とはいうものの、乳牛の餌のほとんどは輸入穀物飼料に頼っているのが現状です。

輸入穀物については、ポストハーベスト農薬(収穫後の農産物に、防かび・防腐・発芽防止などのため、農薬を散布すること)の残留も問題視されていますし、不安定な輸入価格が酪農経営に打撃を与えるという脆弱なコスト構造も問題ですが、



栄養価の高い穀物飼料は、高脂肪の生乳をたくさん絞るために近代酪農では必要なものとされてきました。しかし、牛という動物はそもそも草食の動物です。そのため、胃袋の構造や反芻(はんすう)行動など、植物を栄養源として生きるための独特の構造・機能をもっています。

その牛に、本来の餌ではない穀物を多量に与えるわけですから、消化器障害等の病気を発症しても不思議ではありません。しかも、生産効率の向上のためには多くの牛を狭い牛舎に詰め込み、人工的な飼料を与え、人工的な授精・分娩を施すというまさに「牛乳製造マシーン」として牛を飼育する酪農が一般的に行われています。

配合飼料、栄養過多、運動不足、病気予防のための投薬、継続したストレス・・・などなど、牛にとってはいたって不健康な環境です。

スーパーには、ときどき水よりも安い価格で並ぶ牛乳があります。安いことは家計にとっては確かにいいことですが、その安さを維持するために生じた歪みにも、目を向けるべきではないでしょうか。