リネンとは

 リネンとは、麻の一種である亜麻科の一年草の繊維で織られた布のことです。一般に「麻」と呼ばれているものは約20種類もあります。原料となる植物によって、それぞれまったく違う性質になります。麻の仲間でよく知られているのは、「ヘンプ(大麻)」「ラミー(ちょ麻)」「ケナフ」「ジュート」などで、その中で最もしなやかで肌にやさしい布が「リネン」なんです。

 

 洋服や家庭用品のタグに「麻」と表示されていますが、家庭用品品質表示法でタグに「麻」と表示できるのはリネンとラミーだけです。特に品質の良いリネン製品には「麻」という表示とは別に、「リネン」と表示され、本来の麻である「ヘンプ」は指定外繊維と表示されます。

 

 リネンは、亜麻科の一年草で、2ヶ月ほどで約1mに成長し紫や白の花をつけます。特に満開の時期(7〜8月)にはラベンダー畑を思わせる大変美しい景色が楽しめます。リネンは一度栽培すると7年は休耕地としないといけないほど土の栄養を吸い取ります。ここにも、リネンが高価になる原因があります。フラックスと呼ばれるリネンの草を抜き取り、しばらくそのまま畑に置いて表皮を発酵させた後、残ったリネンの茎を乾燥させ、くしけずり細くそろえ、上質な繊維だけを選りすぐって糸にしていきます。

リネンの歴史

原産地はカスピ海西岸から中東にかけての一帯とされていて、比較的寒い地方で栽培されます。麻よりも細くて強靭で、通気性・吸水性に優れていて肌触りが良いことから、古代より衣類などに使われてきました

人類最古の繊維

人がリネンを使い始めて1万年にもなります。紀元前8千年頃より、チグリス・ユーフラテス川に亜麻は群生していて、人類最古の繊維と言われています。古代エジプトの交易品にもなっていたり、ミイラを巻くために使われていました。

月光で織られた生地

また、イエス・キリストの遺体を覆ったのもリネンと言われています。現代でもヒンズー教徒はリネンで遺体を包んでガンジス川へ流すそうです。古代ギリシアや古代ローマでは純白のリネンが珍重された記述も残っています。古代の人はリネンを「月光で織られた生地」と称えるほど、人々はその美しさと心地よさに魅了され続けてきたと言われています。

リネン文化

 古代よりヨーロッパではリネン文化が生活に根付いていて、ホームリネンやハウスリネンを嫁入り道具にするなど現代でも代々伝統が残っています。また、正式な晩餐会や一流ホテルなど格式のあるところでは必ずリネンが使われています。

 日本では、リネンの歴史は浅く、明治時代以降になります。欧米に比べるとまだまだ馴染のないリネンで、リネン=麻=硬くてチクチクというイメージがあるかもしれません。

リネンの特徴

ヨーロッパでこれだけの文化が開花したのは、それなりの理由があるからです。

 リネンは、天然繊維の中で、最も強い繊維であり、濡れるとさらに強度が増します。洗濯に強く、、汚れや雑菌が繊維内に入りにくく、落ちやすい清潔な素材なのです。

繊維は、毛羽も少ないので通気性が良く、防虫性も良好です。また、吸水性にも優れ、さらに乾燥性にも優れています。

 単に光沢があって美しいというだけでなく、こうした理由から、リネンは今日までの長い間、最高の素材として愛されてきたのだと思います。 

■リネンの取扱い

 

リネンの洗濯は、基本的には水洗いができます。ただし、裏地や加工方法によっては出来ないものもありますので、洗濯表示に従って下さい。コットンに比べて汚れが落ちやすいので洗濯時間は短めにして下さい。

洗剤は漂白剤や蛍光剤の含まれていまい中性洗剤を使用して下さい。

 脱水を軽めにした後、形を整えてシワを伸ばして干して下さい。シワもリネンの特徴のひとつですから、そのままでも着られます。アイロンをかける場合は、湿気を十分与えてから高温で強くかけます。

乾燥機やドラム式洗濯機は生地を痛めやすいので、お控え下さい。

 リネンは洗濯する事によって、自然な色落ちがありますが、肌に馴染んできます。

これもリネンの特徴のひとつです。