死去、さらに3歳の息子オタカルも天然痘で亡くなるという悲運にあいついで見舞われてしまったのです。その悲しみを克服するかのようにドヴォルザークは1877年の11月にこの作品を書き上げます。1880年12月23日、プラハ音楽芸術協会の定期演奏会で行われた初演は大成功を収めたということです。 このヤンソンスの演奏、陰鬱な第1曲目の冒頭の雰囲気は第4曲目まで変わることなく、ようやく第5曲目「わがためにかく傷つけられ」になって少しだけ明るく包み込むような雰囲気に変化します。以降も悲しみと慰めが行き来しますが、最後の10曲目に、全ての悲しみを吹っ切るかのように荘厳に曲が転じるところは、実に感動的。その後のフーガも実に素晴らしく、一糸の乱れもありません。オーケストラもソリストも合唱も渾身の叫びを込めたかのようなこのドヴォルザーク。情熱だけで突っ走るのではなく、計算された感情表現には驚くばかりです。収録作曲家:
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ラング(1957-):
野を横切ることの難しさ [オリーガン・ティーレ/ミッチェル/プリングル/ハーレム弦楽四重奏団/キニー・フロスト]LANG, D.: Difficulty of Crossing a Field (The) [Opera] (O'Regan Thiele, Mitchell, Pringle, Mitchell, Harlem String Quartet, Kinney Frost)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CA-21107
CD価格:1,600円(税込)
あの「悪魔の辞典」で知られるアンブローズ・ビアスの短編小説をもとに、劇作家マック・ウェルマンが詩を書き、デイヴィット・ラング(1957-)が曲をつけた音楽劇「The difficulty of crossing a field=野を横切ることの難しさ」。緊迫の音楽とテンションの高いセリフが交錯するこの不可思議な物語は2002年3月に上映され好評を得ました。この録音は、新たなミュージシャンたちを得たことで、初演時とは違ったものが生み出されています。
収録作曲家:
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リバース・オブ・ア・ネイション [DJスプーキー/クロノス・クァルテット]
DJ SPOOKY: Rebirth of a Nation (DJ Spooky, Kronos Quartet)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CA-21110
CD価格:2,600円(税込)
作曲家ポール・D・ミラー=DJスプーキー。ジャンルを越えたアーティストであり、作家でもある彼は、現代の音楽シーンにも多大なる影響を与えるとともに、数多くのミュージシャンたちとコラボを行い、常に刺激的な作品を生み出しています。 あのクロノス・クァルテットとコラボしたこのアルバムで扱っているのは「映画の父」D.W.グリフィスの生んだ名作『國民の創生』=The Birth of a Nation(1915年)。あからさまな人種差別の描写で一度は上演禁止になりかけるも、結果的には大ヒットとなったという問題作で、この無声映画に新たな曲をつけるという試みももちろん大ヒットを記録しました。何とも刺激的な再創造をお楽しみください。
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ウルフ(1958-):
無煙炭のフィールド [バング・オン・ア・カン・オール=スターズ/トリニティ・ウォール・ストリート合唱団/ワクナー]WOLFE, J.: Anthracite Fields (Bang On a Can All-Stars, Trinity Wall Street Choir, Wachner)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CA-21111
CD価格:1,600円(税込)
2015年度のピューリッツァー賞を受賞した「無煙炭のフィールド」は、ペンシルベニア州の炭鉱労働者たちに捧げるオラトリオです。作曲者のウルフ(1958-)は、労働者とその家族たちに詳細なインタビューを行い、彼らの生活や権利を尊重するために活動しようと試みました。あまりにも虐げられた労働者たちを救うためには政治までをも動かさなくてはいけないと悟った彼女は、まずこの事実を音楽にすることを思い立ちます。同じ言葉を何度も繰り返す合唱が齎す、瞑想的な雰囲気を突然切り裂くかのようなエレキギターの音。これは衝撃的であり、聴き手の意識を深部に向けさせるに充分な説得力を有しています。
収録作曲家:
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アダムズ(1953-):
Ilimaq [コッツェ]ADAMS, J.L.: Ilimaq (Kotche)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CA-21112
CD価格:1,600円(税込)
グラミー賞を受賞した作曲家ジョン・ルーサー・アダムズ(1953-)。彼の「Become Ocean」での神秘的で雄大な音楽は各方面で高い評価を受けましたが、今作の「Ilimaq」ではノイズも含めた音を駆使し、更なる精神世界の深部を探ることに執心しています。次々と変化していくパーカッションの響きの波、これをマッピングしていくことで出来上がっていく48分の作品は、少しずつ聴き手の精神を侵食し、別世界へといざないます。
収録作曲家:
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FILAMENT [エイト・ブラックバード]
Chamber Music - DESSNER, B. / MUHLY, N. / LOTT, R. / GLASS, P. (FILAMENT) (eighth blackbird)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CDR90000-157
CD価格:1,710円(税込)
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ジェフスキー(1938-):
「不屈の民」変奏曲
フォー・ハンズ [オッペンス/ローウェンタール]RZEWSKI, F.: People United will never be Defeated (The) / Four Hands (Oppens, Lowenthal)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CDR90000-158
CD価格:1,710円(税込)
チリの「ヌエバ・カンシオン=新しい歌」の代表ともいえるセルヒオ・オルテガ作の「不屈の民」は、1973年のチリ・クーデターの後に国際的に有名になり、世界中の様々な抵抗運動で用いられ、そのメロディも形を変えて伝播しています。なかでも、このジェフスキー(1938-)が書いた36の変奏曲は、数多い現代音楽の中でも異例の人気を誇っています。主題そのものは単純で誰もが歌えますが、そのあとに続く変奏曲は超絶技巧が求められるものです。アバンギャルドからジャズまで多様な様式を持つ変奏を聴いているだけでも途方にくれてしまうかもしれません。 ここでピアノを演奏しているウルスラ・オッペンスはこの曲の作曲ををジェフスキーに依頼した立役者。1976年の「アメリカ建国200年記念音楽祭」でこの曲の初演を担った彼女ですが、今回初演40周年を記念して、再度の録音が実現したというものです。
収録作曲家:
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パガニーニの再発見
ニコロ・パガニーニのヴァイオリンで弾く作品集 [ファンフォーニ/バッレリーニ/シモンチーニ/ジュディチェ]PAGANINI, N.: Violin Music (Paganini Rediscovered) (L. Fanfoni, D. Fanfoni, Ballerini, Simoncini, Giudice)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:CDS7672
CD価格:2,325円(税込)
パガニーニ(1782-1840)の「モーゼによる変奏曲」は、タイトル通りロッシーニのオペラ「エジプトのモーゼ」に触発され、1819年頃に作曲されましたが、出版は1855年になってから。どうもその時に最初に構想された「序奏」はなくなってしまい、通常聴かれるようなハ短調の憂鬱なメロディから始まるようになったようです。しかしパガニーニは、その前に華麗な「奇想曲」風の序奏を用意していたことが、最近になってパルマのパラティーナ図書館で発見された手稿を研究することで判明したのです。その中には、このCDに含まれているいくつかの作品の譜面もあり、これらはパガニーニの新発見の作品として、カタログに追加されることでしょう。 またファンフォーニはこれらの作品を、パガニーニ自身が所有していた1742年製のグァルネリ「デル・ジェス」で演奏することで、作品本来の姿を追求しています。
収録作曲家:
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マイヤー(1569-1622):
逃げるアタランタ - 50のフーガ [プラット/エヴェーラ/ミュラー/ヴィストライヒ]MAIER, M.: Atalanta Fugiens (R. Platt, Evera, Müller, Wistreich)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:ClaudioCR5468-2
CD価格:2,224円(税込)
薔薇十字思想の擁護者で、医学と哲学の博士号を持ち、神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世にも仕えたという錬金術師ミハエル・マイヤー(1569-1622)。生没年もはっきりしない彼の代表作「逃げるアタランタ」(1618年出版)は、神話の神々や英雄たちと錬金術の関係性を説くもので、ギリシャ神話に登場する女狩人アタランテをテーマに錬金術の奥義が寓意の形で表現されているのだそうです。 この書には50枚の銅版画が掲載され、その一つ一つにラテン語の六行詩と、フーガが添えられています。しかし、その「フーガ」は対位法は駆使されているものの、バッハの作品のような厳格なものではなくあくまでも歌い交わしであり、思想を理解するための補助として考えるのが良いというものなのです。この不可思議な世界に身を浸してみてください。
収録作曲家:
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発売日:2015年12月23日
CD日本語字幕付き価格:3,300円(税込、送料無料)
イタリアが誇る名ジャーナリスト、エンツォ・ビアーギ(1920-2007)による大歌手たちのインタビュー映像集。ミラノ・スカラ座に格別の愛を抱いていたビアーギは、1981年から1982年に渡り、上演される歌劇にまつわる全ての事象を掘り下げるために、リハーサル中の歌手や指揮者たちにインタビューを重ね、この興味深い映像を作り上げた。 今作は1981年の伝説的なスカラ座の初来日公演時のインタビューで、ドミンゴ、アバド、カプッチルリ、フレーニが登場し、公演会場の模様やクライバーが舞台の袖に待機する映像など貴重な記録を含んでいる。
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発売日:2015年12月23日
DVD日本語字幕なし価格:4,050円(税込、送料無料)
プッチーニ(1858-1924)の歌劇作品の中でも、最も人気の高いのがこのトゥーランドットです。「誰も寝てはならぬ」などの名アリアを含む煌びやかな音楽はもちろんのこと、異国情緒たっぷりの壮大な舞台・・・など、演出や衣装、装置などに様々な工夫を凝らすことができる作品として知られています。 この舞台は名映画監督ジュリアーノ・モンタルドが演出を担当。全ての人が満足できる壮麗な舞台となっています。トゥーランドットを歌うのはベテラン、ダニエラ・デッシー。氷の心を持つ美女をとことん追求した強靭な声と演技が魅力的です。カラフ役のマラニーニもベテラン中のベテラン。安心して楽しめる歌唱です。全ての人にオススメできる映像です。
収録作曲家:
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クラーマー(1771-1858):
〈ピアノ作品集〉
アングロ=カレドニアンの旋律と変奏曲
ピアノ・ソナタ Op.25-2/「ラ・ジーグ」
ピアノ・ソナタ Op.27-1 [ナポリ]CRAMER, J.B.: Air Anglo-Calédonien Varié / Piano Sonatas, Op. 25, No. 2 and Op. 27, No. 1 / La Gigue (Napoli)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:GP656
CD価格:1,710円(税込)
ヴァイオリニストの父親の下、マンハイムで生まれ、3歳の時にロンドンに移住。その頃ちょうどロンドンにやってきたクレメンティにピアノの指導を受けたというヨハン・バプティスト・クラーマー(1771-1858)のピアノ作品集です。師と同じくピアノ製造者と音楽出版者としても成功し、彼の制作したピアノは現在でも一部の愛好家の間で人気を誇っています。彼の書いた「実際的ピアノ技法大集」は、後にハンス・フォン・ビューローが改訂し、これも現在「クラーマー=ビューロー練習曲」として実際に用いられています。 ベートーヴェンの友人でもあり、当時の最高のピアニストとして名を馳せていた彼の作品は、適度な遊び心と活発さ、ベートーヴェンにも似た堅固さなど、当時の良いものを全て含んでおり、聞きごたえもたっぷりです。指の鍛錬としても、観賞用としても、もっと演奏される機会が増えてもよいのではないでしょうか。
収録作曲家:
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ヘンゼルト(1814-1889):
ピアノ作品集 [ガッロ]HENSELT, A. von: Piano Works (Gallo)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:GP661
CD価格:1,710円(税込)
バイエルンのシュヴァバッハ町の中央広場に置かれたヘンゼルト(1814-1889)の銅像は、現在でも変わることなく威厳を放っています。1814年に生まれた彼はフンメルに師事し、演奏会ピアニストとして大成功を収めます。しかし、彼の同世代にはショパン、シューマン、タールベルク、そしてリストなど優れたピアニスト&作曲家がいたためか、ヘンゼルトは一時期「舞台恐怖症」に陥り、しばらく静養しなくてはなりませんでした。しかしその演奏技術は確固たるもので、リストには「ピロードの掌」と賞賛され、またラフマニノフも彼を高く評価していたと言われています。 ピアノ協奏曲も1曲だけ残してはいるものの、基本的に彼の作品はピアノのための小品に集中しており「もしも私が鳥だったら」を筆頭に、どれも甘美な雰囲気を持っています。しかし彼は、なぜか30代で作曲活動をやめてしまったというのですから、なんとも残念です。
収録作曲家:
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ホフマイスター(1754-1812):
ピアノ・ソナタ集 第3集 [ツィンリコヴァ]HOFFMEISTER, F.A.: Keyboard Sonatas, Vol. 3 (Tzinlikova)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:GP668
CD価格:2,310円(税込)
南西ドイツのロッテンブルク・アム・ネッカーで生まれ、作曲家、音楽出版者として大成したフランツ・アントン・ホフマイスター(1754-1812)のピアノ・ソナタ集第3集です。モーツァルト、ベートーヴェンの友人であり、同時代の作品を次々と出版した功績には多大なものがあります。なお、彼の立ち上げた出版社は、1814年にカール・フリードリヒ・ペータースに買収され、現在でも「ペータース社」として存続しています。 彼の作品のほとんどは、友人であったフルート奏者フランツ・トゥルナーのために書かれたフルート作品ですが、勤勉だった彼はピアノ曲も多く残しており、古典派の様式を踏襲した上で、自由な発想を付け加えたこれらのピアノ曲も最近ようやく注目され始めたようです。ピアニストのツィンリコヴァはソフィアで生まれ、地元の音楽大学で学んだのち、ザルツブルクのモーツァルテウムに移り、数多くの名手の薫陶を受けています。室内楽プレイヤーとしても名高く、また古典から現代まで幅広いレパートリーを有していることでも知られています。
収録作曲家:
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オズワルド(1852-1931):
〈ピアノ作品集〉
アルバムのページ/アルバム Op.32・33・36
3つの練習曲/左手のための練習曲他 [モンテイロ]OSWALD, H.: Pagine d'Album / Álbumes, Opp. 32, 33, 36 / 3 Études / Estudo para a mão esquerda (Monteiro)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:GP682
CD価格:1,824円(税込)
リオデジャネイロで生まれ、その翌年にサンパウロに移住したエンリケ・オズワルド(1852-1931)。彼はまず母親からピアノの手ほどきを受け、その後1860年からフランス人ピアニスト、ガブリエル・ジロードンからピアノのレッスンを受けます。6歳、もしくは7歳でデビュー・リサイタルを開催し、その才能を存分に開花させるために16歳の時に母親の元を離れ、一人でヨーロッパに留学します。ミュンヘンに行く予定でしたが、最初に訪れたフィレンツェが気に入ったため、ここで音楽を学ぶことに決めた彼は、ハンス・フォン・ビューローの弟子であったジュゼッペ・ブオナミーチからピアノを学び、彼を通じてリストやブラームスと出会うのです。そして作曲家としての地位も確立した彼は1903年にブラジルに戻り、生涯この地で活躍したのです。 彼の作品は、フランスのエスプリとブラジルの民俗音楽が混在するという興味深いもので、セルジオ・モンテイロが説得力溢れる演奏で、この精緻な世界を表現しています。
収録作曲家:
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ゴダール(1849-1895):
ピアノ作品集 第1集 [レイエ]GODARD, B.: Piano Works, Vol. 1 (E. Reyes)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:GP683
CD価格:1,824円(税込)
19世紀フランスで活躍したバンジャマン・ゴダール(1849-1895)。数多くの作品を残した彼は、実はオペラ作曲家として大成することを夢見ていたのですが、結局残っているのはオペラ「ジョスラン」の中の「子守歌」のみ。その他の作品は彼の死後、すぐに忘れられてしまいました。最近になって、ようやくヴァイオリン協奏曲の美しさが知られるようになったという、まだまだ開拓の余地のある作曲家なのです。 そんな彼のピアノ曲こそ、実は本領が発揮されているものと言えるでしょう。「ゴダール=サロン風の易しい音楽を書いた作曲家」として認識していた人は、ここに収録された2曲のピアノ・ソナタを聴くと驚いてしまうはず。ここには技術的にも音楽的にも一切の妥協のない厳しい精神が漲っています。様々な表情を持つゴダールのピアノ曲、このシリーズの進行が楽しみです。
収録作曲家:
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シマノフスカ(1789-1831):
ピアノのための舞曲全集 [コストリツァ]SZYMANOWSKA, M.: Dances for Solo Piano (Complete) (Kostritsa)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:GP685
CD価格:1,710円(税込)
「夜想曲」は、ジョン・フィールドが確立した形式をショパンが発展させたと言われていますが、実はショパンよりも前にポーランドで「夜想曲」を書いた人がいました。それは1789年に生まれた女性作曲家マリア・シマノフスカ(1789-1831)で、彼女は19世紀初頭のヨーロッパにおいて、最も有名なピアニストの一人でもあったのです。彼女の作品も当時としては革新的なものであり、「ブリヤン様式= style brillant」と呼ばれる技巧的な作風は、ロマン派の自由な発想を予告するものにもなっています。 ここに収録された作品は、どれも短く簡潔ですが、1曲ごとに広がる夢幻的な発想には感嘆するばかりです。
収録作曲家:
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発売日:2015年12月23日
CD 6枚組価格:6,528円(税込、送料無料)
ヴァイオリンの小品「カヴァティーナ」で知られるドイツの作曲家、ヨアヒム・ラフ(1822-1882)。この曲があまりにも甘く美しかったおかげで、ラフ=サロン音楽の作曲家というイメージが強いのが残念でなりません。ラフは、チューリヒ湖畔の小さな町ラッヘンで生まれ、地元の学校で教師をしていましたが、23歳の時にフランツ・リストのコンサートを聴いたことで人生は一変。リストの音楽に心酔したラフは、そのまま演奏旅行に追従し、ついにはリストの助手としてドイツで職を得ることになりました。 交響曲、協奏曲、室内楽など数多くの作品を書き、また後進の指導にも力を入れるなど(あのマクダウェルも彼が指導した)、ドイツの音楽界に高く貢献した人ですが、その作品はほとんど顧みられることなく、近年ようやく少しずつ演奏機会が増えてきたのです。これらのピアノ曲もほとんどが世界初録音ですが、どの曲も驚くほど精緻に書かれており、また、時には先鋭的な響きも交じるなど、なかなか聞きごたえのあるものばかりです。 「ラフの作品をこよなく愛している」と語る、イギリスとベトナムの血をひく女性ピアニスト、チャ・グエンは、これらの知られざる作品に細心の注意と敬意を払い、大切に演奏しています。
収録作曲家:
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ルドルフ・バルシャイを讃えて[20枚組BOX]
Barshai, Rudolf: Tribute (A) (20-CD Box Set)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:ICAB5136
CD 20枚組価格:14,100円(税込、送料無料)
ロシアのラビンスクで生まれたルドルフ・バルシャイ(1924-2010)の軌跡を辿る20枚組のBOXです。彼はモスクワ音楽院でヴァイオリンとヴィオラを学び(ショスタコーヴィチにも師事したことがある)、最初はヴィオラ奏者として活動を開始しました。1948年からモスクワ音楽院弦楽四重奏団(現ボロディン弦楽四重奏団)、チャイコフスキー弦楽四重奏団でヴィオラ奏者を務め、翌1949年にはブダペストで開催された世界青年学生フェスティバルで最高名誉賞を受賞するなど、その活動は極めて華々しいものでした。1955年には指揮者として活動を開始。自身が創設したモスクワ室内管弦楽団を率い、ソ連の作曲家たちの作品を多く初演し、とりわけショスタコーヴィチやプロコフィエフに関しては、積極的なアレンジを施して演奏機会を増やしたり、ロシア国内では隠匿された作曲家アレクサンドル・ロクシーンの友人として、彼の作品を初演、録音、この不遇な作曲家を助けるのにも一役買ったことで知られています。 1976年にイスラエルに亡命し、その後は世界中のオーケストラを指揮し、数々の名演を残しています。日本には1966年に初来日、以降たびたび来日しては、名演を披露していたことでも知られています。 このBOXには、彼の卓越したヴィオラ奏者としての演奏と、指揮者としての先進的な姿を伺える演奏がバランスよく収録されています。【CD1】から【CD7】までは室内楽で、豪華な共演者にも注目したいところです。【CD8】から【CD19まではモスクワ室内管弦楽団との共演を中心に、他のオーケストラとの共演も収録されています。【CD15】のロクシーンの一連の作品も、前述の通り録音の少ない作曲家だけに貴重なものです。 また晩年になって彼が取り組んでいたマーラーの交響曲第10番の補筆完成版が、東京で行われた「日本初演」の演奏で【CD19】に収録されているのも嬉しい限りです。打楽器を多用したきらびやかなバルシャイ版は、マーラー好きなら一度は聴いておきたいものです。【CD20】には、名アレンジャー、バルシャイに敬意を表した1枚。彼が編曲した3つの作品が演奏されています。
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発売日:2015年12月23日
Blu-ray Audio価格:2,175円(税込)
ワーグナー(1813-1883)が創り上げた壮大なる叙事詩「ニーベルングの指環」は、北欧神話を下敷きとし、欲望、愛憎、人智を超越した物語が重厚な音楽とともに描かれる大作です。全曲完成までに26年を費やしたこの作品は、演奏時間も15時間を必要としますが、1876年に書かれた序章である「ラインの黄金」は物語の入門編とも言える部分で、コンパクトに纏められた(と言っても2時間以上)ストーリーとなっています。世界中の歌劇場で上演される人気作ですが、歌手の選択から演出、オーケストラのテクニック、そして指揮者の力量など、多くの問題をクリアしない限り、名演にはならない難しい作品です。 この香港フィル初の「指環」は演奏会形式で上演されたものですが、鬼才ズヴェーデンの指揮によって文句の付け所のない演奏に仕上がっています。また名バリトン、ゲルネがヴォータンを演じているところにも注目が集まりました。ちなみにジャケットデザインはこのコンサートのポスターがそのまま用いられています。
収録作曲家:
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シマノフスキ(1882-1937):
歌劇《ロジェ王》SZYMANOWSKI, K.: Król Roger (Royal Opera House, 2015) (NTSC)
発売日:2015年12月23日
DVD日本語字幕付き価格:3,750円(税込、送料無料)
異教徒の新しい教えが民衆に広まることを懸念したロジェ王と、その側近の賢者エドリシ。王は教えを広めているという正体不明の羊飼いと会うことにします。しかし、その美しい姿に魅了されてしまったのが王の妻ロクサーナ。一度は辞去した羊飼いが再度宮殿にやってきたとき、ロクサーナをはじめ、宮殿内の全ての人々は自制を失い、やがては彼を追って姿を消してしまうのです。妻を探し求めるロジェ王の前に現れたのは豊穣と狂乱の神ディオニューソスでした。そう、謎の羊飼いはディオニューソスが姿を変えていたのです。最後は神の誘惑に打ち勝ったロジェ王ですが……。 12世紀のシチリアに実在した王ルッジェーロ2世をモデルにしたこのオペラ、この中で描かれているのは「異文化、異教の侵入」と、それに踊らされる人々の姿。そして反抗する君主の姿です。本来の幕切れは、全ての人が姿を消し、ロジェ王と側近エドリシのみの2人が残されることになっていますが、ホルテンの演出では、ほんの少しだけ救いが残されています。シマノフスキ(1882-1937)の音楽は神秘的で美しく、第2幕の狂乱の場では恐ろしいまでの官能的な響きを聴くことができます。 パッパーノはスコアを丹念に読み解き、この複雑な音を丁寧に拾っていきます。ロジェ王を歌うクヴィエチェンはこの役を当たり役にしている人で、ここでも余裕の歌唱を聴かせます。ロクサーナ役のジャーマンはこれがロイヤル・オペラへのデビュー作となります。衣装、装置はシンプルですが、余分なものがないだけに一層神秘的な雰囲気が際立つ名演です。
収録作曲家:
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シマノフスキ(1882-1937):
歌劇《ロジェ王》SZYMANOWSKI, K.: Król Roger (Royal Opera House, 2015) (Blu-ray, HD)
発売日:2015年12月23日
Blu-ray日本語字幕付き価格:4,650円(税込、送料無料)
異教徒の新しい教えが民衆に広まることを懸念したロジェ王と、その側近の賢者エドリシ。王は教えを広めているという正体不明の羊飼いと会うことにします。しかし、その美しい姿に魅了されてしまったのが王の妻ロクサーナ。一度は辞去した羊飼いが再度宮殿にやってきたとき、ロクサーナをはじめ、宮殿内の全ての人々は自制を失い、やがては彼を追って姿を消してしまうのです。妻を探し求めるロジェ王の前に現れたのは豊穣と狂乱の神ディオニューソスでした。そう、謎の羊飼いはディオニューソスが姿を変えていたのです。最後は神の誘惑に打ち勝ったロジェ王ですが……。 12世紀のシチリアに実在した王ルッジェーロ2世をモデルにしたこのオペラ、この中で描かれているのは「異文化、異教の侵入」と、それに踊らされる人々の姿。そして反抗する君主の姿です。本来の幕切れは、全ての人が姿を消し、ロジェ王と側近エドリシのみの2人が残されることになっていますが、ホルテンの演出では、ほんの少しだけ救いが残されています。シマノフスキ(1882-1937)の音楽は神秘的で美しく、第2幕の狂乱の場では恐ろしいまでの官能的な響きを聴くことができます。 パッパーノはスコアを丹念に読み解き、この複雑な音を丁寧に拾っていきます。ロジェ王を歌うクヴィエチェンはこの役を当たり役にしている人で、ここでも余裕の歌唱を聴かせます。ロクサーナ役のジャーマンはこれがロイヤル・オペラへのデビュー作となります。衣装、装置はシンプルですが、余分なものがないだけに一層神秘的な雰囲気が際立つ名演です。
収録作曲家:
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ワーグナー(1813-1883):
バイロイト・エディション BOXセットWAGNER, R.: Bayreuth Edition (The) (8 Blu-ray Disc Box Set, HD)
発売日:2015年12月23日
Blu-ray 8枚組日本語字幕なし価格:13,800円(税込、送料無料)
ワーグナーが自身の作品の上演を目的とし、計画、設計したドイツの「バイロイト祝祭劇場」。全てのワーグナー・ファンにとっての“聖地”であり、毎年7月~8月にかけて行われるバイロイト音楽祭は、チケット入手の困難さでも知られています。この音楽祭では、毎回革新的な演出によるワーグナー作品が演奏されることで知られ、とりわけ、近年は挑発的で実験的な演出が多く、新しい演出がお目見えするたびに、大きな論争が巻き起こっています。 このBOXは21世紀に上演された新演出による6つのオペラを収録したもの。ワーグナー上演の最先端を知ることができるでしょう。
収録作曲家:
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未来・ニシモト=ノイベルト
ピアノ・ソロ [ニシモト=ノイベルト]Piano Recital: Nishimoto-Neubert, Miku - BACH, J.S. / MENDELSSOHN-HENSEL, Fanny / MENDELSSOHN, Felix
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:SM223
CD価格:1,824円(税込)
未来・ニシモト・ノイベルトは、東京に生まれ、東京藝大音楽学部で学び、1993年渡独。ハノーファーで研鑽を積み、1998年J.S.バッハ国際コンクール3位(1位なし)など、様々なコンクールに入賞。ソリスト、室内楽、歌曲伴奏など幅広く活動している実力派ピアニストです。これまでにsolo musicaレーベルより2枚のバッハ作品をリリースしていますが、今作ではバッハの伝統を引き継ぐメンデルスゾーン姉弟の作品をカップリングすることで、新たな可能性を示しています。とりわけ姉ファニーの作品に漲るロマンティックな表情には、思わずはっとさせられることでしょう。今作でもブックレットには日本語解説が付いています。
収録作曲家:
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マイ・フェイヴァリット・アリア
マリア・ヴィドヴィチ アリア集 [ヴィドヴィッチ]Opera Arias (Soprano): Vidovic, Marija - MOZART, W.A. / BELLINI, V. / PUCCINI, G. / BIZET, G. / VERDI, G. / GOUNOD, C.-F. (Anmut - My Favorite Arias)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:SM225
CD価格:1,710円(税込)
1982年クロアチアに生まれたソプラノ歌手マリア・ヴィドヴィチ。彼女はウィーンの音楽大学で学び、ミレッラ・フレーニ、ユリア・ヴァラディらのマスタークラスに参加、2007年からはシュトゥットガルト音楽大学でフランシスコ・アライサに師事しています。これまでにドイツ、オーストリア、リヒテンシュタイン、スイス、クロアチア、イタリア、メキシコで歌い、またオペラでは「こうもり」のアデーレ、「ポッペアの戴冠」のドルーシア、「カルメン」でのフラスキータなど幅広い役をレパートリーにしています。またオペラだけでなく宗教曲やオラトリオも得意とし、ウィーン楽友協会では最年少でソロ・リサイタルを開催するなど多方面で期待されています。少し翳りのある艶やかな声が魅力です。
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デュオ・アルニカンス [デュオ・アルニカンス]
Cello and Piano Recital: Duo Arnicans - CHOPIN, F. / DOHNÁNYI, E.
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:SM226
CD価格:1,824円(税込)
ドイツ出身のチェリスト、フローリアンとラトビア出身のアルタ、お互い「アルニカン」の苗字を持つ2人のデュオによるショパンとエルネー・ドホナーニの作品集です。ハンガリー民謡のリズムを根底に持つドホナーニのソナタ、ショパンの晩年の傑作であるソナタと、どちらの曲も熱く燃えるようなリズムと扇情的な表現が勝る見事な演奏で、とりわけショパンでは、これでもかと言えるほどの迫力を有しており、これまで多くの人がこの曲に対して抱いていたイメージが変わってしまうと思えるほどの感情の発露が見てとれます。珍しいドホナーニのソナタも、こんなに良い曲だったのかと目から鱗が落ちるのではないでしょうか。
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モーツァルト(1756-1791):
プロイセン王のための弦楽四重奏曲
第1番-第3番 [ストラディヴァリ四重奏団]MOZART, W.A.: String Quartets Nos. 21, 22 and 23 (Prussian Quartets) (Stradivari Quartet)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:SM230
CD価格:1,710円(税込)
1789年、33歳のモーツァルト(1756-1791)はリヒノフスキー侯爵とともにドイツ旅行をした際、ベルリン宮廷で御前演奏を行います。そこでプロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世から「弦楽四重奏曲6曲とピアノ・ソナタ6曲」を作曲するように依頼されますが、モーツァルトは1年間の間に結局3曲のみを書き上げ、その翌年世を去ってしまいます。作品は王に献呈されることなく出版されましたが、この3曲は「プロシャ王セット」と呼ばれ、現在でも変わらず愛聴されています。 演奏している「ストラディヴァリ弦楽四重奏団」は、その名の通り、全てのメンバーがストラディヴァリの銘器を奏でるという稀有なアンサンブル。2007年のデビュー以来、スイス有数の弦楽四重奏団として名を馳せています。
収録作曲家:
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シューベルト(1797-1828):
交響曲 第9番「ザ・グレート」&第8番「未完成」 [ウィーン響/ジョルダン]SCHUBERT, F.: Symphonies Nos. 8, "Unfinished" and 9, "The Great" (Vienna Symphony, P. Jordan)
発売日:2015年12月23日 NMLアルバム番号:WS009
CD価格:1,710円(税込)
スイスで生まれチューリヒの学校で学び、各地の歌劇場で経験を積み、ベルリン州立歌劇場ではダニエル・バレンボイムの下でアシスタントを務めるなど、「正統派」の指揮者として実力を見せ付けるフィリップ・ジョルダン。彼は2014年にウィーン交響楽団の首席指揮者に就任してから(ファビオ・ルイージの後任)、このオーケストラの実力を更に向上させています。彼の解釈は常に清冽で素直なもので、オーケストラから紡ぎだされる音もとても滑らかで美しいもの。今作での「グレート」でも決して肩肘を張ることなく、流麗でふくよかな音楽を楽しむことができます。 彼の美質が極限まで発揮されているのが「未完成」の第2楽章でしょう。少しだけ早めのテンポをとりながらも、その歌は切ないほどに美しく、しみじみと語りかけてくるようです。自然なシューベルト(1797-1828)を聴きたい人に強くオススメします。
収録作曲家: