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Kobo Akarinotane

工房 灯のたね

心の灯をともしてくれる、
木工旋盤職人。

工房 灯のたねの井上氏は子供の頃から「つくること」が大好きで北海道工業大学を卒業後、福島の機械メーカーに就職し、送風機の図面を描く仕事に従事していました。図面を描くうちにモノづくりをしたいと考えるようになり、祖父が木工を営んでいた旭川へ移住し2006年に妻の美由紀氏と工房灯のたねを設立しました。そんな工房 灯のたねのはじめて作った自社製品は「灯樹色(つりぃ)」。小さいころから蛍光灯の温かみのない色が好きではなく世の中の光をすべてオレンジに変えることを目標に作り出した製品です。「オレンジの光は人の心を落ち着かせ心がほっと温かくなる。すぐに眠たくなり早寝してしまうんですけどね。」と笑いながら話す井上氏の優しい笑顔が印象的でした。小さなころから北欧の雰囲気を感じるアニメが好きでそのエッセンスが製品にこもっています。

人のあたたかさを
灯に込めてお届けできれば。

祖父の工場を受け継いだとはいえ、木工旋盤の技術は一から培いました。木工旋盤とは木材を機械で回転させ刃物を当てて削る技術のことを指します。古くから伝わる技術ですが高齢化が進み年々工場が減少している旭川の伝統技術を継承する数少ない職人です。「いざ始めてみると技術的なことや販路などわからないことだらけで、同じ地域で創作活動をしている工芸家の皆さんに随分助けてもらいました。そんな人のあたたかさを灯に込めてお届けできればと思っています。」と語ります。その言葉通り、井上氏の作る商品はあたたかみのあるライトが多く、木から透けて漏れる灯りは、ほっと心をあたためてくれます。ぬくもりに包まれた豊かな暮らしに変えてくれるそんな素敵なライトたちです。

中途半端なものは作れない。

機械メーカーで図面を描いていたので作図にもこだわりがあります。どちらかというと家具メーカーは大まかに図面を描き、角の面取りはその職人の腕によって差が出てきます。井上氏の描く図面は誰が見ても理解できる細かい線が描かれていました。そこには製品によって当たり外れがない、すべての製品に手を抜かない、中途半端なものは作れないという意識の現れを感じます。

ノミを通じて木と会話している時間。

照明の傘に使われているのは主に北海道産トドマツを使用しています。安価な住宅の柱や梁に使われるイメージが強く、ヤニや節が多いため加工が難しく、家具やクラフトにおいて敬遠されがちな木材です。それでもトドマツは木肌が白く、木目がはっきりしていて、あかりを透かすと様々なグラデーションに惚れ込み使い続けています。またトドマツを含む針葉樹は柔らかいのが特徴です。柔らかい材は比較的加工がしやすいのですが通常のヨーロッパで使われているノミでは堅すぎるため適合しません。柔らかい材には柔らかいノミが必要で祖父から受け継いだ日本産のノミを利用しています。日本刀と似た作りで鉄の下地と柔らかい鋼の二段構造になっているため手に伝わる微妙な感覚を感じ取ることができ、寸分の狂いのない円形を作り出すことができるそうです。「製品を作り上げる工程はノミを通じて木と会話している時間。ノミは自分にとって通訳みたいものです。」

理想の夫婦であり
理想のビジネスパートナー。

工房 灯のたねは井上氏と妻の美由紀氏の2人で営んでいる工房なので阿吽の呼吸が生まれます。加工中は機械音が大きく声があまり通りません。数分間おきにお互いをちらっと確認し、工程の進み具合に合わせながら仕事を進めていきます。どちらかが一歩進めばもう片方が一歩ついていく。どちらかが止まると手を差し伸べる。まさに理想の夫婦であり理想のビジネスパートナーです。ニコニコと笑いながら話してくれる二人には想像つきませんでしたが、時には厳しく口論するときもあるそうです。それはいつも決まって製品のことで「少しでもいいものをお客様に届けるんだ。」それに掛ける想いはどこにも負けません。現在井上氏は旭川クラフト協議会の会長やコド・モノ・コトの旭川支部長を務め、つくるだけでなく旭川木工の活性化にも力を注いでいます。

工房 灯のたね

〒070-0027
旭川市東7条2丁目4-14
電話番号 0166-24-2447

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