スパークリングワインの抜栓が苦手、という方も多いことでしょう。でもね、コツさえ覚えてしまえばちっとも難しくありません。
まずは抜栓前の準備から。抜栓前はワインのガスを落ち着かせてあげることが大切です。セラーから出したら4~5時間、冷蔵庫の中で立てておくのがおすすめです。スパークリングワインのガス圧はとても高いですから、寝かせておいたボトルを縦に動かすだけでも瓶口にできる空気の部分にものすごいガス圧がかかるんです。冷蔵庫の中で立てて置けば自然とガスも落ち着き、温度も抜栓に最適な10℃以下にすることができるんですよ。
①フォイルをはがして留め金を露出させましょう。
②ナプキンなどをかぶせ、その上からコルクを親指でしっかりと押さえ、留め金を静かにはずします。
③左手でボトル底面を包み込むように持って、右手はナプキンの上から親指でコルクを押さえます。
④ボトルを斜めに傾けて、雑巾を絞るように、左手を手前に、右手をその逆へとゆっくりと回します。
⑤そうすると、コルクがガス圧で上がってきますから、コルクを押さえながらゆっくりと抜いていきます。いよいよ、抜けそうだなというときに、コルクと瓶口にわずかに隙間をつくるようにして、ガスを逃がしてあげましょう。
⑥ガスが抜けたらゆっくりとコルクを抜きます。こうすれば噴きこぼさずに、静かでエレガントな抜栓ができますよ。
スパークリングワインを飲み残してしまっても、市販のシャンパンストッパーを付けておけば、2~3日は美味しく飲めます。ガスが抜けてしまうのでは?と考えがちですが、シャンパーニュ方式で造られているスパークリングワインはしっかりとガスが溶け込んでいますから、気の抜けた炭酸ジュースのようにはなりません。しかもワインの中からつねに生み出される泡が酸化も防いでくれるので、味わいもあまり劣化しません。
またシャンパンストッパーがない場合、とっておきの方法があります。飲み残したスパークリングのボトルに、普通のワインコルクを差し込みます。そしてボトルに入りきらなかったコルクをカッターなどで切り取ってしまうんです。こうして、スパークリングにはじめから付いていた留め金でしっかりと固定すればOKです。こうしておけばコルクが飛び出す心配もありません。再度抜栓する場合は充分に気を付けてくださいね。
はじめてシャンパーニュを飲んだときドン・ペリニヨンは、開口一番、こう言ったといいます。「星を飲んでいるようだ。」なんとも素敵な表現ですよね。このようにシャンパーニュには誌的な表現がいくつかあるんです。
たとえば醸造中のワインが蒸発し、減ってしまう分を「天使の分け前」なんて言ったりします。さらにシャンパーニュをグラスに注ぐとき、泡がはじけてシュワーと音が広がりますね。ここでグラスに耳を近づけてみてください。パチパチパチと聞こえますよ。この音のことを「天使の拍手」というんですね。天使があなたを祝福しているんです。まさにお祝いの席のお酒らしいでしょ。
それから、こんなのもありますよ。グラスにシャンパーニュを注ぐと、グラスの内側にはじける泡が白い輪をつくりますよね。この輪のことを「真珠の首飾り」っていうんですよ。
僕が以前、シャンパーニュのメゾンを訪問したときのお話をしましょう。家族経営の小さなめぞんだったんですが、セラーに入ると、オーナーがピッケルを持ってセラーの壁を削っていたんです。僕が「なにしてるの?」と訊ねると彼は「セラーを広げているんだよ」と答えたんです。実はシャンパーニュの土壌は石灰質を含んでいるためこれほどやわらかいんです。削れるのは湿った石灰質土壌なんですが次第に乾くことによって、今度は頑丈になるんです。彼はライフワークのように毎日少しずつセラーを広げているようです。「調子がよければ1日50センチぐらい掘れるよ」そう言って彼は笑っていました。そして、この石灰質こそがシャンパーニュ特有のイースティな香りを生みだしているんですね。