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LESSON#003 “黒ぶどうの女王”ピノ・ノワールを極める!
「ピノ・ノワールのない世界には住めない」という言葉があるほど、ピノ・ノワールはカリスマ性を持ったぶどうです。原産地であるフランス・ブルゴーニュを代表する品種ですが、世界中で栽培されています。非常に手のかかる品種といわれていますが、世界中の生産者が栽培に挑み、試行錯誤して各産地の魅力を表現したワインを造っています。そこで、今回はピノ・ノワールについてじっくりとお話いたしましょう。
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 原産地はフランスのブルゴーニュ地方です。4世紀にはすでに栽培されていて、昔はモリヨン・ノワールと呼ばれていました。ピノは松、ノワールは黒を意味し、小さな実が連なる房が松ぼっくりの形に似ているため、この名が付いたといわれています。ピノ・グリ、ピノ・ブランなどの突然変異種が多く、その他に、シャルドネ、ガメイ、アリゴテほか、10数品種の祖先だともいわれています。
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 ピノ・ノワールは元来早熟なぶどうのため、温暖な気候では急激に成熟して香りも酸も飛んでしまいます。ゆえに冷涼な土地で栽培し、ゆっくり成熟させることが重要です。複雑で緻密な実に育てるには、石灰質の割合が多い粘土石灰質土壌がもっとも良いといわれています。テロワールに敏感で、いわば畑の質=ワインの質。儚いまでの繊細さで、テロワールの特性を見事に表現します。
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 若いうちは、ベリー系の赤い果実のような特有の香りを楽しめます。熟成に伴い、果実の凝縮香に加え、皮革、土、下草、枯葉、キノコなどのスパイシーなブーケが出てきます。とはいえ、ミクロ・クリマによるわずかな気候や土壌の違いでも、香味は微妙に変化します。それゆえ、産地国のみならず、村や畑ごとに、希少価値の高い個性的なワインが造られているんですね。
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 魅力を最大限に生かすため、他の品種とはブレンドされずに、ピノ・ノワール100%で醸造されるのが一般的です(スパークリングワインやブルゴーニュ地方の一部のAOCを除く)。優雅な芳香、洗練されたシャープな酸、しなやかなボディーが特長で、樽熟によって深みとコクを与えられることもあります。なかでもコート・ド・ニュイ産は力強い長期熟成型で、鮮烈な香味が持ち味です。
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フランス・ブルゴーニュ
コート・ド・ニュイのピノ・ノワールは世界最高峰と称され、あのロマネ・コンティもそのひとつです。コート・ド・ボーヌでももちろん優れたワインが多いのですが、その土壌の違いから、熟成が比較的早く、ニュイのそれよりも軽やかな味わいになるといわれています。
フランス・アルザス
ACアルザスを名乗る赤ワインはもとより、アルザス地方の赤ワインの認定品種は、ピノ・ノワールのみ。歴史は古く、中世から珍重されています。フルーティーなアロマのフレッシュなワインが大半ですが、樽熟成のブルゴーニュスタイルもじわじわ増えています。
ドイツ
ドイツではシュペートブルグンダーと呼ばれています。特に、ドイツ最南端のワイン産地であるバーデン地方は、全品種の中でピノ・ノワールの栽培が一番多く、国際的評価も高まっています。気象区分がアルザスと同じで、エレガントな味わいのワインが主流です。
カリフォルニア
ここ数年、カリフォルニアではピノ・ノワール100%ワインがブーム。ブルゴーニュに引けを取らないピノ・ノワールの産地として真っ先に挙げられ、赤品種では4位の栽培面積です。銘醸地ナパ・ヴァレーとロシアン・リバーは、ピノ・ノワールの聖地といわれています。
アルゼンチン
テロワールに敏感なピノ・ノワールの性質を生かし、アルゼンチン特有の鉄分が多いやせた土壌がぶどうに深い風味を与えます。樽熟成でスパイシーさとコクを持たせたワインに人気があり、ピノ・ノワールのポテンシャルをますます広げています。
ブラジル
ブラジルきっての銘醸地セラ・ガウチャは、フランス北部に似た気候で、ヨーロッパ系品種の栽培が盛んです。ピノ・ノワールとシャルドネが認定品種になっている特定畑もあり、まるでブルゴーニュのよう。今やピノ・ノワールはブラジルを代表するぶどうとなっています。