カランカラーン (ドアの開く音・・・)


『ようこそ BAR 文房具カクテル へ』

本日もようこそお越し下さいました。たいぶ当店の趣向を感じとって頂けたようですね。
今回の登場するサンスター『アーム筆入れ』は、1967年CMによって全国の少年(当時マスターは、6歳)がこぞって欲しかった象が踏んでも壊れない筆箱(発売当時は、サンスター文具)についてのエピソードお話させて戴きます。

さて、そろそろ文房具好きの皆様が揃ったところで
今宵も文房具の話に花を咲かせ美味しいお酒の肴にして下さい。


5drink 象が踏まなくても壊れた筆入れ


小学校の2年生だったと記憶していますがいつもの如くTVコマーシャルに左右される少年だった私は象が登場して筆箱を踏み壊れないコマーシャルを見て筆箱も欲しいがそれ以上に自分でも踏んで見たいとの欲求にかられ両親に買ってもらいました。(買ってもらった経緯の記憶は定かではありませんが勿論、自分で踏んでみるとは口が裂けても言ってなかったと思います。)やっとの思いで購入してもらった筆箱は、踏まれる為に世に出てきたのではなく当然鉛筆などを入れて保管する為に世の中に登場したのですが 小学生の私には勿論『踏みつけたい!!』欲求しかなく、いよいよ学校へ持っていきそのチャンスが訪れました。


友達に自慢たらしく『この筆箱知ってるか? サンスターのアーム筆入れやで』勿論TVコマーシャルを見て皆が知っているのを承知の上での質問です。すかさず『象が踏んでも壊れないんやで 知ってる?』皆が『知ってるで・・』その答えを期待していた私は『実験してみよか?』と皆に尋ねてみました。『どうするの?』『学校には象はおらんで?』等の質問をさえぎり教室の床にアーム筆入れを置き、机の上に乗った私は、そこから筆箱をめがけジャンプして踏みつけたのでした。(こんな経験ありませんか?)

その瞬間 ガチャガチャ・・・・ 

全員が『壊れたで?』『バラバラになってしもた』『中の鉛筆も折れてる』真っ白になった私は『あーお母ちゃんに怒られる』『どうしょう』と頭の中がパニックになりました。下校途中、どうして言い訳しようか?友達が壊した?机から落とした?どれもこれも嘘だと見抜かれる事も
分っていましたがどうしても自分で机から飛び降りて踏んで壊したとは言えませんでした。
家の近くの堤防に行き様々な言い訳をどの位考えたでしょうか?最後は観念して謝るしかないと覚悟いたしました。

ガラガラ 玄関のドアを開け『ただいま』母親が『お帰り 手洗いや』『今日は、何勉強してきたんや?』『国語と算数やで いつもと一緒やで』『お腹空いたからラーメン作って』と何とか学校の話を逸らそうといたしましたが『先に宿題してしまい 明日の時間割して鉛筆削ってしまいや』また学校の話なり今しか言うチャンスがない!!と思い決心いたしました。


『お母ちゃん こないだ買ってもらった筆箱潰れてしもた』母親が『何で?潰れたん』
『あのな 教室で遊んでいて机から机と飛んで遊んでいたら 筆箱が落ちてそのまま踏んでもた』間髪を入れずに・・・・バシッ!ビンタが飛んできて頬が熱くなり痛い!!なんでたたかれたのか分らずいたら『○○ちゃんが あんたが机から飛んで壊し事言いにきてくれたで!』
ばれていましたしっかりと・・・
『何で言うかな?』と小声で言う私に母親は『もう一回叩こか?』『ご免なさい』『最初から本当の事言いなさい』厳しく叱られました。我が家では父親に全て報告しなければならずその夜 夕食時間に恐々父親に言うと父親は黙っていました。あれ?可笑しいな?と思いましがどうも先に母親が父親に言っていたみたいでした。これも我が家のルールですが両親どちらかが先に体罰を与えると片方は免除になります。追加罰則無しがどうも今考えるとルールのようです。ただ報告はしないといけませんが・・・・

かくして象が踏まなくても壊れた筆箱は、母親の作った布製の袋に変わってしまいました。
翌日、学校でその筆箱を友達に見つかり大笑いされた事は今でも忘れない苦い思い出です。

そして苦い思い出もあるアーム筆入れの復刻版が出たときには真っ先に購入し今でも自宅の机の上で健在です。



「象が踏んでも壊れない??」
「若気の至り、決定的瞬間!」




・2007.06.11 5drink 〜象が踏まなくても壊れた筆入れ〜